付加価値を提供する方法とは?営業・コンサルティングで押さえるべきポイント

顧客満足度を高め、競争優位を築くためには、単に製品やサービスを提供するだけでなく、顧客のニーズを深く理解し、その期待を超える価値を提供することが重要です。本記事では、営業やコンサルティングにおける付加価値の提供方法について詳しく解説します。

顧客の課題を特定し、カスタマイズされたソリューションを提案する方法や、最新の業界知識や技術を活用して信頼関係を強化するポイントについても触れます。

目次

付加価値とは

付加価値とは、基本的な製品やサービスに加えて提供される、顧客にとって有益な要素や特徴のことを指します。これにより、顧客満足度を向上させ、競争優位性を確保することが可能になります。

付加価値の定義は、会計的な定義と経営的な定義に分けられます。それぞれ詳しく見ていきましょう。

会計的な定義

まず付加価値の会計的な定義からです。会計的な意味での付加価値とは、以下の合算を指します。

  • 営業純益・役員給与および賞与
  • 従業員給与および賞与
  • 福利厚生費
  • 支払利息
  • 動産および不動産賃借料
  • 租税公課

また、別の視点からは、次のような式でも表せます

売上高-外部購入価額

ちなみに外部購入価額は、いわゆる「人件費以外に、商売をするためにかかったコスト全般」ですね。直接・間接材料費+買入部品費+外注加工費+運賃や、仕入額などが該当します。

上の式では、売り上げからコストを差し引いているので、ざっくり言うと粗利になります。ということで、会計的な意味での付加価値とは「利益」に非常に近い存在なのです。

経営的な定義

経営の現場でよく言われる「付加価値」は、会計的な定義を述べているものではありません。

経営的な意味での付加価値は「顧客のために”何かをする”という明確な意思のもとで提供される価値」です。つまり、付加価値とは「意識して取り組むことで生み出される価値」なのです。

この説明をすると、「差別化のことか」と勘違いされる方がいますが、差別化と付加価値は違います。差別化は「競合との違い」「他社でやっていないこと」を創出することで、差別化=付加価値になるとは限りません。

例えば、「特定の顧客のためだけに提供するオプション契約」があるとしましょう。この契約が本当に顧客のビジネスに貢献するものであれば、明確な付加価値です。しかし、同様のオプション契約を競合他社が提供しているとすれば、少なくとも独自性はありません。

このとき、付加価値を伝わりやすくする材料として「特別な値引き」や「ほかにはない機能」などを付与します。これが差別化です。付加価値の提供と差別化はセットにすると非常に訴求力が強くなります。

付加価値の種類・例

以下に具体的な例を挙げながら、付加価値の種類について解説します。

1.製品やサービスのカスタマイズ

顧客のニーズに合わせた製品やサービスのカスタマイズは、付加価値の一例です。例えば、自動車メーカーが提供するカスタムオーダープログラムでは、顧客が車の内装や外装のカラー、オプション機能を自由に選択できます。これにより、顧客は自分だけの特別な車を手に入れることができ、高い満足度を得られます。

2.高品質なカスタマーサービス

優れたカスタマーサービスも重要な付加価値の一つです。例えば、AppleのGenius Barでは、専門知識を持つスタッフが直接顧客と対話し、製品の使い方やトラブルシューティングを支援します。これにより、顧客は製品に対する信頼感を持ち、ブランドロイヤルティが高まります。

3.知識と専門性の提供

コンサルティング業界では、専門的な知識や洞察を提供することが付加価値となります。例えば、マッキンゼーやBCGといった大手コンサルティング会社は、顧客企業の経営課題に対して高度な分析と戦略的なアドバイスを提供します。これにより、顧客は市場競争力を強化し、ビジネスの成長を加速させることができます。

4.顧客教育とサポート

顧客教育プログラムやサポートも付加価値の一環です。ソフトウェア企業が提供するウェビナーやトレーニングセッションは、顧客が製品を最大限に活用できるようにサポートします。例えば、Salesforceはオンラインでのトレーニングやサポートコミュニティを提供し、顧客が製品を効果的に使用するための知識を身につけられるよう支援しています。

