月の広告予算が1,500万円あるとします。
使える媒体は5つ。それぞれの費用対効果は、去年の実績で分かっています。
多くの会社は、こう配ります。
効率の良い媒体から順に、上から満額を入れていく。
合理的に見えます。実際、これは販促の現場で最も普及している配り方です。
ところが検証では、この配り方が年間4,212万円相当を取りこぼしていました。同じ予算、同じ媒体です。
この記事では、なぜそうなるのかを、計算例で1つずつ追いかけます。
担当者の勘が悪いという話ではありません。「効率の良い順」というルールそのものに組み込まれた見落としの話です。
📌 この記事で分かること
- 「効率の良い順に配る」が、なぜ合理的に見えるのか
- 効果は投じるほど鈍る。限界効果と飽和の考え方
- 効率の順位が途中で逆転する計算例(3.61 → 0.33)
- 取りこぼしの金額がどこから生まれるか(年間4,212万円相当)
- 媒体どうしの食い合いと相乗り(相互作用)を無視すると、さらに約2割損する理由
- 明日から配り方を変えるための問いの立て方
読了時間の目安:約11分
「効率の良い順に配る」は、なぜ合理的に見えるのか
まず、この配り方を否定しないところから始めます。
効率順配分とは、単価あたりの効果が高い媒体や施策から順に、予算を埋めていく配り方のことです。
ROAS(広告費に対する売上の比率)や、1件の獲得にかかった費用(CPA)を並べる。
良いものから順に予算を入れ、枯れたら次へ。Excelで組める単純さもあり、実務で最も普及しています。
合理的に見える理由
理由は3つあります。
- 実績にもとづいている。去年の数字が根拠になる
- 説明しやすい。「効率の良いところに厚く」は誰も反対できない
- 手間がかからない。順位をつけて上から埋めるだけ
どれも間違っていません。
だから、この配り方をしている担当者は、まったく非合理ではありません。
ただし、前提が1つ抜けている
効率順の配り方が正しいのは、「効率が、投じる額によって変わらない」ときだけです。
100万円入れたときの効率と、500万円入れたときの効率が同じなら、良い順に埋めるのが正解です。
しかし広告の効果は、そうなっていません。次の章で見ます。
効果は、投じるほど鈍る
限界効果と飽和
限界効果とは、予算を追加で1単位投じたときに、追加で得られる効果のことです。
1本目の100万円で得られる効果と、5本目の100万円で得られる効果は、同じではありません。
広告の露出が増えるほど、同じ人に何度も届くようになり、新しく動く人は減っていくからです。
飽和とは、予算を追加しても効果がほとんど増えなくなる状態のことです。
効果には上限があります。投じる額を増やすほど上限に近づきますが、超えることはありません。
だから追加1本あたりの効果は、だんだん小さくなります。
媒体ごとに、鈍り方が違う
ここが要点です。飽和の速さは、媒体によって違います。
検索広告のように「いま探している人」を刈り取る媒体は、対象が限られるぶん早く飽和します。
動画広告のように「まだ知らない人」に届ける媒体は、対象が広いぶん飽和が遅い。
つまり、1本目の効率が良い媒体ほど、早く鈍ることが起きます。
効率順配分は、この鈍り方の違いを見ていません。
去年の「平均の効率」で順位をつけ、その順位のまま満額を入れるからです。
計算例:効率の順位は、途中で逆転する
ここから、ベンチャーネットが販促最適化の仕組みを検証したときの計算例を使います。
検証用のサンプルデータによる計算例であり、実際の媒体や事業では数字が変わります。
条件
- 月の予算:1,500万円
- 媒体:5つ(検索広告・動画広告・SNS広告・メッセージ配信など)
- 各媒体への投入額:0〜500万円の6段階
- 組み合わせの数:7,776通り
7,776通りなら、すべて計算して「確実な正解」を出せます。
その正解と、効率順の配分を比べました。
追加1本ごとの効果を並べると
追加100万円ごとの効果を、効率首位の検索広告と、飽和の遅い動画広告で並べます。
| 媒体 | 1本目 | 2本目 | 3本目 | 4本目 | 5本目 |
|---|---|---|---|---|---|
| 検索広告(効率首位) | 3.61 | 1.98 | 1.09 | 0.60 | 0.33 |
