NetSuite導入があなたのキャリアを上げる理由|「任される人」が次の経営人材になる

「ERP導入のリーダー、お願いできるかな」。

ある日、そう声をかけられたとします。素直に喜べるでしょうか。多くの方の本音は、期待より不安が先に立つはずです。通常業務との兼務、各部門との調整、そして失敗への恐れ。

この記事は、その不安をごまかさずに扱います。そのうえで、一つの見方をお伝えしたいのです。ERP導入のリーダーは、重荷ではなく登竜門である。次の経営を担う人材が、ここで育つ。NetSuite認定パートナー(Solution Provider)であるベンチャーネットは、多くの導入現場を見てきて、そう考えるようになりました。

任された方にも、これから誰かに任せようとしている経営者の方にも、読んでいただきたい記事です。

この記事で分かること(読了 約7分)

  • ERP導入のリーダーが「重い役目」に見える理由と、その不安の正体
  • それでも経営者が「次を担う人」にこの役目を任せる理由
  • 導入リーダーが手にする3つの力と、プロジェクト前後の変化
  • リーダーが潰れる3つの構造と、任せる側の心得
目次

なぜERP導入のリーダーは「重い役目」に見えるのか

まず、不安の正体を言葉にしておきます。見えない不安は膨らみますが、言葉になった不安は扱えるからです。

ERP導入のリーダーが重く見える理由は、主に3つあります。

  • 兼務が前提:通常業務を抱えたまま、全社プロジェクトを背負うことになる
  • 板挟みになる:営業・経理・現場、それぞれの言い分の間に立つことになる
  • 失敗が怖い:うまくいって当たり前、つまずけば目立つ、と感じてしまう

この不安は自然なものです。しかも、根拠がないわけでもありません。中堅・中小企業のERP満足度は42.9%にとどまる、という調査もあります(出典:キーマンズネット「ERPの利用状況に関するアンケート」2024年)。

つまり、簡単な仕事ではない。それは事実です。だからこそ、次の問いが大切になります。なぜ経営者は、この簡単ではない仕事を、あなたに任せたのでしょうか。

それでも、経営者が「次を担う人」に任せる理由

理由は明快です。ERP導入は、会社の全体を横断して見られる、数少ない仕事だからです。

会社の全体が、一度に見える仕事

ERP(統合基幹業務システム)の導入では、販売・在庫・購買・会計・現場の業務すべてに触れることになります。各部門がどう動き、数字がどう流れ、どこで詰まっているのか。

これほど会社の全体を見渡せる仕事は、日常業務の中にはほとんどありません。普段は経営者だけが見ている景色を、プロジェクトを通じて見ることになります。

「翻訳者」になる仕事

導入リーダーは、現場の言葉と経営の言葉、その両方を扱うことになります。

現場の「入力が面倒」を、経営の「業務コストと定着リスク」に翻訳する。経営の「リアルタイムに数字を見たい」を、現場の「この画面をこう変える」に翻訳する。この往復を繰り返すうちに、両方の言葉を話せる人になっていきます。

そして、両方の言葉を話せる人こそ、次の経営を担える人です。

任命は、期待の裏返し

だから、経営者はこの役目を片手間の人には任せません。全社を見せてよい人、部門を越えて信頼される人、次を担ってほしい人に任せます。

ベンチャーネットは、システム導入を「ITプロジェクト」ではなく「経営プロジェクト」だと考えています。経営プロジェクトのリーダーとは、つまり、経営を学ぶ人のことです。任命された時点で、その期待は始まっています。

導入リーダーが手にする3つの力

プロジェクトを走りきったリーダーは、3つの力を手にします。

  1. 経営の全体観:部門単位ではなく、会社全体の業務と数字のつながりで考える力
  2. 部門を動かす調整力:立場の違う人たちの利害を整理し、同じ方向を向かせる力
  3. 数字で語る力:感覚や経験だけでなく、データを根拠に提案し、判断する力

