人は増やさず売上増「バーチャル経営」①~なぜ今「バーチャル経営」なのか?

~中小企業の革新は「1つの思想と1つのチーム」から始まる~

こんにちは、株式会社ベンチャーネットの持田です。
2021年時点で、日本企業の大半がコロナ禍の影響下にあります。刻一刻と変化する環境に対応するため、リソース確保とコスト調整に奔走する経営者は少なくないでしょう。一方で、少子高齢化の波は「従業員」と「顧客」の減少を招き、容易に売上が伸びない時代でもあります。

このように「コロナ禍」と「少子高齢化」という2つの大きな壁を前に、どのような経営を心がけるべきなのでしょうか。

その答えのひとつに、固定費(≒人件費)を増やさず売上を伸ばす「バーチャル経営」があります。

目次

バーチャル経営とは?

バーチャル経営とは、「固定費(≒人件費)を増やさず売上を伸ばす」ための施策を体系的にまとめた経営手法であり、企業変革のベースとなる思想でもあります。

バーチャル経営は、サッカーや野球のプロチームに例えるとイメージしやすいでしょう。サッカーと野球は、どちらも一軍登録できる選手の数が決まっており、その中で価値(チームとしての総合力)を最大化させるべく様々な施策を講じます。

バーチャル経営でも、固定費としての人件費を増やさす、「いかにプロフェッショナルなチームを組成するか」が重要なテーマとなっています。

バーチャル経営とは

仮想化と本質化で価値の連鎖を生みだす

バーチャル経営の根底には、会社の「図体」はそのままに、「成果」だけを伸ばそうという考え方があります。「バーチャル」は「仮想」を意味すると同時に「本質」をあらわす言葉です。バーチャル経営は、ICTによってリアルな経営資源を「仮想化」するとともに、本当に必要な資源を効率よく調達し、組み合わせながら生産性を伸ばす「本質化」を推進します。

経営の世界では、長い間「ヒト・モノ・カネ」が経営の3要素として挙げられてきました。これに加え、近年は「情報」の資産価値が重視され、経営の4要素とも呼ばれるようになりました。バーチャル経営では、これら経営の4要素を踏まえ、「人がやるべき仕事」と「システム・ツールに任せる仕事」を切り分け、仕事の廃棄とともに自動化していきます。

具体的には「ICTツールを用いた業務廃棄と自動化」「バーチャル社員の活用による人的リソースの確保」「会計的な指標に基づいた生産性・付加価値のベンチマーク」などが、バーチャル経営の構成要素です。こうした要素を組合せ、「最小のコストで最大の効果(=売上)をあげる」ことがバーチャル経営の目的です。つまり、「高効率かつ高付加価値型の経営」がバーチャル経営の本質と言えます。

これまでリアルな世界にのみ存在していた経営資源を、ICTで仮想化・本質化し、ロスなく価値の連鎖を起こすことで、生産性・付加価値を上昇させ、最終的に「売上」「利益」の増大を目指すします。

バーチャル経営は、大資本を持たない中堅・中小企業が激しい環境変化に立ち向かい、生存し、成長していくための処方箋のようなものと考えてください。

バーチャル経営の構成要素

経営資源をICTで仮想化・本質化

なぜ今バーチャル経営なのか?

では、なぜ今バーチャル経営が必要なのでしょうか。「コロナ禍」と「少子高齢化」の2つが大きな理由であることはすでに述べました。それでは、この2つの理由をもう少し具体的に解説していきます。

「できる人」との専属契約はますます難しくなる

現在の日本は「少子高齢化」の影響から、「労働人口の減少フェーズ」に突入しています。正確には「生産年齢人口の減少」が、日本全体の課題として横たわっている状態です。以下は、経済産業省による将来人口と生産年齢人口の推移予測です。

将来人口の予測(経済産業省資料より)
出典:経済産業省 「2050年までの経済社会の 構造変化と政策課題について」
(平成30年9月、https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/2050_keizai/pdf/001_04_00.pdf

日本は「高齢者の増加」が問題であるかのように語られます。しかし、本当の課題は「15歳~64歳の人口減少」です。上の図では水色と赤色の部分が急速に小さくなっていることがわかります。

状況が好転しないまま時が過ぎると、今後の日本は「人材を探そうにも、そもそも人がいない」という状態が深刻化します。優秀な人材ほど大手・大企業に集中しますから、中堅・中小企業が従来の正社員雇用=無期専属契約で有能な人材を確保する難易度はどんどんあがります。コロナ禍以前も空前の人材不足が叫ばれていましたが、今後はそれが常態化・深刻化していくわけです。

そもそも、知名度や認知度で大手企業に劣る中小・中堅企業が、優秀な新卒を採用できる時代は10年以上前に終わっています。これは、中途採用でも同様です。「ラッキーパンチ」で優秀な人材を採れる確率は、奇跡に近いほど低くなっているのです。優秀な人材は、その優秀さゆえに「企業を見る目」をしっかりと持っています。同じようなビジネスモデルを採用する企業ならば、より大きく・伝統のある大手企業を選択するのはごく自然なことでしょう。少し厳しい言い方をすれば、「革新的なビジネスモデルや技術を持たない、無名の企業を選ぶ理由がない」のです。

特に「デジタルマーケティング」「ICT活用」などの分野でスキルを持つ人材については、「いつ、どこを探しても目にかなう人がいない」という状況が予測されます。このような時代に、旧来の正社員雇用=無期専属契約だけを想定していては、いつまでたっても「駒」が揃わず、事業を回すことができません。

