ハイパーオートメーションの概要と課題「経営を徹底的に自動化していく仕組みために」

テクノロジーによる自動化・省人化は、業界業種を問わず近年のビジネストレンドの中心です。ここ5年程を振り返ると、RPAやAI-OCRなどの登場により、細かな単位では自動化・省人化が進んでいると言えるでしょう。一方、2019年10月にガートナー社が発表した「ハイパーオートメーション」は、こうした個別の業務自動化・省人化を覆す概念です。

ハイパーオートメーションが実現できれば、現代企業が抱える複数の課題は、一挙に解決されるかもしれません。ただし、そのためにはいくつかの課題が存在します。ここでは、ハイパーオートメーションの概念や課題、その解決方法について解説します。

目次

ハイパーオートメーションとは何か?

ハイパーオートメーションとは、「複数の先端技術を組み合わせて、企業内の複数業務を横断的に自動化する」という考え方です。ここで言う先端技術には、「AIや機械学習」「パッケージソリューション」「RPA」「iBPMS(インテリジェントビジネスプロセスマネジメントシステム)」などが含まれます。

ハイパーオートメーションでは、自動化に向けて複数のステップ (発見、分析、設計、自動化、測定、モニタリング、再評価)を理解しつつ、RPAによる単純な業務の自動化とは異なるアプローチを行います。一般的なRPAは、手作業の自動化を中心に進めるため、「対象業務の分析」「設計」「自動化の実装」などが主な手順です。

一方、ハイパーオートメーションでは、「自動化が可能なポイントの発見」や「導入後の効果測定」「再評価」までを対象に含めています。

ハイパーオートメーションのメリット、効能とは?

ハイパーオートメーションの実現では、次のようなメリット・効能が期待できます。

自動化対象範囲の設定に柔軟性が生まれる

ハイパーオートメーションに使われる技術の大半は、既に多くの企業で自動化・省人化ソリューションとして使用されています。しかし、対象範囲に著しい制限があったり、業務間の連携が難しかったりという課題がありました。ハイパーオートメーションは、従来のように単一の技術・ソリューションによる自動化ではないため、対象とする業務の範囲を柔軟に設定することができます。

企業内DX(デジタルトランスフォーメーション)が促進される

これまで、RPAやAIといった先端技術を活用するためには、専門知識を持ったIT人材を確保するか、既存社員への専門的なトレーニングが必須でした。しかし、ハイパーオートメーションが実現されれば、非IT人材であってもトレーニング無しでさまざまな先端技術の恩恵を受けられるようになります。これにより、DX(デジタルトランスフォーメーション)が進み、さらなる自動化・業務効率化を後押しする土壌が出来上がるのです。

優れた組織運営を精緻に再現できる

ハイパーオートメーションは、複数の先端技術を柔軟に組み合わせながら、組織形態や業務プロセスを精緻に再現できます。つまり、仮想空間上に「バーチャル組織」を作り出すことができるわけです。これを応用して、優秀な企業の組織形態や業務プロセスを仮想空間上に再現し、実際の経営に落とし込むこともできます。

ハイパーオートメーション実現に必要なもの

このように新時代の経営戦略ともいえるハイパーオートメーションですが、その実現にはいくつかの課題があります。

ハイパーオートメーションにおける課題

事前準備にかかるコスト
アナログかつ縦割りな組織構造の場合、部門や部署が異なる業務同士を連結させにくいため、全社的な業務プロセス改革が必要になります。また、連携される業務データが一元化されていない状態では、データ定義や運用方法から考案しなければならず、コスト・時間・人手が嵩みがちです。

システム、ツール間連携に要するコスト
企業向けパッケージソリューションの大半は、ERPならば基幹業務、CRMは顧客管理、MAはマーケティングといった具合に、「対象領域」が限定されています。これら領域が異なる複数のソリューションを組み合わせ、組織形態に合わせたカスタマイズを施すには、相応の時間やコストを要します。

APIによるシームレスな接続で解決

こうした課題を解決するためには、「API」を活用したシームレスかつ低コストな接続がおすすめです。各技術をAPIで相互接続し、既存の組織形態や目標とする業務プロセスを柔軟かつ精緻に再現するわけです。そこで、API接続を前提として、ハイパーオートメーションの構築に有用なソリューション・ツールの具体例を紹介します。

APIによるハイパーオートメーション化に役立つソリューション・ツール

NETSUITE

NETSUITEはクラウドERPとして知られるソリューションですが、実際にはCRMおよびSFAの機能も内包しています。つまり、NETSUITE単体で「購買・販売・製造・人事給与・会計・営業・マーケティング・顧客管理」といった、企業内における主要な業務の大半をカバーできるわけです。また、標準搭載されているWebサービスAPIを活用し、外部アプリケーションとの連携も可能です。

NETSUITEはハイパーオートメーションの「核」となり得るソリューションであり、小規模な企業であればNETSUITEのみで、ある程度のハイパーオートメーション化が実現できてしまいます。

WinActor

WinActorは国内では300社以上への提供実績を有する、国内製RPAソリューションの代表格です。手作業の大半を、画像認識・HTMLタグ座標によるターゲット識別・VBAでの自動化スクリプト作成といった機能で自動化できることが強みです。近年は管理ロボ(WinDirector)のAPI連携機能が強化され、業務シナリオの自動化が可能になっています。

Salesforce

SFA世界最大手として知られているSalesforceですが、その真価は複数の業務アプリを統合したプラットフォームの提供にあります。自社の組織形態に合わせて最適なエディションを選択できることから、ハイパーオートメーションにおける「バーチャル組織」の構築が促進されます。

Eloqua

自動化に強みをもつMAツールです。オンライン、オフライン双方の顧客データを行動データと紐づけて管理し、他システムとの連携させるため、マーケティングと営業の連結が容易になるでしょう。大手CRMとのAPI連携機能を標準搭載しているため、ハイパーオートメーション化にも適しています。

ハイパーオートメーションで問われる「選定眼」

ハイパーオートメーションを実現できれば、企業経営は漸進的に効率化されていくでしょう。ハイパーオートメーションの下地としては、組織系の「あるべき姿」の設定や、「柔軟かつフレキシブルな連携を行う環境づくり」が必要です。つまり、「モデルとなる組織・業務プロセス」を考案しつつ、API接続をベースとして複数のソリューションの連動を進めていかなくてはなりません。

より迅速にハイパーオートメーションの恩恵を享受したい場合は、コーポレートトランスフォーメーションとよばれる「組織モデルの提案・ソリューション選定」までをワンストップで提供するサービスの活用も視野にいれていきましょう。ハイパーオートメーションの実装後に、次のフェーズとして仮想現実であるバーチャル空間も利用したオートメーション「バーチャルオートメーション」の時代が来ると考えています。

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この記事を書いた人

持田 卓臣のアバター 持田 卓臣 株式会社ベンチャーネット代表取締役

株式会社ベンチャーネット 代表取締役
2005年に株式会社ベンチャーネットを設立後、SEOをはじめとするデジタルマーケティング領域のコンサルティングサービスを展開
広告・SNS・ウェブ・MA・SFAと一気通貫で支援を行っています
著書に『普通のサラリーマンでもすごいチームと始められる レバレッジ起業 「バーチャル社員」があなたを救う』(KADOKAWA、2020年)

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