バーチャル社員とは——FDEが会社につくる「AIの同僚」の全体像

バーチャル社員とは、雇用によらず会社の仕事を一緒に進めてくれる存在のことです。2種類あります。一つは、AIによってひたすらタスクを回すAI社員(AIエージェント)です。もう一つは、AI×人間で成果ベースに自社の資産を築く成果型バーチャル社員(外部のプロやサービス)です。

任せられるのは手を動かす部分で、判断と責任は人に残ります。では、自社のどの仕事から任せればよいのか。実務は12本の記事に分けて書いてあり、どれをいつ読めばよいかを地図にしました。

目次

人は増やせない。でも、仕事は増える

中小企業の経営者から、同じ形の相談を受けます。

売上を伸ばしたい。そのためにやるべきことも見えている。ただ、人がいない。募集しても応募が来ない。来ても、育てる時間がない。かといって、いまの人数では手が回らない。

打ち手は、これまで2つでした。採用するか、外注するか。

採用は時間がかかります。募集から戦力になるまで、早くても半年、業務によっては1年以上。しかも辞められると振り出しに戻ります。

外注は速いのですが、任せられる仕事が限られます。仕様が固まったものは頼めても、「うちのやり方でやってほしい」類の仕事は、説明するほうが早い。

そこに、3つ目の道が現れました。バーチャル社員です。

指示を受けて仕事を進め、社内のやり方を覚えていく。雇用ではないので、いつでも範囲を変えられます。ただし、勝手には動きません。何をどこまで任せるかを、こちら側が決める必要があります。そこが、この道のいちばんの勘所です。

3つの道を並べると、性格の違いがはっきりします。

  • 採用は、判断ごと任せられます。時間はかかりますが、育てば自分で考えて動いてくれる
  • 外注は、仕様が固まった仕事を切り出して渡します。速いかわりに、渡せる仕事の形が決まっている
  • バーチャル社員は、手を動かす部分を任せて、判断はこちらに残します。始めるのは速いが、任せる範囲を毎回こちらが決める

つまり、採用に比べれば手間が残り、外注に比べれば柔軟です。どれが優れているという話ではなく、いま埋めたい穴がどれかで選ぶものだと考えています。判断まで含めて引き受けてくれる相手が要るなら、それは採用です。

何ができて、何ができないか

得意なこと、苦手なこと 得意 ・大量の文書を読んで、整理する ・決まった手順を、同じ質で繰り返す ・下書きを、速く形にする ・時間帯を選ばず作業する ・面倒がらずに、何度でもやり直す =手を動かす部分 苦手 ・書かれていない社内の前提を知る ・間違いの責任を引き受ける ・空気を読んで、途中で止まる ・自分の答えの正しさを保証する ・何を優先すべきかを決める =人が受け持つ部分 苦手を人が埋める前提で設計すると、得意がそのまま戦力になる

図:得意と苦手は、はっきり分かれている。苦手を隠さず設計するほうが早い。

とくに押さえておきたいのが、右の3つ目です。人の新人なら、まずいと思った時点で手を止めて相談します。バーチャル社員は止まりません。頼まれた範囲を、頼まれたとおり進めます。

だから、任せる前に線を引きます。逆に言えば、線さえ引けば安心して任せられます。

12本の地図

バーチャル社員の実務は、12本の記事に分けて書いてあります。全部を順に読む必要はありません。いまの状況に近いところから開いてください。

① 始める前に決めること

任せ始める前に決めておくことが3つあります。ここを飛ばすと、あとで手戻りになります。

迷ったら、2本目から読んでください。線が引けると、その後の判断がずいぶん楽になります。

② 日々の運用

任せ始めると、細かいところでつまずきます。そのときに開く3本です。

③ 続けて、広げる

1つの仕事が回り始めてからの3本です。ここを飛ばすと、最初の1つで止まります。

④ 立場から考える

手順ではなく、自分の状況から考えたいときの3本です。

12本の外側に:作り方と実例

「どう組み立てるか」と「他社はどこまで任せているか」は、別のハブにまとめています。

どこから読むか

状況別に、入口を3つ用意しました。

状況別の、読み始め方 まだ何も 任せていない 最初の仕事を選ぶ 3本の線を引く 最初の1か月 任せてみたが うまくいかない 頼み方の型を見る 止まったときの決め 手直しを戻す 1つは回っている 次をどうするか 15分で振り返る 次の仕事を決める 社長自身の仕事

