ERP選定の基礎|中小企業の選び方と、比較表より先に決める3つのこと

Excelで比較表を作り始めた社長がいました。

縦に製品名、横に評価項目。ベンダーの資料から機能を書き写していきます。項目が30行を超えたあたりで、手が止まりました。

「これ、全部埋めたところで、決められるのだろうか」

その感覚は正しいと思います。項目を増やすほど、判断は難しくなるからです。決めることを絞れば、比較表を作らなくても数週間で決められます。

ERP(基幹業務を1つのシステムでつなぐ仕組み)の選定は、中小企業では一般的な手順の逆から進めたほうが決まります。比較表を広げる前に、社内で予算の上限・使う人数・譲れない業務の3つを決めます(選定の前に決める3つのこと)。

この進め方なら、たとえば次のことが変わります。

  • 評価の軸が3つに絞られ、使わない機能に判断を引っぱられにくい
  • 予算の上限と人数で、合わない選択肢が機械的に減る
  • 声をかけるのは2〜3社で済み、提案を比べる作業に追われない
  • 判断の根拠が紙1枚に残り、1年後もすぐ確かめられる

ただし、どの製品にも合う会社と合わない会社があります。規模が大きく拠点や子会社が複数あればNetSuite、パッケージに乗らない固有業務が中核ならAIスクラッチ開発が合うこともあります。AIスクラッチ開発は開発費・保守費が別途かかります(4つの選択肢の絞り方)。

残る問いは、RFP(提案依頼書)を書くべき会社と、書かなくてよい会社をどう分けるかです。答えはRFPを書くべき会社、書かなくてよい会社に、この選び方の負担は良い点と、気をつけることにあります。

前提:ERPを入れることは決まっているが、製品は決まっていない段階

製品によっては、無料版と有償版の2つが用意されています。たとえばOdoo(オドゥー)には、無料のCommunity版と有償のEnterprise版があり、使える範囲は同じではありません。

目次

教科書どおりのERP選定は、中小企業では実行できない

ERP選定の手順を調べると、どの記事もほぼ同じ流れを示します。

現状業務の棚卸し → 要件定義 → RFP(提案依頼書)の作成 → ベンダー評価 → 選定。

この手順そのものは正しく、中堅以上の企業では実際にこの流れで進めます。

問題は、中小企業ではこの手順を実行できないことです。

教科書の手順と、中小企業が実際に取れる進め方 上は棚卸し・要件定義・RFP作成・ベンダー評価・選定の5工程で、専任の担当者と数か月の時間が要り、兼務の1人では途中で止まる。下は先に決める3つ、評価軸3つ、2〜3社に直接聞く進め方で、数週間で決められ、判断の根拠も残る。 教科書の手順 1. 現状業務の棚卸し 2. 要件定義 3. RFPの作成 4. ベンダー評価(評価表) 5. 選定 必要なもの 専任の担当者と、数か月の時間 兼務の1人では、途中で止まる 実際に取れる進め方 先に決める3つ 予算の上限/使う人数/譲れない業務 評価軸は3つだけ 規模/標準で足りるか/直せるか 2〜3社に直接聞く 答えられない相手を外す 数週間で決められる 比較表を作らなくても、 判断の根拠は残る
教科書の手順と、中小企業が実際に取れる進め方

教科書の5工程を回すには、専任の担当者と数か月の時間が要ります。兼務の1人で始めれば、途中で止まるのが普通です。先に決める3つと評価軸3つに絞り、2〜3社に直接聞く進め方なら、比較表を作らなくても数週間で決められ、判断の根拠も残ります。

なぜ実行できないのか

理由は能力ではなく、構造です。

教科書が前提にしているもの中小企業の実情
選定の専任者がいる総務や経理との兼務。通常業務が優先される
要件定義に数か月かけられるその時間を取ると、本業が止まる
RFPを書いた経験がある書いたことがない。何を書けばよいか分からない
提案を評価する知識があるベンダーの説明が正しいか判断できない