| 動画広告(飽和が遅い) | 1.39 | 1.20 | 1.03 | 0.89 | 0.76 |
1本目だけを見れば、検索広告の3.61は動画広告の1.39の2.6倍です。効率順なら、迷わず検索広告に満額を入れます。
しかし5本目を見てください。検索広告は0.33。1本目の1割以下です。動画広告は0.76を保っています。
逆転が起きる場所
表を横に読むと、4本目で順位が入れ替わります。
- 3本目まで:検索広告(1.09)>動画広告(1.03)
- 4本目以降:検索広告(0.60)<動画広告(0.89)
つまり、検索広告の4本目・5本目に入れた200万円は、動画広告に回したほうが効いていました。
効率順の配り方は、この逆転を構造的に見落とします。
順位を1回つけて、その順位のまま上から埋めるからです。途中で順位が変わることを、計算に入れていません。
取りこぼしはいくらか
効率順の配分と、確実な正解
検証で、効率順の配分はこうなりました。
- 検索広告600万円・SNS広告600万円・メッセージ配信300万円。3媒体に集中
一方、7,776通りから選んだ最適配分は、5媒体すべてに分散していました。
最も多かったのは動画広告の400万円です。1本目の効率では3位以下だった媒体です。
| 配分の決め方 | 増分利益(月) |
|---|---|
| 効率の良い順に、上から満額 | 最適配分より 351万円少ない |
| 7,776通りから選んだ最適配分 | 2,244万円 |
差は月351万円。年間で4,212万円相当です。
予算を増やしたわけではありません。媒体を変えたわけでもありません。
同じ1,500万円の配り方を変えただけで、この差が出ました。
差が生まれる場所は、特定できる
この検証で重要なのは、金額の大きさより、なぜそうなるかの原因まで特定できたことです。
原因は第3章の表そのものです。
効率首位の媒体に満額を入れると、その4本目・5本目は他の媒体の1本目より効かなくなっている。
効率順の配り方は、そこを見ないまま埋め切る。
だから取りこぼしは、偶然でも担当者のミスでもなく、このルールを使えば毎月起きる構造的なものです。
正直に書いておくこと
1つ、正直に書いておきます。
この差は、高価な仕組みを入れなければ埋まらないものではありません。
「追加の1本ごとの効果を見比べて配る」という賢い配り方であれば、このシナリオでは確実な正解に到達できます。
つまり第一の問題は道具ではなく、配るときの問いの立て方です。
道具が必要になるのは、次の章で扱う「媒体どうしの影響」が入ってからです。
媒体どうしは、影響し合う
飽和だけなら、賢い配り方で対処できます。
配分をさらに難しくしているのは、もう1つの性質です。
相互作用とは
相互作用とは、2つの媒体に同時に投じたとき、それぞれ単独で投じたときの合計とは効果が変わる性質のことです。
方向は2つあります。
| 種類 | 何が起きるか | 検証で置いた例 | 係数 |
|---|---|---|---|
| 食い合い | 同じ顧客を取り合い、合計が減る | ディスプレイ広告×SNS広告(どちらもバナー) | −0.25 |
| 食い合い | 同じ客が見比べて、一方でしか買わない | 2つのECモール広告 | −0.25 |
| 相乗り | 一方が他方の効果を押し上げる | 動画広告×検索広告(動画で知って検索で刈り取る) | +0.20 |
数式にすると「媒体Aの効果 × 媒体Bの効果 × 係数」という、2つの掛け算になります。
この掛け算が、次の話につながります。
相互作用を無視すると、約2割損する
検証では、相互作用を加えたシナリオで、相互作用を無視した配分は確実な正解の79.9%にとどまりました。約2割の取りこぼしです。
食い合う2つの媒体の両方に予算を入れてしまい、相乗りする組み合わせを活かせなかったためです。
媒体を1つずつ独立に評価する方法では、この関係が見えません。
「検索とSNSは食い合っている気がする」という現場の感覚は、たいてい正しい。ただし感覚のままでは配分に使えません。強さを数字(係数)で持つ必要があります。
ここで初めて、道具の話になる
飽和だけの問題は、賢い配り方で解けました。