プロジェクトの前後で、立ち位置はこう変わります。

プロジェクト前プロジェクトを終えた後
見えている範囲自部門の業務全社の業務と数字の流れ
使う言葉現場の言葉現場の言葉+経営の言葉
動かせる範囲自部門のメンバー部門を越えた関係者
提案の根拠経験と感覚数字と経験の両方
経営会議での立ち位置報告する側提案する側

もちろん、これらの力は自動的には身につきません。プロジェクトの途中は、間違いなく大変です。そして、進め方を誤ると、力が付く前にリーダーが潰れてしまいます。

次の章では、その「潰れる構造」を先に知っておきましょう。

リーダーが潰れる3つの構造と回避策

先にお伝えしたいことがあります。導入リーダーが苦しくなるのは、本人の力量の問題ではありません。ほとんどの場合、体制と進め方の構造の問題です。構造として知っておけば、避けられます。

構造1:孤軍奮闘|任せたきりで、独りにされる

よくある現象

  • 経営者が任命後、プロジェクトの場に現れなくなる
  • 部門への協力依頼が「お願いベース」になり、後回しにされる
  • 判断に迷っても、相談する相手が社内にいない

なぜ起こるのか

「任せる」と「任せたきり」の取り違えです。リーダーに与えられているのは実務の推進であって、部門を動かす力の源泉は経営者にあります。その後ろ盾が見えなくなると、調整力は個人の人望頼みになり、すり減っていきます。

どう回避するか

経営者がスポンサーとして立ち続けることです。月に一度でも、経営者が同席する定例があるだけで、部門の動きは変わります。任された側からも、遠慮せずに「後ろ盾」を求めてください。それはわがままではなく、プロジェクトの要件です。

構造2:丸投げの板挟み|ベンダー任せと現場の溝

よくある現象

  • 設計をベンダーに丸投げした結果、現場の実態と合わない仕組みができる
  • リーダーが、ベンダーと現場の不満の両方を一人で受け止めている
  • 「言われたとおり作りました」と「聞いていた話と違う」の間で消耗する

なぜ起こるのか

要望を何でも受け入れる相手と組むと、判断の重さがすべてリーダーに戻ってくるためです。本当に必要なのは、御用聞きではなく、対等に議論できる相手です。

どう回避するか

「それはやめた方がいい」と言える参謀と組むことです。ベンチャーネットがご支援で大切にしているのも、この対等な関係です。判断の材料と選択肢を並べ、決めるのは一緒に考える。リーダーを板挟みの位置から、意思決定の位置へ戻します。

構造3:完璧主義の消耗|全部を一度にやろうとする

よくある現象

  • 全部門の要望をすべて盛り込もうとして、要件が膨らみ続ける
  • 一斉稼働にこだわり、準備の負荷がリーダーに集中する
  • ゴールが遠のき続け、チームの熱が冷めていく

なぜ起こるのか

「せっかくやるなら完全なものを」という善意が、かえってプロジェクトを重くするためです。盛り込むほど、調整と検証の負荷は掛け算で増えます。

どう回避するか

完璧を目指すより、まず回す。範囲を絞って動かし、動かしながら磨いていく進め方です。段階的に進めれば、リーダーの負荷は分散され、小さな成功が積み上がります。その成功が、次の段階への推進力になります。

潰れる原因は、構造で消せる

3つの構造に共通するのは、リーダー個人の頑張りでは解決しない、という点です。裏を返せば、体制と進め方を整えれば、多くは防げます。ERP導入の失敗の構造は、〈ERP導入はなぜ失敗するのか〉でも詳しく解説しています。

経営者の方へ|任せ方が、育成の成否を決める

ここからは、任せる側の経営者の方に向けて書きます。

導入リーダーの任命は、単なる役割分担ではありません。次の経営を担ってほしい人への、育成投資の宣言です。そして、その投資が実るかどうかは、任せ方で決まります。心得は3つです。

