「営業・マーケティングの連携がうまくいかない」
「成果に結びつく一貫した施策が思いつかない」

こうした悩みを抱える経営者は少なくないはずです。これまでの営業・マーケティングは、どちらかと言えば「属人的な業務」だと考えられてきました。それだけに、情報の分断や認識の不統一が発生しやすく、「チームセリング」におよる顧客獲得が進まない…というケースが少なくないようです。こうした営業・マーケティングの課題を解決するヒントが「The model」にはあります。

ここでは、The modelの概念とメリット、実践方法の具体例などを紹介します。

The modelとは?

The modelはSFA世界最大手として知られる「salesforce」の成長を支えた、営業・マーケティングの実践的な概念です。The modelでは、営業・マーケティングそれぞれを小さなプロセスに区切り、分業化を施します。さらに、それぞれのプロセスを数値化・可視化しながら連携を強化することで、顧客の成功とビジネスの成長を促します。

The Modelの特徴

The Modelの特徴は「営業・マーケティングの分業化(数値化・可視化)」「カスタマーサクセスを重視した連携」という2点にあると言えます。

各プロセスの数値化・可視化

The Modelでは、属人的で区切りが難しかった既存の営業プロセスを明確に切り分けます。また、それぞれのプロセスの「現状」と「あるべき姿」を数値化・可視化します。

例えば、営業部門でよく用いられる数値には「案件数」「契約単価」「受注数」「受注率」「売上」などがあります。こうした数値は、どの企業でも正確に管理されていることでしょう。しかし、実際にこうした数値が表面化する前の段階、すなわち「見込み客数」「案件化比率」などは正確に数値化・可視化されていないことが多いのです。

これら「予兆」とも呼べる数字には、効果的な営業・マーケティング施策を立案するためのヒントが詰め込まれています。The Modelでは、従来の営業部門では把握しきれていなかった予兆の部分にも焦点をあて、正確に数値化・可視化を行い、それぞれのプロセスでより良い結果が生み出せるような施策を講じていきます。また、全てのプロセスを上手く連動させることで、最終的な売上や利益の最大化を目指していきます。

カスタマーサクセス

The Modelでは「カスタマーサクセス」も重要なテーマのひとつです。

一般的に、売上・利益の増大のためには、LTV(顧客生涯価値)の最大化を目指す必要があります。LTVの最大化のためには、顧客の一部をファン化させ、さらにはロイヤルカスタマーへと成長してもらう必要があります。こうした「ファン⇒ロイヤルカスタマー」という一連の流れを加速させるのがカスタマーサクセスです。カスタマーサクセスのテーマである「顧客の成功」を第一に考え、ニーズを的確にとらえたサービスや、金額以上の価値を感じられるような製品づくりを徹底することで、LTVは徐々に向上していくでしょう。

また、カスタマーサクセスを追求することで顧客の流出や、商機拡大(クロスセルやアップセルなど)も期待できます。特に、昨今のトレンドの中心である「サブスクリプション型ビジネス」においては、カスタマーサクセスによる顧客満足度向上が、売上に直結します。つまりThe Modelは、顧客満足度が売上・利益に直結するようなビジネスモデルに対して、特に有効な概念と言えるわけです。

The modelにおける営業プロセスの考え方

ここで、The modelにおける、営業プロセスの定義をもう少し詳しく解説します。The Modelでは、営業プロセスを以下4つの段階に分類し、それぞれにKPIを設定します。

マーケティング

マーケティングの役割は「潜在顧客の発掘・獲得」です。ここでは、自社と顧客の最初の接点から獲得できた見込み客数や獲得率などをKPIとして設定します。

KPIの例
  • 来訪者数
  • 獲得率
  • 見込客数

インサイドセールス

インサイドセールスでは、「見込み客の育成と案件発掘」をテーマとします。前段のマーケティングで獲得した「見込客数」を母数とし、外勤営業(フィールドセールス)に渡すことができた数や、その比率などをKPIとします。

KPIの例
  • (マーケティングで獲得した)見込客数
  • 案件化率
  • 案件数

外勤営業(フィールドセールス)

外勤営業の主な役割は、「受注・商談化」です。インサイドセールスの「案件数」を母数とし、受注率・受注数を算出します。マーケティング及びインサイドセールスで獲得した案件を、いかに受注につなげるかが課題です。

KPIの例
  • (インサイドセールスで獲得した)案件数
  • 受注率
  • 受注数

カスタマーサクセス

最後のカスタマーサクセスでは、受注・契約後の「活用支援および利用継続」を目的とします。また、顧客のファン化につながるような対応や、別の製品・サービスの提案などにより、商機拡大も目指していきます。KPIとしては、顧客の定着度を測る数値(契約更新率、継続数など)を用いるのが一般的です。

KPIの例
  • (外勤営業で獲得した)受注数
  • 契約更新率
  • 継続契約数

The modelの実践がもたらすメリットとは?

