経理・情シスからITコンサルタントへ転職するには|業務知識を武器にする方法

月末の締め、3日目の夕方。

新しいシステムを入れたはずなのに、今月もExcelで数字を突き合わせている。

「入れて終わり」で、現場は何も変わらなかった。

その違和感を、仕事にする道があります。

ITコンサルタントとは、企業のITと業務の課題を分析し、解決策を提案して実行まで支援する仕事です。

経理・情シスからITコンサルへの転職では、締めや仕訳、社内調整で積んだ業務知識が、そのまま武器になります。

とくにERP(会計・販売・在庫などを1つのシステムで扱う仕組み)の導入では、その差がはっきり出ます。

ただし、全員に向く道ではありません。

会社を選び間違えると、業務知識を一度も使わないまま数年が過ぎることもあります。

では、経験を「捨てる転職」にせず、「活かす転職」にするには、何を見て会社を選べばよいのか。

目次

この記事で分かること

  • ITコンサル(NetSuiteコンサル)の仕事と、経理・情シスとの違い
  • 業務知識が、どの場面でどう活きるか
  • 向いている人・向いていない人と、ITコンサル以外の道
  • 転職で後悔しやすい3つの失敗と、その避け方
  • 面接で聞きたい3つの問いと、今日できる準備

ITコンサルタント(NetSuiteコンサル)とは|経理・情シスとの違い

経理・情シスとITコンサルの違いは、立ち位置にあります。

観点経理・情シスITコンサル(NetSuiteコンサル)
立ち位置自社の中で業務を回す社外から入り、お客様の課題を解く
相手社内の部門・経営者・取引先お客様の経営層・現場・開発の担当
仕事の中心決まった業務を正確に回す業務を設計し直し、仕組みに落とす

中でもNetSuiteコンサルは、クラウドERPの導入を担う役割です。

NetSuiteは、Oracleが提供するクラウド型のERPです。

世界220地域・44,000社以上で使われています(出典:Oracle NetSuite公式サイト、2026年9月確認)。

業務をまとめて扱う分、業務そのものへの理解が欠かせません。

経理・情シスの経験が直接活きるのは、このためです。

NetSuiteの基礎は、NetSuiteとは何かを解説した記事も参考にしてください。

なぜ今、経理・情シスからの転職が増えているのか

背景には、バックオフィスを取り巻く3つの変化があります。

  • 定型業務の自動化:仕訳やデータ入力は、AIやRPAで自動化が進んでいる。作業をこなすだけの働き方は、価値が見えにくくなった
  • 上流への関心:決まった処理より、業務の設計や改善に関わりたい人が増えている
  • IT人材の不足:経済産業省の試算では、2030年にIT人材が約16.4万〜78.7万人不足するとされる

最初の2つは、どちらも「作業から設計へ」という同じ流れです。

最後の数字は、中位の条件で約44.9万人です(出典:経済産業省「IT人材需給に関する調査」2019年3月、2026年9月確認)。

2019年時点の試算で、IT需要の伸びの前提によって幅があります。

会計や現場の業務を分かったうえでITも分かる人は、多くありません。

経理・情シスの経験者は、転職市場で強みを持ちやすい立場にいます。

あなたの「業務知識」は、どう武器になるのか

NetSuiteの導入では、Fit to Standardという考え方が重視されます。

業務をパッケージの標準機能に合わせて設計する進め方のことです。

標準に寄せるには、その業務が何のためにあるかを分かっていなければなりません。

「この承認は本当に要るのか」「この帳票は誰が何に使うのか」。

こう問えることが、経理・情シスのいちばんの強みです。

バックオフィスでの経験それが示す力NetSuiteコンサルでどう活きるか
月次・年次決算、仕訳ルールの整備会計業務の「型」の理解標準の会計プロセスへの落とし込みを主導
販売・在庫・購買の実務現場の業務フローの理解要件定義でユーザー部門と対等に会話
一人情シスの運用・ベンダー対応導入から運用までの勘所PM・進行管理の素地
部門間の板挟みの調整利害を調整し、翻訳する力経営層と現場をつなぐ中核のスキル