5.社会的責任と持続可能性

企業が社会的責任や持続可能性に配慮することも、現代では重要な付加価値となります。例えば、環境保護に積極的に取り組む姿勢を示し、製品の素材や製造過程での環境負荷を最小限に抑える努力をすることで、環境意識の高い消費者からの支持を得られます。

「付加価値」は営業で生み出されない

付加価値は営業だけで生み出されるものではありません。未来の付加価値をもたらす「影のニーズ」を理解しておくことが重要です。影のニーズとは、クライアントが認識しているが、何らかの理由でこちらに知らされないニーズを指します。

例えば、社内秘であるために外部の人間には言えないことや、予算や稟議の都合から現時点でははっきり言えないことが該当します。これらは潜在ニーズとは異なり、クライアントが認識していて、いつかは解決すべきと考えている事柄です。

従来は、営業がこうした影のニーズを引き出す役割を担ってきました。しかし、近年では営業だけでこれを引き出すことが難しくなっています。ここ数年で「プッシュ型営業」が徐々に衰退し、「プル型営業」が好まれるようになっています。

プル型営業は、プッシュ型営業のようにクライアントの懐に強引に飛び込む手法を取れないため、影のニーズを獲得する前に取引が成立してしまうことが多いです。その結果、顕在ニーズだけを満たして次のクライアントを探すスタイルになりがちです。これはプル型営業の弱点でもあります。

したがって、営業だけでは影のニーズ、つまり未来の付加価値の源泉を得ることが難しいのです。影のニーズを理解し、適切に対応するためには、営業だけでなく、マーケティングやカスタマーサポートなど、他の部門との連携が必要です。これにより、クライアントとの信頼関係を築き、長期的なビジネス関係を構築することが可能になります。

情報価値を届けることがニーズを引き出す

影のニーズを引き出すためには、クライアントの信頼を得ることが不可欠です。信頼を得るための一般的な方法としては、ヒアリングを重ね、業界知識を駆使して提案し、クライアントのニーズを満たし続けるといった行動の積み重ねが挙げられます。

しかし、これだけでは不十分かもしれません。もっと効果的に影のニーズに近づく方法があります。それは、クライアントに対して「成功事例を届ける」ことです。

現代ではインターネットを通じてさまざまな情報が容易に手に入ります。BtoB領域でも例外ではなく、以前なら業界の専門家しか知らなかったような知識も、わずかな時間で得ることができます。このため、知識そのものの付加価値が低下しています。単に情報を提供するだけでは、クライアントの信頼を高めることは難しいでしょう。

営業≠コンサルティングセールス!でニーズを探り当てる

「コンサルティングセールス」で影のニーズを掘り当てるという考え方があります。

営業は必要な仕事ですが、高利益の知的創造企業を目指すうえでは、それほど重要な職種とは言い切れません。なぜなら、従来の営業がやっている「クライアントのニーズを引き出し、付加価値につなげる」という行為は、コンサルティングセールスで賄えるからです。

コンサルティングセールスの目的は、「売ること」ではなく「クライアントが最適な意思決定を行えるようにサポートすること」です。もちろん、自社製品やサービスを購入していただければそれに越したことはありません。しかし、これまで何度も述べたように「影のニーズ」を引き出すためには信頼を勝ち取る必要があり、信頼は単に自社のものを売ることだけでは得られないのです。

影のニーズを引き出すためには、「この人になら話しても大丈夫かな」と感じてもらえるだけの信頼が必要です。この信頼を得るために、プロービングやサポーティングというテクニックを用います。

付加価値を生み出すコンサルティングセールスのテクニック

付加価値を生み出すコンサルティングセールスでは、以下2つのテクニックを用います。

プロービング

プロービングとは、精密なヒアリングのことです。クライアントの顕在ニーズを完全かつ正確に理解することを前提に、そのニーズの背景や理由、機能性、価格などの詳細にまで踏み込むことを目的としています。

顕在ニーズを把握するだけなら誰でもできますが、プロービングではさらに深く掘り下げます。クライアントの「機能」「価格」「規模」「背景」などを精密に理解するためには、市場や商品についての豊富な知識が必要です。これにより、クライアントの本質的な問題を見つけ出し、最適な解決策を提供することができます​ ​。

成功事例や豊富な知識を持っていると、クライアントは「もっと聞かせてほしい」と感じるようになります。この反応が見られると、ニーズの探索が容易になり、影のニーズに近づくことが可能です。具体的には、次のようなステップで進めます。

