Odooとkintoneの違い|「作る」か「乗る」か

kintoneとOdooは、よく比較検討の対象として並びます。

しかし、この2つはそもそも役割が違います。

  • kintone:業務アプリを自分で作るための基盤
  • Odoo:出来上がった業務の型が用意されているERP

料理でたとえるなら、キッチンと定食の違いに近いかもしれません。どちらが優れているかではなく、何をしたいかで選ぶものです。

この記事では、その違いを整理します。

なお、両製品とも仕様は変化します。最新の内容は、それぞれの公式情報でご確認ください。

目次

kintoneの強みを、先に書きます

業務アプリ作成基盤とERPの役割の違いを示した図 業務アプリ作成基盤は自社の業務に合わせてアプリを作る自由度が高い一方、ERPは会計や在庫といった業務の型があらかじめ用意されているという役割の違いを比較した図です。 役割そのものが違う 業務アプリ作成基盤 自社の業務に合わせて「作る」 現場の人が自分で作れる 今のやり方をそのまま形にできる 小さく始めてすぐ動かせる 脱Excelの第一歩に向く 自由度が高い 統合型ERP(Odoo) 出来上がった業務の型に「乗る」 会計・在庫・製造が標準で入る 複式簿記や在庫評価の仕組み 業務がつながった状態で始まる 標準に業務を寄せる前提 型が用意されている

現場が自分で作れることの価値

kintoneの最大の強みは、情シスや外部に頼まなくても、現場の人がアプリを作れることです。

これは想像以上に大きい価値です。

  • 思いついたその日に形にできる
  • 使ってみて違ったら、すぐ直せる
  • 業務を知っている人が、自分で設計できる

「システム部門に依頼して、数か月待つ」という構造から抜け出せます。

Excelからの第一歩として優れている

Excelで管理していた台帳を、そのままアプリにできます。複数人で同時に使える、履歴が残る、集計できる。 この3点だけでも、Excelからの改善としては十分です。

Excel脱却の考え方は Excel管理からOdooへ でも扱っていますが、その第一歩としてkintoneを選ぶのは、合理的な判断だと考えています。

Odooが提供している「型」

一方、Odooにはあらかじめ業務の型が用意されています。

「作らなくてよい」ものがある

たとえば、次のようなものです。

  • 複式簿記の仕組みと勘定科目の体系
  • 在庫の評価方法(移動平均、先入先出)
  • 受注から出荷、請求への流れ
  • 部品表(BOM)と製造指図
  • 適格請求書の要件を意識した帳票の構造

これらを自分で作るのは、現実的ではありません。

在庫評価の計算を業務アプリ基盤の上でゼロから作る。理論上は可能ですが、正しく作り、正しく保守し続けるのは相当に大変です。

「型があること」の意味

型があるということは、すでに世界中で使われている業務の流れに乗るということです。

これは制約でもあります。自社のやり方に完全には合いません。だから OdooとFit to Standard という考え方が重要になります。

一方で、「考えなくてよい」という価値でもあります。

分かれ目は「会計と在庫があるか」

扱う業務によって適した選択が変わることを示した判断の図 案件管理や申請、問い合わせ管理といった型のない業務は業務アプリ基盤が適し、会計や在庫評価、製造といった確立された型のある業務はERPが適するという分かれ方を示した図です。 その業務に「確立された型」があるか 型がない・自社固有の業務 案件・顧客のフォロー管理 社内の申請・報告 問い合わせ・クレーム管理 業界固有の台帳 アプリ作成基盤が向く 確立された型がある業務 会計・仕訳・決算 在庫の評価と引き当て 購買・製造・原価計算 受注から請求までの流れ ERPが向く

判断はシンプルです

その業務に、世の中で確立された型がありますか。

  • ない(自社固有、業界固有)→ 自分で作れる基盤が向く
  • ある(会計、在庫、製造)→ 型が用意されたERPが向く

会計や在庫評価を自分で作るのは、車輪の再発明です。逆に、自社固有の管理業務をERPの標準に無理やり押し込むのも、うまくいきません。

【注意】アプリが増えたときに起きること

業務アプリ基盤を使い込んだ会社で、よく起きることがあります。

アプリが増えすぎて、つながらなくなるという状態です。

  • 顧客のデータが、複数のアプリに別々に入っている
  • 同じ商品が、アプリごとに違う名前で登録されている
  • 集計しようとすると、アプリをまたいだ作業が必要になる

これは製品の問題ではありません。自由に作れるがゆえに起きる、構造的な現象です。

つながりを保つには設計が要る

アプリを作るのは簡単でも、アプリ同士のつながりを保つのは設計の仕事です。

  • どのアプリが顧客マスタの正とするか
  • 商品コードの体系を誰が決めるか
  • 数字が合わないときにどれを正とするか

この設計がないまま増やすと、Excelが散らばっていた状態と似た構造に戻ります。

一方、ERPでは最初からマスタが1つです。その代わり、自由度は下がります。これもトレードオフです。

併用という現実的な構成

実務では、この形がよく選ばれます。

基幹はOdoo、周辺の固有業務はkintone。

領域置き場所
会計・在庫・購買・受注・請求Odoo(型がある業務)
業界固有の台帳、社内申請、現場の報告業務アプリ基盤(型がない業務)

