Odooとfreeeの違い|ERPと会計ソフトの守備範囲の境界線

「Odooとfreee、どちらがいいですか」

この質問には、そのままでは答えられません。比べる土俵が違うからです。

野球とサッカーのどちらが優れているかを聞かれているようなもので、答えは「何をしたいかによる」になります。

この記事では、両者の守備範囲を整理します。そして、自社がどちらの側なのかを判断する材料をお伝えします。

なお、両製品とも仕様は変化します。最新の内容は、それぞれの公式情報でご確認ください。 この記事は設計思想と守備範囲の整理に絞ります。

目次

分かれ目は「モノの流れがあるか」

先に結論をお伝えします。

会計ソフトとERPが扱う範囲の違いを示した図 お金の流れと人に関する業務は会計ソフトとERPの両方が扱う一方、在庫や製造、購買、店舗といったモノの流れはERPの守備範囲であることを、範囲の重なりとして示した図です。 扱っている範囲が違う お金と人の領域(両方が扱う) 会計・請求・経費・給与・勤怠・申告 ここは競合します。制度対応の深さで差が出ます モノの流れの領域(ERPの守備範囲) 在庫・倉庫・製造・購買・店舗POS・EC ここが必要かどうかが、判断の分かれ目になります 自社の中心は「お金」か、「モノ」か

モノの流れが中心なら、ERP

在庫を持ち、仕入れて、加工し、出荷する。店舗で売る。この流れが事業の中心なら、ERPの守備範囲です。

なぜなら、モノの動きと数字が離れていると、在庫が合わなくなるからです。この構造は 小売業のOdoo活用製造業のOdoo活用 で詳しく扱っています。

お金と人が中心なら、会計ソフトで足りる

在庫を持たないサービス業、士業、コンサルティング。仕入れも製造もない事業なら、会計ソフトとその周辺で十分に回ります。

無理にERPを入れる必要はありません。

freeeの設計思想

公平を期すために、相手の強みから書きます。

freeeは会計を起点に、経理業務そのものを問い直す設計思想を持っています。近年は「ERP型」という表現も打ち出しています。

強みと考えられる点

  • 日本の制度に正面から対応している(インボイス制度、電子帳簿保存法、各種申告)
  • 制度改正への追随が、製品側で行われる
  • 税理士との連携がしやすい
  • 経理の経験が浅い人でも使える設計

最後の2つは、中小企業にとって非常に大きい価値です。

日本の会計ソフトは、日本の制度のために作られています。この点で、海外製のERPが同じ土俵で戦うのは簡単ではありません。

Odooが正直に劣る領域

はっきり書きます。日本の制度対応の深さと、改正への追随の速さでは、国産の会計サービスに分があります。

Odooで日本の会計・税務を扱う場合、設定や確認が必要な領域が残ります。詳しくは Odooの日本対応状況Odooのインボイス制度(適格請求書)対応Odooと電子帳簿保存法 をご覧ください。

そして、日本の給与計算については、Odooで行う前提では考えないほうがよいとお伝えしています。

Odooの設計思想

一方、Odooは業務全体をひとつのデータの上で動かすという発想で作られています。

強みと考えられる点

  • 在庫、製造、購買、POS、ECまでを同じデータで扱う
  • 受注が在庫を動かし、出荷が請求につながる
  • 案件の原価に工数と経費が積み上がる
  • アプリを必要な順に足していける

「会計が正しくなる」のではなく、「業務がつながる」ことが価値です。

会計ソフト中心の構成とERP中心の構成の違いを示した図 左側は在庫や販売の管理を別のツールやExcelで行い、そこから会計ソフトへデータを渡す構成。右側は在庫・販売・購買・会計が同じデータの上で動き、転記が発生しない構成を示しています。 会計ソフト中心の構成 ERP中心の構成 在庫はExcel 販売は別ツール CSV・手入力で渡す 会計ソフト 制度対応は手厚い つなぎ目に人の作業が残る 在庫 販売・購買 ひとつのデータ 転記が発生しない 会計へ自動でつながる 日本の制度対応は要確認

図の下段に注目してください。 それぞれに、正直に書くべき弱点があります。

会計ソフト中心の構成では、つなぎ目に人の作業が残ります。ERP中心の構成では、日本の制度対応を確認する必要があります。

どちらの負担を選ぶか、という問題です。

判断のための5つの質問

自社がどちらの側かを見極めるために、次を確認してください。

#質問「はい」ならERP寄り
1在庫を持っていますか
2仕入れや製造がありますか
3店舗やECで販売していますか
4案件ごとの原価を知りたいですか
5業務システムが3つ以上に分かれていますか