では、実際にThe modelの実践が企業にもたらすメリットについて解説します。

確度の高い案件にリソースを集中できる

前述したようにThe modelでは、特に有望な見込客だけを外勤営業(フィールドセールス)に渡します。つまり、営業担当者は確度の高い案件のクロージングだけにリソースを集中できるわけです。こうすることで営業プロセスの効率を高めながら「サクセスパス(成功の流れ)」を確立し、受注率・契約率の向上が期待できるわけです。

ボトルネックをリアルタイムに把握できる

The modelでは、数値化・可視化を進めることにより、自社営業の弱点が浮き彫りになります。例えば「見込客の獲得には強いが、商談化が弱い」「商談化まで漕ぎつけても、契約に至らない」「契約後の継続率に問題がある」など、ボトルネックになっているプロセスをいち早く把握できるようになるわけです。また、CRMやSFAの活用により、こうしたボトルネックをリアルタイムに把握できるため、適時性を持った改善策を打ち出すことができます。

失注案件のリサイクルが進む

マーケティング・営業における一連のプロセスの中では、必ず「ロス(取りこぼしや失注)」が発生します。こうしたロスを再度フォロー・育成してホットリード化し、有望な案件に繋げられるのもThe modelの強みです。例えば、「制約に至らなかった見込客が、類似製品に興味を示す可能性を考え、別バージョンの製品を案内する」といった施策は、失注案件のリサイクルとして効果的かもしれません。

分業化による効率化、専門性の強化

The modelによる分業化が進めば、各プロセスの効率・質が高まります。それまでマーケティング・営業担当者が一人で抱え込んでいた複数の業務を分散し、専任の担当者を設けることで、膨大な見込み客の中から有望な案件を生み出しやすくなるのです。

情報共有による連携強化

The modelの実践では、ICTツールによる情報の一元化が必須です。具体的には、ERP・CRM・SFA・MAツールといった複数のツールを連携し、それぞれのツールを扱う部門間の情報共有を進めます。案件に関わる全ての人が「今、どの案件が、どのフェーズにあるか」「成功しやすい案件の特徴は何か」といった情報を把握できるようになり、それぞれが成果に向けて行動を最適化させやすくなるわけです。

The modelの実践に必要なもの

次に、The modelの実践に必要な「基本形」と、それをもとにした実際の成功事例を紹介します。

The modelの実践における基本形

各プロセスおよび連携部分の定義
分業化を進めるにあたり、まずはマーケティング・営業プロセスを構成する「部品」を明確にします。一般的には、「リードジェネレーション」「ナーチャリング」「架電」「商談化」「カスタマーサクセス」といったプロセスに区切り、それぞれで担当すべき業務を定義します。また、プロセス間の繋がり(次のプロセスに渡す条件、方法など)も決め、分業と連携をスムーズに進めるための土台を構築します。
KPIの選定・可視化
それぞれのプロセスで注視すべきKPIを選定します。KPIについては、前述の「The modelにおける営業プロセスの考え方」で挙げたものが一般的です。ただし、実践の際には自社のビジネスに合ったKPIの選定を行うべきです。KPIの選定が完了したら、現時点での数値を算出し、ICTツールなどを用いて可視化を行います。ここで重要なのは「数値を演出しないこと」です。自分の成果をアピールしたいばかりに数値に手を加えてしまうと、The modelによって目指す「あるべき姿」までの道のりがぼやけてしまいます。本質的な改善案を導き出すためにも、数値は常に「現状を素直に表したもの」であるべきです。
責任範囲の数値化
The modelでは、あるプロセスのゴールが次のプロセスのスタートになります。この「ゴールとスタート」の連動が上手く機能することにより、最終的な売上・利益が増大するわけです。そのため、「マーケティングが獲得すべき見込み客の数」や「インサイドセールスがクリアすべき案件数」など、プロセスごとに責任範囲を数値化しておく必要があるでしょう。各プロセスが責任を果たす(=数値目標をクリアする)ことで、The modelの効能が強化されていきます。
運用ルールの明確化
The modelでは、各プロセスにおける運用ルールも明確にします。例えば、「インサイドセールスがフィールドセールスに案件を渡すときの条件」や、「既存顧客に対するアプローチのタイミング」などは、運用ルールとして明確に定義しておくべきでしょう。運用ルールが明確になることで、分業化された各プロセスが効率よく・均一性を持って働くようになるからです。
ICTツールの活用
The Modelの効能を最大化するためには、SFA・MA・CRMといったICTツールの活用が必須です。ICTツールを活用することで、営業プロセスに関わる全てのメンバーがリアルタイムに情報を共有し、それぞれの役割に応じた分析・アプローチを行えるからです。また、前述したように各プロセスのKPIを共有することで「どのプロセスで何が起こっているか」を把握できるようになります。分業化と連携がテーマであるThe modelは、分析・情報共有・認識の統一を促進するICTツールと親和性が高いのです。

The model導入の事例

では、実際のThe model実践の事例を紹介します。パッケージソリューションベンダーであるA社では、The model導入前に以下のような課題を抱えていました。