STEP
顕在ニーズの確認

クライアントが明確にしているニーズをまず理解します。例えば、「新しいERPシステムを導入したい」という具体的な要求です。

STEP
詳細情報の掘り下げ

そのニーズに関連する詳細を尋ねます。「なぜ新しいシステムが必要なのか」「現在のシステムのどこに不満があるのか」「予算はどれくらいか」などを確認します。

STEP
背景や理由の理解

クライアントのニーズが生じた背景や理由を探ります。「最近の業務拡大により現行システムが対応できなくなっている」といった具体的な背景です。

STEP
成功事例の紹介

同様の課題を解決した他の企業の成功事例を紹介します。これにより、クライアントは「自分たちも同じように成功できる」と感じ、さらなる詳細を共有してくれるようになります。

プロービングを通じて得られた詳細な情報は、クライアントの影のニーズを引き出すための重要な手がかりとなります。これにより、より深いレベルでクライアントの問題を解決し、強固な信頼関係を築くことができます。

サポーティング

サポーティングとは、クライアントにとっての「利点」や「実利」を明確に伝えるテクニックです。多くの場合、商品説明では「特徴」を語ることが多く、これではクライアントにとっての具体的な価値が伝わりにくいです。特徴紹介は製品やサービスそのものに焦点を当てていますが、サポーティングはクライアントがどのように変化するかを示すことに重点を置いています。

例えば、以下のようなポイントを定量的に示すことが重要です。

  • 時間の節約:製品を導入することで何時間の無駄が削減できるか。
  • 効率の向上:仕入れがどれだけ早くなるか。
  • 在庫管理の改善:在庫調整がどれくらい便利になるか。

このように、クライアントの業務にどれだけの実利をもたらすかを具体的に示すことが、サポーティングの目的です​ 。

サポーティングを効果的に行うためには、商品理解とクライアントの業務理解が不可欠です。まず、クライアントの課題やニーズを詳細に把握するためのプロービングをしっかりと行います。その上で、製品やサービスがどのようにクライアントの問題を解決し、利益をもたらすかを具体的に伝えます。

例えば、ERPシステムの導入を検討しているクライアントに対して、「このシステムを導入することで、月次決算の時間が50%短縮され、リアルタイムで財務状況を把握できるようになります」といった具体的な利点を伝えることが効果的です。

コンサルティングセールスの利点

コンサルティングセールスでは、豊富な商品知識や成功事例をベースにしながら、徹底的にヒアリングを行います。プロービングで影のニーズに近づき、サポーティングで「実利」をしっかり描くことで、クライアントの信頼を勝ち取るわけです。

ここでコンサルティングセールスが持つ最大のメリットが発揮されます。それは「競合がいなくなる」ということ。

どんな製品・サービスでも、自社だけを見て判断するクライアントはいません。BtoBのように金額が大きい領域では特にそうです。必ず相見積もりの場に引き出されます。

しかしコンサルティングセールスが成立すると、「信頼」という付加価値が既に発生しているため、価格や機能性で競合する他社よりも一歩抜き出ることができるわけです。

この状況を作り出すことがコンサルティングセールスの醍醐味であり、付加価値創出への第一歩なのです。

まとめ

「付加価値」を生み出す仕組みとしてのコンサルティングセールスを紹介しました。私たちが一般的に認識している「付加価値」の多くは、競争に巻き込まれてコモディティ化しがちです。しかし、これを回避する方法として”ニーズ探索型のコンサルティングセールス”があると考えています。コンスタントに付加価値を生み出し、提供できる仕組みが整えば、企業は肥大化せずに成長できるはずです。

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この記事を書いた人

持田 卓臣のアバター 持田 卓臣 株式会社ベンチャーネット代表取締役

株式会社ベンチャーネット 代表取締役
2005年に株式会社ベンチャーネットを設立後、SEOをはじめとするデジタルマーケティング領域のコンサルティングサービスを展開
広告・SNS・ウェブ・MA・SFAと一気通貫で支援を行っています
著書に『普通のサラリーマンでもすごいチームと始められる レバレッジ起業 「バーチャル社員」があなたを救う』(KADOKAWA、2020年)

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