NetSuite選定チェックリスト|導入を決断する前に確認すべき20の質問

役員会の前日。

社長の机に、NetSuiteの提案書と見積書がそろっています。

あとは決めるだけのはずが、「本当にうちで入れていいのか」と手が止まる。

NetSuite選定チェックリストとは、導入を決める前に自社の準備を確かめる20の質問です。

経営の覚悟・業務との合い方・体制・パートナーの4分野に分けています。

20問のうち答えられない問いがあればそれが相談すべき論点です。

すべてに答えられる会社は、多くありません。

「分からない」を見つけることが、このチェックリストの役目です。

では、「分からない」がいくつも出たら、どれから手をつければよいのか。

その順番は、20問に答えたあとで見えてきます。

目次

この記事で分かること

  • 導入を決める前に確かめる20の質問(4分野)
  • YESの数で見る3段階の診断と、段階ごとの次の一手
  • NetSuite以外が合う場合の見分け方
  • これから選ぶ会社と、いま使っていて見直す会社の使い方
  • チェックリストの使い方でよくある3つの失敗と、「分からない」を整理する順番

チェックリストの使い方

20問は4分野に分かれています。

分野問い確かめることAIとの親和性の観点
A 経営の覚悟Q1〜Q5経営のプロジェクトとして関われるかAIで何を速くしたいかを、目的に含めているか
B 業務との合い方Q6〜Q10業務を標準に合わせられるか標準に合わせるほど、データの形がそろいAIに渡しやすい
C 体制とリソースQ11〜Q15導入と運用を支える人がいるかデータを整え続ける担当がいるか
D パートナーと進め方Q16〜Q20誰と、どう進めるかAIやBIとのつなぎ方まで相談できるか

各問いに「YES/NO/分からない」で答え、最後にYESの数を数えます。

各問いの下に、YESの目安を置きました。迷ったときの判断に使ってください。

答えるときは、次の3つを守ると結果がぶれにくくなります。

  • 答えに、ひと言の理由を添える
  • 推測で「YES」にしない。確かめていなければ「分からない」にする
  • 答えた日付を書く。数か月後に見直すと、準備の進み具合が分かる

記入の例です(架空の例)。

問い答えひと言の理由
Q5YES月1回の定例に社長と取締役が出る予定を入れた
Q7分からない税理士にまだ相談していない
Q11NO経理が2人で、兼任できる人がいない
診断YESの数状態
段階A17問以上準備が整っている
段階B10〜16問論点の整理が必要
段階C9問以下全体の設計から議論すべき

20問のうち「★」の6問は、自社だけでは答えを出しにくい問いです。

「分からない」でもかまいません。その問いこそ、議論の出発点になります。

20問の全体と★の位置を図にすると、次のとおりです。

20問・4分野と★の6問 20問は経営の覚悟、業務との合い方、体制とリソース、パートナーと進め方の4分野に5問ずつ。★のQ3・Q7・Q10・Q13・Q17・Q20は自社だけでは答えを出しにくく、議論の出発点になる。 20問・4分野と★の6問 A 経営の覚悟 Q1〜Q5 経営のプロジェクトとして関われるか ★Q3 B 業務との合い方 Q6〜Q10 業務を標準に合わせられるか ★Q7・Q10 C 体制とリソース Q11〜Q15 導入と運用を支える人がいるか ★Q13 D パートナーと進め方 Q16〜Q20 誰と、どう進めるか ★Q17・Q20 ★の6問は、自社だけでは答えにくい 「分からない」でもよい。議論の出発点になる
20問・4分野と★の6問