ここを認めないまま教科書の手順を始めると、途中で止まります。そして半年が過ぎ、比較表だけが残ります。

手順を削るのではなく、決めることを絞る

手順を簡略化するのではありません。絞るのは、決めるべきことのほうです。

中小企業向けERPの全体像は 中小企業向けERPとは にまとめています。

ERP選定の前に決める3つのこと

製品を調べ始める前に、社内で決めておくことが3つあります。

この3つが決まっていないと、何を比べても結論は出ません。

① 予算の上限

「いくらまでなら出せるか」を、先に決めてください。

見積を取ってから考えると、判断が揺れます。金額の多寡ではなく、上限が決まっているかどうかが重要です。

ここで考えるのは初期費用だけではありません。稼働後に毎年かかる費用も含めて、上限を置いてください。費用の構造は ERP導入の費用はいくら? をご覧ください。

成功基準:社長が数字を1つ言える状態

② 使う人数

システムを操作する人が何人かを数えます。

多くの製品は、ユーザー数で費用が決まる仕組みです。ここを見誤ると、試算が大きくずれます。

数えるのは全社員ではなく、実際に画面を開く人です。

成功基準:部署ごとに人数を書き出せる状態

③ 譲れない業務を1つ

3つの中でいちばん難しく、いちばん結果を左右するのがこれです。

「これができないなら採用しない」という業務を、1つだけ挙げてください。

3つでも5つでもなく、1つです。複数挙げると、どれも譲れなくなります。結局、カスタマイズで固めることになります。

成功基準:社内の誰に聞いても同じ答えが返る状態

要件を体系的に整理したい場合は Odoo導入の要件定義の進め方 をご覧ください。ここで挙げた3つは、その要件定義に入る手前で決めるものです。

会議で使える「選定を始めてよいか」チェック

次の5つに印が付けば、製品を調べ始めてよい段階です。

  • □ 稼働後の毎年の費用も含めた予算の上限を、社長が1つの数字で言える
  • □ 実際に画面を開く人数を、部署ごとに書き出してある
  • □ 「これができないなら採用しない」業務が1つに絞れている
  • □ 3〜5年後の人数や拠点の見通しを、ひと言で説明できる
  • □ 稼働後に設定を直す人の名前(社内か社外か)が挙がる

印が3つ以下なら、製品を比べるより先に、社内でこの項目を話し合ってください。

ERPの比較・評価は3つの軸で足りる

比較表の項目は、3つに絞れます。規模の適合、標準で足りるか、稼働後に直し続けられるか、です。

ERP選定で使う3つの評価軸と、確認できた状態 規模の適合、標準で足りるか、直し続けられるかの3つの評価軸について、それぞれの問いと、確認できたと言える状態を示す。3つ目は導入1年後の結果を左右し、選定の段階でしか決められない。 この3つが確認できれば、選べます ① 規模の適合 同じくらいの会社が使っているか 確認できた状態 同規模の導入例を3つ挙げられる 大きすぎる製品は費用も体制も重い ② 標準で足りるか いまの業務を変えずに使おうとしていないか 確認できた状態 変えられない業務を3つ以内で言える 要望を全部通すと動けなくなる ③ 直し続けられるか 稼働後に設定を変える人がいるか 確認できた状態 社内の担当者名か社外の相手を言える ここを決めない会社が1年後に止まる 機能の○×を数えるより、 この3つのほうが結果を左右します とくに③は、選定の段階でしか決められません
ERP選定で使う3つの評価軸

① 規模の適合

自社と同じくらいの規模の会社が、その製品を使っているか。

大企業向けの製品を中小企業が入れると、使わない機能に払い続けることになります。導入の体制も、大企業が前提です。

逆に、小規模向けの製品では、成長したときに足りなくなります。

確認の仕方:提案側に「同じ規模・同じ業種の導入例」を聞いてください。3つ挙げられない場合、その規模帯の実績が薄い可能性があります。

自社がどの規模帯に当たるかは Odooが向いている企業・向いていない企業 も参考になります。

② 標準で足りるか

いまの業務を1つも変えない前提で製品を探していないか。

この前提で探すと、どの製品も合いません。そしてカスタマイズで埋めることになります。

カスタマイズは、その時点では要望どおりでも、更新のたびに費用と検証が発生します。

「譲れない業務1つ」以外は、標準機能に合わせられないかを先に考えてください。考え方は OdooとFit to Standard|標準機能に業務を合わせる考え方 にまとめています。

③ 直し続けられるか

稼働した後、設定を変える人がいるか。

3つの軸の中で最も見落とされ、そして最も結果を左右するのが、この軸です。

業務は変わり続けます。取扱商品が増え、取引先の要求が変わり、人が入れ替わる。導入時に決めた設定は、半年もすれば現実とずれ始めます。

そのずれを直す人が決まっていないことが、1年後に止まる原因です。変わった会社と変わらなかった会社の違いは Odooで会社はどう変わるか|導入1年後に「なくなっているもの」 で整理しています。

