人は増やさず売上増「バーチャル経営」~ベンチャーネットのこれから

新型コロナウィルスによるパンデミックが終息しつつあります。約3年にわたり続いたコロナへの警戒は薄れてきており、経済活動もコロナ前の様式に戻っていくのかもしれません。しかし、ロシア・ウクライナ戦争や円安、想定以上のペースで進む少子高齢化などの影響を受け、日本国内の経済状況は厳しくなることが予想されます。今、私たち経営者は何を見て、どこを目指すべきなのか。ウィズコロナからアフターコロナ、ポストコロナへと向かう今、この3年間の経験から今後目指すべき道を考えてみたいと思います。

目次

コロナとともに過ごした3年間で気づいたこと

2020年初頭から急激に拡大した新型コロナウィルスにより、私たちは生活様式の変化を求められました。私生活ではどこへ行くにもマスク着用が必須になり、一時的な外出自粛や3密の回避など、これまで経験したことのないルールが次々を生まれたのは記憶に新しいところです。こうした状況の中で経営を続けるうちに、次のような事柄に気づきました。

現代の経営とは「変化への対応」である

パンデミックの発生以降、ビジネス界隈でもウェビナーやECといったBtoB取引のオンライン化、メタバースやNFTなど仮想世界における新しいプラットフォームの登場など、目まぐるしくトレンドが変化しました。これらは、まったく新しい発見であるように見えて、実は過去にも注目された考え方です。

例えばウェビナーは、コロナ禍以前から「オンラインセミナー」や「ウェブミーティング」という形式で開催されていました。

しかし、現在のウェビナーのように双方型のものは少なく、あくまでもオフラインの接触を補完する位置づけのものでした。また、内容も薄いものが多かった気がします。これが2020年に入り、よりコアで質の高い内容を展開する形式へと変わり、ツールも徐々にアップデートされていったのです。インターネットもオンラインセッションも新しいものではありませんが、コロナが作り出した状況が小さな因子を少しずつ変え、以前とは異なるシステムを作り上げました。

つまり、「すべてはループしながら変わっていく」のです。ビジネスも企業も俯瞰的に見えれば「システム」であり、そのシステムを構成する因子自体が変化し続けています。内部要因・外部要因を含め、無限にある因子が常に変化し、少しずつ形を変えながら以前とは全く異なるシステムへと進化しているのです。現代の経営者は、この「少しずつ形を変えながら訪れるトレンド」「変化し続ける因子」を意識する必要があると思います。

また、新しいトレンドに乗るためには、無限にある因子の中で、自分が関与できることはどれか、どこまで干渉すればよいのかを見極めて線引きし、その中での優先順位決めるべきです。もし壁にぶつかったならば、有識者への質問や市場からのフィードバックを通して答えを得て、メンテナンスしていくことも必要になるでしょう。現代の経営とは、この繰り返しなのだと思います。

ビジネスの成功は「場所」と「立ち位置」の定量化から始まる

アフターコロナ、ポストコロナと呼ばれる時代においては、ビジネスの「場所」「立ち位置」が一層重要になると考えます。平たく言えば、「自分の好きになったことのジャンルがある構造(≒市場)の中でどのような位置、状態にあるか」を考える必要があります。これを考える上では、市場の成熟度や規模、成長度合いを正規分布的に可視化して「自分の興味がどの位置にあり、これからどう展開していくのか」を推測しなくてはなりません。

目指すべき位置は上位5%

いざGOサインを出した後は、構造(市場)の中で「上位5%」に食い込むことを目標にすべき、というのが私の考えです。市場内で目指すべき位置としては「トップ1%」や「上位20%」などがありますが、まだ固まっていない市場で1%を目指すのはリスキーだと感じています。かといって20%では存在感を示しづらいため、上位5%程度が肌感覚としてしっくりくる、というイメージです。