相互作用が入ると、話が変わります。
「媒体Aの効果 × 媒体Bの効果」という掛け算の項は、無料で使える数理最適化ソフトでは計算そのものができません。扱うには有料のソフトが必要で、費用は年間数百万円規模になります。
ベンチャーネットが専用の計算手法を使う実務上の理由は、この1点だけです。
掛け算の条件を、無料の道具立てのまま扱えること。足し算で書ける問題なら、無料のソフトのほうが速く確実です。
この境目の考え方は、データドリブン経営の次の一手|量子アニーリングで実現する経営最適化で扱っています。本記事では技術の中身には立ち入りません。
「次の100万円が、最も効く媒体はどこか」を問う
ここまでを、明日の実務に落とします。
配り方を変えるのに、まず必要なのは道具ではなく、問いの置き換えです。
問いを「いま効率が良い媒体」から「次の1本が効く媒体」へ
効率順配分の問いは「どの媒体の効率が良いか」でした。
これを、こう置き換えます。
次の100万円を、どこに置くのがいちばん効くか。
順位ではなく、追加の1本で考える。
この問いに毎回答えていくと、配分は自然に分散します。第3章の表で、5本目の検索広告より1本目の動画広告を選ぶのと同じことです。
そのためには、媒体ごとの「追加1本あたりの効果」を持っている必要があります。
効果測定ツールの推定値でも、社内の実績でも、担当者の見立てでも構いません。まず持つことが先です。
上限を先に決める
もう1つ、簡単で効く方法があります。媒体ごとの上限を先に決めることです。
「検索広告は月300万円まで」と決めておけば、飽和した4本目・5本目に予算が流れません。
上限の根拠は、追加1本あたりの効果が他の媒体の1本目を下回る点です。第3章の表なら、検索広告は3本目までになります。
厳密でなくて構いません。上限がないこと自体が、効率順配分の取りこぼしを生んでいます。
認知の施策は、効率で競わせない
効率順のもう1つの副作用があります。
短期の効率で選ぶと、購入直前の顧客を刈り取る施策ばかりが残り、認知の施策が計画から消えていきます。
認知の施策は、短期の効率では刈り取り施策に勝てません。効率で競わせれば必ず消えます。
だから「認知の施策を最低1つ入れる」という条件として先に決め、効率の土俵から降ろしてください。
条件の書き出し方は、別の記事で深掘りします。本記事では「条件として守る」ことまでを押さえてください。
つまずく3つのパターン
配り方を見直す取り組みが行き詰まる典型を、3つ挙げます。
売り込みのために書くのではありません。いずれも担当者の力量ではなく、進め方の構造の話です。
ROASの良い媒体に、予算を積み増し続ける
こんな状態になっていませんか
- 前月ROASが良かった媒体に、翌月の増額が集中している
- 増額したのに、売上の伸びが増額分に追いついていない
- 「効率が良いのだから、もっと入れるべき」が会議の合意になっている
なぜ起きるのか
ROASは平均の効率です。追加1本の効率ではありません。
平均が良く見える媒体でも、追加分はすでに飽和しているということが起きます。平均を見て追加を決めている限り、この見誤りは繰り返されます。
どう回避するか
媒体ごとに「先月より100万円増やしたとき、効果はいくら増えたか」を1行残してください。
平均のROASではなく、増やした分の効果を並べる。それだけで、飽和している媒体は見えてきます。
媒体を1つずつ評価して、食い合いを見落とす
こんな状態になっていませんか
- 媒体ごとに別の担当者や代理店が付き、それぞれが自分の媒体の効率を報告している
- 全媒体の効率が「良い」のに、全体の売上が計画に届かない
- 新しい媒体を足したのに、既存媒体の効果が落ちた理由が分からない
なぜ起きるのか
媒体ごとの評価は、他の媒体の成果を横取りしていても「良い」と出ます。
同じ顧客を2つの媒体で獲得していれば、両方の報告書に載る。合計すると実際より大きく見えます。
どう回避するか
媒体別の報告と別に、全体の増分利益を1つの数字で見る場を作ってください。
そのうえで「同時に出稿している組み合わせ」を書き出し、食い合いが疑われる組を1つずつ検証する。強さを数字にできれば、配分に使えます。
年初に順位を1回つけて、1年配り切る
こんな状態になっていませんか