【分野A】経営の覚悟を問う5つの質問

ERPの導入は、IT部門だけのプロジェクトではありません。

経営全体に関わる決定です。

Q1. 導入を「経営のプロジェクト」だと、経営層は認識していますか

ERPは、会社の数字の見え方と、経営判断の速さを変える取り組みです。

「IT部門に任せておけばいい」という発想で進めると、失敗しやすくなります。

経営層が「自分ごと」として関わる会社ほど、導入はうまく進みます。

IT部門に任せきりの会社では、稼働後に経営層から「想定と違う」という声が出やすくなります。

YESの目安:経営者が、導入の目的を自分の言葉で社内に説明したことがある。

Q2. 導入後3年で何を達成したいか、経営層の中で言葉にできていますか

  • 月次決算を早めたい
  • 海外拠点の数字を本社で一元管理したい
  • 属人化した業務を標準化したい
  • 経営判断に使える数字を、すぐに見たい

こうした到達点を、経営層が同じ言葉で言えるかが大切です。

目的が曖昧なまま始めると、稼働後に「何のために入れたのか」が見えなくなります。

属人化とは、特定の人しか業務の中身が分からない状態のことです。

YESの目安:経営層の3人に聞いて、同じ到達点が返ってくる。

Q3. ★いまの業務のうち、世界標準に合わせて変えてよい範囲を整理できていますか

NetSuiteは、グローバルで設計されたERPです。

日本の商習慣や自社の運用ルールとは、どこかでずれが生まれます。

埋め方は3つあります。

  • 自社の業務をNetSuiteの標準に合わせる(おすすめ)
  • NetSuiteをカスタマイズして業務に合わせる(費用と保守の負担が増える)
  • 両者の中間で折り合いをつける