要件定義は、新しいシステムで何を実現するかを、お客様と決めて文書にする工程です。

PM(プロジェクトマネージャー)は、品質・費用・納期を管理して、プロジェクトを前に進める役割です。

経理出身者が実際に担う場面

NetSuite認定パートナー(Solution Provider)であるベンチャーネットの仕事では、業務知識が次の2つの場面で効きます。

場面1:お客様の業務を、直接聞く

要件を聞くのは、営業ではなく導入コンサルタントです。

営業が聞いた話を開発に回す、伝言ゲームにはしません。

経理の担当者が「締めの3日目に、何を突き合わせているか」を話すとき、同じ作業をしてきた人なら、その場で次の質問ができます。

聞いたあとは、次の順で進めます。

ベンチャーネットの進め方:見える化→整理整頓→Fit&Gap→3つの選択 業務の見える化、整理整頓、NetSuite標準機能とのFit&Gap、そして標準に合わせる・開発する・残すの3択で決める。 ベンチャーネットの進め方業務の見える化いまの業務フローを現場に聞いて描く整理整頓やめる・まとめる・そろえる業務を決めるFit&GapNetSuiteの標準機能と照らし合わせる3つの選択標準に合わせる/開発する/残す製品が決まっていても、見える化から始める
ベンチャーネットの進め方:見える化→整理整頓→Fit&Gap→3つの選択

いまの業務を描き(見える化)、やめる・まとめる業務を決め(整理整頓)、残りを標準機能と照らし合わせる(Fit&Gap)。

合わない業務は、標準に合わせる・開発する・残すのどれかに決めます。

2段目の整理整頓は、決算の手順を組み替えてきた人の得意分野です。

使われていない帳票や、二重になった承認に、真っ先に気づけるからです。

場面2:他社のあとを、引き継いで立て直す

ベンチャーネットの仕事は、ゼロからの導入より、他社のあとの引き継ぎ・立て直しが多くを占めます。

途中で止まった導入では、たいてい業務の整理が抜けています。

仕訳のルールや締めの順番から読み解ける人が、立て直しの糸口を見つけます。

AIで、何が人に残るか

仕事の場面AIが手伝いやすいこと人に残ること
仕訳・データ入力定型の入力・照合例外の判断、ルールの見直し
現状業務のヒアリング議事録・論点の整理本音を引き出す、優先順位をつける
要件定義・業務設計資料のたたき台、抜けの点検「この業務は何のためか」を問い、決める
経営層への提案数字の集計、比較表づくり利害の調整、決断を後押しする

経理・情シスからITコンサルへ移ることは、人に残る側の仕事に軸足を移すことでもあります。

向いている人・向いていない人

向いている人向いていない人・ほかの道が合う人
業務を「もっと良くしたい」と考えるのが好き1つの専門(会計・税務など)を深く極めたい
複数の会社の業務を見て、比べることに興味がある1社の中で、長く同じ仲間と働きたい
人の話を聞き、言葉を整理して伝えるのが苦にならない決まった手順を正確に回すことにやりがいを感じる
分からないことを、自分から調べて聞ける学び直しの時間を、いまは取りにくい

「向いていない」は、劣っているという意味ではありません。

業務知識を活かす道は、ほかにもあります。

  • 社内でERPの導入・見直しを推進する:いまの会社にいながら、上流の経験を積める
  • 事業会社の情シス・DX担当として上流に移る:1社に深く関わりたい人に合う
  • 会計・税務の専門性を深める:経理の専門家として、価値を高める
  • いまは動かない:家庭や体調の事情があれば、準備だけ進めておくのも立派な選択

道の選び方を逆引きにすると、次のとおりです。

業務知識を活かす道の逆引き 業務を良くしたい・複数の会社を見たいならITコンサル、いまの会社で上流の経験を積みたいなら社内でERPを推進、1社に深く関わりたいなら事業会社の情シス・DX担当、1つの専門を極めたいなら会計・税務の専門性を深める。 業務知識を活かす道の逆引き こうしたいなら この道 業務を良くしたい、 複数の会社を見たい ITコンサル いまの会社で 上流の経験を積みたい 社内でERPを 推進する 1社に深く 関わりたい 事業会社の 情シス・DX担当 1つの専門を 深く極めたい 会計・税務の 専門性を深める 事情があれば「いまは動かない」も選択
業務知識を活かす道の逆引き

