Odooと奉行クラウドの違い|日本の制度対応と、業務統合のどちらを取るか

奉行シリーズは、日本の企業で長く使われてきた業務パッケージです。

会計、給与、就業、販売管理など、日本の制度と商習慣に合わせて作り込まれてきた製品群です。

一方Odooは、海外で生まれた統合型のERPです。

この2つを比べるとき、機能の数を数えても意味がありません。 設計されている前提が違うからです。

この記事では、その違いをトレードオフとして正直に整理します。

なお、両製品とも仕様は変化します。最新の内容は、それぞれの公式情報でご確認ください。

目次

国産パッケージの強みを、先に書きます

比較記事では、自社が扱う製品を持ち上げがちです。それでは判断材料になりません。

まず、国産パッケージの強みから書きます。

国産業務パッケージと海外製ERPの設計前提の違いを示した図 国産パッケージは日本の制度と商習慣を前提に設計され、制度改正への追随や国内のサポート体制に強みを持つ一方、海外製ERPは業務全体を同じデータで扱うことを前提に設計されているという違いを示した図です。 設計されている前提が違う 国産業務パッケージ 前提:日本の制度と商習慣 制度改正に製品側で追随 日本語のサポート体制 税理士・社労士が使い慣れている 帳票が日本の様式に沿う 領域ごとに深い 海外製の統合型ERP 前提:業務全体を同じデータで 在庫・製造・販売・会計が一体 同じマスタを全員が見る アプリを必要な順に足せる 日本の制度対応は要確認 横に広い

制度改正への追随は、想像以上に価値がある

インボイス制度、電子帳簿保存法、社会保険の改正、税制改正。

日本の制度は、頻繁に変わります。

国産パッケージでは、この改正への対応が製品側で行われます。利用する企業は、更新を受け取るだけで済みます。

これは、自社で対応を考える必要がないということです。 手間の話だけでなく、法令違反のリスクを製品側が引き受けているという意味を持ちます。

税理士・社労士が使い慣れている

これも実務では大きい要素です。

顧問の専門家が使い慣れている製品なら、相談がスムーズです。決算のたびに「この製品はどう操作するのか」から始まるのは、双方にとって負担です。

Odooを検討する場合、顧問の先生が対応できるかは事前に確認すべき点です。

Odooが提供できるもの

では、Odooには何があるのか。

業務全体を、ひとつのデータの上で動かせることです。

領域が分かれていると何が起きるか

国産パッケージは、領域ごとに深く作り込まれています。その代わり、領域をまたぐと連携が必要になります。

  • 販売管理の数字を、会計へ渡す
  • 在庫の動きを、原価に反映する
  • 給与の情報を、案件の原価に紐づける

この連携は、多くの場合で人の作業か、個別の連携の仕組みになります。

システムが3つ4つと増えると、つなぎ目もその分だけ増えます。

Odooの場合

受注が在庫を引き当て、出荷が請求になり、会計に反映される。この間に転記が入りません。

案件に工数と経費が積み上がり、原価が見えます。詳しくは Odooのプロジェクト管理(Project) をご覧ください。

「会計が正しくなる」のではなく、「業務がつながる」ことが価値です。

これはトレードオフです

制度対応の深さと業務統合の広さのトレードオフを示した図 日本の制度対応の深さを縦軸、業務統合の広さを横軸として、国産業務パッケージは制度対応が深く、統合型ERPは業務統合が広いという位置づけの違いを示した図です。 どちらかが優れているのではなく、軸が違う 業務統合の広さ → 日本の制度対応の深さ → 国産業務パッケージ 制度対応が深い 領域ごとに導入する 統合型ERP(Odoo) 業務が横につながる 制度対応は確認が必要 併用という選択肢もある

両方を同時に最大化する製品は、現実には存在しません。

日本の制度に深く作り込むほど、その国の商習慣に特化します。業務全体を横につなぐほど、各国の制度対応は汎用的になります。

だから、どちらを優先するかという判断になります。

判断の軸

国産パッケージが向いている場合

  • 業務の中心が会計・給与・就業といったバックオフィス
  • 制度改正への追随を、製品側に任せたい
  • 顧問の税理士・社労士が使い慣れている
  • 領域ごとに完結していて、連携の必要が少ない

Odooが向いている場合

  • 在庫・製造・購買・販売といったモノの流れがある
  • システムが3つ以上に分かれ、つなぎ目に人の作業が残っている
  • 案件ごとの原価を見たい
  • 海外拠点や外貨取引がある