標準で運用できれば、保守の費用もバージョンアップへの対応も軽くなります。

ただし、どこまで変えてよいかは、経営層と現場の合意が要る論点です。

一人で判断できる問いではありません。

YESの目安:「変えてよい業務」と「変えられない業務」の一覧がある。

Q4. 初期費用だけでなくTCOで投資を判断する準備はできていますか

TCO(総所有コスト)とは、初期費用に、保守・拡張・人件費まで含めた総額のことです。

NetSuiteのライセンス費は、ミニマム構成で月額20万円〜が出発点です。

モジュール・ユーザー数・オプションの構成で変わり、数百万円規模になることもあります。

加えて、パートナーへの費用、社内の運用担当の人件費、データ移行の作業費がかかります。

導入費用の幅は、ライセンスよりずっと広くなります。

NetSuite認定パートナー(Solution Provider)であるベンチャーネットが支援した導入の費用を見てみます。

NetSuite導入で、3名程度・購買と販売だけの事例は150万円程度・1.5か月でした。

100名程度で購買・販売・在庫・会計に外部システムとの連携を含めた事例は、2億円程度・1.5年で、約7割が開発です。

差を生む要因は、機能範囲・開発(特に外部システム連携)・社内の体制・ユーザー数の4つです。

4事例の詳細は、NetSuiteの料金で扱っています。

分野BのQ10と分野CのQ11・Q14の答えは、このうち開発と社内の体制に直結します。

3年・5年の総額で判断できるかを、ここで見てください。

YESの目安:5年の総額の試算があり、効果と比べる物差しを決めている。

Q5. プロジェクトに、経営層が定期的に時間を割けますか

要件定義・設計・テスト・稼働の判断など、節目ごとに経営層の判断が要ります。

月1回30分でも、経営層が議論の場に出ることをおすすめします。

「忙しいから報告だけ」では、稼働後に「こんなはずではなかった」が起きやすくなります。

YESの目安:月1回の定例に、経営層の出席を予定に入れている。

【分野B】業務との合い方を問う5つの質問

Q6. 会計・販売・在庫など、ばらばらのデータを一つにまとめたいですか

NetSuiteの価値は、会計・販売・在庫・購買のデータを一つのシステムで管理できる点です。

Excelや複数のシステムに散らばり、集計のたびに手間がかかっているなら、相性は良好です。

月次決算や会議のたびに、部門のファイルを集めて突き合わせている状態が典型です。

逆に「いまのシステムで困っていない」なら、導入の目的が曖昧になりやすく、注意が要ります。

YESの目安:データを一つにまとめたい業務を、具体的に3つ挙げられる。

Q7. ★三分法と売上原価対立法の違いに、経理と税理士は対応できますか

商品の売上原価の記録の仕方には、「三分法」と「売上原価対立法」があります。

自社の処理と、導入するERPでの処理が同じかが問われます。

  • 三分法:仕入・売上・繰越商品の3つの勘定で処理し、原価は期末にまとめて計算する
  • 売上原価対立法:売るたびに、売上と売上原価を同時に記録する

この違いで、月次決算の手順や仕訳のルールが変わります。

顧問税理士の業務の流れと合わない場合もあります。

「どう違うのか分からない」なら、早めに整理する価値があります。

YESの目安:経理の担当と顧問税理士が、処理の違いを説明できる。

Q8. 海外拠点との会計・在庫の一元管理が必要ですか

NetSuiteは、多通貨・多言語に強みがあります。

世界220地域・44,000社以上で使われています(出典:Oracle NetSuite公式サイト、2026年9月確認)。

190通貨・27言語で利用されているクラウドERPです。

  • 海外子会社の月次決算を本社で見たい
  • 拠点ごとに違う通貨・言語・税制をまとめたい
  • 世界の在庫をまとめて見たい

こうした必要があれば、NetSuiteの強みが活きます。

国内だけで事業が完結するなら、特長を活かしきれないこともあります。

YESの目安:海外の拠点・取引の予定を、3年の計画に書いている。

Q9. いまの業務の流れを、世界標準に合わせて見直す余地がありますか

典型的な失敗は、「いまの業務の流れをそのまま移そう」とすることです。

NetSuiteには、業種別の導入の型としてSuiteSuccessがあります。

Oracleは、事前構成済みのソリューション、ベスト・プラクティス、ワークフローを含むと説明しています。

(出典:Oracle NetSuite公式、2026年9月確認)

標準に合わせることは、自社のやり方の否定ではありません。

世界で改善されてきた流れを取り入れる機会です。

「変えたくない」が強いほど、カスタマイズが膨らみ、費用も保守の負担も増えます。

見直しの余地がどこにあるかを、現場と一緒に探してください。

YESの目安:標準に合わせるために変える業務を、現場と話し合ったことがある。

Q10. ★Fit&Gap分析で、どこまで作り込むかを決める基準がありますか

Fit&Gap分析とは、NetSuiteの標準機能と自社業務の差を洗い出す作業です。

差が見つかったときの対応は3つです。

  • 業務をNetSuiteに合わせる(標準機能で運用)
  • NetSuiteをカスタマイズする(費用と保守の負担が増える)
  • SuiteApp(NetSuiteの拡張アプリ)などで補う

