バーチャル経営と生成AI~中小企業を強化する生成AI一覧

前回の記事では、中小企業の進化をささえる生成AIの活用方法について述べました。今回はもう一歩踏み込み、2023年時点で経営の効率化につながる生成AIの具体的な例を紹介します。ひとつひとつは地味で小さなツールですが、しっかり使いこなすことで確実に成果がでるものばかりです。

目次

生成AIはVX・DXのきっかけに成り得る

一般的に企業の成長は規模や売上の拡大を指しますが、これらは一定の条件を満たさなくては達成しえないものです。そこでバーチャル経営では、価値創出のタイムパフォーマンスを上げる「バーチャルトランスフォーメーション」による進化を推奨しています。

バーチャルトランスフォーメーション(以下VX)とは、こちらの記事でも解説しているように、現実世界と仮想世界の融合によって新しい付加価値を生み出すための組織へ進化することです。

進化と言っても大げさなものではなく、まずは業務のタイムパフォーマンス向上を狙って、デジタルツールを組み込んでいけば良いと思います。

特に生成AIは、バーチャルトランスフォーメーションの中核に成り得るツールです。生成AIは、業務プロセスはそのままに、タスク単位で創造性のあるアウトプットを瞬時に生み出すため、余計な課題や調整が発生しにくいという強みがあります。

中小企業のデジタル進化に役立つ生成AI一覧

では、実際にVXやDXのきっかけになりうるような生成AIの例を紹介します。

会議要約・録画:tldv.io

tldvは、GPT3を内蔵した会議アシスタントツールです。

tldvができることはさまざまですが、主な機能としては「会議の記録」「発話者認識」「自動翻訳」「議事録の記述」が挙げられます。ZoomやGoogle meetの中にtldvを招待するだけで素早く会議を録音するだけではなく、20以上の言語を翻訳したり、発話者を認識しながらサマリーを自動生成することができます。

GPT3による高品質な要約を自動生成できることが売りのようですね。ウェブ会議と連動して自動文字起こしや要約の作成を行ってくれるAIと考えれば良いでしょう。

tldvを活用すれば、打ち合わせのたびに発生する議事録の作成や、情報共有のための資料作りを自動化できるでしょう。この2つの業務は、利益に直結するものではないですが、重要度は極めて高いです。自動化によってコア業務へ投下できるリソースを増やせるのではないでしょうか。

参考:

https://tldv.io/

メール作成:addy-ai.com

addy-aiは、ChatGPTによって「メールの自動作成」を可能とした生成AIです。

Chromeの拡張機能として提供され、ブラウザ上でメールの自動作成機能を利用できます。口調や返信の間隔などを調整可能なほか、返信元メールを参照しながらの文章生成も利用できます。

実際に使用する場合は、拡張機能としてブラウザにインストールしたあと、設定で口調(Default email writing tone)を指定します。また、返信間隔(Response length)も調整できるようです。

Gmail上で実際にメールを作成するときの画面です。新規にメールを作成する場合は、宛先上部の「Write」に大まかな支持を8文字以上入力することで、文章が自動提案されます。日本語には標準対応していませんが、上の画像のように日本語の指示でもそれなりに意味のある文章が生成されました。

また、Chrome系ブラウザの拡張機能からAddy-AIを起動し、メールのマークをクリックすると返信元の内容を参照しながら返信用の文面を作成する画面が起動します。こちらも、返信元メールを張り付けるか、新規メールの開始8文字程度を入力するとメールが自動生成される仕組みです。

定型文はもちろんのこと、日常業務の報告や既存顧客への連絡などは、全てaddy-aiでカバーできるでしょう。月9.99ドルの有料プランではよりパーソナライズが強化されるようですね。ちなみに日本語でのアウトプットはできませんが、インプットは可能なので、文面の作成+翻訳が自動で行われることになります。海外業者とのメールのやり取りではかなりの時短効果を発揮しそうです。

参考:

https://addy-ai.com/

動画生成:app.elai.io

テンプレートとGPT3を活用し、動画を自動生成するAIです。

任意のワードを入力(~に関する広告など)し、テンプレートを選択してCreateを押すと動画が生成されます。

非常に簡単なステップで動画が生成されるので、キャンペーン動画の作成などに活用できそうです。

ちなみに、国籍や性別などによる音声の選択も可能です。

参考:

https://app.elai.io/

スライド作成:slidesai.io

テキストベースでスライド資料を自動作成するAIです。

テキスト入力と簡単な見た目の指定で、スライドを自動生成します。テキストは直接入力か貼り付けで行います。

テキストの入力が完了した後は、スライドの大まかなデザインを指定します。プリセット以外に独自のカスタマイズもできるようですね。

以上の2ステップでスライド資料が生成されるため、ホワイトペーパーやDL資料の作成はかなり効率化されるでしょう。単純にパワーポイントによるテキストや図のレイアウトにかかる時間が短縮されます。

