中小企業のデジタル化に役立つ生成AI一覧!活用のポイントも解説

中小企業が競争力を維持し、業務効率を高めるためにはデジタル化が不可欠です。近年、生成AIの急速な進化により、これまで以上に多様なビジネスプロセスの自動化や最適化が可能となっています。本記事では、中小企業に特に有用な生成AIの最新ツールを紹介し、その効果的な活用ポイントを詳しく解説します。

目次

中小企業はデジタル化が求められている

デジタルトランスフォーメーション(DX)は、多くの中小企業にとって不可欠な取り組みです。しかし、DXは膨大なコストと時間を要するため、即効性のある低コストなデジタル化戦略が求められています。そこで「バーチャルトランスフォーメーション」という新しい考え方が注目されています。

バーチャルトランスフォーメーションは、「現実世界の変革、仮想世界との融合」を指します。メタバース、APIエコノミー、xR技術(VR、AR、MR)、AIなどの先端技術を活用し、企業が現実と仮想の両面で価値を創出することを目指します。特に生成AIは、この変革の中で重要な役割を果たします。

中小企業が生成AIをデジタル化に活用するメリット

生成AIを導入することで、中小企業は業務効率を大幅に改善し、オンラインでの価値創出のタイムパフォーマンスを向上させることができます。生成AIは、業務の「読む・考える・書く(描く)」といったベーシックな論理構築作業を代替し、既存の業務プロセスを飛躍的に効率化します。

生成AIに対しては賛否両論がありますが、実際には業務効率化と生産性向上を支援するツールです。否定的な意見もありますが、生成AIを適切に活用することで、多くのビジネスにおいて革新的な成果を得ることが可能です。

中小企業が生成AIを取り入れることで、デジタル化の道を進み、競争力を強化できることを期待しています。生成AIは、単なる技術以上に、ビジネスプロセスの最適化と新しい価値創出を可能にする重要なパートナーです。

中小企業が生成AIをデジタル化に活用するメリットについて詳しく見ていきましょう。

業務効率の向上

生成AIは、中小企業が日常業務を効率化するための強力なツールです。例えば、データの収集や分析、報告書の作成といったタスクを自動化することで、従業員がより重要な業務に集中できるようになります。これにより、時間とリソースの節約が実現します。

販売データの自動分析: AIを使って販売データを自動的に収集し、分析レポートを作成することで、マーケティング戦略の迅速な立案が可能になります。
顧客フィードバックの要約: 顧客のレビューやアンケート結果をAIで解析し、重要な洞察を抽出することで、顧客満足度の向上に役立ちます。

創造性の強化

生成AIは、中小企業が新しいアイデアやコンテンツを生成するのに役立ちます。これにより、小規模なチームでも多様なマーケティング素材や製品デザインを効率的に作成できます​ 。

たとえば、 AIを使用して、製品やサービスに合ったスローガンを作成し、ターゲットオーディエンスに響くメッセージを発信します。

また、企業名や業界に基づいたロゴデザインをAIが提案し、ブランドアイデンティティを強化します。

迅速な意思決定

生成AIはデータ分析を通じて迅速な意思決定を支援します。市場の動向や競合他社の戦略をリアルタイムで把握し、適切なアクションを取ることが可能です​。

たとえば、AIを使って市場の需要や価格動向を予測し、ビジネス戦略を最適化します。また、競合他社の戦略を分析し、SWOT分析を通じて自社の競争力を高めるための具体的な施策を立案することも可能です。

コスト削減

生成AIは、業務の自動化と効率化を通じてコスト削減を実現します。特に在庫管理やエネルギー効率の改善などにおいて、その効果が顕著です​。

たとえば、販売データと市場動向を分析し、適切な在庫レベルを維持することで、過剰在庫や欠品のリスクを減少させます。

また、エネルギー消費パターンを分析し、効率的な使用方法を提案することで、コスト削減と環境負荷の軽減を両立させることが可能です。

スケーラビリティ

生成AIは、少ないリソースでビジネスの規模を拡大するのに役立ちます。これにより、中小企業は大規模な投資なしに新しい市場に進出し、顧客基盤を広げることができます​。

たとえば、AIを使って多言語のコンテンツやカスタマーサポートを提供し、国際市場への進出を支援できます。また、顧客対応を自動化するチャットボットを導入し、24時間対応を実現することも可能です。

顧客サービスの向上

生成AIは、顧客サービスを改善するための強力なツールです。AIチャットボットやパーソナライズされた推奨システムを利用することで、顧客満足度とロイヤルティを向上させることができます​​。

たとえば、よくある質問に対する即時の自動応答を提供し、顧客の待ち時間を短縮します。
また、顧客の行動データに基づいて個別の製品やサービスを推奨し、購買体験を向上させることも可能です。

