ERPのライセンス費用を削減する見直し方|5つの手順と4つの選択肢【2026年版】

基幹システムの契約更新の案内が届き、請求額を見て手が止まる。「基幹システムの費用が、事業の規模に対して重い」という声を、経営者から聞くことが増えています。

ただ、重さの原因が分かれば、打てる手は見えてきます。乗り換えずに下がることもあります。規模に合う製品へ移れば、費用の発生のしかた自体が変わります。

ERPのライセンス費用の見直しは、費用をライセンス・保守・運用・改修に分け、どこが重いかを切り分けることから始まります。選択肢は、SAP、NetSuite、Odoo、AIスクラッチ開発(開発費・保守費は別途かかる)の4つです。製品を選ぶのは最後です。

金額を並べて安い・高いを比べることはしません。見るべきは課金の構造です。たとえばOdooの有償プランは、ユーザー数で料金が決まり、機能を足してもライセンスの考え方は変わりません(4つの選択肢と課金構造)。

費用の構造が分かると、たとえば次のことを判断できます。

  • 製品はそのままで、契約数とモジュールの整理で下げられるか
  • 規模に合う製品へ移ったとき、何が変わり、何を失うか
  • 無料版やスクラッチ開発で、費用がどこに置き換わるか
  • 移行の一時費用を、減る年間費用で回収できるか

ただし、連結決算・多通貨・監査対応が欠かせない会社では、いまの製品を続ける判断も十分にあり得ます。

では、見直しはどの順序で進めればよいのか。ERP導入支援を手がけるベンチャーネットの手順は、費用の見直しで確かめる5つの順番にまとめました。良い点と注意点は、構造から見直すことの良い点と、気をつけることに並べています。

CommunityとEnterpriseの区別について

Odooには無料のCommunity版と有償のEnterprise版があります。ライセンス費用の見直しでは、この2つの課金構造の違いを押さえておく必要があります。

目次

まずERPの費用の「何が重いのか」を切り分ける

見直しの前に、費用の中身を分解する作業が要ります。基幹システムの費用を形づくるのは、次の要素です。

費用の種類内容
ライセンス費用ソフトウェアを使う権利にかかる費用
保守費用サポートや更新に対する費用
運用費用日々の利用を支える人件費・委託費
改修費用業務変更に伴う設定変更や開発

どこが重いかで、打つべき手はまったく変わります。

ライセンスそのものが重いのか。使っていない機能に払い続けているのか。改修のたびに費用が出る構造なのか。ここを切り分けずに製品を替えると、同じ問題が繰り返されます。

「費用が重い」の原因を分解する 基幹システムの費用をライセンス・保守・運用・改修に分解する。ライセンスは規模の見直し、保守は契約の見直し、運用は定着支援で改善する。改修費用は原因が設計にあり、製品を替えても解決しない。 「費用が重い」の原因を分解する ライセンス費用 ソフトウェアを使う権利 → 規模の見直しで改善 保守費用 サポートや更新に対する費用 → 契約の見直しで改善 運用費用 日々の利用を支える人件費・委託費 → 定着支援で改善 改修費用 業務変更に伴う開発 → 原因は設計。製品を替えても解決しない ※ 原因を切り分けないまま製品を替えると、 新しい環境で同じ問題が起きます
「費用が重い」の原因を分解する

ライセンスは規模の見直し、保守は契約の見直し、運用は定着支援で改善できます。改修費用だけは原因が設計にあり、製品を替えても解決しません。

ERPの費用が重くなる、よくある3つのパターン

規模に対して製品が大きすぎる

導入時は成長を見込んで、上位の製品を選んだ。しかし、想定した規模に至っていない。あるいは事業構造が変わり、当時ほどの機能が要らなくなった。

この場合は、規模に合った選択肢への見直しが検討対象になります。

使っていない機能に払っている

全社にライセンスを配ったが、実際に使うのは一部の部署だけ。契約したモジュール(機能のまとまり)のうち、稼働しているのは半分以下。

この場合は、製品を替える前に、契約内容の見直しで改善する余地があります。NetSuiteを使っている場合のライセンスの組み方は、NetSuiteのタスク専用ライセンスとはで取り上げました。