判断の全体像は Odooが向いている企業・向いていない企業 にまとめています。

併用という現実的な構成

実務では、この形がよく選ばれます。

給与と就業は国産パッケージ、モノの流れと販売はOdoo。

理由は明確です。日本の給与計算をOdooで行う前提では考えないほうがよいからです。社会保険料や所得税の計算は、日本固有の要件が多い領域です。

考え方は Odooの人事管理(Employees)Odooの勤怠・休暇管理 にまとめています。

会計をどちらに置くか

ここは会社によって分かれます。

構成向いている状況
会計も国産パッケージ決算・申告の負担を減らしたい。顧問が使い慣れている
会計もOdoo業務データから会計まで一気通貫にしたい

どちらの場合も、連携の設計は必要です。 「併用すれば両方いいとこ取り」ではありません。

ベンチャーネットの立場

奉行シリーズを否定する立場ではありません。

日本の制度に長年向き合ってきた製品には、それだけの蓄積があります。バックオフィスが中心の会社に、無理にERPを勧めることはしません。

ベンチャーネットは、SAP・NetSuite・Odoo・AIスクラッチ開発という4つの選択肢を扱っています。

状況検討したい選択肢
バックオフィス中心。制度対応を製品に任せたい国産パッケージが適する
モノの流れがあり、業務を統合したい中小〜中堅企業Odoo が現実的な選択肢
海外拠点があり、連結決算や高度な内部統制が必要OdooとNetSuiteの違い を参照
業務が固有すぎてパッケージに乗らないAIスクラッチ開発という選択肢

AIスクラッチ開発は、ライセンス費用がかからない代わりに開発費と保守費が別途かかります。判断材料は パッケージERPかスクラッチ開発か に整理しました。

よくある質問

Q1. 長年使ってきた製品から乗り換えるべきですか?

動いているものを、理由なく替える必要はありません。

検討する価値があるのは、業務が広がってシステムが分かれ、つなぎ目に人の作業が増えてきたときです。

乗り換えの判断軸は 脱・大型ERPを検討する中堅企業の進め方 の考え方も参考になります。

Q2. 給与計算はOdooでできますか?

日本の給与計算をOdooで行う前提では考えないでください。

給与は国産パッケージや社労士に任せる構成をおすすめしています。

Q3. 顧問の税理士がOdooを知りません

これは現実的な論点です。事前に相談してください。

会計は既存のまま残し、業務側だけOdooにする構成も選べます。無理に全部を移す必要はありません。

Q4. 帳票は日本の様式にできますか?

調整できる範囲はあります。ただし、どこまで必要かを先に決めてください。

「今と同じ見た目」を最優先にすると、費用と保守負担が増えます。考え方は Odooのカスタマイズはどこまでやるべきか をご覧ください。

Q5. どちらが安いですか?

製品間の金額比較は行いません。 課金の仕組みも必要な範囲も異なるためです。

比べるべきは、ライセンス費用に導入費用と運用にかかる人の時間を加えた総額です。考え方は Odoo導入にかかる費用の構造 をご覧ください。

まとめ

奉行シリーズとOdooは、設計されている前提が違います。

国産パッケージは、日本の制度と商習慣を前提に、領域ごとに深く作り込まれています。

制度改正への追随が製品側で行われる点、顧問の専門家が使い慣れている点。これらは、実務では非常に大きな価値です。

Odooは、業務全体をひとつのデータの上で動かすことを前提に作られています。

在庫、製造、購買、販売、会計がつながり、転記が発生しません。案件の原価も見えます。

そして、これはトレードオフです。 両方を同時に最大化する製品は、現実には存在しません。

日本の制度に深く作り込むほど、その商習慣に特化します。業務を横につなぐほど、各国の制度対応は汎用的になります。

判断の軸は、業務の中心がどこにあるかです。バックオフィスに収まるなら国産パッケージ、モノの流れがあり統合したいならOdoo。

実務では併用もよく選ばれます。給与と就業は国産、モノの流れと販売はOdoo。ただし、連携の設計と保守は必要になります。

もう少し詳しく知りたい方へ

ベンチャーネットは、ERP導入支援を手がける会社です。SAP・NetSuite・Odoo・AIスクラッチ開発という4つの選択肢を扱っているため、特定の製品に偏らない立場でご提案できます。

動いているものを、理由なく替える提案はしません。 「どの業務をどちらに置くか」の切り分けからご相談を承っています。

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この記事を書いた人

持田 卓臣(もちだ たくおみ)
株式会社ベンチャーネット 代表取締役

ヒューレット・パッカード社でITコンサルタントとして従事した後、2005年に株式会社ベンチャーネットを設立。
Oracle NetSuite Solution Provider Partner として、中堅・中小企業向けクラウドERP「NetSuite」の導入・運用支援を提供しています。
SEO・広告・SNS・ウェブ・MA・SFAと一気通貫で培ってきたデジタルマーケティング領域の業務知見を活かし、NetSuiteを軸とした経営DXを支援しています。
著書:『普通のサラリーマンでもすごいチームと始められる レバレッジ起業「バーチャル社員」があなたを救う』(KADOKAWA、2020年)

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