中小企業のデジタル進化に役立つ生成AI一覧

では、実際にVXやDXのきっかけになりうるような生成AIの例を紹介します。

会議要約・録画:tldv.io

tldvは、GPT3を内蔵した会議アシスタントツールです。

tldvができることはさまざまですが、主な機能としては「会議の記録」「発話者認識」「自動翻訳」「議事録の記述」が挙げられます。ZoomやGoogle meetの中にtldvを招待するだけで素早く会議を録音するだけではなく、20以上の言語を翻訳したり、発話者を認識しながらサマリーを自動生成することができます。

GPT3による高品質な要約を自動生成できることが売りのようですね。ウェブ会議と連動して自動文字起こしや要約の作成を行ってくれるAIと考えれば良いでしょう。

tldvを活用すれば、打ち合わせのたびに発生する議事録の作成や、情報共有のための資料作りを自動化できるでしょう。この2つの業務は、利益に直結するものではないですが、重要度は極めて高いです。自動化によってコア業務へ投下できるリソースを増やせるのではないでしょうか。

参考:

https://tldv.io/

メール作成:addy-ai.com

addy-aiは、ChatGPTによって「メールの自動作成」を可能とした生成AIです。

Chromeの拡張機能として提供され、ブラウザ上でメールの自動作成機能を利用できます。口調や返信の間隔などを調整可能なほか、返信元メールを参照しながらの文章生成も利用できます。

実際に使用する場合は、拡張機能としてブラウザにインストールしたあと、設定で口調(Default email writing tone)を指定します。また、返信間隔(Response length)も調整できるようです。

Gmail上で実際にメールを作成するときの画面です。新規にメールを作成する場合は、宛先上部の「Write」に大まかな支持を8文字以上入力することで、文章が自動提案されます。日本語には標準対応していませんが、上の画像のように日本語の指示でもそれなりに意味のある文章が生成されました。

また、Chrome系ブラウザの拡張機能からAddy-AIを起動し、メールのマークをクリックすると返信元の内容を参照しながら返信用の文面を作成する画面が起動します。こちらも、返信元メールを張り付けるか、新規メールの開始8文字程度を入力するとメールが自動生成される仕組みです。

定型文はもちろんのこと、日常業務の報告や既存顧客への連絡などは、全てaddy-aiでカバーできるでしょう。月9.99ドルの有料プランではよりパーソナライズが強化されるようですね。ちなみに日本語でのアウトプットはできませんが、インプットは可能なので、文面の作成+翻訳が自動で行われることになります。海外業者とのメールのやり取りではかなりの時短効果を発揮しそうです。

参考:

https://addy-ai.com/

動画生成:app.elai.io

テンプレートとGPT3を活用し、動画を自動生成するAIです。

任意のワードを入力(~に関する広告など)し、テンプレートを選択してCreateを押すと動画が生成されます。

非常に簡単なステップで動画が生成されるので、キャンペーン動画の作成などに活用できそうです。

ちなみに、国籍や性別などによる音声の選択も可能です。

参考:

https://app.elai.io/

スライド作成:slidesai.io

テキストベースでスライド資料を自動作成するAIです。

テキスト入力と簡単な見た目の指定で、スライドを自動生成します。テキストは直接入力か貼り付けで行います。

テキストの入力が完了した後は、スライドの大まかなデザインを指定します。プリセット以外に独自のカスタマイズもできるようですね。

以上の2ステップでスライド資料が生成されるため、ホワイトペーパーやDL資料の作成はかなり効率化されるでしょう。単純にパワーポイントによるテキストや図のレイアウトにかかる時間が短縮されます。

ちなみに、月あたり3プレゼンテーション(1プレゼンあたり2500文字)まで無料で、有料プランではドキュメントのアップロードにも対応するようです。

参考:

https://www.slidesai.io/

コード作成:blckbx.ai

Visual Studio用のコード生成AIです。強力なオートコンプリート機能と検索機能を備えています。

オートコンプリート機能はPython、JavaScript、TypeScript、Go、Rubyなどの20 以上のプログラミング言語で使えるため、かなり汎用性が高そうです。エンターを押したタイミングでコードを自動提案するので、「ロジックはある程度組めるが、文法理解が浅い(もしくは忘れた)」などの場合に重宝しそうですね。

参考:

https://marketplace.visualstudio.com/items?itemName=Blackboxapp.blackbox

Youtube要約:YouTube Summary

Chromeの拡張機能として提供される文字起こし+要約生成AIです。動画の文字起こしデータをChatGPTに転送し、要約する仕組みを採用しています。上の画像のように、動画再生時に出現する「Transcript&Summary」というボタンをクリックすると動画の文字起こしデータが瞬時に生成されます。こちらは日本語に完全対応しているので、すぐに使い始められますね。動作も軽く、非常に便利で高機能です。クリックした瞬間に、20分程度の動画のテキストデータが抽出されるのには驚きました。

