基幹システムの入れ替えを、社内で推進した経験はありますか。
要件をまとめ、部門間の調整に走り、ベンダーとやり取りし、稼働日まで走り切る。終わったときには、しばらく思い出したくない。そういう仕事だったかもしれません。
ただ、その経験は社外に出ると、かなり希少な資産です。
一度きりの経験だと思われがちですが、実はそうではありません。その1回を、何社もの支援に変えるという道があります。
この記事は、NetSuite認定パートナー(Solution Provider)であるベンチャーネットが書いています。ERP導入を推進した経験が、コンサルタントという仕事にどうつながるのかを整理します。
この記事で分かること
- ERP導入の推進経験が、社外で希少とされる理由
- その経験で身についた3つの力と、コンサルの職務要件の重なり
- 「1社で1回」を「何社もの支援」に変えるという考え方
- 向いている人と、そうでない人
読了時間の目安:約11分
その経験は、社内では評価されにくい
まず、多くの方が感じていることから始めます。
終わったら、元の部署に戻る
ERP導入のプロジェクトは、たいてい期間限定です。
社内から人が集められ、1年から2年ほど走り、稼働したら解散します。そして多くの場合、参加した人は元の業務に戻ります。
戻った先で「あのプロジェクトの経験」が評価される会社は、そう多くありません。
苦労は、記録に残りにくい
プロジェクトで最も時間を使ったことを思い出してください。
おそらく、システムの設定ではありません。部門間の意見の調整、現場の抵抗への対応、経営層への説明。 こうしたことに、多くの時間を使ったはずです。
ところが、これらは成果物として残りません。稼働したという事実だけが残ります。
だから「大変だった」で終わりやすい
結果として、こういう受け止めになります。
「大変だったが、終わった。もう一度やりたいとは思わない」
この感覚は、まったく自然です。ただ、それで終わらせるには惜しい経験でもあります。
なぜ社外では希少なのか
社内では埋もれやすいこの経験が、社外では違う見え方をします。
経験できる人数が、そもそも少ない
基幹システムの入れ替えは、1社で10年に1回あるかどうかです。
そして1回のプロジェクトで、推進役として深く関わる人は数名です。単純に、経験者の絶対数が少ないという構造があります。
「社内から推進した」立場が特に少ない
ベンダー側でERP導入に関わった人は、それなりにいます。
しかし、発注する側・使う側として社内から推進した経験を持つ人は、さらに限られます。
この立場の人だけが知っていることがあります。稟議がどこで止まるか。現場が何に抵抗するか。役員が何を心配するか。これは外から見ていても分かりません。
支援する側に、この視点が足りていない
正直にお伝えすると、ERPの導入支援を行う会社の多くは、技術と製品知識を軸に人を育てています。
それは必要なことです。ただ、発注側の内部で何が起きるかを体感的に知っている人は、支援側にも多くありません。
だから、この経験は社外で希少なのです。
その経験で身についた3つの力
具体的に何が身についているのか。3つに整理します。
力①:経営の全体観
ERP導入では、会社の業務を横断して見ることになります。
営業がどう受注し、どう在庫が動き、どう請求され、どう会計に反映されるか。部門をまたいだ流れを一度でも通しで見た人は、会社の構造が頭に入っています。
通常の業務では、自部門の範囲しか見えません。この全体観は、プロジェクトでしか得られないものです。
力②:調整力
ERP導入で最も難しいのは、技術ではありません。利害の異なる部門の間で、決めることです。
営業は柔軟性を求め、経理は統制を求める。現場は今のやり方を残したがり、経営は標準化を求める。
この間に立って、落としどころを見つけた経験。これは、簡単には身につきません。
力③:数字で語る力
プロジェクトを進めるには、予算が要ります。予算を取るには、経営層を説得する必要があります。
「便利になります」では通りません。何がどれだけ改善するのかを、数字で示した経験があるはずです。
現場の言葉を、経営の言葉に翻訳する。この力は、そのままコンサルタントの仕事になります。
この3つは、そのまま職務要件です
NetSuiteコンサルタントに求められることを並べると、こうなります。
| 求められること | 対応する経験 |
|---|---|
| 顧客の業務全体を理解する | ①経営の全体観 |
| 部門間の要望を整理し、決める | ②調整力 |
| 経営層に投資対効果を説明する | ③数字で語る力 |
製品知識は、入社後に身につけられます。 上の3つは、経験しないと身につきません。
だから私たちは、この経験を持つ方を高く評価しています。
「1社で1回」を「何社もの支援」に変える
ここが、この記事でいちばんお伝えしたいことです。
経験は、繰り返せません
社内にいる限り、ERP導入の経験は基本的に1回です。
10年後にまた入れ替えがあるかもしれませんが、そのときは別の人が推進役になっているかもしれません。経験を積み重ねる機会が、構造的にありません。
支援する側に回ると、頻度が変わります
一方、支援する側では、複数の会社のプロジェクトに関わります。
業種が違えば、つまずく場所も違います。規模が違えば、進め方も変わります。1回では見えなかったパターンが、数を重ねると見えてきます。
そして、経験は他社の役に立ちます
あなたが苦労したことは、いま同じ場所でつまずいている会社があります。
