バーチャル経営実践編~「時間当たり採算」でプロジェクトを最適化する

前回紹介したThe PODsモデルを原型としたバーチャルチームでは、各チームに専門家を配置します。しかし、それらはいずれも「専任」ではありません。そのため、チーム単位で採算や収益性を計算するには、「一人当たりの採算」を計算し、それをベースにしながらチーム全体のパフォーマンスを可視化する必要があります。このための方法が「時間当たり採算」です。

目次

撤退と成功のシグナル「時間当たり採算と」は何か

時間当たり採算は、アメーバ経営でも採用されている、付加価値の算出方法です。組織を最小のグループに細分化し、それぞれの収益を明らかにするために、「1時間」という非常に単純な基準で計測しています。1時間あたりの収益の積み重ねは、そのビジネスの「真の実力」であり、同時に撤退時の基準ともなるからです。

バーチャルチームでは、各メンバーが複数のチームに参画することを想定しているため、一人当たりの採算を時間ベースで計算し、その和をもってチームの収益力を算出します。もし、収益力が基準に満たなければ「撤退」を選択し、失敗のダメージを最小化することができるでしょう。

時間当たり採算の式

時間当たり採算の基本的か計算式は次のとおりです。

(売上-経費)÷労働時間

このとき、売上は最大化を目指し、経費と時間は最小化を目指すという前提があります。
もう少し具体的に述べると、

(売上高-売上原価-販管費)÷年間労働時間

という式で表され、これは「一時間当たりの付加価値」とも言い換えられるものです。

時間当たり採算と撤退条件の算出

バーチャルチームの運用では、その機動力を活かして「迅速な撤退」を心掛けるべきです。このとき、撤退条件となるのが「損益分岐点における時間当たり採算(一時間あたりの付加価値)」です。これを明確に定めることにより、撤退のシグナルとすることができるでしょう。

撤退条件(シグナル)の算出例1

損益分岐点売上高÷バーチャル社員の年間労働時間=損益分岐点における1時間あたりの付加価値

これは単純に、損益分岐点売上高をメンバーの年間労働時間で割り、その結果を撤退条件とする方法です。また、何の実績もない状態から撤退条件を算出したいのであれば、「従業員1人あたりの付加価値額の相場」を使うのが良いかもしれません。

撤退条件(シグナル)の算出例2

「中小企業の「付加価値(額)」はいくらを目指すべき?」でも紹介しましたが、付加価値とは労働で生み出される青果・果実のことです。これを従業員の数で割ることにより、従業員1人あたりの付加価値額が算出されます。

ちなみに従業員1人あたりの付加価値の相場は、以下のとおりです。

  • 大企業製造業…1394万円
  • 大企業非製造業…1367万円
  • 中小企業製造業…554万円
  • 中小企業非製造業…543万円

参考:中小企業庁「2020年版 中小企業白書(HTML版)」

https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2020/shokibo/b1_2_1.html

中小企業ならば、年間約550万円を従業員1人あたりで生み出すことができれば及第点と言うことができるでしょう。したがって、時間当たり採算で「年間550万円÷従業員の年間労働時間」を算出し、撤退のシグナルとすることもひとつの方法です。

アメーバ経営でも用いられる時間当たり採算

時間当たり採算はアメーバ経営でも採用されており、「小規模なチームがどれだけの実力を持っているか」を推し量るための式と言えます。同時に、採算の取れないビジネスにおいては、遅滞なく撤退して損失を最小化するためのツールでもあるのです。

一般的に時間当たり採算は、単純化された小規模な組織のためのツールです。しかし、組織を細分化して、必要最小限の機能をもったグループに分割することで、時間当たり採算はどのような規模の組織にも対応できると考えられます。

なぜ時間当たり採算が必要なのか

時間当たり採算は、大小の変化が頻繁におこるVUCA時代における「灯台」のようなものと考えて良いでしょう。単純化した小規模な組織を、1時間という極めてシンプルな物差し手で計測することにより、混乱と誤謬を防ぐのです。

混沌しがちな「評価」を可視化する

バーチャルチームでは、「すべてのバーチャル社員が複数のチームに同時にアサインされる」といった状態を想定しています。このとき、取り組むビジネスの内容によって評価基準が変わってしまうと、バーチャル社員に対して適切な評価が下しにくくなります。明確な基準の無い評価制度は、メンバーの不信感を煽り、和を乱すもとになりかねません。時間当たり採算で評価基準を一元化しておくことで、明確かつシンプルな評価が下されるのです。

撤退のダメージを最小限に防ぐ

時間当たり採算は、「採算の取れないビジネスから遅滞なく撤退して損失を最小化する」ためのツールでもあります。

バーチャルチームは、VUCA時代の「突発的」で「予測しにくい」市場の形成に対応しつつ、スピーディーに事業を立ち上げるための組織体制です。どのビジネス(市場)が大きくなるかを正確に予測することは不可能ですから、当然のことながらうまくいかない場合もあるでしょう。VUCA時代では、「様々なチャレンジを、迅速に、かつ最小限のダメージで並行する」ことで、伸びる事業を掘り当てることが、成功への近道だと考えられます。より長く挑戦し続けるためには、撤退のシグナルは明確にして、生き残る可能性を上げていくべきなのです。

クラウドERPで時間当たり採算をリアルタイムに、常に一目で判断

バーチャルチームが複数形成されると、徐々に時間当たり採算の算出も煩雑になってきます。また、時間当たり採算はリアルタイム性が重要ですから、できれば計算や可視化を自動化しておきたいところです。

そこで、バーチャル経営ではクラウドERP「NetSuite」の活用を推奨しています。
NetSuiteでは、プロジェクト管理機能として、プロジェクト当たり採算を算出する機能があります。また、独自のKPI設定機能を通じて時間当たり採算の可視化を進めることも可能です。

KPIの変動はリアルタイムで確認できるため、事業の撤退・継続といった意思決定が遅滞なく行えるわけです。

クラウドERPは導入費用の小ささに比べて非常に多機能です。また、NetSuiteに限って言えば、CRMやSFAの機能も内包しており、中小企業を丸ごとバーチャル化できるだけのポテンシャルを持っていると思います。バーチャル経営の実践では、安価で高機能なNetSuiteを用いて、企業経営に求められる指標を横断的に可視化・監視する方法がおすすめです。

まとめ

ここでは、バーチャルチームの実力を可視化し、撤退条件を明確にするための方法として時間当たり採算を紹介しました。次回は、これまで紹介したバーチャルチームの要素を踏まえ、その運用方法としてNetSuiteの機能を紹介していきます。

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この記事を書いた人

持田 卓臣のアバター 持田 卓臣 株式会社ベンチャーネット代表取締役

株式会社ベンチャーネット 代表取締役
2005年に株式会社ベンチャーネットを設立後、SEOをはじめとするデジタルマーケティング領域のコンサルティングサービスを展開
広告・SNS・ウェブ・MA・SFAと一気通貫で支援を行っています
著書に『普通のサラリーマンでもすごいチームと始められる レバレッジ起業 「バーチャル社員」があなたを救う』(KADOKAWA、2020年)

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