セミナー動画のテキストコンテンツ化などに役立つほか、オウンドメディア掲載用の素材を作成するといった使い方もできそうです。

参考:

https://glasp.co/youtube-summary

翻訳・要約:Notion AI

翻訳や要約に活用できる生成AIです。文章量の調整や語調、トンマナの指定など細かなカスタマイズが可能なようで、「人間が書いている感」が欲しいときに重宝しそうです。

視覚的に条件を設定できるうえに日本語にも対応しているので、すぐに使い始められそうですね。メールの作成や会議用資料のテキスト作成、プレゼン資料のテキスト作成など幅広く活躍できるでしょう。addy-aiのように自動提案機能があるので、ある程度書いたらAIに任せるという方法も可能です。

参考:

https://www.notion.so/ja-jp/product/ai

関数生成:numerous.ai

ExcelやGoogle Sheetsといったスプレッドシート内でChatGPTを呼び出し、分析や翻訳を提供する生成AIです。

「=AI()」と指定することでChatGPTを呼び出し、カッコ内の指定内容を自動で入力することができます。

また、カウントしたいデータをテキストで説明することで、数式を自動生成することも可能です。

さらに、「関数が何をしているのか」を人間の言葉で説明してくれるため、属人化した業務の分析にも活用できるでしょう。

かなり便利な生成AIなので、スプレッドシートに関する学習自体が不要になる可能性が高いですね。業務アプリとしてExcelを使っていて、関数やシートを継ぎ足しているが、担当者が変わるたびに引き継ぎが大変……といった課題も解決できそうです。

また、スプレッドシートをクラウドツールなどに移行する際の要件定義や基本設計にも役立ちそうです。

参考:

https://numerous.ai/

ブログ生成:ChatGPT×GoogleDocs

こちらは2つのツールを組み合わせて、ブログを量産する手法です。ChatGPT×GoogleDocsの組あわせにより、SEO対策としてのブログ量産を効率化できるかもしれません。ちなみに、
GoogleDocs側をローコード開発ツール(Google Apps Script(GAS)でカスタマイズすることで、高品質なブログ生成も可能になります。GASによるブログ生成は、スクリプトコードとAPIキーが必要ですが、どちらもそれほど難易度が高くないので挑戦してみる価値はありそうです。

BtoBにおいて生成AIは普及するか

生成AI以外のBtoB向けAIサービスを俯瞰してみると、その大半はAI自体を単体で売っているのではなく、準備段階と学習、チューニングセットでサービス化しています。つまり思考と試行をAIとセットで伴走型サービスとしているものが大半なのです。

現在の生成AIが伴走型サービスとして提供されるかはわかりませんが、人流制御などBtoBでも応用できそうな技術体系はすでに存在しています。

今後は新しいビジネスモデルの考案などデータ(=人間の知見)が不十分な分野で生成AIが活躍するかもしれませんね。対象とする事業分野と市場選定、生成されたビジネスモデルのリスク分析など、ビジネスモデルやマーケティングの立案でも生成AIが適用される余地はありそうです。

仮にこういった使われ方をする場合、ERPやCRM、MA、SFAといったシステムから生成AIがデータを取り込み、次の打ち手を生成するというサービスになるでしょう。つまり、現状のBIよりも一歩進んだサービスになる可能性が高いと感じています。

分析と可視化のみならず「思考の雛形」を生成するAIが登場すれば、BtoBでも普及していくのではないでしょうか。

生成AIの導入において中小企業が押さえるべきポイント

生成AIの導入において、中小企業は次のポイントを押さえる必要があります。

中小企業に必要なのは「成長」ではなく「進化」

今後の中小企業は「成長」ではなく「進化」を意識した改革に着手すべきです。なぜこのように考えるかと言えば、従来型の「成長」には限界があるからです。ここで言う成長とは、事業規模・売上・人員の増大などです。従来型の成長を実現するためには、市場トレンド、社会情勢など土台となる要素が揃っていなくてはなりません。

ご存じのように現代はVUCA時代と呼ばれており、市場トレンドはほぼ予測不可能です。また、突発的な戦争による素材の高騰など、社会情勢についても経営にプラスとは言えない状況が続いています。大企業であれば成長の原資となる「人・モノ・カネ・情報」を一括で確保し、備蓄しておくことが可能ですが、中小企業にはこうした体力がありません。そこで、今ある原資を可能な限り有効活用し、これまで以上のアウトプットを生み出す企業に生まれ変わる必要があるでしょう。