基準がないと、「全部カスタマイズで対応」になりがちです。

多くの差は、業務を標準に合わせることで解決できます。

本当に作り込みが要るものを見極める基準は、標準機能をよく知る相手と一緒に整理します。

YESの目安:作り込みを認める条件(法令・競争力に直結するなど)を決めている。

【分野C】体制とリソースを問う5つの質問

Q11. 社内に、ERPの運用を担う人(兼任でも可)を確保できますか

担うのは、ユーザーの追加、権限の管理、データの確認、小さな設定の変更などです。

専任でなくてもよく、経理や情シスの兼任が多くあります。

問題は、兼任すら決まらない状態です。

  • 経理の担当が、日常の業務で手一杯
  • 情シスがおらず、IT全般を外部に任せている
  • 誰がNetSuiteを管理するのか決まっていない

このまま導入すると、稼働後に誰も触れないシステムになりかねません。

YESの目安:運用を担う人の名前と、業務に使える時間を決めている。

Q12. いまのシステムの保守に、撤退や担い手不足のリスクはありますか

  • 保守をしている会社が、事業を縮小している
  • システムを保守できる技術者を確保しにくい
  • 20年以上前のシステムで、中身が分からなくなっている

古い基幹システムを使い続けるほど、保守の担い手の確保は難しくなります。

SAPは、SAP Business Suite 7の標準保守を2027年末まで提供すると2020年2月に発表しています。

オプションの延長保守は2030年末までです(出典:SAP公式、2026年9月確認)。

保守の期限は、刷新の時期を考える材料になります。

対応を先送りにする余地は、期限が近づくほど狭まります。

保守切れの考え方は、基幹システムの保守切れリスクとはで扱っています。

YESの目安:いまのシステムについて、保守の期限と担い手の状況を把握している。

Q13. ★Excelの補助簿や運用ルールを、ERPのデータの形に作り直す作業を誰が担いますか

長く使ってきた業務には、Excelの補助簿や現場の暗黙のルールがあります。

そのまま移そうとすると失敗します。

NetSuiteのデータの形(勘定・セグメント・カスタム項目など)に合わせて作り直す作業が要ります。

  • 経理が日常業務と兼ねるのは難しい
  • 情シスだけでは業務の知識が足りない
  • 外部に丸投げすると、現場の暗黙知が入らない

この作業を誰が担うかは、プロジェクトの成否の分かれ目になります。

現場・情シス・パートナーの3者で整理すると、暗黙知もデータの形も抜けにくくなります。

YESの目安:補助簿の一覧と、それぞれの持ち主が分かっている。

Q14. 社内のIT担当(一人情シスを含む)は、クラウドERPの運用に対応できますか

クラウドERPは、サーバーの保守やインフラの管理が要りません。

ただし、別の負担は生まれます。

  • ユーザーからの問い合わせへの対応
  • データの確認
  • 他のシステムとの連携の調整
  • セキュリティと権限の設計の維持

一人情シスの体制では、この負担が重くなりがちです。

運用の一部をパートナーに任せる形も含めて、無理のない分担を考えます。

社内だけで運用しきれるかを、冷静に見てください。

YESの目安:問い合わせへの対応や権限の管理を、誰が担うか決めている。

Q15. データ移行の範囲・期間・体制を検討し始めていますか

  • 何を、過去何年分移すか
  • 重複や不整合の整理は誰がするか
  • 移行中の業務をどう回すか
  • 移した後の確認に誰が責任を持つか

これらを決めずに始めると、稼働の直前に日程が崩れるおそれがあります。

「データ移行はパートナーがやってくれる」と考えるのは危険です。

データの中身を知っているのは社内の担当で、パートナーは移す仕組みを担います。

進め方は基幹システムのデータ移行ガイドで扱っています。

YESの目安:移すデータの範囲と、移した後の確認の担当を決めている。

【分野D】パートナーと進め方を問う5つの質問

パートナー選びの確認点は、NetSuiteパートナーの選び方で詳しく扱っています。

Q16. パートナーと「下請け」ではなく「対等な関係」で議論できますか

  • 自社の業務をいちばん知っているのは、自社の社員
  • NetSuiteの機能をいちばん知っているのは、パートナー
  • 2つの知識を組み合わせて、はじめて正しい設計ができる

「お金を払うのだから、すべてやってもらう」では、業務の理解が足りないまま設計が進みます。

その結果、稼働後に「使えないシステム」になりがちです。

相談の起点の違いは、NetSuiteはOracle直接かパートナー経由かで扱っています。

YESの目安:自社の業務の説明に、現場の担当が時間を割ける。

Q17. ★パートナーに、周辺領域(AI・RPA・BI・EC連携など)まで相談できるか確かめましたか

ERPだけで完結する業務システムは、多くありません。

  • AIとの連携(NetSuiteのAI機能や、外部のAI)
  • RPA(定型の作業をソフトで自動化する仕組み)
  • BIツール(経営のダッシュボード)
  • ECサイトや倉庫管理システムとの連携

