Odooのイベント管理(Events)|申込から当日の受付、その後の商談までを1本にする

セミナーや展示会を開いたあと、こうなっていないでしょうか。

申込はWebフォームから来た。名簿はExcelに書き写した。当日の受付リストは、その前日に印刷した。参加費の請求は経理に別途依頼した。

そして終わったあと。参加者リストは、フォルダの中で眠ります。

数か月後に営業から「あのセミナーに来ていた人ですよね」と聞かれても、すぐには答えられません。イベントの成果は、たいてい終わった直後ではなく、数か月後に現れるのに。

この記事では、Odoo(オドゥー:オープンソース由来の統合業務アプリ群)のイベント管理を、機能の各論として整理します。

先にお伝えします。この機能の価値は、当日の運営ではありません。

目次

分断されているのは「申込・名簿・請求・その後」

構造から見てください。

イベントの申込から事後フォローまでが分断されている状態と、つながっている状態の比較図 左側はWebフォームの申込、Excelの名簿、別途依頼する請求、フォルダに眠る参加者リストが分断された状態。右側は申込が参加者として記録され、チケットと請求がつながり、参加者が顧客データの一部として残り、その後の商談に接続する状態を示しています。 それぞれ別々に動く 1本につながる 申込はWebフォーム 名簿はExcelに書き写す 請求は経理へ別途依頼 受付リストは前日に印刷 終わると名簿が眠る 数か月後に照会できない 成果が測れない 申込がそのまま参加者になる チケットと請求がつながる 当日の受付も同じ画面 参加者が顧客データに残る 数か月後に照会できる 「あの回の参加者」で絞り込める その後の受注まで追える

分断の本当の損失は、当日の手間ではありません。

終わったあとに追いかけられないことです。イベントの成果は数か月後に出るのに、その頃には名簿がどこにあるか分からなくなっています。

イベント管理でできること

Odoo公式ドキュメントによれば、次のようなことができるとされています(2026年8月確認)。

イベントの作成

  • 対面のイベントとオンラインのイベントを作成できる
  • テンプレートから作れる。毎回同じ設定を繰り返さなくてよい
  • 会場、日程、責任者などを設定できる
  • 申込数の上限を設定できる

チケットと申込

  • チケットの種類(料金区分)を複数作れる
  • 申込者の情報を、参加者として記録する
  • 参加者向けのバッジ(名札)を出力できる(用紙の形式を選べる)

当日の運営

  • 受付の機能がある。参加者を確認して入場を記録できる
  • 講演(トラック)やブース、スポンサーといった要素も設定できる

販売との接続

Odoo公式ドキュメントによれば、設定で次のような販売経路を有効にできるとされています。

設定内容
受注書での販売販売管理アプリの通常の受注として、チケットを売る
POSでの販売店舗のレジでチケットを売る
オンライン販売自社サイトからチケットを売る

つまり、有料イベントのチケットは「商品」として扱われます。 請求と会計に、通常の受注と同じようにつながります。

価値が出るのは、終わったあとです

もう少し具体的に見てください。

イベント参加者が顧客データに残ることで事後の追いかけが可能になる流れの図 参加者の記録が顧客データの一部として残ることで、参加後のお礼とアンケート、関心を示した人への案内、数か月後の商談時に参加履歴を参照できることの3つがつながる流れを示しています。 当日で終わらせないための構造 参加者が顧客データに残る どのイベントに来たかも記録 直後(数日以内) お礼のメールを送る アンケートで感想を聞く 記憶が新しいうちに 数週間後 関心を示した人へ 個別の案内を送る 案件として記録する 数か月後 問い合わせが来たとき 参加履歴が見える 話の前提が変わる 名簿がExcelで眠っていると、3つとも起きません 同じ場所にあることが、事後の追いかけの前提になります

数か月後がいちばん効きます

問い合わせが来たとき、その相手が半年前のセミナーに来ていたと分かる。 これが実務上いちばん価値があります。

「以前ご参加いただいた件ですね」と言えるかどうかで、最初の会話が変わります。

Excelの名簿では、この照会ができません。 誰も見に行かないからです。

当日の受付について

現場の話も書いておきます。

受付は、イベントで最も混雑が起きる場所です。開始15分前に人が集中します。

決めておくこと

項目決めること
確認の方法名前で探すのか、申込番号や二次元コードで照合するのか
通信環境会場の回線が不安定な場合にどうするか
当日申込受け付けるのか。受け付けるなら誰が入力するのか
予備の手段印刷した名簿を用意しておくか

4つ目を軽く見ないでください。 会場の通信が不安定な例は実際にあります。

紙の名簿を予備として持っておくことは、後ろ向きな判断ではありません。

バッジ(名札)について

参加者向けのバッジを出力できるとされています。用紙の形式も選べます。

ただし、印刷の運用は事前に試してください。 当日の朝に初めて印刷して形式が合わない、という事故は起こり得ます。

有料イベントの場合の注意

チケットを有料にすると、販売と会計の領域に入ります。

確認すべきこと

  • キャンセルと返金の扱いをどうするか
  • 請求書の発行をいつ、誰が行うか
  • 適格請求書(インボイス)の要件を満たす形になっているか
  • 当日の現地払いを受け付けるか