例えば、日本企業の多くが取り組み始めているDXも、もとをただせば「改革」「変化」を推奨する概念です。もう少し簡単に述べると「デジタル活用によって成長しやすい土台を作るための進化」とも言い換えられます。デジタイゼーション、デジタライゼーションを経て、業務プロセスのみならず従業員の意識も変えていき、最終的にはデジタル活用が当たり前になるような文化を醸成する。これがDXの趣旨であり、企業のデジタル進化を後押しする考え方であるのは明白です。

生成AIの懸念点を理解しておく

金融大手ゴールドマンサックスにおいて会社のデータをChatGPTに用いることに否定的な反応です。
このように生成AIを危険視する声がある一方で、IT業界や教育業界の関係者からは「次世代の標準スキルのひとつになる」といった声も挙がっています。

どちらの意見が「正」になるのかはわかりません。しかし、爆発的な普及が起こり、世に受け入れられ始めているという事実は変わらないわけです。

また、「急激に成長した仕組みに対する反応」という意味において、Youtubeの黎明期ととても良く似ている点に注目です。現在では動画プラットフォームのメジャープレイヤーとなったYoutubeも、登場してすぐは著作権がらみの訴訟を多数抱えるなど、危険視された存在でした。

強烈な反発の裏で同等レベルの支持が巻き起こり、両者が拮抗しつづけることによってさらに認知が拡大していく。その結果が今のYoutubeなのです。

Youtubeも安定して成長するまでは、多くの個人や企業が使い方を模索し、最適解を見つけ出していきました。したがって生成AIも、今は「使い方を探る段階」と言えるでしょう。
生成AIの性質から考えると、一部の職業やそこで発生する労働に関しては、淘汰が発生するかもしれません。しかし、経営に関して言えば、自動化や省人化に対する特効薬になりえる存在だと考えています。

「ヒト」を見つけ、育てることの難しさを理解する

経営やマネジメントに関わったことがある方であれば、人材確保・育成の難しさは理解していると思います。ITツールが経営に欠かせない時代になった現代も、企業の最重要資産は「ヒト」です。ヒトを見つけ、人財に昇華できるかで企業の成長力・生存力は大きく変化します。特にヒトの絶対数が少ない中小企業は、この傾向が強いです。

しかし、ヒトの確保・育成に失敗してしまうと、無視できないほどのコストが積みあがってしまいます。さらに、確保に成功したとしてもヒトが「財」になるかは運に左右される点も否定できません。採用したヒトが活躍できる場があれば良いのですが、急激に変化する市場の流れによって、その「場」自体が消滅してしまうこともあるからです。

一方、人財に恵まれた企業が生み出す組織力や集合知は、企業をとても強くします。ヒトの確保と育成が難しいのであれば、別の方法を考えなくてはいけません。最近、その方法のひとつに、「生成AIの活用」があるのでは?と考えるようになりました。例えば「ヒトとAIの混合チームによって、組織力と集合知を手に入れる」という方法です。これならば既存人材とAIの組み合わせですから、リスクは小さくなるでしょう。

バーチャル社員との組み合わせで効果が高まる

さらに生成AIをバーチャルチームに加えることで、チームが持つ仕事の能力を高めることができるかもしれません。バーチャルチームとはバーチャル経営が推奨する組織体制で、「チーム型組織の特性を備えつつ、アジャイルの要素も加えた有機的な小組織」を指します。

バーチャルチームは、バーチャル社員(時間と場所に縛られない本質的な仕事能力を持った人材)で構成されます。このバーチャル社員を生成AIにサポートさせ、本人が持つ能力を拡張しつつ、チームとしても力を発揮できるように促すことも可能です。

バーチャル社員×生成AIによるチームのメリットは以下のとおりです。

  • 人的コストの調整が容易
  • 失敗による損失が少ない
  • ヒトの判断を生成AIが増幅するためスピーディーに成果を得られる

人件費の増大を最低限におさえつつ、さまざまな事業に挑戦し、ニッチの獲得を目指すためには最適な体制ではないでしょうか。

まとめ

生成AIは、中小企業が競争力を維持し、業務効率を向上させるための強力なツールです。データ分析、コンテンツ生成、自動化された顧客サービスなど、多岐にわたる業務でその効果を発揮します。適切に活用することで、生成AIは業務プロセスの最適化と新たな価値創出を可能にし、中小企業のデジタル化を強力に支援します​。

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この記事を書いた人

持田 卓臣のアバター 持田 卓臣 株式会社ベンチャーネット代表取締役

株式会社ベンチャーネット 代表取締役
2005年に株式会社ベンチャーネットを設立後、SEOをはじめとするデジタルマーケティング領域のコンサルティングサービスを展開
広告・SNS・ウェブ・MA・SFAと一気通貫で支援を行っています
著書に『普通のサラリーマンでもすごいチームと始められる レバレッジ起業 「バーチャル社員」があなたを救う』(KADOKAWA、2020年)

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