1. 守る。進め方の失敗を、個人の責任にしない体制を最初に宣言してください。挑戦の結果を個人に負わせる空気があると、リーダーは守りに入り、学びも成果も小さくなります。

2. 権限を与える。部門を動かせる立場であることを、経営者の口から全社に示してください。経営会議で提案する場を与えることも、育成の一部です。

3. 参謀をつける。社内に前例がないプロジェクトで、リーダーを独学に追い込まないでください。伴走する参謀がいれば、リーダーは判断に集中でき、その判断の経験こそが人を育てます。

実際に、全社横断のチームを組んで1年9か月の基幹刷新を走りきった企業もあります(出典:ベンチャーネット お客様の声・株式会社アペックス様)。体制を整えて任せれば、プロジェクトの成功と人材の成長は、同時に手に入ります。

よくある質問(FAQ)

Q1. システムに詳しくないのですが、リーダーが務まりますか?

務まります。導入リーダーに求められるのは、技術ではなく、業務と人をつなぐ力です。

システムの技術的な部分は、パートナーに任せられます。一方、自社の業務を知り、部門の人たちと話せることは、外部の誰にも代われません。業務側の出身者がリーダーを務める導入は、むしろ王道です。

Q2. 通常業務との兼務です。つぶれませんか?

兼務が前提だからこそ、体制設計が先です。一人で抱える前提を疑ってください。

経営のスポンサーシップ、部門ごとの分担、外部パートナーへの委任範囲。この3つを最初に決めれば、リーダーの負荷は設計できます。つぶれる原因は業務量そのものより、抱え込みの構造にあります。

Q3. 失敗したら、社内での立場に響きませんか?

その不安があるからこそ、お伝えしたいことがあります。ERP導入の失敗の多くは、個人ではなく進め方の構造で起こります。

現状把握の不足、丸投げ、作り込みすぎ。失敗の型は、すでに分かっています。型を知り、体制を整えて臨むこと自体が、リーダーとしての実力の示し方です。そして、その整え方は一人で考える必要はありません。

Q4. 任命されました。何から始めればよいですか?

最初の仕事は、システム選びではありません。目的を経営の言葉にすることです。

「なぜ今やるのか」「現状維持には何のコストがかかるのか」。これを言語化できると、経営層の支持も、部門の協力も得やすくなります。社内への提案のまとめ方は、〈ERP導入の提案書・稟議書の書き方〉が参考になります。

まとめ|任された人へ。そして、任せた人へ

任された方へ。その任命は、あなたへの期待の裏返しです。不安は自然なものですが、潰れる構造は先に消せます。会社の全体が見えるこの機会を、次の景色への登り口にしてください。

任せた経営者の方へ。守り、権限を与え、参謀をつける。この3つが揃ったとき、プロジェクトの成功と次の経営人材が、同時に育ちます。

そして、どちらの立場の方にも。経営の数字とデータを整えるこの仕事は、会社の「兵站」を引き直す仕事でもあります。その考え方は〈素人は戦略を語り、玄人は兵站を語る〉で書きました。あわせてお読みください。

体制の作り方、進め方の設計、その壁打ちからでも構いません。お気軽にご相談ください。

もう少し詳しく知りたい方へ

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この記事を書いた人

持田 卓臣のアバター 持田 卓臣 株式会社ベンチャーネット代表取締役

持田 卓臣(もちだ たくおみ)
株式会社ベンチャーネット 代表取締役

ヒューレット・パッカード社でITコンサルタントとして従事した後、2005年に株式会社ベンチャーネットを設立。
Oracle NetSuite Solution Provider Partner として、中堅・中小企業向けクラウドERP「NetSuite」の導入・運用支援を提供しています。
SEO・広告・SNS・ウェブ・MA・SFAと一気通貫で培ってきたデジタルマーケティング領域の業務知見を活かし、NetSuiteを軸とした経営DXを支援しています。
著書:『普通のサラリーマンでもすごいチームと始められる レバレッジ起業「バーチャル社員」があなたを救う』(KADOKAWA、2020年)

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