制度の金額・補助率・締切は、公募回ごとに見直されます。本記事は中小企業庁および各補助金の公式サイトの公開情報をもとに整理していますが、申請の際は必ず各公式サイトと最新の公募要領をご確認ください。この記事では、変わりやすい締切や回次はあえて載せていません。
中小企業がAI・DXに使える主な補助金は、デジタル化・AI導入補助金/中小企業省力化投資補助金/新事業進出・ものづくり商業サービス補助金/小規模事業者持続化補助金/自治体の補助金の5つです。
そして2026年度は、制度の名前が2つ変わりました。去年の知識のまま探すと見つかりません。まずそこから整理します。
2026年度に変わったこと——制度名の新旧対照
| これまでの名前 | 2026年度の名前 | 変更の中身 |
|---|---|---|
| IT導入補助金 | デジタル化・AI導入補助金 | 令和7年度補正予算事業から名称変更。AI活用をより前面に |
| ものづくり補助金 新事業進出補助金 | 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 | 2つの制度が統合。2026年6月29日に第1回公募要領が公開されました |
(出典:中小企業庁「デジタル化・AI導入補助金2026の公募要領を公開しました」2026年3月10日/同「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の第1回公募要領を公開しました」2026年6月30日)
「IT導入補助金」「ものづくり補助金」で検索している方は、新しい名前で探し直してください。旧名称のまま古い情報を読んでいると、要件を読み違えます。
なお、統合された新制度について、中小企業庁は旧2制度とは異なる補助金であると位置づけています。旧制度の要件をそのまま当てはめないよう注意してください。
「うちは、どの補助金が使えるのか」——種類が多くて、選べない
AIやデジタルの仕組みを入れて、業務を少し楽にしたい。人手が足りない分を、機械やソフトで補いたい。そう考える中小企業の経営者は、年々増えています。
そのとき、多くの方が同じ壁にぶつかります。「補助金を使えるらしいが、種類が多すぎて、どれが自社に合うのか分からない」という壁です。
補助金選びで迷う理由は、大きく二つあります。
一つは、制度の数が多く、毎年のように中身が変わること。枠や金額、要件が公募ごとに更新されるため、「一度調べたら終わり」になりません。今回の名称変更と統合が、まさにその例です。
もう一つは、多くの方が「制度から」入ってしまうことです。「この補助金が使えそうだから、何か買おう」という順番で考えると、計画に無理が出ます。
おすすめは、順番を逆にすることです。
- まず「自社で何をしたいか」を決める(例:受発注をデジタル化したい/人手のかかる作業を機械に任せたい)
- そのうえで「その目的に合う制度はどれか」を逆引きで探す
補助金は、あくまで手段です。目的が先にあって、それを後押しする道具として制度を選ぶ。この順番にするだけで、選択肢はぐっと絞り込めます。そして審査でも、目的と投資が結びついた計画のほうが評価されやすくなります。
目的別・使い分けマップ
「やりたいこと」から逆引きできるよう、主要な5つの制度を整理しました。金額は制度の性格を示す目安です。細かい要件と最新の上限額は、公募要領でご確認ください。
図1 目的(やりたいこと)から、合いやすい補助金を逆引きする早見マップ。金額は制度の性格を示す目安で、実際の条件は公募要領で確認してください。
自治体の補助金は、見落とされがちです。国の制度ばかり調べて、地元の支援を知らないまま終わる会社が少なくありません。所在地の自治体と、商工会・商工会議所には一度あたってみてください。
申請の勘どころと、よくあるつまずき
補助金は、申請すれば必ず通るものではありません。ここでは、つまずきやすいポイントを先にお伝えします。
図2 つまずきやすい5つ。2番目が、もっとも多い失敗です。
1. 「補助金ありき」「設備ありき」で計画を組まない。「補助金が出るから、とりあえず何か買う」という計画は、審査で評価されにくくなります。生産性の向上や賃上げといった目的と、その投資がどうつながるか。そこが説明できる計画ほど、採択に近づきます。
2. 交付決定の前に発注しない。多くの制度に共通する、最も多い失敗です。「交付決定(採択の正式通知)」を受ける前に発注・契約・支払いをすると、その費用は補助の対象外になります。先走らず、通知を待ってから動いてください。
急いでいる会社ほど、ここで失敗します。「早く始めたい」という気持ちは分かりますが、数か月早く動いたために補助が全額受けられなくなる、という事態は避けたいところです。
3. 事前の手続きに時間がかかる。申請には、事業者向けの共通ID「gBizID(ジービズアイディー)」の取得や、セキュリティ対策の宣言などが必要な場合があります。発行に日数がかかることもあるため、早めの準備が安全です。
4. 採択後の「報告」と「返還リスク」を見落とさない。近年は、補助を受けた後に賃上げや事業計画の実行状況を報告する仕組みが強まっています。要件を満たせないと、補助金の返還を求められることもあります。「もらって終わり」ではない点を、計画の段階で織り込んでおきます。
5. 締切直前は混み合う。多くの制度は通年で複数回の締切があります。直前は申請が集中しがちです。一度不採択でも、計画を見直して次の回に再挑戦できる制度も多いので、早めに動くほど選択肢が広がります。
制度によっては、支援事業者との組み合わせが要る
もう一つ、知っておくと動きが速くなることがあります。
制度によっては、登録された支援事業者と組んで申請する形になっています。デジタル化・AI導入補助金がその代表で、事務局に登録されたIT導入支援事業者と一緒に申請します。導入するツールも、事務局に登録されたものが対象です。