この構成なら、それぞれの強みが活きます。

ただし、つなぎ目の設計は必要です

どちらにマスタを置くか、どのタイミングでデータを渡すか。ここを決めずに併用すると、二重管理になります。

「両方使えばいいとこ取り」ではありません。 設計と保守の負担は見込んでください。

ベンチャーネットの立場

kintoneを否定する立場ではありません。

自社固有の業務を現場が自分で形にできることは、大きな価値です。Excelからの第一歩としても優れています。

ベンチャーネットは、SAP・NetSuite・Odoo・AIスクラッチ開発という4つの選択肢を扱っています。

状況検討したい選択肢
会計も在庫もない。固有の管理業務が中心業務アプリ基盤が適する
会計・在庫・製造といった型のある業務が中心Odoo が現実的な選択肢
両方ある併用(つなぎ目の設計が前提)
業務が固有すぎて、既製の型にも基盤にも収まらないAIスクラッチ開発という選択肢

最終行について補足します。業務アプリ基盤で作り込むほど複雑になり、保守が属人化する場合、必要な機能を自社資産として作るほうが扱いやすいことがあります。

ただしAIスクラッチ開発は、ライセンス費用がかからない代わりに開発費と保守費が別途かかります。判断材料は パッケージERPかスクラッチ開発か に整理しました。

よくある質問

Q1. kintoneで会計や在庫も作れませんか?

技術的には作れます。ただし、正しく作り、正しく保守し続けるのは相当に大変です。

複式簿記、在庫評価、税の計算。これらは世の中に確立された型があります。自分で作る合理性は低いと考えています。

Q2. Odooでも自由にアプリを作れますか?

Odoo Studioを使えば、画面への項目追加や自動化の設定は行えます。詳しくは Odoo Studioとは? をご覧ください。

ただし、「何でも自由に作れる基盤」としての使いやすさでは、専用の製品に分があります。

Q3. 現場が自分で作れないのは不便ではないですか?

その通りです。ここはOdooの弱点として正直に認めます。

設定の変更は現場でもできますが、業務アプリ基盤ほどの自由さはありません。 自由度を重視するなら、その点を踏まえて判断してください。

Q4. すでにアプリがたくさんあります。移行すべきですか?

全部を移す必要はありません。 型がある業務(会計、在庫、受注)だけをOdooに移し、固有の業務はそのまま残す構成が現実的です。

判断は「そのアプリに世の中の型があるか」で分けてください。

Q5. どちらが安いですか?

製品間の金額比較は行いません。 課金の仕組みも必要な範囲も異なるためです。

比べるべきは総額です。ライセンス費用に加えて、作る手間と保守の時間を含めて考えてください。自分で作る構成では、この人の時間が費用になります。

まとめ

Odooとkintoneは、役割そのものが違います。

一方は業務アプリを自分で作るための基盤。もう一方は出来上がった業務の型が用意されたERPです。

判断の軸はシンプルです。その業務に、世の中で確立された型があるか。

案件管理、社内申請、業界固有の台帳。こうした型のない業務は、自分で作れる基盤が向きます。現場が自分で作れることは、大きな価値です。

会計、在庫評価、製造、原価計算。こうした型のある業務は、すでに用意されたものに乗るほうが確実です。自分で作るのは車輪の再発明になります。

そして、注意点をひとつ。自由に作れる基盤では、アプリが増えたときにつながらなくなるという現象が起きます。マスタをどこに置くかの設計がないと、Excelが散らばっていた状態と似た構造に戻ります。

実務では併用がよく選ばれます。基幹はOdoo、固有業務はアプリ基盤。ただし、つなぎ目の設計は必要です。

もう少し詳しく知りたい方へ

ベンチャーネットは、ERP導入支援を手がける会社です。SAP・NetSuite・Odoo・AIスクラッチ開発という4つの選択肢を扱っているため、特定の製品に偏らない立場でご提案できます。

すでにあるアプリを、全部作り直す提案はしません。 「どの業務に型があり、どれが自社固有か」の切り分けからご相談を承っています。

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この記事を書いた人

持田 卓臣(もちだ たくおみ)
株式会社ベンチャーネット 代表取締役

ヒューレット・パッカード社でITコンサルタントとして従事した後、2005年に株式会社ベンチャーネットを設立。
Oracle NetSuite Solution Provider Partner として、中堅・中小企業向けクラウドERP「NetSuite」の導入・運用支援を提供しています。
SEO・広告・SNS・ウェブ・MA・SFAと一気通貫で培ってきたデジタルマーケティング領域の業務知見を活かし、NetSuiteを軸とした経営DXを支援しています。
著書:『普通のサラリーマンでもすごいチームと始められる レバレッジ起業「バーチャル社員」があなたを救う』(KADOKAWA、2020年)

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