とくに3つ目は、税務に関わる領域です。 この記事では判断しません。

考え方は Odooのインボイス制度(適格請求書)対応 にまとめています。公開前に、税理士など専門家に確認してください。

無料イベントであれば、これらの検討は不要です。まずは無料イベントから始めて、運用を確かめる進め方をおすすめします。

Community版とEnterprise版の違い

Odooには、無料の Community版 と有償の Enterprise版 があります。

Community版はオープンソースとして無料で使えます。ただし、サーバの用意・アップデート・障害対応は自社の責任になり、公式サポートの対象外です。

イベント管理アプリは、Community版でも利用できるとされています。

ただし、組み合わせるアプリによってはEnterprise版が必要になります。

組み合わせたい機能
イベント管理そのものCommunity版で利用可
Eメールでの案内(基本機能)Community版で利用可
反応に応じた自動フォローEnterprise版
SNSでの告知Enterprise版

「イベント管理はCommunity版で足りるが、周辺まで含めるとEnterprise版が要る」という判断になりやすい領域です。

どの機能がどちらの版で使えるかはバージョンによって変わります。 検討時には必ず対象バージョンで確認してください。

詳しくは Odoo Community版とEnterprise版の違い をご覧ください。

他のアプリとのつながり

アプリつながり方
Eメールマーケティング案内の配信と、参加後のフォロー
CRM参加者を案件として記録する。問い合わせ時に参加履歴を参照する
アンケート参加後の感想を集める
販売管理・会計有料チケットの受注と請求

詳細はそれぞれの記事にまとめています。

入れないほうがよい場合

正直に書きます。

状況判断
イベントは年に1回。参加者も数十名入れる必要はありません
大規模な展示会の運営そのものが主目的専用のイベント管理サービスを検討
セミナーを定期的に開いている効果が出やすい領域です
参加者から商談につなげたい統合の価値が出ます

1行目を強調します。年に1回なら、Excelと印刷した名簿で十分です。

この機能が効くのは、繰り返し開催する場合です。テンプレートで設定を使い回せ、過去の参加者を横断して見られるようになります。

運営そのものは扱いません

この記事で扱っているのは、申込・名簿・受付・請求の管理です。

会場の手配、配信の技術、当日の進行。これらはOdooの領域ではありません。大規模イベントの運営を主目的とするなら、専用のサービスのほうが向いています。

よくある質問

Q1. オンラインセミナーにも使えますか?

対面とオンラインの両方のイベントを作成できるとされています。

ただし配信そのものは、別のサービスを使うのが一般的です。 Odooが扱うのは申込と参加者の管理だと考えてください。

Q2. 申込フォームは自社サイトに置けますか?

Odooのサイト作成機能と組み合わせると、自社サイト上に申込ページを持てるとされています。

サイト作成機能の詳細は OdooのWebサイトビルダー で解説しています。実際の挙動は、対象バージョンでの確認をおすすめします。

Q3. 参加者に一斉連絡できますか?

イベントごとの参加者に対して、案内を送る運用ができます。

開催前のリマインドは、当日の欠席を減らすうえで効果があります。 送るタイミングを事前に決めておいてください。

Q4. 過去のイベントの参加者リストを取り込めますか?

連絡先として取り込むことは可能です。

ただし、配信の同意をどう扱うかを先に確認してください。 過去の参加者に案内を送ってよいかは、申込時の説明によって変わります。

Q5. 当日のキャンセルはどう扱いますか?

運用として決めておく必要があります。

無料イベントなら記録の修正だけで済みます。有料の場合は、返金の扱いを事前に定めてください。

まとめ

Odooのイベント管理の価値は、当日の運営ではありません。

終わったあとに追いかけられることです。

申込がそのまま参加者として記録され、その参加者が顧客データの一部として残る。だから、数か月後に問い合わせが来たときに「以前ご参加いただいた件ですね」と言えます。

Excelの名簿では、この照会ができません。誰も見に行かないからです。

イベントの成果は、たいてい終わった直後ではなく数か月後に現れます。 その頃まで記録が生きているかどうかが、分かれ目になります。

当日については、受付の混雑への備えを決めておいてください。確認の方法、通信環境、当日申込の扱い、そして予備の紙の名簿。紙を用意することは後ろ向きな判断ではありません。

有料にする場合は、販売と会計の領域に入ります。キャンセルと返金、請求書の発行、適格請求書の要件。 税務に関わる部分は、専門家に確認してください。まずは無料イベントから始める進め方をおすすめします。

最後に。年に1回の開催なら、入れる必要はありません。 この機能が効くのは、繰り返し開催し、参加者から商談につなげたい場合です。

もう少し詳しく知りたい方へ

ベンチャーネットは、ERP導入支援を手がける会社です。SAP・NetSuite・Odoo・AIスクラッチ開発という4つの選択肢を扱っているため、特定の製品に偏らない立場でご提案できます。

「まず無料セミナーで運用を確かめる」といった進め方からご相談を承っています。

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この記事を書いた人

持田 卓臣(もちだ たくおみ)
株式会社ベンチャーネット 代表取締役

ヒューレット・パッカード社でITコンサルタントとして従事した後、2005年に株式会社ベンチャーネットを設立。
Oracle NetSuite Solution Provider Partner として、中堅・中小企業向けクラウドERP「NetSuite」の導入・運用支援を提供しています。
SEO・広告・SNS・ウェブ・MA・SFAと一気通貫で培ってきたデジタルマーケティング領域の業務知見を活かし、NetSuiteを軸とした経営DXを支援しています。
著書:『普通のサラリーマンでもすごいチームと始められる レバレッジ起業「バーチャル社員」があなたを救う』(KADOKAWA、2020年)

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