バーチャル経営で高付加価値経営へ~中小企業の「付加価値(額)」はいくらを目指すべき?

「付加価値」は、経営以外の分野でもよく使われる言葉です。ただし、世間一般で言う付加価値と、会計分野のそれには若干の違いがあります。高付加価値経営を成し遂げるために、付加価値の本質を見極め、実行に移していきましょう。

目次

「付加価値」=生産性を上げる最重要指標

まず、巷でよく耳にする付加価値と、会計的な意味での付加価値の違いを整理してみます。

付加価値とは何か?

平成不況以降、オンリーワン差別化戦略が流行し、他社との差別化のために「付加価値」という言葉が頻繁に使われるようになりました。こうした文脈の中で、付加価値には「製品・サービスが持つ通常の価値(機能、効能)に上乗せされるもの」という意味が込められるようになりました。これが転じて「おまけ」「付録」「オプション」という意味合いで使われるケースも散見されます。確かにこれらは間違いではありません。しかし、本来の付加価値は「労働で生み出される成果・果実」と言った意味合いが強いものです。

会計的な意味での付加価値とは?

会計的な意味での付加価値とは、以下の数値の合算です。

付加価値の内訳

  • 営業純益・役員給与および賞与
  • 従業員給与および賞与
  • 福利厚生費
  • 支払利息
  • 動産および不動産賃借料
  • 租税公課

前述のように「オプション」や「上乗せ分」といった意味はほとんど含まれていません。むしろ、企業が生み出す「本質的な価値」の部分が付加価値とされています。

では、なぜ付加価値を意識すべきなのでしょうか。それは、付加価値が、「労働生産性」を算出するための重要指標だからです。これについては以前も少し触れましたが、労働生産性は「生み出す価値の総量 ÷ 価値を生み出すためのコスト」で算出されます。言い換えれば「生産性=従業員1人あたりの付加価値額」となるため、生産性を向上させるためには、付加価値の把握が必須なのです。

バーチャル経営が推奨する「従業員1人あたりの付加価値額」

では、日本企業が一体どれだけの付加価値を生み出しているのかを、「従業員ひとりあたりの付加価値額」から見ていきましょう。

付加価値額の平均

中小企業庁が公表している「中小企業白書」によれば、企業規模別の「従業員ひとりあたりの付加価値額」は、次のように紹介されています。

企業規模別従業員一人当たり付加価値額(労働生産性)の推移

出典:中小企業庁「2020年版 中小企業白書(HTML版)」
https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2020/shokibo/b1_2_1.html

この図から、企業規模別に従業員ひとりあたりの付加価値額を整理すると、次のようになります。(大企業は資本金10億円以上、中小企業は資本金1億円未満と定義)

  • 大企業製造業…1394万円
  • 大企業非製造業…1367万円
  • 中小企業製造業…554万円
  • 中小企業非製造業…543万円

資本金10億円以上の大企業では、従業員ひとりあたりの付加価値額が「1367~1394万円」です。これに対し、資本金1億円未満の中小企業の付加価値額は「543~554万円」となっています。このように大企業と中小企業の付加価値額には、2.5倍もの格差があるのです。

バーチャル経営ではこの数値を参考にしつつ、中小企業が目指すべき従業員ひとりあたりの付加価値額を「1000~1300万円前後」に設定しています。では、従業員ひとりあたりの付加価値額を増やすためには、どういった経営を行えばよいのでしょうか。

数式に従えば、「分母を小さくする=(従業員を減らす)」だけで、従業員ひとりあたりの付加価値は大きくなります。しかし、これでは「企業全体が生み出す付加価値」が減ってしまうため、本末転倒の結果になりかねません。中小企業の多くは、最低限の人手で業務を遂行していることが多いため、従業員を減らすと業務そのものがまわらなくなり、売上減少や商機逸失につながってしまうからです。