改修のたびに費用がかさむ

独自の作り込みが多く、業務が変わるたびに開発費用が出る。バージョンアップのたびに、確認と修正の費用もかかる。

この場合、原因はライセンスではなく、設計にあります。同じ設計思想で作れば、製品を替えても同じことが起きます。

自社はどのパターンか:会議で使うチェックリスト

次の項目を、経理・情報システム担当と一緒に確かめてみてください。

  • □ ライセンスの契約数と、直近3か月に実際にログインした人数を比べたことがある
  • □ 契約しているモジュールのうち、毎月使っているものを挙げられる
  • □ 直近の改修やバージョンアップで、何にいくら払ったかを説明できる
  • □ いまの製品でなければ回らない業務(連結決算・多通貨など)を特定している
  • □ 3〜5年後の拠点数・社員数・事業の姿を、社内で共有している

チェックが付かない項目が、まず調べるべき場所です。付かないまま製品の比較に進むと、判断の前提がぶれます。

ERPの4つの選択肢と、その課金構造

ベンチャーネットは、基幹システムを4つの選択肢で捉えています。費用の発生の仕方は、選択肢ごとに異なります。

選択肢課金の構造
SAP大規模向け。ライセンスと保守料の体系
NetSuiteユーザー数とモジュール構成に応じたクラウド契約
Odooユーザー単位のサブスクリプション。無料版という選択肢もある
AIスクラッチ開発継続ライセンスではなく、自社資産としての開発。開発費・保守費は別途かかる

上位ERPから下の段へ移る場合

規模に対して製品が大きすぎる場合、下の段への移行が検討対象になります。

このとき変わるのは、金額の大小だけではありません。費用の発生のしかた自体が変わります。

たとえばOdooの有償プランは、アプリの数ではなくユーザー数で料金が決まります。機能を足しても、ライセンスの考え方は変わりません。詳しくはOdooの料金体系の記事で解説しています。

一方で、上位のERPが持つ機能(連結管理、高度な統制など)は失われます。それが自社に必要かどうかが、判断の分かれ目です。

無料版という選択肢

Odooには、無料のCommunity版があります。ライセンス費用はかかりません。

ただし、費用が消えるわけではありません。費用が「ライセンス」から「人と時間」に置き換わる構造です。

  • サーバーの費用
  • 構築・保守の工数
  • バージョンアップ対応の工数
  • 不具合対応の時間

社内に技術者がいて余力があれば、成立します。いなければ、外部に依頼する費用が発生します。

基幹システムの4つの選択肢 企業規模と要件に応じた4つの選択肢。下からAIスクラッチ開発(小規模・固有業務)、Odoo(中小〜中堅企業)、NetSuite(中堅・成長企業)、SAP(大企業・グローバル)の順に対象規模と要件の複雑さが大きくなる。優劣ではなく、規模と要件に合うかで選ぶ。 基幹システムの4つの選択肢 対象規模・要件の複雑さ SAP 大企業・グローバル NetSuite 中堅・成長企業 Odoo 中小〜中堅企業 AIスクラッチ開発 小規模/固有業務 ※ 優劣ではなく、自社の規模と要件に どれが合うかで選ぶ
基幹システムの4つの選択肢

4つを並べる軸は、対象とする規模と要件の複雑さです。小規模・固有業務ならAIスクラッチ開発、中小〜中堅企業ならOdoo、中堅・成長企業ならNetSuite、大企業・グローバルならSAP。優劣ではなく、どれが自社に合うかで選びます。

スクラッチ開発という選択肢

業務が固有すぎてパッケージに乗らない場合、必要な機能だけを開発する選択肢があります。継続的なライセンス費用ではなく、自社の資産として持つ形です。

ただし、ここは誤解が起きやすい部分です。ライセンスがない=安い、ではありません。開発費用が発生し、その後の保守費用も必要です。作った後に誰が面倒を見るのかまで含めて、費用を考える必要があります。作った後の維持の負担は、増えたツールを「動かし続ける」コストの話で扱っています。

状況別に、最初に検討すること

いまの状況最初に検討すること
契約数と実際の利用者数に開きがある製品はそのままで、契約数とモジュールの整理
連結・多通貨・高度な統制は使っていない規模に合う製品(NetSuite・Odooなど)への見直し
連結・多通貨・監査対応が欠かせないいまの製品か、同等の要件を満たす製品での比較
社内に技術者がいて、保守を担えるCommunity版を含めたOdooの検討
業務が固有で、どのパッケージにも乗らない開発費・保守費まで含めたAIスクラッチ開発の検討