導入だけを担う相手に頼むと、稼働後に「周辺はどうするのか」で迷いがちです。

特にAIは、ERPに集めたデータを使って初めて力を発揮します。

どのデータを、どのAIに、どの権限で渡すか。

そこまで相談できる相手かを、選ぶときに見てください。

YESの目安:周辺のツールの一覧と、相談したい範囲を書き出している。

Q18. 導入後の伴走(定着の支援)まで、パートナーに期待していますか

プロジェクトの終わりは、稼働日ではありません。

稼働後の数か月〜1年は、現場が慣れていく定着の期間です。

この期間に、現場からの問い合わせ、運用の細かな調整、追加の機能の検討が続きます。

「導入したら、あとは社内で」という相手に頼むと、この期間に困ることがあります。

ベンチャーネットは、導入後の伴走を、必要なときに必要な分だけ使えるチケット制でも提供しています。

YESの目安:稼働後の支援の期間と範囲を、見積もりに入れてもらっている。

Q19. デジタル化・AI導入補助金(旧 IT導入補助金)など、公的な支援の活用を検討していますか

中小企業庁は2026年3月10日に、IT導入補助金を「デジタル化・AI導入補助金」に名称を変えたと案内しています(出典:中小企業庁公式、2026年9月確認)。

申請では、IT導入支援事業者と共同で事業計画を作ります(出典:デジタル化・AI導入補助金2026公式サイト、2026年9月確認)。

対応できるかは、パートナーを選ぶときに聞いておきましょう。

使い方はデジタル化・AI導入補助金でNetSuiteを導入する方法で扱っています。

YESの目安:補助金の対象になるか、要件を確かめたことがある。

Q20. ★いま導入を急ぐべきか、準備期間を置くべきか、判断の基準を持っていますか

  • いまのシステムの保守の期限
  • 業績が良いうちに投資できる時期か
  • 経営層の合意の進み具合
  • 社内の体制の整い具合
  • 業界の市場の環境

基準は会社ごとに違い、自社だけでは決めにくい問いです。

第10章で、この問いを含む「分からない」の整理の順番を示します。

YESの目安:「いつまでに決めるか」の期限と、その理由を言える。

診断結果の見方と次の一手

YESの数で見る3段階と次の一手 YESが17問以上なら段階Aでデモで合い方を見る。10〜16問なら段階BでNOと分からないの整理の順番を決める。9問以下なら段階Cで課題から整理し直す。 YESの数で見る3段階 段階A|17問以上 デモで、自社の業務との 合い方を具体的に見る 段階B|10〜16問 NOと「分からない」を並べ、 整理の順番を決める 段階C|9問以下 経営層・現場・外部の相談相手で、 課題から整理し直す
YESの数で見る3段階と次の一手
診断YESの数状態次の一手
段階A17問以上準備が整っているデモで自社業務との合い方を具体的に確かめる
段階B10〜16問論点の整理が必要NOと「分からない」の問いを並べ、整理の順番を決める
段階C9問以下全体の設計から議論すべき経営層・現場・外部の相談相手で、課題から整理し直す

段階Aは、経営の覚悟・業務の見通し・体制・パートナーへの期待がほぼ明確な状態です。

次は、デモを通じて自社の業務との合い方を具体的に見る段階です。

段階Bは、方向は見えていますが、未整理の論点が残る状態です。

急ぐと、稼働後に「想定外」が出やすくなります。

NOと「分からない」の問いを、「どの論点を、誰と、どの順番で整理するか」に並べ替えます。

段階Cは、いま導入を急ぐ時期ではないかもしれません。

「導入する・しない」の判断は、課題の整理の先にあります。

分野ごとのNOの意味

YESの合計だけでなく、NOがどの分野に集まっているかを見ます。

NOが集まる分野起きやすいこと最初の一手
A 経営の覚悟決めるべきことが決まらず、プロジェクトが止まる経営層で、3年後の到達点を一文にそろえる
B 業務との合い方カスタマイズが膨らみ、費用と期間が延びる変えてよい業務・変えられない業務の一覧をつくる
C 体制とリソース稼働後に運用が回らず、Excelに戻る運用を担う人を決め、使える時間を確保する
D パートナーと進め方稼働後の支援が抜け、定着しない相談したい範囲と、稼働後の支援の期間を書き出す

