バーチャル経営における人材調達③~「人手不足対策とは”業務を捨てること” RPA自動化のすすめ」

人手不足の問題は様々な業界に共通する課題です。しかし、この人手不足問題に対して、単純に「どうすればよい人材を採用できるのか」と考えることは危険だと考えます。さまざまな外的要因によって目まぐるしく状況が変化する今、単に人手を増やすことは経営上のリスクにもなり得るからです。

そこでバーチャル経営では、人手不足問題への解決策として「人的リソースを増やす」ことではなく、「業務を捨てる=業務廃棄」を推奨しています。そして業務廃棄の典型例が「RPA」を活用した自動化です。

目次

RPAの本質は「自動化」ではなく「業務廃棄」

2021年時点で、業務効率化・自動化対策の注目株と言える存在が「RPA」です。RPAは「Robotic Process Automation /ロボティック・プロセス・オートメーション」の略称で、その名の通り「ロボットによって任意のプロセスを自動化する考え方、仕組み」を指しています。

RPAの最も基本的な動作は、「人間が行っているデスクトップ画面上の操作を、一定のルールに基づいて自動的に再現すること」です。表計算ソフトや帳票システムへの入力業務を自動化できるため、いわゆる「雑務」と呼ばれる領域を一気に削ぎ落とすことが出来ます。

また、より応用的な使い方として「複数のシステム、アプリケーションを跨ぐ作業の自動化」も可能です。例えば不動産検索サイトの運営において次のようなオペレーションが発生するとしましょう。

  • 閲覧者から物件情報が誤っているとの報告を受ける
  • オーナーが不動産検索サイト運営業者へ修正依頼をかける
  • 修正依頼が受理され、サイト運営業者のCRMに登録される
  • CRMに登録された情報をもとに掲載情報が修正される

3番目と4番目の作業はRPAによる自動化が可能です。修正フォームからCRMへ、CRMからWebシステムへと、異なるシステムを跨ぐ作業であってもRPAならば対応できます。

こうしたRPAの特性を利用し、次のような施策が可能です。

  • バックオフィスで日常的に発生する種々の入力、転記処理を自動化
  • 業務別の専用システム(CRM、SFA、ERPなど)への入力代行
  • メール内容の転記、加工、抽出作業を自動化
  • 請求書や日報など各種帳票の自動作成

こうしてみると「RPAは自動化がゴールなのだな」と感じるかもしれません。しかし、バーチャル経営では、RPAを「業務廃棄のきっかけ」と考えています。自動化と業務廃棄は、似て非なるものです。

自動化と業務廃棄は、「人の手から業務プロセスの一部を取り去る」という意味では同じです。しかし、一般的に自動化は「コストカット」の文脈で用いられることが多く、その先に何を見据えるかはケースバイケースです。

一方、業務廃棄は「業務を捨て、代わりに何を詰め込むか」が要諦であり、RPAはそのきっかけに過ぎません。
RPAの本質は業務廃棄

業務廃棄で空いた場所に何を詰めるべきか

では、業務廃棄で空いたスペースに何を詰め込むべきなのでしょうか。この点についてバーチャル経営では「新規事業創出やイノベーションのための人手確保」を推奨しています。具体的には次のような内容です。

売上増のための新たな仕組みを創り出す

これまでも述べてきたように、生産年齢人口の減少やDX人材の枯渇から、人材獲得は計画通りに進まないことが多いでしょう。RPAはこうした人材獲得の課題を解決できるツールでもあります。業務廃棄が進めば、属人的な知識に支えられていた雑務にリソースを奪われることがなくなるからです。こうして生み出された余剰リソースを使い「最小限の人数でも売上拡大を目指せる仕組み」を整えていくことをおすすめします。余剰リソースをそのままカットするのではなく、新たな目的のために使いこなすのです。

わざわざ成功するかもわからない施策に人手を投ずるより、既存事業の補強に回すべきでは?と考えるかもしれません。しかし、既存事業の補強は、未知の脅威に対応しにくく、変化の激しい時代の処方箋としては心許ないのです。