大切なのは「従業員ひとりあたりの付加価値額が増える=企業全体として稼ぐ力が増す」という図式を成立させることです。したがって、従業員の数は変えずに、付加価値額だけを大きくする方法を考えなくてはなりません。

従業員ひとりあたりの付加価値額と企業の成長をリンクさせる

実際にベンチャーネットでは、従業員ひとりあたりの付加価値額として「1500万」を基準にしています。この1500万円という数値から、「達成のために何が必要か」「変えるべきところ、捨てるべき業務は何か」を常に考え、組織と個人が変化し続けることで、従業員が生み出す付加価値と企業としての成長を結び付けているつもりです。こうした考えのもとに、バーチャル経営では「バーチャル社員活用」と「ICTツール活用」の併用を推奨しています。

バーチャル社員は「少数精鋭」で、なおかつ「フレキシブル」「高品質」な業務体制を構築するための鍵となる仕組みです。バーチャル社員との関係は長期的かつ心理的安全性を担保したものであることが大前提です。これができてはじめて「必要なときに必要な力を発揮してもらう」ことができます。単なる少数精鋭であれば、伝統的にIT業界で行われてきたような「プロジェクト型ビジネス」を採用すれば良いのですが、これは企業の成長と必ずしも結び付きません。なぜなら、個々人はノウハウと能力を持っていたとしても、頻繁にリリースとアサインを繰り返すため、チームとしての力を発揮しにくいからです。

ICTツールの活用では、主に「ERP」「CRM」「SFA」「MA」などエンタープライズITソリューションによってマーケティングと営業を効率化し、従業員ひとりひとりが効率よく価値を生産できる体制を整えています。

・CRM
安価で高機能なERP/CRMパッケージ「Netsuite」を用いて、企業内の主要業務を効率よく回すことが可能です。CRMはもともと「顧客管理ツール」として登場しましたが、近年は基幹業務系パッケージとの統合が進み、社内情報と顧客情報を一元的に管理・可視化できるツールになっています。中小企業であれば、Netsuite単体で複数の業務を横断的に自動化することも可能です。

・SFA
本来は「営業管理ツール」ですが、こちらも近年は高機能化が進んでいます。営業活動の自動化・可視化だけではなく、マーケティング部門など他部門との連携も可能になっているのです。また、SFA世界最大手の製品「Salesforce」では、組織形態に合わせたエディションを用意しているため、バーチャル社員を中心とした仮想的な組織にも対応可能です。

・MA
マーケティング業務の自動化を促進するツールです。近年のMAには、オンラインとオフライン双方のデータを結び付け、効果的なマーケティング施策を立案できる機能が備わっています。こうした機能を活用し、最小の人手で新たなマーケティング施策を立案することも可能です。

ICTツール活用は、運用ノウハウの有無が付加価値の増減に直結します。したがって、まずは全社的にトレーニングを進めつつ、運用ノウハウの習得に努めることをおすすめします。もしトレーニングや運用ノウハウ習得のリソースが無い場合は、信頼できるベンダーの力を借りて社内にノウハウを蓄積することから始めてみてください。適切なサポートを受けることで、数か月~半年程度で最初の効果が確認できます。

まとめ

本稿では、バーチャル経営が推奨する会計的数値のうち「付加価値(額)」を解説してきました。従業員ひとりあたりの付加価値額は、比較的簡単に変化させることができます。それだけに、「企業の成長とリンクしてこそ意味がある数値だ」ということを忘れないようにしたいところです。次回は、「労働分配率」についての解説です。

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この記事を書いた人

持田 卓臣のアバター 持田 卓臣 株式会社ベンチャーネット代表取締役

株式会社ベンチャーネット 代表取締役
2005年に株式会社ベンチャーネットを設立後、SEOをはじめとするデジタルマーケティング領域のコンサルティングサービスを展開
広告・SNS・ウェブ・MA・SFAと一気通貫で支援を行っています
著書に『普通のサラリーマンでもすごいチームと始められる レバレッジ起業 「バーチャル社員」があなたを救う』(KADOKAWA、2020年)

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