Odooの歴史|TinyERPからOdooへ、名前が変わった理由

Odooを調べていると、「OpenERP」という別の名前に出くわすことがあります。

古い記事やフォーラムの投稿では、こちらの名前で書かれているためです。

「同じものなのか、別物なのか」と迷った方もいるかもしれません。

同じものです。 ただし、名前が変わった背景には理由があります。そしてその理由を知ると、いまの製品の形が理解しやすくなります。

この記事では、年表を並べるだけでなく、なぜそうなったのかを整理します。

目次

3つの名前と、その変遷

TinyERPからOpenERP、そしてOdooへの名称の変遷を示した図 2002年に開発が始まったTinyERPが2005年にリリースされ、2008年にOpenERPへ、2014年にOdooへと名称を変更した流れと、それぞれの時期に何を目指していたかを示した図です。 名前が変わるたびに、目指すものが広がった TinyERP 2002年 開発開始 2005年 リリース 小さく、軽いERP OpenERP 2008年 改称 資金調達と拡大 本格的なERPへ Odoo 2014年 改称 ERPの枠を超える 業務アプリの集合へ 名前から「ERP」が消えたことに、意味があります 扱う範囲がERPを超えたため 創業者はベルギーの Fabien Pinckaers 氏

TinyERP(2002年〜)

Odoo公式サイトの創業者略歴によれば、TinyERPは2002年に始まったとされています。開発したのは、ベルギーの Fabien Pinckaers 氏です。

そして2005年、オープンソースのソフトウェアとしてリリースされました。

「Tiny(小さい)」という名前が示すとおり、軽くて扱いやすいERPを目指したものでした。当時のERPは大企業向けの重厚なものが中心で、中小企業には手が届きにくい状況がありました。

OpenERP(2008年〜)

2008年、OpenERP へと改称されます。

「Tiny(小さい)」から「Open(開かれた)」へ。小ささを売りにする段階から、オープンソースであることを前面に出す段階へ移ったと読み取れます。

この時期に資金調達が行われ、開発体制が拡大していきました。

Odoo(2014年〜)

そして2014年、Odoo へと改称されます。

ここがいちばん重要な転換点です。

なぜ名前から「ERP」を外したのか

扱う範囲がERPの枠を超えて広がったことを示した図 当初は会計・在庫・販売といった基幹業務を扱っていたが、ウェブサイト作成、eコマース、マーケティング、ヘルプデスクなど、従来のERPの枠外にある領域まで扱うようになったことを示した図です。 扱う範囲が、ERPの枠を超えた Odooが扱う範囲 ウェブサイト・EC・マーケティング・ヘルプデスク・人事・プロジェクト 従来のERPの範囲 会計・在庫・購買・販売・製造 基幹業務の統合管理 「ERP」という言葉では、外側の領域を説明できなくなった