分野Aに NOが多い場合は、他の分野より先に手を打ちます。

経営の到達点が決まらないと、B〜Dの答えも決まらないためです。

判断の物差し|NetSuite以外が合う場合

診断の結果によっては、NetSuite以外が合うこともあります。

当てはまる状態考えられる選択肢
Q8がNO(国内で完結)で、日本の商習慣の帳票を重視国産ERP
Q3・Q9がNO(業務を変えたくない)で、固有の業務が競争力の中心AIスクラッチ開発
小さく始めたい。自社で設定を触れる人がいるOdoo
段階Cで、Q6もNO(データをまとめる必要がない)いまは入れない

比べ方はOdooとNetSuiteを徹底比較やAIでスクラッチ開発とERP、どちらを選ぶべきかが参考になります。

ERP全般の選び方は、ERP選定ガイドで解説しています。

あなたはどちらの立場ですか

これからNetSuiteを選ぶ会社

20問をそのまま使います。

経営者・経理・情シス・現場で分担して答え、答えが割れた問いを話し合います。

答えが割れた問いは、立場によって見えている事実が違うことの表れです。

たとえばQ11で、経営者はYES、経理はNOと答えることがあります。

「兼任できる人がいる」と「その人に時間がない」は、どちらも事実です。

こうした違いを話し合うこと自体が、導入の準備になります。

最初に答えてから1〜2か月後に、もう一度答えてみてください。

YESが増えた問いと、変わらない問いを比べてください。

変わらない問いが、手を打つ場所です。

いまNetSuiteを使っていて、見直している会社

稼働後に「思ったほど使われていない」と感じている会社も、このチェックリストを使えます。

問いを「導入の前」ではなく「いま」に置き換えて答えます。

  • Q5:経営層は、いまも数字を見る場に出ているか
  • Q11・Q14:運用を担う人が、異動や退職で空いていないか
  • Q13:Excelの補助簿が、稼働後にまた増えていないか
  • Q18:いまのパートナーの支援は、定着まで届いているか

NOの多い分野が、見直しの起点です。

パートナーの見直しは、パートナー変更(リプレイス)という選択肢で扱っています。

二つの立場の使い方を並べると、次のとおりです。

立場ごとのチェックリストの使い方:これから選ぶ会社と、いま見直す会社 これから選ぶ会社は4つの立場で分担して答え、1〜2か月後に答え直して変わらない問いに手を打つ。いま使っている会社は問いを「いま」に置き換え、NOの多い分野から見直す。 立場ごとのチェックリストの使い方 これから選ぶ会社 いま見直す会社 答え方 4つの立場で分担し 割れた問いを話し合う 問いを「いま」に 置き換えて答える 見るところ 1〜2か月後に答え直し 変わらない問いを見る Q5・Q11・Q13 Q14・Q18 次の一手 変わらない問いに 手を打つ NOの多い分野から 見直す
立場ごとのチェックリストの使い方