社内でERPを推進した経験の活かし方は、プロジェクトリーダー経験者がNetSuiteコンサルタントに向いている理由で扱っています。

転職を考える人と、社内でERPを任された人

これから転職を考えている人は、まず経験のうち何が「売り」になるかを言葉にしてください。

第3章の表の左の列を、自分の経験で書き直すと見えてきます。

追加で要るのは、ITの基礎知識、プロジェクトの進め方、提案する力の3つです。

いきなり全部そろえる必要はありません。

多くは、実際の案件を通して身についていきます。

学習の道筋は、未経験からERPコンサルタントになるにはで扱っています。

社内でERPの導入や見直しの担当に指名された人へ。

その経験は、転職するかどうかにかかわらず財産になります。

現状の業務を整理し、支援会社と要件を詰め、社内の不安を受け止めて定着まで見届ける。

ITコンサルがお客様の側で行う仕事と、ほぼ同じ流れです。

社内で経験を積んでから転職すれば、「実際にERPを入れた経験」を語れます。

転職の「現実」|働き方・雇用形態・キャリアパス

良い面だけでなく、現実的な条件も知っておきましょう。

項目一般的な傾向ベンチャーネットの場合
働き方フルリモートで働ける会社もあるフルリモート(国内在住者)
雇用形態会社により異なる正社員が中心(業務委託を選べる場合もある)
年収・条件会社により幅がある変わることがあるため、最新の求人ページで確認
キャリアパス会社により異なるPMとして案件を担当し、その先に統括ポジション

統括ポジションは、PMの採用やマネジメントを担う役割です。

年収の相場は、ERPコンサルタントの年収相場で扱っています。

働き方や関わり方の選択肢は、ベンチャーネットでNetSuiteを仕事にする方法にまとめています。

転職で後悔しやすい3つの失敗

3つの失敗と避け方を図にすると、次のとおりです。

後悔しやすい3つの失敗と避け方 名ばかりコンサルに入る、業務知識から離れる、未経験なのに放置される。直接契約か・導入後も関わるか、要件定義にどの段階から関わるか、最初の3か月で何をするかを面接で聞いて避ける。 後悔しやすい3つの失敗と避け方 1 「名ばかりコンサル」に入る →直接契約か、導入後も関わるかを聞く 2 業務知識から離れてしまう →要件定義にどの段階から関わるかを聞く 3 未経験なのに放置される →最初の3か月で何をするかを聞く どれも、面接で聞けば確かめられる
後悔しやすい3つの失敗と避け方

失敗1:「名ばかりコンサル」に入ってしまう

起きること:職種名は「コンサル」でも、実態は決められた作業の要員だった。

導入が終わると運用や改善に関われず、提案の裁量もない。

原因:「導入して終わり」の受託の構造では、上流を考える機会が回ってきません。

業務知識を活かす場面も、ほとんどなくなります。

避け方:お客様と直接契約しているか、導入後にも関わるかを面接で聞きます。

プライム(お客様と直接契約すること)の案件か下請けの案件かで、関われる範囲は大きく変わります。

失敗2:業務知識から離れてしまう

起きること:製品の操作や設定ばかりで、業務の話をする機会がない。

「実務が分かる」という強みが、埋もれてしまう。

原因:製品の知識だけを重視する現場では、業務の理解が置き去りにされがちです。

避け方:要件定義や業務設計に、どの段階から関われるかを聞きます。

Fit to Standardで進める会社ほど、業務の理解が求められます。

失敗3:未経験なのに放置される

起きること:入社直後から、いきなり案件を丸投げされる。

分からないことを聞ける相手が社内にいない。

原因:育成の設計がないと、未経験者は「OJTという名の放置」に陥ります。

OJTは、実際の仕事を通じて先輩が教える育成の方法です。

避け方:入社後、どの順番で、誰に教わりながら独り立ちするかを聞きます。

「最初の3か月で何をするか」を具体的に尋ねると、育成の設計の有無が分かります。

ベンチャーネットならこう見る|面接で聞きたい3つ

ベンチャーネットは、NetSuite・Odoo・AIスクラッチ開発を扱い、SAPからのリプレイスにも対応するERPパートナーです。

転職を考える方には、どの会社の面接でも次の3つを聞くことをおすすめしています。

  1. 要件を聞くのは誰か:営業か、コンサルタントか
  2. どんな案件が多いか:ゼロからの導入か、引き継ぎ・立て直しか
  3. 独り立ちまでの順番:最初の3か月で何をし、誰に相談できるか