ニッチの獲得を意識

上位5%に入るためには、ニッチを獲得するための方法論・戦略が必要です。具体的には、rk戦略ブルーポンド戦略などを参考にしながら、「多くの市場に種をまき、その中のいずれかで覇権をとる」ことを目指していきます。この戦略がうまくかみ合うことで「拡大・成長」と「持続・生存」双方の可能性を高めることができると思います。

必要なのは「答えを陳腐化させないための仕組み」

こうした活動を支えるのは「記録し、実行するための仕組み」、つまり「ICTシステム」です。ICTシステムは、可視化・数値化・効率化という役割が注目されがちですが、最も重要なのは「もたらされた答えを陳腐化させない」という点だと思います。ベンチャーネットでは特に以下5つの観点からICTシステムの活用を推奨しています。

SEOコンテンツを通しての市場へ問いかける

SEOは単に検索の上位表示を目指してアクセス数を稼ぐだけではなく、「市場に対する問いかけ」の効果もあります。これまでやってきたこと、蓄積してきたこと、これからやろうとしていることをキーワードに散りばめながらコンテンツを作成し、その評価を問うのです。これは、両利きの経営で言えば、知の探索(新規事業)・知の深化(既存事業の強化)の両面で有効だと感じています。

ABMによってまだ見ぬ顧客へ問いかける

ABMはいわばプル型の手法で、「自社と相性がよさそうな企業を選定し、見つけてもらうようなアプローチをする」ことが要諦です。ABMによって出会った顧客は高い確率で自社を必要としています。こうした顧客とともに知の深化(既存事業の強化)を行うことで、ビジネスがうまく回り始めると考えられます。

MAによって問いかけとフィードバックを自動化する

MAはマーケティングの自動化以外にも、新しいビジネスの可能性を探る効果があります。既存顧客に情報発信を続けることで、顧客の反応が蓄積されていき、「うまくいきそう」なタイミングが定量化されていきます。こうした活動の延長上に、既存顧客を相手型とした知の探索(新規事業)を始めるタイミングも見えてくるでしょう。

ERP(SFA/CRMを含む)によるリソースの最適配分

ERPでは財務会計の視点からのKPIとKGIを設定し、ベンチマークとして活用することができます。最終的にはERP・SFA・CRMに蓄積された情報をもとにリソースの最適配分を行い、KGIの実現を目指すことになるでしょう。

RPAによる自動化

RPAは単なる手動作業の自動化だけではなく、AIやAPIによる連携でより高度な業務の自動化も可能です。高度な自動化により競合他社よりも早く・正確にタスクを行い、コストの最小化・利益の最大化を目指すことができます。

これらはベンチャーネットが提唱する「バーチャル経営」の中核となる仕組みです。経営者の仕事は、夢やロマンを語るのではなく「目の前にある現実」をいかにゴールに結びつけるかです。中小企業の経営者がアフターコロナ、ポストコロナの生存戦略を考える際に、こうしたICTツールは武器として手元においておくべきだと思います。

2023年ベンチャーネットが目指す姿

以上、4つの仕組みを意識しながら、ベンチャーネットの2023年は「利益率から逆算した経営」を強化していきます。数値的な目標として「売上高営業利益率10~20%」程度になるかと思います。

ちなみに日本企業の売上高営業利益率は、健全な企業で3~5%程度が平均だといわれています。また、情報通信企業の売上高営業利益率は「10.7%」という結果が出ています。※1

ベンチャーネットでは利益額よりも利益率を重視し、利益率から逆算して必要なものを取り入れ、磨いていく経営を心掛けます。具体的には以下3点です。

①アメーバ経営の実践による高付付加価値経営の常態化

アメーバ経営は、皆さんご存じのとおり京セラの創業者である稲森和夫氏が提唱した経営管理手法です。「部門別採算制度」「人材育成」「全員参加経営」という3つの特徴を持っています。

アメーバ経営はどちらかと言えば古いタイプの経営管理手法という認識が広まっていますが、近年注目される「アジャイル型経営」や「クラウド利用を前提とした組織」との共通点が多く、今でも十分に通用する考え方です。