つまり、使いたいツールや支援会社が制度に登録されているかどうかが、そもそもの前提になります。「良いツールを見つけたが、対象外だった」ということが起こり得ます。
小規模事業者持続化補助金では、商工会・商工会議所の支援を受けて計画をつくる形が基本です。制度ごとに、誰と組むかが違います。
導入したいものが決まっているなら、先に「その制度で対象になるか」を確かめる。この一手間で、後戻りが減ります。
よくある質問
Q. IT導入補助金は、なくなったのですか?
A. なくなったのではなく、名称が変わりました。2026年度は「デジタル化・AI導入補助金」です。基本のしくみは引き継がれていますが、要件は公募要領で確認してください。
Q. ものづくり補助金は、どうなりましたか?
A. 新事業進出補助金と統合され、「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」になりました。2026年6月29日に第1回公募要領が公開されています。中小企業庁は、旧2制度とは異なる補助金であると位置づけているため、旧制度の要件をそのまま当てはめないでください。
Q. 締切はいつですか?
A. 制度によって異なり、変更もあるため、この記事には載せていません。各制度の公式サイトで最新の公募スケジュールをご確認ください。主要な補助金は通年で複数回の締切が設けられています。
Q. 複数の補助金を併用できますか?
A. 同じ経費を二つの補助金で重ねて申請すること(重複計上)はできません。ただし、目的の異なる取り組みであれば、組み合わせて活用できる場合があります。全体の資金計画の中で、どの取り組みにどの制度を充てるかを整理しておくと、無理なく併用できます。
Q. うちは「中小企業」として対象になりますか?
A. 制度ごとに、資本金や従業員数の基準が定められています。業種によって基準が異なり、個人事業主が対象の制度も多くあります。自社が当てはまるかは、各制度の公募要領で確認できます。
Q. AIツールなら何でも対象ですか?
A. 対象になるのは、事務局に登録されたツールに限られます。デジタル化・AI導入補助金では、公式サイトのツール検索で、導入したいツールが対象かどうかを事前に確認できます。
Q. 自治体の補助金も探すべきですか?
A. ぜひ探してください。国の制度と並行して使える場合があり、要件が緩やかなこともあります。所在地の自治体、商工会・商工会議所に問い合わせるのが早道です。
まとめ——補助金は「手段」。何を導入し、どう経営を変えるか
2026年度は、制度の名前が2つ変わりました。「デジタル化・AI導入補助金」と「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」。まずここを押さえておかないと、探すところから間違えます。
そして種類が多く、毎年姿を変えます。だからこそ大切なのは、「どの制度を取るか」より先に、自社の経営を、何によって、どう変えたいかを決めることです。
補助金は、その変化を後押しする手段にすぎません。受発注や在庫、原価の流れをデジタルでつなぎ、数字が見えるようにする。人手のかかる作業を機械やAIに任せ、限られた人の手を、より価値の高い仕事に回す。そうした「経営をどう変えるか」が先にあって、制度はそれを支えます。
ベンチャーネットは、中小・中堅企業向けにFDE型の伴走支援を行う会社です。数字の基盤(NetSuiteまたはOdoo)と言葉の基盤(Notion)の上でAIを動かし、業務と経営を組み替える。これをAX(AIトランスフォーメーション=AIを前提に業務と経営を組み替えること)と呼んでいます。
ただ、補助金には、この記事では書ききれない難しさがあります。制度に合わせて計画を書くと、通りやすいが、使われない仕組みができることです。
審査に通る書き方には、ある程度の型があります。その型に寄せていくと、計画書はきれいになります。ところが、型に寄せた計画と、自社が本当にやりたかったことは、少しずつずれていく。採択されて、機械やソフトは入った。でも現場では使われていない。この結末は、実際によくあります。
通る計画と、効く計画は、同じではありません。両方を満たすには、自社の目的を握りながら制度の型に翻訳する作業が要ります。そこは、制度に詳しいだけでも、自社を知っているだけでも足りない部分です。
「補助金を使って何をすべきか、そこから相談したい」という段階で構いません。売り込みではなく、まず壁打ちから。
次に読むなら
「AI導入の費用感を知りたい」
→ AIに、毎月いくらかかる?——ツールの乱立を整理し、コストを見合わせる
「そもそも何から始めるか決めたい」
→ FDE伴走の3つの典型パターン——経理から、営業から、基幹から
「ERP導入の費用と段取りを知りたい」
→ ERP導入の費用はいくら?相場・期間・失敗しない段取りを中小企業向けに解説
「AI導入を急ぐべきか迷っている」
→ AIの自動化、まだ急がなくていい──「得をする条件」と、手放してはいけない理解
「導入後にどう定着させるか知りたい」
→ FDE型伴走の進め方——最初の90日で何が起きるか