「うちの経理はこう言うはずです」「その進め方だと、現場が止まります」。経験した人にしか言えない助言があります。
これは、教科書からは出てきません。
一度きりの苦労が、資産になります
同じ経験でも、置き場所が変われば意味が変わります。
社内に置けば「大変だったが終わったこと」。社外に持ち出せば「何社もの役に立つ知見」。
1社で1回の経験を、何社もの支援に変える。 これが、この道を選ぶことの意味だと考えています。
向いている人、そうでない人
正直にお伝えします。すべての方に向いている仕事ではありません。
向いている方
- 部門間の調整が、苦ではなかった方:ここを苦痛に感じなかったなら、適性があります
- 「なぜこの業務があるのか」を考えた方:言われた通りに設定するのではなく、意味を問うた経験
- 現場の話を聞くのが好きな方:この仕事は、聞くことから始まります
- 自分の経験を、人の役に立てたい方:ここが動機として続く力になります
慎重に考えたほうがよい方
- 技術を深く追求したい方:この仕事は、技術より業務と人の比重が高くなります
- 一つの会社にじっくり腰を据えたい方:複数のプロジェクトを並行する働き方が基本です
- 決まった手順の仕事を好む方:会社ごとに前提が変わるため、毎回考える必要があります
こうした志向をお持ちなら、別の道のほうが力を発揮できるかもしれません。合わないと感じたら、そうお伝えします。
「まだ早い」ということはありません
よくいただくのが「経験が1回だけなので、まだ早いのでは」というご懸念です。
1回で十分です。 前述のとおり、その1回を経験している人自体が少ないためです。
製品知識は入社後に身につきます。足りないのは知識であって、経験ではありません。
よくある不安と、その実際
ここからは、実際によくいただくご質問にお答えします。
不安①:NetSuiteを触ったことがない
問題ありません。
これまで関わったのが別の製品でも、ERPの導入で起こることの構造は共通しています。要件のまとめ方、部門調整、データ移行、定着化。ここに製品の違いはあまり影響しません。
製品固有の知識は、入社後の学習で身につきます。
不安②:ITの専門職ではなかった
むしろ、それが強みになる場合があります。
経理、営業、生産管理。業務側からプロジェクトに参加した方は、現場の言葉を知っています。
コンサルタントの仕事で難しいのは、技術を説明することではありません。業務を理解して、翻訳することです。
不安③:プロジェクトが成功したとは言えない
うまくいかなかった経験ほど、価値があります。
なぜ止まったのか。どこで判断を誤ったのか。これを言葉にできる人は、同じ場所で止まっている会社を助けられます。
成功事例だけを知っている人より、失敗の構造を知っている人のほうが役に立つ場面は多くあります。
不安④:年齢が気になる
この仕事では、経験の厚みが効きます。
若さより、業務を知っていること、人の間に立てることが求められます。40代・50代で転身される方も珍しくありません。
不安⑤:いまの会社に不満はない
それで構いません。
この記事は、転職を勧めるものではありません。いまの環境で力を発揮できているなら、それが一番です。
ただ、その経験には社外でも通用する価値があることは、知っておいて損はないと思います。選択肢を持っているかどうかで、いまの仕事の見え方も変わります。
一歩目に何をするか
すぐに動く必要はありません。まず整理から始めてください。
自分の経験を、言葉にしてみる
次の3つを、それぞれ数行で書き出してみてください。
- どの範囲の業務を見たか(受注から会計まで、など)
- どんな対立を、どう調整したか
- 経営層に、何をどう説明したか
書けるなら、それがそのまま職務経歴です。
何が足りないかを確認する
書き出してみると、足りない部分も見えてきます。
製品の知識、会計の知識、開発の理解。足りないものは、あとから足せるものがほとんどです。
足せないのは、経験そのものです。それはすでにお持ちです。
話を聞いてみる
具体的に決めていなくても構いません。
「自分の経験が、外でどう評価されるのか」を知るだけでも、意味があります。
ベンチャーネットでは、NetSuiteの導入・運用支援を行っています。ERP導入を社内から推進した経験を持つ方とは、ぜひ一度お話ししたいと考えています。
その場で、こちらから判断をお伝えします。合わないと感じたら、そうお伝えします。 お互いにとって、そのほうが良いからです。
まとめ:その1回は、まだ終わっていない
ここまで、ERP導入の推進経験がどう活きるかを見てきました。
最後に、いちばんお伝えしたいことを書きます。
あの1年半は、まだ終わっていません。
社内では、稼働した日で終わった仕事かもしれません。ですが、そこで得た3つの力は、あなたの中に残っています。
経営の全体観。部門間の調整力。数字で語る力。この3つは、そのままNetSuiteコンサルタントの職務要件です。
そして、社内では繰り返せないその経験を、社外では何度も活かせます。あなたが苦労した場所で、いままさに止まっている会社があります。
1社で1回の経験を、何社もの支援に変える。
そういう道があることだけ、知っておいていただければと思います。
いますぐでなくて構いません。ご自身の経験を整理してみて、話してみたいと感じたときに、声をかけてください。
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