確認の仕方:社内の担当者名か、社外の相手を1つ挙げられるかです。「誰かがやる」では決まっていません。

ERPの4つの選択肢をどう絞るか

製品は無数にありますが、考え方の層は4つに分けられます。

層向いている状況
SAPグローバルに拠点があり、複雑な要件がある
NetSuite規模が大きく、拠点や子会社が複数ある
Odoo中小〜中堅規模。必要なアプリから小さく始めたい
AIスクラッチ開発パッケージに乗らない固有業務が中核にある

上から下へ行くほど、規模と複雑さは下がる並びです。下へ行くほど自社の業務に合わせやすくなる代わりに、自社で決める範囲が増えます。

AIスクラッチ開発はライセンス費用がかからない一方、開発費と保守費が別途かかります。課金の仕組みが違うだけで、費用がなくなるわけではありません。

4つに優劣はありません。規模と要件で振り分けるものです。

4つの中身と判断の分かれ目は パッケージERPかスクラッチ開発か に、規模での使い分けは OdooとNetSuiteの違い にまとめています。クラウド会計まで含めて成長段階で並べたい場合は、クラウド会計・ERP・基幹システムの比較も役に立ちます。

絞り方の順序

  1. 選定の前に決めた予算の上限で、明らかに超える層を外す
  2. 使う人数で、費用の桁が合わない層を外す
  3. 残った層の中で、3つの評価軸を確認する

多くの場合、1と2の段階で2つ以下まで絞れるので、残った選択肢だけを詳しく調べてください。

規模や拠点の数からNetSuiteが候補に残った場合は、NetSuite選定チェックリストで導入前に確かめる項目を見ておくと、次の質問が具体的になります。

声をかける相手と、聞くべき5つの質問

何社に声をかけるか

2〜3社で十分です。

5社以上に声をかけると、提案を比べる作業だけで時間が尽きます。増やしても、判断の質は上がりません。

聞くべき5つの質問

製品の機能ではなく、提案する側の姿勢を測る質問です。

  1. 同じ規模・同じ業種の導入実績はありますか
    → 具体例が出てこない場合、その領域の経験が薄い可能性があります
  2. この要望は標準機能で実現できますか。できない場合、どうしますか
    → 「できます」だけの回答は要注意。できない場合の代替案を示せるかを見ます
  3. 稼働後、設定を変えたいとき誰が対応しますか。費用は都度ですか
    → 直し続けられるかの軸に直結します。ここを曖昧にする相手は避けてください
  4. 導入が失敗する場合、どんな原因が多いですか
    → 答えられない相手は、失敗に立ち会った経験がないか、話す気がありません
  5. この製品が向かない会社は、どんな会社ですか
    → 「どんな会社にも合います」という回答は、検討していない証拠です

4と5に正直に答える相手を、優先してください。よい面だけの提案は、導入後に食い違いを生みます。

この選び方の良い点と、気をつけること

ここまでの進め方は、決めることを先に絞る選び方です。得られることと、先に覚悟しておきたい負担を並べます。

良い点は、次の5つです。

  • 数週間で決められる:先に決める3つと評価軸3つに絞り、2〜3社に直接聞く
  • 選択肢が機械的に減る:予算の上限と使う人数で、明らかに合わない層を外せる
  • 使わない機能に迷わされにくい:機能は「譲れない業務1つ」が満たせるかだけを見る
  • 稼働後の費用まで見える:「設定変更は誰が、いくらで」を選定の段階で確かめる
  • 判断の根拠が残る:決めた3つを紙1枚に書き出し、提案側にも渡せる

気をつけることは、次の4つです。

  • 社内で決める手間が先に要る:チェックの印が3つ以下なら、製品より先に社内で話し合う
  • 譲れない業務を1つに絞るのは難しい:複数挙げると、結局カスタマイズで固めることになる
  • 今の業務を変える場面が出る:譲れない1つ以外は、標準機能に合わせられないかを先に考える
  • RFPを書いたほうがよい会社もある:拠点や部門が複数ある、稟議で社内説明が要る場合など
この選び方の良い点と、気をつけること 良い点は、数週間で決められる、選択肢が機械的に減る、使わない機能に迷わされにくい、稼働後の費用まで見える、判断の根拠が残ること。気をつけることは、社内で決める手間が先に要る、譲れない業務を1つに絞るのは難しい、今の業務を変える場面が出る、RFPを書いたほうがよい会社もあること。 この選び方の良い点と注意点 良い点 数週間で決められる 決めること3つ・評価軸3つに絞る 選択肢が機械的に減る 予算の上限と人数で層を外す 使わない機能に迷わされにくい 「譲れない業務1つ」だけを見る 稼働後の費用まで見える 設定変更の担当と費用を確かめる 判断の根拠が残る 決めた3つを紙1枚に書き出す 気をつけること 社内で決める手間が先に要る 製品より先に社内で話し合う 譲れない業務を1つに絞る難しさ 複数挙げるとカスタマイズで固まる 今の業務を変える場面が出る 1つ以外は標準機能に合わせる RFPが向く会社もある 拠点や部門が複数・稟議が要る 作成:ベンチャーネット「Odooの教科書」
この選び方の良い点と、気をつけること