ちなみに、月あたり3プレゼンテーション(1プレゼンあたり2500文字)まで無料で、有料プランではドキュメントのアップロードにも対応するようです。

参考:

https://www.slidesai.io/

コード作成:blckbx.ai

Visual Studio用のコード生成AIです。強力なオートコンプリート機能と検索機能を備えています。

オートコンプリート機能はPython、JavaScript、TypeScript、Go、Rubyなどの20 以上のプログラミング言語で使えるため、かなり汎用性が高そうです。エンターを押したタイミングでコードを自動提案するので、「ロジックはある程度組めるが、文法理解が浅い(もしくは忘れた)」などの場合に重宝しそうですね。

参考:

https://marketplace.visualstudio.com/items?itemName=Blackboxapp.blackbox

Youtube要約:YouTube Summary

Chromeの拡張機能として提供される文字起こし+要約生成AIです。動画の文字起こしデータをChatGPTに転送し、要約する仕組みを採用しています。上の画像のように、動画再生時に出現する「Transcript&Summary」というボタンをクリックすると動画の文字起こしデータが瞬時に生成されます。こちらは日本語に完全対応しているので、すぐに使い始められますね。動作も軽く、非常に便利で高機能です。クリックした瞬間に、20分程度の動画のテキストデータが抽出されるのには驚きました。

セミナー動画のテキストコンテンツ化などに役立つほか、オウンドメディア掲載用の素材を作成するといった使い方もできそうです。

参考:

https://glasp.co/youtube-summary

翻訳・要約:Notion AI

翻訳や要約に活用できる生成AIです。文章量の調整や語調、トンマナの指定など細かなカスタマイズが可能なようで、「人間が書いている感」が欲しいときに重宝しそうです。

視覚的に条件を設定できるうえに日本語にも対応しているので、すぐに使い始められそうですね。メールの作成や会議用資料のテキスト作成、プレゼン資料のテキスト作成など幅広く活躍できるでしょう。addy-aiのように自動提案機能があるので、ある程度書いたらAIに任せるという方法も可能です。

参考:

https://www.notion.so/ja-jp/product/ai

関数生成:numerous.ai

ExcelやGoogle Sheetsといったスプレッドシート内でChatGPTを呼び出し、分析や翻訳を提供する生成AIです。

「=AI()」と指定することでChatGPTを呼び出し、カッコ内の指定内容を自動で入力することができます。

また、カウントしたいデータをテキストで説明することで、数式を自動生成することも可能です。

さらに、「関数が何をしているのか」を人間の言葉で説明してくれるため、属人化した業務の分析にも活用できるでしょう。

かなり便利な生成AIなので、スプレッドシートに関する学習自体が不要になる可能性が高いですね。業務アプリとしてExcelを使っていて、関数やシートを継ぎ足しているが、担当者が変わるたびに引き継ぎが大変……といった課題も解決できそうです。

また、スプレッドシートをクラウドツールなどに移行する際の要件定義や基本設計にも役立ちそうです。

参考:

https://numerous.ai/

ブログ生成:ChatGPT×GoogleDocs

こちらは2つのツールを組み合わせて、ブログを量産する手法です。ChatGPT×GoogleDocsの組あわせにより、SEO対策としてのブログ量産を効率化できるかもしれません。ちなみに、
GoogleDocs側をローコード開発ツール(Google Apps Script(GAS)でカスタマイズすることで、高品質なブログ生成も可能になります。GASによるブログ生成は、スクリプトコードとAPIキーが必要ですが、どちらもそれほど難易度が高くないので挑戦してみる価値はありそうです。

まとめ

今回は、経営の効率化に役立つ具体的な生成AIの例を紹介してきました。2023年4月5日、日本経済新聞にて「メタが生成AIを商用化する」というニュースが報じられました。生成AIのビジネス利用は予想以上の速さで進んでおり、今後は確実に経営の世界にも広がっていくと思います。

今回紹介した内容は主に海外で使用されている生成AIであり、日本語に対応していないものもあります。しかし、日本語への変換は翻訳ツールでまかなえてしまうため、いずれもすぐに使い始めることが可能です。メールと資料の作成、Web情報の要約といった「調べる・読む・考える・書く」作業は、大半が自動化できてしまうわけです。つまり、ドキュメンテーションやリサーチにかかる労力の大半を生成AIが担ってくれることになります。生成AIが提示した結果を活用しながら業務を回すようにするだけで、中小企業のデジタル進化は急速に進むかもしれません。

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この記事を書いた人

持田 卓臣のアバター 持田 卓臣 株式会社ベンチャーネット代表取締役

株式会社ベンチャーネット 代表取締役
2005年に株式会社ベンチャーネットを設立後、SEOをはじめとするデジタルマーケティング領域のコンサルティングサービスを展開
広告・SNS・ウェブ・MA・SFAと一気通貫で支援を行っています
著書に『普通のサラリーマンでもすごいチームと始められる レバレッジ起業 「バーチャル社員」があなたを救う』(KADOKAWA、2020年)

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