「はい」が0〜1個なら、会計ソフト中心の構成で足りる可能性が高いと考えられます。

3個以上なら、ERPを検討する価値があります。

判断の全体像は Odooが向いている企業・向いていない企業 にまとめています。

「併用」という現実的な選択

ここは、あまり語られない論点です。

どちらか一方を選ばなければならない、という前提が間違っていることがあります。

実際によくある構成は、次のようなものです。

  • モノの流れと販売はOdoo、決算と申告は会計ソフト
  • Odooで受注・在庫・出荷・請求まで回し、会計データを渡す

この形なら、それぞれの得意領域を活かせます。日本の制度対応は国産サービスに任せ、業務の統合はOdooが担う。

ただし、連携の設計が必要です

いいことばかりではありません。2つのシステムをつなぐ設計と、その保守が発生します。

  • どのデータを、どのタイミングで渡すか
  • 二重入力をどう防ぐか
  • 数字が合わないときにどちらを正とするか

この検討を飛ばすと、結局は手作業のCSV連携が残ります。

会計まわりの考え方は Odooの会計機能でできることOdooの請求書発行(Invoicing) をご覧ください。

ベンチャーネットの立場

正直にお伝えします。

ベンチャーネットは、freeeを否定する立場ではありません。

在庫も製造もない事業に、無理にERPを勧めることはしません。それは読者の利益になりませんし、導入しても使われないからです。

ベンチャーネットは、SAP・NetSuite・Odoo・AIスクラッチ開発という4つの選択肢を扱っています。そのうえで、次のように整理しています。

状況検討したい選択肢
在庫も製造もない。会計と申告が中心会計ソフト中心の構成で足りる
モノの流れがあり、業務を統合したい中小〜中堅企業Odoo が現実的な選択肢
海外拠点があり、多通貨・連結決算が必要OdooとNetSuiteの違い を参照
業務が固有すぎてパッケージに乗らないAIスクラッチ開発という選択肢

最終行について補足します。AIスクラッチ開発は、ライセンス費用がかからない代わりに開発費と保守費が別途かかります。判断材料は パッケージERPかスクラッチ開発か に整理しました。

よくある質問

Q1. freeeからOdooに乗り換えるべきですか?

会計だけが目的なら、乗り換える理由はありません。

検討する価値があるのは、在庫や製造、店舗販売といったモノの流れが加わり、会計ソフトの周辺がExcelや別ツールで膨らんできたときです。

Q2. Odooだけで日本の決算までできますか?

Odooには会計機能があります。ただし、日本の制度対応については確認すべき領域が残ります。

顧問税理士が対応できるかどうかも、実務上の重要な要素です。事前にご相談ください。

Q3. 両方使うのは無駄ではないですか?

無駄になるかどうかは、連携の設計次第です。

それぞれの得意領域を活かす構成なら、合理的な選択です。 ただし、連携部分の設計と保守が発生する点は見込んでください。

Q4. どちらが安いですか?

製品間の金額比較は、この記事では行いません。 課金の仕組みも、必要な機能の範囲も異なるためです。

比べるべきは、ライセンス費用だけでなく、導入費用と運用にかかる人の時間を含めた総額です。考え方は Odoo導入にかかる費用の構造 をご覧ください。

Q5. 会社が成長したらどうなりますか?

在庫や拠点が増えると、会計ソフトの周辺に別のツールが増えていきます。この「つなぎ目」が増えたときが、統合を考えるタイミングです。

3〜5年後から逆算する考え方は 成長企業の基幹システムはどこから始めるか にまとめています。

まとめ

Odooとfreeeは、比べる土俵が違います。優劣ではなく、守備範囲の違いです。

分かれ目は1点。自社の中心が「お金と人」なのか、「モノの流れ」まで含むのか。

在庫も製造もない事業なら、会計ソフト中心の構成で十分に回ります。無理にERPを入れる必要はありません。

一方、モノの流れがあり、業務システムが分かれてきたなら、統合を検討する価値があります。

そして、正直に書くべき点が2つあります。

日本の制度対応の深さと改正への追随では、国産の会計サービスに分があります。 Odooで日本の会計・税務を扱う場合、確認すべき領域が残ります。

一方、会計ソフト中心の構成では、モノの流れとのつなぎ目に人の作業が残ります。

どちらの負担を選ぶか。それが判断です。

なお、「併用」という選択肢もあります。 モノの流れはOdoo、決算と申告は会計ソフト。それぞれの得意領域を活かす構成です。

もう少し詳しく知りたい方へ

ベンチャーネットは、ERP導入支援を手がける会社です。SAP・NetSuite・Odoo・AIスクラッチ開発という4つの選択肢を扱っているため、特定の製品に偏らない立場でご提案できます。

在庫も製造もない事業に、ERPを勧めることはしません。 まず「自社がどちらの側なのか」の切り分けからご相談を承っています。

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この記事を書いた人

持田 卓臣(もちだ たくおみ)
株式会社ベンチャーネット 代表取締役

ヒューレット・パッカード社でITコンサルタントとして従事した後、2005年に株式会社ベンチャーネットを設立。
Oracle NetSuite Solution Provider Partner として、中堅・中小企業向けクラウドERP「NetSuite」の導入・運用支援を提供しています。
SEO・広告・SNS・ウェブ・MA・SFAと一気通貫で培ってきたデジタルマーケティング領域の業務知見を活かし、NetSuiteを軸とした経営DXを支援しています。
著書:『普通のサラリーマンでもすごいチームと始められる レバレッジ起業「バーチャル社員」があなたを救う』(KADOKAWA、2020年)

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