アメーバ経営では、「時間当たり採算」の採用によって付加価値を高めることが前提とされています。ベンチャーネットでも、アメーバ経営の状態化を目指し、高付加価値な経営を続けていく所存です。

圧倒的な技術を磨くことによる時間あたり採算を高めていく

営業利益率10~20%という目標を達成するためには、情報通信企業の平均を上回るパフォーマンスを維持する必要があるでしょう。そこで、まずは前述の「時間あたり採算」を高めていくことに注力します。時間当たり採算は、「1時間当たりの付加価値」を計測することに使われます。

ベンチャーネットでは、時間当たり採算をさらに強化するために、「The PODsモデル」を取り入れて、「チーム単位」「プロジェクト単位」での採算を数値化していきます。

The PODsとは、端的に言えば「アジャイルの要素を持った、ミッションを達成するために必要な機能を備えた少人数のチーム」です。The PODsに準じた少人数のチームは、さまざまな職能を持つ専門人材によって構成されます。また、フラットで柔軟性があり、皆が同じレベルの発言権を持つ点も特徴です。このThe PODsをいくつも作ってプロジェクトを並行稼働させることで、さまざまな事業に参入・撤退を繰り返しながら成功の可能性を探ることができます。

このThe PODsを前提としつつ、技術力を高めていくことで、時間当たりの付加価値はどんどん高くなっていくと考えています。ベンチャーネットではThe PODsモデルと時間当たり採算を採用した「バーチャルチーム」を駆使して、複数のプロジェクトの付加価値を計測・向上させることを目指します。

③プロジェクト単位によるレベニューシェア

「レベニューシェア」とは、「成功報酬を発注側、受注側で分配する」契約方法です。利益を分配するわけですから、当然のことながらリスクも共有されます。

レベニューシェアのメリットは、リスクを共有しながら共通のゴールに向かってプロジェクトを推進できる相手と、対等な関係を築けることです。

ベンチャーネットでは、リスクを回避するためには「仕事の量」よりも「質」を高めることに注力し、時間当たりの付加価値を高めながらプロジェクトを成功させ、アライアンスパートナーとの結びつきを強めていきたいと考えています。

※1:出典
総務省情報流通行政局 2021年情報通信業基本調査 P20

https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/joho/result-2/r03/2021kakugaiyo.pdf

バーチャル経営は「成長と生存への羅針盤」

今後はビジネスチャンスも挑戦の機会も縮小していくことが予想されます。売上を追求して「成長・拡大」を目指すのか、変化しながら立ち位置を見極め「生存・持続」を目指すのか。どちらを選ぶかは人それぞれだと思いますが、今の日本の現状を総括すると、売り上げの追及(成長・拡大)は徒労に終わる可能性が高いかもしれません。

ベンチャーネットは、利益「額」よりも利益「率」を追求し続けます。そして、つねに我々の顧客に価値を提供し、用立てられるように腕を磨いていくことを目標にしています。また、伸びしろ(潜在成長率)を確保し続けることを意識し、時間に余裕を持ち一瞬のチャンスを見逃さず、1日1日を意図的に過ごしていきます。こうしたベンチャーネットの思考・ノウハウを詰め込んだのが、これから紹介する「バーチャル経営」です。

まとめ

アフターコロナ、ポストコロナは混迷の時代になるかもしれません。ベンチャーネットでは、本稿で紹介したような内容に共感していただける顧客と親密な関係を築き、「持続・生存」と「売上の拡大だけに依存しない成長」を視野に入れて活動していく所存です。

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この記事を書いた人

持田 卓臣のアバター 持田 卓臣 株式会社ベンチャーネット代表取締役

株式会社ベンチャーネット 代表取締役
2005年に株式会社ベンチャーネットを設立後、SEOをはじめとするデジタルマーケティング領域のコンサルティングサービスを展開
広告・SNS・ウェブ・MA・SFAと一気通貫で支援を行っています
著書に『普通のサラリーマンでもすごいチームと始められる レバレッジ起業 「バーチャル社員」があなたを救う』(KADOKAWA、2020年)

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