こうした「人材不足」に対する処方箋として、バーチャル経営では「バーチャル社員活用」を提唱しています。バーチャル社員とはこの記事でも解説しているとおり、組織・雇用・勤務形態に依らず、純粋に「仕事の遂行」に必要な能力を持った「本質的な」人材のことです。

主にオンライン上でのやり取りで「必要な時に」「必要なスキルを」提供してもらいつつ、長期的な関係を構築することが、バーチャル社員活用の要旨です。

世間にはさまざまな事情から、一定以上のスキル・能力を持ちながらも「正社員雇用=無期専属契約」を結べない人たちがいます。こうした人材のリソースを上手く活用し、プロフェッショナルなチームの一員にしていくわけです。

バーチャル社員の活用

EC化とオンラインシフト

2020年に勃発した「コロナ禍」のように、人類全体が立ち向かうべき危機を経験した経営者はそう多くありません。さらにコロナ禍では、着々と「オンラインシフト」が進んでいます。人々は感染リスクを少しでも低くするための行動をとり、「不要不急のものはオンラインで済ます」から「急を要する、もしくは必要不可欠なものも、徐々にオンラインへ移行する」ようになっています。

ここ数年、EC市場がBtoC、BtoBを問わず順調に伸びていることは、あまり知られていません。

経済産業省 商務情報政策局の調査によると、日本のBtoC EC市場は2019年度ベースで前年比8.09%増、EC化率は6.76%となっています。金額としては19兆3609億円と20兆円に迫る勢いです。

BtoC ECの市場規模
出典:経済産業省 商務情報政策局 情報経済課 「令和元年度 内外一体の経済成長戦略構築にかかる国際経済調査事業 (電子商取引に関する市場調査)報告書」P.7
(令和2年7月、 https://www.meti.go.jp/press/2020/07/20200722003/20200722003-1.pdf

また、BtoB分野はBtoCよりもEC化が進んでおり、市場規模は2019年度ベースで352兆9602億円(前年比2.5%増)、EC化率は実に31.7%(前年比1.5ポイント増)にまで達しています。

BtoB ECの市場規模
出典:経済産業省 商務情報政策局 情報経済課 「令和元年度 内外一体の経済成長戦略構築にかかる国際経済調査事業 (電子商取引に関する市場調査)報告書」P.10
(令和2年7月、 https://www.meti.go.jp/press/2020/07/20200722003/20200722003-1.pdf

このようにコロナ禍以前からEC化が進んでいた日本の産業は、今後ますますオンラインへの依存度が高くなるでしょう。コロナ禍はEC化を推進する起爆剤であり、トリガーでもあります。ECは「インターネットを介して行われる価値の交換」とも言い換えられますから、企業にはICT活用を含めたDX対応が求められます。ICT活用によるDXは、バーチャル経営の「本質化」と非常によく似ており、バーチャル経営が求められる理由のひとつと言えるわけです。

バーチャル経営は時代の要請

DX対応の本格化

ここ数年で一気に市民権を得た「DX(デジタルトランスフォーメーション)=デジタルによる事業変革」は、実現化フェーズに突入しようとしています。

DX対応は高付加価値、高効率経営の核であり、さらに掘り下げていくと「業務廃棄」と「自動化」が要であることがわかります。

バーチャル経営はICTを活用した業務廃棄や自動化を含むため、DX対応と親和性が高い方法論です。

ランチェスター、両利きの経営との共通点も

バーチャル経営は「大資本を持たない中堅・中小企業」におすすめできる考え方です。中堅・中小企業の生存戦略としては、もはや古典ともいえる「ランチェスター戦略」やコーポレートトランスフォーメーションのベースともなった「両利きの経営」があります。

●ランチェスター戦略
戦争の法則とも呼ばれ、企業が持つ資源(ヒト、カネ、ノウハウ)などを戦力におきかえて、生存のための戦略を導きだす考え方。弱者の戦略と呼ばれる第1法則と、強者の戦略と呼ばれる第2法則が土台となる。

●両利きの経営
新規事業の開拓(探索)と既存事業の強化(深化)の両輪が、企業の成長力・生存力を高めると説く経営理論。すでに利益を上げている事業の利益率を高めつつ、積極的に「転身」の可能性を探ることにより、環境変化や破壊的イノベーションへの対応力を強化する。

これら2つの経営戦略は、いずれも有限な資源を最大限に活用し、生産性と付加価値を高めることにつながります。この点はバーチャル経営も全く同じです。

中堅・中小企業の生存戦略

まとめ

バーチャル経営は「ヒト・モノ・カネ・情報」といった経営資源を、仮想化と本質化によって高効率に運用し、売上を伸ばしていくための手法です。続く第2回では、バーチャル経営の主な構成要素を、もう少し具体的に解説していきたいと思います。

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この記事を書いた人

持田 卓臣のアバター 持田 卓臣 株式会社ベンチャーネット代表取締役

株式会社ベンチャーネット 代表取締役
2005年に株式会社ベンチャーネットを設立後、SEOをはじめとするデジタルマーケティング領域のコンサルティングサービスを展開
広告・SNS・ウェブ・MA・SFAと一気通貫で支援を行っています
著書に『普通のサラリーマンでもすごいチームと始められる レバレッジ起業 「バーチャル社員」があなたを救う』(KADOKAWA、2020年)

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