自社がRFPを書くべきかは、RFPを書くべき会社、書かなくてよい会社の表で確かめられます。

ERP選定でつまずく3つの型

次の3つは、実際によく起きます。

型1:機能比較で決めた

症状:機能一覧の○の数が多い製品を選んだ。しかし1年後、その機能の大半を使っていない。

原因:評価軸が多すぎたためです。項目を増やすほど、実際には使わない機能が判断に影響します。

避け方:3つの評価軸に絞ること。機能は「譲れない業務1つ」が満たせるかだけを見ます。

型2:安さで決めた

症状:ライセンス費用は安かったが、設定を変えるたびに費用が出る。結果として総額が膨らんだ。

原因:稼働後の費用を見ていないためです。初期費用とライセンスだけで比べると、この差は見えません。

避け方:聞くべき5つの質問の3つ目を必ず聞くこと。「設定変更は誰が、いくらで」を確認します。

型3:決めきれない

症状:半年たっても比較が終わらない。関わった社員が疲れ、話題に出すと空気が重くなる。

原因:捨てる基準を先に決めていないためです。情報は集めるほど増え、増えるほど決められなくなります。

避け方:選定の前に決める3つを先に決めること。とくに予算の上限があると、選択肢が機械的に減ります。

RFPを書くべき会社、書かなくてよい会社

RFP(提案依頼書)とは、自社の要求をまとめてベンダーに提示する文書です。

中小企業がRFPを書かなくてよい、という話ではありません。書ける会社は書いたほうが、よい提案が集まります。

状況判断
選定を担当できる人がいて、時間も取れる書いたほうがよい
拠点や部門が複数あり、要求がばらつく書いたほうがよい。ばらつきの整理になる
稟議で社内説明が必要書いたほうがよい。判断の根拠が残る
兼務の1人しかいない。時間も取れない無理に書かない。先に決める3つと5つの質問で代替する
使う人数が10人以下書かずに直接相談したほうが速い

RFPの書き方は ERP刷新を成功に導くためのRFP作成とテンプレート活用方法 にまとめています。中堅企業向けの内容ですが、項目の考え方は規模を問わず使えるものです。業務の見える化で作った資料を、RFI・RFP・稟議にどうつなぐかは 見える化の成果物を、システム選定につなぐ で扱っています。

書かない場合に必ずやること:選定の前に決めた3つを、紙1枚に書き出して提案側に渡してください。口頭だけで伝えると、提案がばらつきます。

ベンチャーネットが選定の相談で最初に確かめる順番

ERP導入支援を手がけるベンチャーネットは、NetSuite・Odoo・AIスクラッチ開発を扱い、SAPからのリプレイスにも対応しています。選定の話を、特定の製品を勧める前提で進めることはしません。

選定の相談を受けると、製品の説明から入らず、次の順で確かめます。

ステップ1:紙1枚の3つを見る

予算の上限・使う人数・譲れない業務1つを伺います。決まっていなければ、そこを一緒に決めるところから始めます。

ステップ2:3〜5年後の姿から逆算する

人数・拠点・事業がどう変わりそうかを伺います。いまの規模だけで選ぶと、成長したときに乗り換えの二度手間が起きるからです。

ステップ3:譲れない業務が標準機能で動くかを見る

実際の伝票や帳票の例をもとに、標準機能で回るかを見ます。回らない部分は、業務を合わせるか、別の手段で補うかを分けて考えます。

ステップ4:製品を振り分け、合わなければそう伝える

ここで初めて、NetSuite・Odoo・AIスクラッチ開発のどれが合うかを検討し、どれも合わない場合は、正直にそうお伝えします。AIスクラッチ開発を選ぶ場合も、ライセンス費用の代わりに開発費・保守費が別途かかることを前提に比べます。

ステップ5:稼働後に直す人と、最初に見る数字を決める

設定を直す担当を決めたうえで、稼働後に最初に見える化する数字を1つ選びます。見える化から始め、わかる化、儲かる化へと順に進めます。

ERPはIT製品の買い物ではなく、経営のプロジェクトです。だからこそ、製品より先に経営の前提を確かめます。

ERP選定についてよくある質問

Q1. RFPは書いたほうがよいですか?