A社の課題
  • 営業スタイルが属人的であることから、営業担当者を採用しても成果に繋がりにくい(ノウハウが共有されない)
  • 新規顧客獲得が進まず、紹介案件や既存顧客に依存したビジネスモデルから脱却できない
  • CRMを導入済みであったが、各プロセスを横断した運用ルールが存在せず、情報は分断されていた

こうした課題を解決するため、以下のようにThe modelの実践による営業プロセスの見直しを行いました。

社内関係者へのヒアリング
  • 社内関係者へのヒアリングを徹底して行い、「各部門が今どういう状況か」を整理
  • ヒアリングをもとに社内の業務プロセスを取りまとめる

こうしたヒアリングの結果、次のような問題点が明らかになったそうです。

  • 各プロセスの案件ステータス管理が形骸化している
  • 営業部門での案件管理が表計算ソフトで行われており、情報共有が為されていない
  • 情報共有の弱さゆえに、プロジェクトのステータスを正確に理解している人間がいない
  • CRMは活用していたものの、部門ごとに場当たり的な改修を行っており部分最適だけが進んでいる

以上の問題点を踏まえ、次のように改善を行いました。

改善のための施策
  • 各プロセスのステータス管理、インサイドセールスの架電管理、パイプライン管理を全てMAとCRM上に統合
  • 部門横断型の社内タスクフォースを編成し、部門最適から全体最適を目指すプロジェクトを発足。部門を横断した合意の元,業務プロセスとフローを再定義。
  • タスクフォースでの決定は会社全体の決定事項としてマニュアル化を進めた。
  • 現状とあるべき姿(AsIs-ToBe)の共有を徹底した
  • 運用ルールを設け、各プロセスの担当者の責任範囲を明確にした
  • 全体最適を見据えたSFAの活用を推進した

特にSFAの活用では、各プロセスが次のプロセスに案件を渡す際の条件・数値を明確に定義し、SFA上に実装したそうです。

The modelの実践結果
The modelの実践後は、分業化が進み、営業担当者が確度の高い案件にのみに集中できる環境が整いました。このことが属人的な営業から「チームセリング」への移行を促し、売上を増大させる原動力になったそうです。また、ICTツールにThe modelを落としこむことで「いつまでに、何を、だれが実行すべきか」を、リアルタイムに確認できるようになったとのこと。営業プロセスに関わる人間全てが「次に起こすべきアクション」「意識すべきKPIおよびKGI」をいつでも確認できるようになり、業務効率と質の向上が達成されました。さらに、マーケティング施策ごとのROIが可視化されたことで「どのマーケティング施策が最終的な売上に貢献するか」も把握しやすくなったとのこと。限られた予算とリソースの中で、売上を最大化させるためのヒントを得られるようになったのです。

こうした成果は、The modelを忠実にICTツール(SFA、MAなど)に落とし込み、活用したことで生み出されています。

The modelを支えるICTツール

The modelはICTツールという土台があってこそ、その真価を発揮します。そこで、The modelの実践に役立つツールをいくつか紹介します。

SalesForce

SFA世界最大手であり、The modelの生みの親でもあるSalesforce社が提供するSFAパッケージです。実際にはSFAだけでなく、さまざまな業務アプリを統合的に管理・連携するベースになり得ます。マーケティング・営業の各プロセスに応じたKPI管理、情報共有機能が手厚く実装されており、The model実践のベースとしては最適なソリューションです。

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Eloqua

自動化を得意とするMAツールであり、オンライン、オフライン双方の顧客管理に適しています。マーケティングからフィールドセールスに至るまでの情報を可視化できるほか、外部システムともシームレスに連携可能です。

Oracle Eloqua(エロクア)のメリット・デメリット

NetSuite

クラウドERPでありながら、CRMやSFAの機能も内包するソリューションです。部門ごとに分散しがちな情報の一元化・共有が促進されます。また、WebサービスAPIによる外部システムとの連携も得意とします。

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Pardot

「リード抽出」「プロセス間連携」「ROI測定」など、The modelの実践に役立つ機能が数多く搭載されています。Salesforcesと一体化する連携機能も強みのひとつです。

Salesforce Pardot(パードット)のメリット・デメリット

こうしたICTソリューションは、The modelの各プロセスに照らしながら、組み合わせていくことでメリットを増大させます。ちなみに、ベンチャーネットでは下記のような組み合わせをサポートしています。お気軽にお問合せください。

Eloqua × Salesforce
Eloqua × NetSuite
Pardot × Salesforce

まとめ

ここではThe modelの概要とメリット、実際の事例を紹介してきました。

The modelは営業・マーケティング部門の「あるべき姿」を明確にし、それぞれの連携を強化しながら、自社ビジネスの成長を促す方法論です。ただし、The modelの実践には、部門間を横断した取り組みや情報の一元化・可視化を促進するICTツールの活用が不可欠です。

もし、The modelを早急に実践したい場合は、こうしたツールの取り扱いに長けたベンダーへ問い合わせ、協力を依頼してみてはいかがでしょうか。


書き手:持田卓臣