製品の性格が変わったからです

従来のERPは、会計、在庫、購買、販売、製造といった基幹業務を統合するものでした。

しかしOdooは、その外側まで扱うようになります。

  • ウェブサイトの作成
  • eコマース
  • マーケティング
  • ヘルプデスク
  • 人事、採用
  • プロジェクト管理

これらは、従来のERPの定義には収まりません。

「ERP」という言葉を名前に残したままだと、製品の実態を説明できなくなっていたわけです。

この経緯が、いまの構造につながっています

Odooが「アプリの集合体」という形をとっているのは、この歴史の結果です。

必要なアプリだけを選んで使う。あとから追加する。この設計は、扱う範囲が広がっていく過程で自然に生まれたものと考えられます。

現在の構成は Odooとは?機能・特徴・料金・向いている企業をやさしく解説 にまとめています。

オープンソースの位置づけも変わってきた

もうひとつ、歴史を通じて変化したものがあります。オープンソースとの向き合い方です。

最初は「全部オープン」でした

TinyERPは、オープンソースのソフトウェアとして公開されました。

大企業向けの高価なERPに対する、代替としての位置づけです。

現在はオープンコアです

いまのOdooは、中核部分をオープンソースで公開し、その外側に有償版を持つ構造になっています。

  • Community版:無料。オープンソースとして公開
  • Enterprise版:有償。追加のアプリと公式サポート

この形を「オープンコア」と呼びます。

なぜこの形になったのか

推測を避けて、構造として説明します。

開発と保守を継続するには、原資が必要です。 有償版の収益が、その原資になります。

一方で、中核が公開されていることには意味があります。ソースコードを確認でき、特定の事業者にしか触れない状態になりにくいという性質が残ります。

「全部無料が良い」とも「有償の裏付けがあるほうが安心」とも言えます。 これは思想の問題です。

詳しくは Odooのライセンスを解説Odoo Community版とEnterprise版の違い をご覧ください。

歴史を知ると、何が見えるか

「歴史を知って何になるのか」と思われるかもしれません。実務上の意味が3つあります。

(1) 古い情報を見分けられる

インターネット上には、OpenERP時代の情報がいまも残っています。

  • 画面の見た目が違う
  • 機能の名前が違う
  • ライセンスの説明が現在と異なる

「OpenERP」という単語が出てくる記事は、少なくとも2014年より前の情報を含んでいます。

これは、情報を読むときの目安になります。

(2) 変化の速さが分かる

Odooは原則として年1回、メジャーバージョンが上がります。

20年以上にわたって、この開発ペースが続いてきました。製品として活発に更新されていることは、選定時の安心材料のひとつです。

一方で、バージョンアップへの追随が必要という意味でもあります。考え方は Odooのバージョンアップとサポート期間 にまとめています。

(3) 「なぜアプリ単位なのか」が理解できる

他のERPと比べると、Odooのアプリ単位という構成は特徴的です。

この形は、扱う範囲が広がっていく歴史の中で生まれました。 最初から設計されたというより、必要に応じて増えてきた結果と見るほうが自然です。

だから、1つのアプリから始めて、必要に応じて足していくという使い方ができます。

考え方は Odoo One App Freeとは? をご覧ください。

日本での歩みについて

正直にお伝えします。Odooの日本での歴史は、まだ浅いのが実情です。

  • 日本語の情報は限られている
  • 導入事例の公開も多くない
  • 支援できる事業者も限られる

世界的には長い歴史を持つ製品ですが、日本市場での蓄積は発展途上です。

この点は、検討時のリスクとして正直に見ておくべきだと考えています。

一方で、日本語のドキュメントは整備が進んでいます。 学習の環境については Odooの学習リソースまとめ にまとめました。

よくある質問

Q1. OpenERPとOdooは同じものですか?

同じ製品です。 2014年に名称が変更されました。

ただし、その後もバージョンアップが続いているため、OpenERP時代の情報は現在と異なる部分があります。

Q2. なぜ「Odoo」という名前なのですか?

Odoo社によれば、当時のインターネット企業の命名の流儀を参考にしたとされています。

特定の意味を持つ略語ではありません。

Q3. 開発は今も続いていますか?

続いています。原則として年1回、メジャーバージョンが公開されています。

サポートの対象は新しい数世代に限られるため、古いバージョンを使い続けると対象外になります。詳しくは Odooのバージョンアップとサポート期間 をご覧ください。

Q4. 開発元はどこの会社ですか?

ベルギーで創業した企業です。創業者は Fabien Pinckaers 氏で、現在も経営に関わっています。

Q5. 突然サービスが終わることはありませんか?

その可能性がないとは言い切れません。 これはどのソフトウェアにも当てはまります。

ただし、Odooの中核部分はオープンソースとして公開されています。仮に会社の方針が変わっても、公開されたコードが消えるわけではありません。

この点は、完全に非公開の製品との違いです。考え方は オープンソースERPとは? にまとめています。

まとめ

Odooには、3つの名前があります。TinyERP、OpenERP、そしてOdoo。

2002年に開発が始まり、2005年にオープンソースとしてリリース。2008年にOpenERPへ、2014年にOdooへと改称されました。

注目すべきは、名前から「ERP」が消えたことです。

これは製品の性格が変わったためです。会計や在庫といった基幹業務だけでなく、ウェブサイト、EC、マーケティング、ヘルプデスクまで扱うようになりました。「ERP」という言葉では、実態を説明できなくなったわけです。

そして、この経緯がいまの構造につながっています。 アプリを選んで組み合わせる形は、範囲が広がる過程で生まれたものです。

オープンソースとの向き合い方も変化しました。現在はオープンコア ―― 中核を公開し、外側に有償版を持つ形です。開発を継続する原資と、中身を確認できる性質を両立させる構造といえます。

歴史を知る実務上の意味は3つあります。古い情報を見分けられること。変化の速さが分かること。そして、なぜアプリ単位なのかが理解できること。

最後に正直な点を。日本での歴史は、まだ浅いのが実情です。 世界的な実績と、日本市場での蓄積は別に見てください。

もう少し詳しく知りたい方へ

ベンチャーネットは、ERP導入支援を手がける会社です。SAP・NetSuite・Odoo・AIスクラッチ開発という4つの選択肢を扱っているため、特定の製品に偏らない立場でご提案できます。

製品の歴史や知名度より、「自社の業務に合うか」が判断の軸だと考えています。 その切り分けからご相談を承っています。

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この記事を書いた人

持田 卓臣(もちだ たくおみ)
株式会社ベンチャーネット 代表取締役

ヒューレット・パッカード社でITコンサルタントとして従事した後、2005年に株式会社ベンチャーネットを設立。
Oracle NetSuite Solution Provider Partner として、中堅・中小企業向けクラウドERP「NetSuite」の導入・運用支援を提供しています。
SEO・広告・SNS・ウェブ・MA・SFAと一気通貫で培ってきたデジタルマーケティング領域の業務知見を活かし、NetSuiteを軸とした経営DXを支援しています。
著書:『普通のサラリーマンでもすごいチームと始められる レバレッジ起業「バーチャル社員」があなたを救う』(KADOKAWA、2020年)

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