ベンチャーネットがERP費用の見直しで確かめる5つの順番

ベンチャーネットは、NetSuite・Odoo・AIスクラッチ開発を扱い、SAPからのリプレイスにも対応しています。AIスクラッチ開発はライセンスが不要な代わりに、開発費・保守費が別途かかります。どの選択肢にも寄せる理由がないため、次の順番で確かめます。

ステップ1:費用の内訳と使われ方を出す

ライセンス・保守・運用・改修の内訳を出します。あわせて、契約数のうち実際に使っているのは何人分か、どのモジュールが稼働しているかを確認します。

意外に、この段階で改善の余地が見つかることがあります。そうであれば、乗り換えの話はいったん置きます。

ステップ2:譲れない要件を洗い出す

いまの製品で「これがあるから助かっている」機能を挙げます。

連結決算、多通貨対応、監査対応。これらが必要なら、下の段に移ると業務が回らなくなります。その場合は、いまの製品を続ける判断も十分にあり得ます。

ステップ3:標準機能に業務を合わせられるかを見る

改修費が重い会社では、作り込みの一つひとつが本当に必要かを確かめます。Fit to Standard(標準機能に業務を合わせる考え方)で進められるかどうかで、移行後の費用の性質が変わるためです。

ステップ4:移行の一時費用と、減る年間費用を並べる

乗り換えには、次の負担がかかります。

  • データ移行
  • 業務の再設計
  • 現場の再教育
  • 一時的な業務停止のリスク

削減できる年間費用と、移行にかかる一時費用を並べて比べます。数年かけて回収できるかどうかが、判断の基準です。

ステップ5:3〜5年後から逆算する

最後に、将来から見直します。

いま小さくても成長が見込まれるなら、下の段に移ってから、また上に戻ることになります。二度の乗り換えは、二度の負担です。判断の基準は、いまの規模ではなく3〜5年後の姿です。

どの段階でも、合わない選択肢は合わないとお伝えします。

ライセンス費用の見直しで失敗しないための注意点

金額だけで判断しない

ライセンス費用が下がっても、運用の負担が増えれば総額は変わりません。

比べるなら、「自社に必要な業務範囲を満たすのに、総額でいくらかかるか」を同じ条件で並べる必要があります。ライセンス以外にかかる費用の洗い出し方は、NetSuiteのライセンスは高い?──「見えないコスト」と経営判断でNetSuiteを例に整理しています。

原因が設計にある場合、製品を替えても解決しない

改修のたびに費用がかさむ状態は、多くの場合、作り込みすぎが原因です。

同じ思想で新しい製品に作り替えれば、数年後に同じ問題が起きます。乗り換えは、業務と設計を見直す機会にすることが大切です。

「安くする」を目的にしない

費用の見直しは、手段です。目的は、事業に合った基盤を持つことです。

安くすることだけを目的にすると、必要な機能まで削ってしまい、業務が回らなくなることがあります。

構造から見直すことの良い点と、気をつけること

費用を分解し、課金の構造から選ぶ進め方には、得られることと、先に覚悟しておきたい負担があります。

良い点は、次の5つです。

  • 乗り換えずに下がることがある:使われていないライセンスの整理、契約モジュールの見直し、契約条件の交渉で改善する場合がある
  • 同じ問題を繰り返しにくい:原因が設計にあると分かれば、製品を替えても解決しない改修費用に手を打てる
  • 費用の増え方が変わる:たとえばOdooの有償プランは、ユーザー数で料金が決まり、機能を足しても考え方は変わらない
  • 規模と要件に合う製品を選べる:4つの選択肢を、自社の規模と要件に合うかで比べられる
  • 二度の乗り換えを避けられる:3〜5年後の姿から逆算して決める

気をつけることは、次の4つです。

  • 移行には一時費用がかかる:データ移行・業務の再設計・現場の再教育に加え、一時的な業務停止のリスクもある
  • 上位ERPの機能は失われる:連結管理や高度な統制が自社に必要かを、先に確かめる
  • 無料版でも費用は消えない:Community版は、費用が「ライセンス」から「人と時間」に置き換わる
  • スクラッチ開発にも費用がかかる:ライセンスがない代わりに、開発費と保守費が別途かかる