図:状況別の3つの入口。どこから入っても、最後は次の仕事の話につながる。

人に残る仕事

バーチャル社員が増えても、動かないものがあります。判断と責任です。

何を優先するか。この見積を出すか。この取引を続けるか。こうした判断は、AIが下書きを作れても、決めるのは人です。決めた結果を引き受けるのも人です。

この点はAIに任せる仕事、手放してはいけない仕事に書いています。任せ方そのものの考え方はAIエージェントに仕事を任せる考え方にあります。

そして、なぜバーチャル社員という言葉を使うのか、その背景については「バーチャル社員」は、AIエージェントになったをお読みください。2020年に提唱した考え方を、6年後に語り直したものです。この記事が実務の入口なら、そちらは思想の入口にあたります。

よくある質問

Q. バーチャル社員と、AIエージェントは同じものですか?
A. 重なりますが、同じではありません。バーチャル社員は「雇用によらず仕事を進めてくれる存在」という位置づけの言葉で、業務委託のプロも含みます。AIエージェントは、そのうちAIが担う部分です。

Q. 何人分の働きをしますか?
A. 仕事の種類によって差が大きいので、人数に換算しない見方をおすすめします。見るのは、どの業務がどれだけ短くなったか。測り方は振り返りの記事に書いてあります。

Q. 情報が漏れませんか?
A. どのサービスを、どの契約で使うかによります。ここは会社としてのルールが必要な領域なので、業務単位の話とは分けて考えてください。

まとめ:手順は書けるが、線は会社ごとに違う

バーチャル社員は、採用でも外注でもない3つ目の道です。得意なのは手を動かす部分、苦手なのは前提を知ることと責任を引き受けること。だから、任せる範囲を先に決める必要があります。

ベンチャーネットは、中小・中堅企業向けにFDE型の伴走支援を行う会社です。数字の基盤(NetSuiteまたはOdoo)と言葉の基盤(Notion)の上でAIを動かし、業務と経営を組み替える。これをAX(AIトランスフォーメーション=AIを前提に業務と経営を組み替えること)と呼んでいます。バーチャル社員は、その組み替えを担う手です。

ここに並べた12本を読めば、手順はひととおり分かります。ただ、読んでも決まらないことが1つあります。自社のどの仕事を、どの線の内側に置くかです。

線を引く基準そのものは単純で、「間違えたとき、誰が謝りに行くか」だけです。難しいのは、自社の仕事を並べたときに、どれが社外に触れているのかが中からは見えにくいことです。長く続けている業務ほど、お客様に届いている自覚が薄れていきます。外から一度並べてもらうと、線は驚くほど引きやすくなります。

「どの仕事から任せればいいか分からない」という段階で構いません。業務を並べて、線を引くところから一緒にやれます。売り込みではなく、まず壁打ちから。

こうした伴走の考え方の土台は、FDE(Forward Deployed Engineer)とはにまとめています。

次に読むなら

「まず何から始めるか知りたい」
→ バーチャル社員に、最初に任せる仕事を選ぶ——切り出しの4つの問い

「任せる範囲をどう決めるか」
→ バーチャル社員に決めさせないことを、先に決める——社長が引く3本の線

「この言葉の背景を知りたい」
→ 「バーチャル社員」は、AIエージェントになった——『レバレッジ起業』から6年

「組織の形から考えたい」
→ 人を雇う前に、まずAI社員を作る——少数正社員×成果型バーチャル社員×AI社員の組織へ

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この記事を書いた人

持田 卓臣のアバター 持田 卓臣 株式会社ベンチャーネット代表取締役

株式会社ベンチャーネット 代表取締役
2005年に株式会社ベンチャーネットを設立後、SEOをはじめとするデジタルマーケティング領域のコンサルティングサービスを展開
広告・SNS・ウェブ・MA・SFAと一気通貫で支援を行っています
著書に『普通のサラリーマンでもすごいチームと始められる レバレッジ起業 「バーチャル社員」があなたを救う』(KADOKAWA、2020年)

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