チェックリストの使い方でよくある3つの失敗

失敗1:一人で全部答える

起きること:経営者が一人で答えて段階Aだったが、現場の実態とずれていた。進めるうちに体制の不足が表に出た。

原因:分野ごとに、答えるべき立場の人が違うのに、一人で答えた。

避け方:4分野を、経営層・経理・情シス・現場で分担して答え、割れた問いを話し合います。

失敗2:「分からない」を「NO」に丸める

起きること:「分からない」をNOとして数え、段階Cと判断して検討を止めた。実際は、情報があれば答えられる問いだった。

原因:「NO(準備できていない)」と「分からない(判断の材料が足りない)」を区別しなかった。

避け方:「分からない」は別に数えます。★の問いに集まっていれば、相談で短く整理できる論点です。

失敗3:診断結果だけで決める

起きること:「段階Aだから即導入」と決め、製品の比較やパートナーの見極めを省いた。

原因:社内の状態を見る道具を、導入の可否を決める道具として使った。

避け方:診断は議論の出発点です。自社の業務・業績・市場の環境を踏まえて、関係者と判断します。

ベンチャーネットならこう見る|「分からない」は見える化から片づける

冒頭の問いに戻ります。

「分からない」がいくつも出たとき、どこから手をつけるか。

NetSuite・Odoo・AIスクラッチ開発を扱い、SAPからのリプレイスにも対応するベンチャーネットは、次の3つの順で見ます。

  1. 分野Aの答え:経営層の答えがそろっているか。そろわなければ、製品の話はまだ早い
  2. ★の6問:どれが「分からない」か。自社だけで答えにくい論点から整理する
  3. Q12・Q20の期限:保守の期限など、動かせない日付があるか

分野Aが先なのは、経営の到達点が決まらないと、B〜Dの答えも決まらないからです。

★の6問のうち、Q3・Q10・Q13は同じ根を持っています。

いまの業務のどこを変え、どこを残すか。

この3問は、次の型で一度に片づけます。

型1:見える化→整理整頓→Fit&Gap→3つの選択

ベンチャーネットの進め方:見える化→整理整頓→Fit&Gap→3つの選択 業務の見える化、整理整頓、NetSuite標準機能とのFit&Gap、そして標準に合わせる・開発する・残すの3択で決める。 ベンチャーネットの進め方業務の見える化いまの業務フローを現場に聞いて描く整理整頓やめる・まとめる・そろえる業務を決めるFit&GapNetSuiteの標準機能と照らし合わせる3つの選択標準に合わせる/開発する/残す製品が決まっていても、見える化から始める
ベンチャーネットの進め方:見える化→整理整頓→Fit&Gap→3つの選択
  1. 業務の見える化:いまの業務の流れと、Excelの補助簿を現場に聞いて描く
  2. 整理整頓:やめる・まとめる・そろえる業務を決める
  3. Fit&Gap:残った業務を、NetSuiteの標準機能と照らし合わせる
  4. 3つの選択:合わない業務を、標準に合わせる/開発する/残す、のどれかに決める

見える化をすると、Q13の補助簿の一覧がそのまま手に入ります。

整理整頓でやめる業務を先に決めるので、Q10の作り込みの対象も減ります。

「残す」は、NetSuiteに載せず、いまの仕組みや運用で続ける選択です。

すべてを載せようとしないことが、費用と期間を抑える近道になります。

型2:変わることは、決める前に伝える

NetSuiteに替えると、帳票の形、締め処理の考え方、画面の操作感が変わります。

ライセンス費用が、いまより上がることもあります。

給与・人事は対象外で、別の仕組みが要ります。

ベンチャーネットは、こうした点を見積もりと一緒にお伝えします。

診断の結果、NetSuiteが合わないと判断したら、その旨も申し上げます。

体制の分担も、決める前に見える形にします。

ライセンス・トレーニング・製品サポートは日本オラクルの役割です。

ベンチャーネットは、要件定義・設定・カスタマイズ・アドオン開発・保守・PMを担います。

契約は請負契約に対応しています(準委任も相談可)。

要件を伺うのは営業ではなく導入コンサルタントで、情シスが少ない会社でも進められる体制です。

20問の答えをお持ちいただければ、相談の最初の30分で論点を絞り込めます。

今日できること|1時間で20問を配る

  1. 分担を決める(10分):分野A=経営層、B=経理と現場、C=情シス、D=経営層と情シス
  2. 答えを集める(30分):各自が「YES/NO/分からない」と、ひと言の理由を書く
  3. 数える(20分):YESの数、NOの数、「分からない」の数を、分野ごとに分けて書き出す