コロナ禍が終息したあとは、新しい生活様式や概念が一般化し、大小の変化が起こると予想されます。また、変化は連続的で予測しにくいものになると考えられます。こうした状況は新たな需要を喚起するだけでなく、古い需要を縮小させるものです。当然のことながら、今までうまくいっていた事業が突然、衰退の憂き目にあう可能性もあるわけです。連続的で、いつどこから発生するかわからないリスクに対し、既存事業の補強のみで対応することは難しいでしょう。何よりも、リスク対策は「分散化」が基本です。つまり、既存事業以外にも収益の柱を創ることで、総合的なリスクを低減させなくてはなりません。したがって、業務廃棄によって得られたリソースは、できるだけ新たな仕組みの創出に投下していくべきなのです。
新たな仕組みを作り出して、売上増大

「探索」と「深化」への注力

ただし、「全社を挙げてイノベーションに乗り出す」という極端な行為はおすすめしません。大切なのは「新規事業の開拓」と「既存事業の強化」のバランスです。

これまでも、大規模な社会変化の影響を受けて市場が衰退した例はいくつもあります。しかし、いつの時代も変化の荒波を乗り越え、なおかつ新たな成長を遂げる企業が後を絶ちません。こうした企業は、既存事業の補強を行って競争に備えながら、新規事業の創出によって社会変化を乗りこなしてきたのです。「両利きの経営」の中でも示されているように、この2つは企業が生き残り、成長するための両輪です。

すでに持っている技術、実績のあるビジネスモデルをさらに深堀りして「深化」させ、全く別の分野への「探索」にも着手していく。このような両輪を動かすためには、当然ながら人的リソースの確保が必要であり、そのための業務廃棄でありRPAなのです。
「探索」と「深化」への注力

バーチャル経営におけるRPAの活用方法

バーチャル経営では、業務廃棄をスムーズに進めるためのRPA活用として、以下を提唱しています。

「タスク」ベースではなく「プロセス」ベースで考える

単純作業を自動化するのではなく、複数のタスクが連動した「業務プロセス」全体として自動化を進めていきましょう。業務プロセスを丸ごと自動化できれば、自動化後の調整などに悩まされることなく、体系的で整合性のとれた業務廃棄が進みます。業務プロセス単位での自動化が進めば、究極的には「ポジション」や「チーム」単位で余剰リソースが確保でき、新規事業の開拓へと投ずることができます。

「シナリオ作成」「運用体制構築」「人材育成」の3本柱

業務プロセス単位での自動化を進めるために、「シナリオ作成」「運用体制構築」「人材育成」を柱としたRPA導入・運用を進めていきましょう。ただし、これらはいずれも相応のノウハウと専門知識を必要とするものばかりです。百歩譲ってシナリオは社内で作成できたとしても、運用体制構築と人材育成は思うように進まないものです。その証拠に、「RPAを契約したが、ほとんど活用できていない」という企業が後を絶ちません。これは運用体制と人材育成が進んでいないからです。実績を持つ企業の支援を受けつつ、徐々にノウハウを蓄積し、最終的には運用の内製化を目指していきましょう。

ベンチャーネットでも、RPA活用の3本柱「シナリオ作成」「運用体制構築」「人材育成」をサポートする「WinActor丸投げサービス」を提供しています。もしRPA運用でお悩みなら、お気軽にご相談ください。
バーチャル経営におけるRPAの活用方法

まとめ

本稿では、RPAによる業務廃棄の重要性や目的について紹介してきました。「仕事を棄てる」ことは「人手の創出」であり「機会の創出」でもあります。人間の呼吸のように、意図的に棄てなければ、新しいものは入ってこないのです。人手の確保に動く前に、まずは効率よく仕事を棄てることを考えてみてください。次回は、バーチャル経営流「人材調達」について解説していきます。

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この記事を書いた人

持田 卓臣のアバター 持田 卓臣 株式会社ベンチャーネット代表取締役

株式会社ベンチャーネット 代表取締役
2005年に株式会社ベンチャーネットを設立後、SEOをはじめとするデジタルマーケティング領域のコンサルティングサービスを展開
広告・SNS・ウェブ・MA・SFAと一気通貫で支援を行っています
著書に『普通のサラリーマンでもすごいチームと始められる レバレッジ起業 「バーチャル社員」があなたを救う』(KADOKAWA、2020年)

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