書ける状況なら、書いたほうがよいです。よい提案が集まり、判断の根拠も残ります。

ただし、担当者が兼務で時間が取れない場合、無理に書く必要はありません。書けないまま半年が過ぎるより、3つを決めて直接相談するほうが前に進みます。

判断の目安はRFPを書くべき会社、書かなくてよい会社の表をご覧ください。

Q2. 何社に声をかけるべきですか?

2〜3社をおすすめします。

選択肢を増やしても、判断の質は上がりません。1社ごとに5つの質問をきちんと聞くほうが、判断材料は増えます。

Q3. 比較はいつやめればよいですか?

3つの評価軸が確認できた時点です。

規模が合い、標準で足りそうで、直す人が決まっている。この3つがそろえば、それ以上調べても判断は変わりません。

「もっとよい製品があるかもしれない」という不安で続けると、型3(決めきれない)に入ります。

Q4. 無料で試せる製品から始めるべきですか?

試すこと自体はおすすめします。ただし、無料版と有償版で使える範囲が違う点に注意してください。

たとえばOdooには、無料のCommunity版と有償のEnterprise版があります。Community版はサーバの用意や障害対応が自社の責任になり、一部のアプリは利用できません。

試した範囲と、本番で使う範囲を混同しないでください。違いは Odoo Community版とEnterprise版の違い にまとめています。

Q5. 選定を間違えたと分かったらどうしますか?

まず、何が合っていないのかを切り分けてください。

製品が合っていないのか、使い方が合っていないのか。実際には後者のほうが多く、その場合は設定と運用の見直しで改善します。

製品自体が規模に合っていない場合は、乗り換えの検討になります。ただし移行にも費用と時間がかかるため、判断は慎重に行ってください。

Q6. ERP選定で比較するポイントは何ですか?

規模の適合・標準で足りるか・直し続けられるかの3つです。

機能の○×を数えるより、この3つのほうが結果を左右します。とくに稼働後に設定を変える人がいるかは見落とされやすく、選定の段階でしか決められません。確かめ方は3つの評価軸にまとめました。

まとめ:中小企業のERP選定は、決めることを絞る

教科書どおりの選定手順は正しいものの、中小企業では実行できません。能力ではなく、専任者も時間もないという構造の問題です。

そこで、決めることを絞ります。

  • 選定の前に決める3つ:予算の上限、使う人数、譲れない業務を1つだけ
  • 評価に使う3つの軸:規模の適合、標準で足りるか、稼働後に直し続けられるか
  • 声をかける相手:2〜3社。「失敗の原因」と「向かない会社」に正直に答える相手を優先する
  • やめどき:3軸が確認できたら、比較はそこで終わり

選定の失敗は、選んだ直後には分かりません。半年から1年たち、運用が回らなくなって初めて表に出ます。だからこそ、判断の根拠を紙1枚に残してください。

1年後、商品や取引先が増えて設定を直す場面が来ても、担当者がその紙を開けば「譲れない業務はこれ、予算の上限はここ」とすぐ確かめられる。比較表の30行ではなく、その紙1枚が会社の判断を支えている状態を目指してください。

もう少し詳しく知りたい方へ

ベンチャーネットは、ERP導入支援を手がける会社です。NetSuite・Odoo・AIスクラッチ開発を扱い、SAPからのリプレイスにも対応しているため、特定の製品を売るために選定を語る立場にありません。

「決めた3つが妥当か」を一緒に確認するところからご相談を承っています。

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この記事を書いた人

持田 卓臣(もちだ たくおみ)
株式会社ベンチャーネット 代表取締役

ヒューレット・パッカード社でITコンサルタントとして従事した後、2005年に株式会社ベンチャーネットを設立。
Oracle NetSuite Solution Provider Partner として、中堅・中小企業向けクラウドERP「NetSuite」の導入・運用支援を提供しています。
SEO・広告・SNS・ウェブ・MA・SFAと一気通貫で培ってきたデジタルマーケティング領域の業務知見を活かし、NetSuiteを軸とした経営DXを支援しています。
著書:『普通のサラリーマンでもすごいチームと始められる レバレッジ起業「バーチャル社員」があなたを救う』(KADOKAWA、2020年)

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