両方を1枚の図に並べました。

構造から見直すことの良い点と、気をつけること 良い点は、乗り換えずに下がることがある、同じ問題を繰り返しにくい、費用の増え方が変わる、規模と要件に合う製品を選べる、二度の乗り換えを避けられること。気をつけることは、移行には一時費用がかかる、上位ERPの機能は失われる、無料版でも費用は消えない、スクラッチ開発にも費用がかかること。 構造から見直す良い点と注意点 良い点 乗り換えずに下がることがある ライセンスとモジュールの整理・交渉 同じ問題を繰り返しにくい 原因が設計なら、設計に手を打つ 費用の増え方が変わる 例:Odooはユーザー数で料金が決まる 規模と要件に合う製品を選べる 自社の規模と要件に合うかで比べる 二度の乗り換えを避けられる 3〜5年後の姿から逆算する 気をつけること 移行には一時費用がかかる データ移行・再設計・再教育 上位ERPの機能は失われる 連結管理・高度な統制が要るかを確かめる 無料版でも費用は消えない ライセンスが「人と時間」に置き換わる スクラッチ開発も開発費・保守費
構造から見直すことの良い点と、気をつけること

負担の多くは、移る前に数えておけば判断材料に変わります。一時費用と年間費用の並べ方は、費用の見直しで確かめる5つの順番のステップ4で説明しています。

よくある質問

どれくらい費用が下がりますか?

下がり幅は、現在の契約内容、必要な業務範囲、ユーザー数で大きく変わります。

まずは、費用の内訳と使われ方を出すところから始めてください。そこが分からないままでは、どの会社も正確な見積もりは出せません。

乗り換えずに費用を下げる方法はありますか?

あります。

使われていないライセンスの整理、契約モジュールの見直し、契約条件の交渉などです。製品を替えずにできることが、残っている場合があります。乗り換えは負担が大きいため、まずこちらを確認するのが順序です。

無料のERPに移せば、費用はゼロになりますか?

なりません。

ライセンス費用は不要になりますが、サーバー費用と構築・運用の工数が発生します。社内に担える人がいなければ、外部への委託費がかかります。費用の性質が変わるだけで、消えるわけではありません。

スクラッチ開発なら、ずっと費用がかからないのでは?

そうではありません。

初期の開発費用があり、その後も保守と改修の費用が必要です。継続ライセンスがない代わりに、システムを維持する責任を自社が持つことになります。この点を見落とすと、数年後に苦しくなります。

ERPを乗り換えるとき、何に費用がかかりますか?

データ移行と業務の再設計と現場の再教育です。

これに、一時的な業務停止のリスクも加わります。削減できる年間費用と、移行にかかる一時費用を並べて比べてください。数年かけて回収できるかどうかが、判断の基準です(費用の見直しで確かめる5つの順番)。

まとめ:構造を見てから、選択肢を選ぶ

  • 「重い」の原因を、ライセンス・保守・運用・改修に分解する
  • 使われていないライセンスの整理で改善する場合もある
  • 選択肢は4つ。それぞれ課金の構造が違う
  • 無料版もスクラッチ開発も、費用が消えるわけではなく性質が変わる
  • 移行の一時費用と、削減できる年間費用を並べて判断する
  • 判断の基準は、いまの規模ではなく3〜5年後の姿

費用の見直しは、単なるコスト削減ではありません。何を自社で持ち、何を外部に任せるのか。その線引きを決める、経営の判断です。

見直した結果、「いまの製品を続けるのが最善」となれば、ベンチャーネットはそうお伝えします。

1年後、次の契約更新の案内が届いたとき、利用者数と稼働モジュールの一覧がすでに手元にある。更新する・減らす・移るのどれにするかを、期限に追われずに決められている。そんな状態を目指してください。

もう少し詳しく知りたい方へ

「うちの費用は、構造として妥当だろうか」と感じたら、内訳の整理からご一緒します。

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この記事を書いた人

持田 卓臣(もちだ たくおみ)
株式会社ベンチャーネット 代表取締役

ヒューレット・パッカード社でITコンサルタントとして従事した後、2005年に株式会社ベンチャーネットを設立。
Oracle NetSuite Solution Provider Partner として、中堅・中小企業向けクラウドERP「NetSuite」の導入・運用支援を提供しています。
SEO・広告・SNS・ウェブ・MA・SFAと一気通貫で培ってきたデジタルマーケティング領域の業務知見を活かし、NetSuiteを軸とした経営DXを支援しています。
著書:『普通のサラリーマンでもすごいチームと始められる レバレッジ起業「バーチャル社員」があなたを救う』(KADOKAWA、2020年)

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