1つ目と2つ目で、業務知識を使う場面がどれだけあるかが分かります。

3つ目で、未経験から放置されずに育つかが見えます。

年収や働き方は、この3つの答えを聞いてから比べても遅くありません。

ベンチャーネットでは、次の形で働いています。

  • プライム中心:お客様と直接向き合い、導入後の保守まで関わる
  • 提案からカットオーバーまで一貫して担当:PMを兼ねるコンサルタントが、週次の定例と課題管理表でお客様と文書を共有しながら進める
  • 育成の仕組み:社内研修と進行中のプロジェクトへの同席から始め、段階的にPMとして独立担当へ

カットオーバーは、新しいシステムの本番の稼働開始のことです。

面接の前から判断材料をできるだけ開示し、希望者にはカジュアル面談も行っています。

「入ってから違った」を、お互いに避けたいからです。

働く社員の実際の姿は、社員インタビューもあわせてご覧ください。

今日できること|経験の棚卸し表をつくる(約1時間)

次の表を、自分の経験で埋めてみてください。

やってきた業務具体的に何をしたかどんな力の証拠かITコンサルのどの場面で使えるか
(例)月次決算締めを5営業日から3営業日に短縮する手順を作った業務を分解し、改善する力要件定義・業務設計

3〜5行埋まれば、面接で話す材料になります。

あわせて、「なぜ動きたいのか」「何を活かしたいのか」の2つに、自分の言葉で答えを書いておきます。

よくある質問

Q1. 経理・情シスの業務知識は、本当に武器になりますか

ERPの導入では大きな武器になります。

NetSuiteの導入では、業務を標準機能に合わせて設計します。

その設計には「その業務が何のためにあるか」の理解が欠かせません。

実務の経験が、そのまま強みになります。

Q2. プログラミング未経験・文系でもなれますか

なれます。

仕事の中心は、業務を理解し、標準機能で解決策を設計することです。

プログラミングは必須ではなく、ITの基礎は入社後に少しずつ身につけていけます。

Q3. 入社後、どのくらいで独り立ちできますか

会社の育成の仕組みで決まります。

ベンチャーネットの場合、まず研修と案件への同席から始め、PMとして段階的に独立担当へ進みます。

一人で抱え込ませない設計です。

Q4. AIが進むと、ITコンサルの仕事も減りませんか

定型の作業は減り判断と調整の比重が増えると考えています。

議事録や資料のたたき台は、AIが手伝いやすい部分です。

業務の目的を問い、利害を調整する部分は人に残ります(第3章3-2)。

Q5. 転職せずに、社内で経験を積む道もありますか

あります。

社内でERPの導入や見直しを担うと、ITコンサルとほぼ同じ流れを経験できます(第5章)。

その経験は、将来転職するときにも強い材料になります。

まとめ|あなたの経験は、無駄にならない

  • ITコンサルタントは、ITと業務の両面から会社の課題を解く仕事
  • 経理・情シスの業務知識は、Fit to Standardで進めるERP導入で武器になる
  • 効くのは、要件を直接聞く場面と、他社のあとを立て直す場面
  • 全員に向く道ではない。社内でERPを推進する道や、いまは動かない選択もある
  • 会社選びでは、誰が要件を聞くか・どんな案件が多いか・独り立ちの順番を聞く

締めの3日目にExcelを突き合わせてきた経験は、無駄になりません。

それは、次にERPを入れる会社で、真っ先に聞くべき質問の材料です。

まずは今日、棚卸し表の1行目を埋めるところから始めてみてください。

もう少し詳しく知りたい方へ

経理・情シスの経験をどう活かせるか、話を聞いてみたい方はお気軽にご連絡ください。

選考の前に、カジュアル面談でお話しすることもできます。

募集要項の詳細は、NetSuiteコンサルタント求人にまとめています。

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この記事を書いた人

持田 卓臣のアバター 持田 卓臣 株式会社ベンチャーネット代表取締役

持田 卓臣(もちだ たくおみ)
株式会社ベンチャーネット 代表取締役

ヒューレット・パッカード社でITコンサルタントとして従事した後、2005年に株式会社ベンチャーネットを設立。
Oracle NetSuite Solution Provider Partner として、中堅・中小企業向けクラウドERP「NetSuite」の導入・運用支援を提供しています。
SEO・広告・SNS・ウェブ・MA・SFAと一気通貫で培ってきたデジタルマーケティング領域の業務知見を活かし、NetSuiteを軸とした経営DXを支援しています。
著書:『普通のサラリーマンでもすごいチームと始められる レバレッジ起業「バーチャル社員」があなたを救う』(KADOKAWA、2020年)

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