「分からない」が集まった問いの一覧が、そのまま相談の議題になります。

分野ごとのNOの数は、第6-1節の表に当てはめてください。

最初に手を打つ分野と、その一手が見えてきます。

一覧と表の2枚があれば、社内の会議でも次に何を決めるかを話し合えます。

よくある質問

Q1. このチェックリストは、NetSuite以外のERPの検討にも使えますか

分野A・C・Dの多くはどのERPにも使えます。

Q7・Q8・Q9など、グローバルなERPを前提とした問いは、NetSuiteや海外製のERP向けです。

経営の覚悟、体制、パートナーとの関係は、どのERP選びにも共通します。

Q2. 20問に答える時間が取れません。優先すべき問いはどれですか

★の6問を先に確かめてください。

Q3・Q7・Q10・Q13・Q17・Q20です。

自社だけでは答えにくく、早めに議論する価値が高い論点です。

Q3. 段階Bや段階Cで相談しても意味がありますか

あります。

段階BやCで相談する方が、後戻りの少ない検討ができます。

「いま進めるか、準備期間を置くか」から整理できます。

Q4. 三分法のままではNetSuiteを使えないのですか

NetSuiteでどう処理するかを導入の前に確かめる必要があります。

自社の処理と違えば、月次決算の手順や仕訳のルールに影響します。

経理の担当と顧問税理士を交えて、早めに整理してください(Q7)。

Q5. いまNetSuiteを使っている会社も使えますか

使えます。

問いを「いま」に置き換えて答えると、定着していない原因が見つかります(第8章)。

Q6. どのくらいの間隔で見直せばよいですか

検討中は1〜2か月ごとを目安にしてください。

答えた日付と理由を残しておくと、準備の進み具合を比べられます。

導入を決めた後も、稼働の前にもう一度答えると、抜けている準備が見つかります。

Q7. 費用はどれくらいかかりますか

ライセンス費はミニマム構成で月額20万円〜が出発点です。

構成で変わり、数百万円規模になることもあります。

導入費用は、機能範囲・開発(特に外部システム連携)・社内の体制・ユーザー数で大きく変わります。

パートナーの費用や社内の人件費を含め、3年・5年の総額で判断してください(Q4)。

まとめ

  • 20問は、導入を決める前に自社の状態を客観的に見る道具
  • YESの数で段階A・B・Cを見分け、段階ごとに次の一手を決める
  • 「分からない」はNOと分けて数える。★の6問は相談の議題になる
  • 結果によっては、NetSuite以外やいまは入れない判断もある
  • いま使っている会社は、問いを「いま」に置き換えて見直しに使う
  • 「分からない」は、分野A→★の6問→期限の順に片づける。Q3・Q10・Q13は見える化から

役員会の前日に手が止まったら、それは準備が足りないというより、論点が見えていない合図です。

まず20問を配り、「分からない」の一覧を1枚にするところからです。

もう少し詳しく知りたい方へ

段階Aの方は、デモで自社業務との合い方を確かめてください。

段階B・Cの方は、「分からない」が集まった問いの一覧をお持ちください。論点の整理から始めます。

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この記事を書いた人

持田 卓臣のアバター 持田 卓臣 株式会社ベンチャーネット代表取締役

持田 卓臣(もちだ たくおみ)
株式会社ベンチャーネット 代表取締役

ヒューレット・パッカード社でITコンサルタントとして従事した後、2005年に株式会社ベンチャーネットを設立。
Oracle NetSuite Solution Provider Partner として、中堅・中小企業向けクラウドERP「NetSuite」の導入・運用支援を提供しています。
SEO・広告・SNS・ウェブ・MA・SFAと一気通貫で培ってきたデジタルマーケティング領域の業務知見を活かし、NetSuiteを軸とした経営DXを支援しています。
著書:『普通のサラリーマンでもすごいチームと始められる レバレッジ起業「バーチャル社員」があなたを救う』(KADOKAWA、2020年)

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