- 年間の媒体別予算が、前年の実績順で年初に決まっている
- 月次で見ているのは消化率だけで、追加効果の見直しがない
- 市況が変わっても、配分は年度末まで変わらない
なぜ起きるのか
効率順配分の弱点は、順位が固定されることです。
効率は投じるほど変わり、市況でも変わります。年初の順位は、年の途中でほぼ確実に古くなります。
どう回避するか
配分を「年に1回決めるもの」から「毎月、追加1本の置き場所を決めるもの」に変えてください。
全額を毎月組み直す必要はありません。予算の1〜2割を「次の100万円」として毎月配り直すだけでも、固定の弊害はかなり減ります。
ベンチャーネットが大事だと考えているのは、効率の良い媒体を見つけることではなく、効率が鈍る場所を見つけることです。鈍る場所が分かれば、配分は自然に決まります。
手法は正直に選ぶ
ここまで読むと「では専用の仕組みが必要なのか」と思われるかもしれません。
検証の結果を、そのまま書きます。
| 決め方 | 得意 | 苦手 |
|---|---|---|
| Excel+経験 | 導入コストゼロ。柔軟 | 条件が3つを超えると管理できない。相互作用を扱えない |
| 効率順の配分 | 単純な問題では十分機能する | 飽和による順位の逆転を見落とす |
| 数理最適化ソフト(無料) | 足し算で書ける条件なら、数ミリ秒で確実な正解を返す | 相互作用(2変数の掛け算)は計算そのものができない |
| 数理最適化ソフト(有料) | 相互作用も高速・確実 | ライセンス費用が年間数百万円規模 |
| 専用の計算手法(量子アニーリング方式) | 相互作用も複合条件も、無料の道具立てのまま扱える | 計算に数秒かかり、ごく僅かに正解へ届かない場合がある。正解の保証はつかない |
検証した5つのシナリオのうち、専用の計算手法を選ぶ必然性が証明されたのは、相互作用が入る1つだけでした。残り4つは、既存の数理最適化ソフトのほうが速く正確でした。
つまり、すでに数理最適化ソフトを内製で使っている会社に、置き換えをお勧めすることはありません。
現実的な選択肢になるのは、Excel+経験からの移行先を探していて、相互作用まで扱いたいが、有料ソフトの予算はない会社です。
手法ごとの得意・不得意の見分け方は、別の記事で深掘りします。
ベンチャーネットの対応
広告の企画や運用そのものは、代理店や運用担当者が得意とする領域です。
ベンチャーネットが関わるのは、配分を決めるための土台と、配分の計算です。
- 追加1本あたりの効果を持てる状態にする。媒体別の投入額と成果が、同じ場所に同じ粒度で残る設計をします。基幹システム側のデータの持ち方が中心です
- 条件の書き出し。媒体の上限、認知施策の最低本数、同時に出稿しない組み合わせ。頭の中にある条件を、差し替え可能な表にします
- 配分の計算。足し算で足りるなら、無料のソフトで十分だと申し上げます。相互作用のような掛け算の条件が入ってから、専用の計算手法を使います
- 答え合わせの仕組み。計画と実績を毎月突き合わせ、追加効果の読みを更新する流れを設計します
ベンチャーネットは、NetSuite・Odoo・AIスクラッチ開発を扱い、SAPからのリプレイスにも対応しています。特定の製品に誘導しない立場を取っています。必要がなければ、作らないという提案もします。
そして、媒体が2つしかない会社や、予算が1つの媒体で使い切れる規模の会社に、この配り方の見直しをお勧めすることはありません。逆転が起きるほど媒体と予算がないなら、効率順でも損は出にくいからです。
取り組む価値が出るのは、媒体が4つ以上あり、効率首位の媒体に予算の半分近くが寄っているときです。
集客の実行面はNetSuiteで集客を自動化するには、売上側の見通しの立て方はNetSuite SFAで実現する販売予測で扱っています。
今日できること
1つだけ、今日試せることがあります。
効率首位の媒体について、「先月より100万円増やしたとき、効果はいくら増えたか」を出してみてください。
平均のROASではなく、増やした分だけの効果です。
その数字が、2番手の媒体の「1本目の効果」より小さければ、逆転はすでに起きています。
効率首位の媒体の最後の100万円は、2番手に回したほうが効いていたことになります。
1媒体の確認だけで、自社の配分に取りこぼしがあるかどうかの輪郭が見えてきます。
もう少し詳しく知りたい方へ
自社の広告予算が、いまどこで鈍っているのか。追加1本あたりの効果を出すところからご相談いただけます。
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在庫・生産・広告の配分を、制約条件のもとで全体最適化します。
数字を会議で回す形にする段階では、PSI会議とはの進め方が参考になります。
AI検索時代のマーケティング設計はAIOとはで扱っています。
よくある質問(FAQ)
Q1. 効率の良い順に配るのは、間違いなのですか
間違いではありません。前提が抜けているだけです。
効率が投じる額で変わらないなら、効率順は正解です。
広告の効果は投じるほど鈍るため、その前提が成り立ちません。「いま効率が良い媒体」ではなく「次の1本が効く媒体」に問いを変えれば、同じ実績データのまま配分は改善します。
Q2. 4,212万円という数字は、うちの会社でも出ますか
出るとは限りません。この数字は、検証用のサンプルデータ(月1,500万円・5媒体)での計算例です。
御社で差がいくら出るかは、御社の媒体ごとの飽和の速さと予算の規模で決まります。
差の大きさより、差が生まれる場所(飽和した媒体の4本目以降)が特定できることのほうが、実務では重要です。
Q3. 媒体ごとの「追加1本あたりの効果」は、どうやって出せばよいですか
3つの方法があります。
- 効果測定ツール(MMMなど)の推定値を使う
- 過去に投入額を変えた月の、前後の成果の差から出す
- 担当者やプランナーの見立てで置く
最初から1つ目を目指す必要はありません。2つ目か3つ目で置いて、毎月の答え合わせで更新するほうが早く進みます。読みに幅があるなら、強気・弱気の2本で持っても構いません。
Q4. 効果測定ツールを入れれば、配分まで決まりますか
決まりません。効果を測ることと、配分を決めることは別の工程です。
測定ツールは「いくら投じるとどれだけ効くか、どこで飽和するか」を推定する係です。
その推定値と御社の条件を受け取って、配分を決めるのが次の工程になります。すでに測定ツールをお使いなら、その出力がそのまま配分の入力になります。この2層の関係は、別の記事で詳しく扱います。
Q5. Excelで配分を計算できませんか
飽和だけなら、できます。媒体ごとに追加1本あたりの効果を並べ、大きい順に1本ずつ配っていけば、第4章の取りこぼしは埋まります。
難しくなるのは、相互作用(媒体Aの効果×媒体Bの効果)が入ってからです。
2つの掛け算の項は、表計算や無料の数理最適化ソフトでは扱えません。相互作用を数字として持てる段階になったら、そのときに道具を選んでください。
Q6. 相互作用の強さ(係数)は、どうすれば分かりますか
最初は「疑われる組み合わせ」を書き出すところからです。
同じ顧客を取り合っていそうな媒体の組、片方が他方を押し上げていそうな組。
そのうえで、一方の出稿を止めた月や増やした月の、他方の成果の変化を見ます。厳密な係数でなくても、方向(食い合いか相乗りか)と大まかな強さが分かれば、配分には使えます。
まとめ:効率の良い媒体ではなく、効率が鈍る場所を見る
この記事の要点を整理します。
- 「効率の良い順に配る」は合理的に見える。ただし「効率が投じる額で変わらない」という前提が抜けている
- 広告の効果は投じるほど鈍る。限界効果は下がり、いずれ飽和する。鈍り方は媒体ごとに違う
- 検証では、効率首位の媒体の追加効果が1本目3.61 → 5本目0.33に鈍り、4本目で順位が逆転した
- 効率順の配分と最適配分の差は月351万円=年間4,212万円相当。同じ予算・同じ媒体で生まれた差
- この差は「次の1本が効く媒体」を問う配り方で埋まる。道具より先に、問いの置き換え
- 媒体どうしの相互作用を無視すると、さらに約2割損する。ここから先が、道具の話
効率順配分の取りこぼしは、担当者のミスではありません。ルールに組み込まれた見落としです。
だから、ルールを変えれば消えます。
自社の広告予算が、いまどの媒体の何本目で鈍っているのか。そこを1つ出すところから、一緒に考えます。
