評価面談の前夜、部下の半年分の働きを思い出そうとして、手が止まる。
手元にあるのは、売上の数字と、ここ1か月の印象だけ。採用の進捗も、担当者に聞かないと分からない。
売上や在庫はシステムで見られるのに、「人」の管理だけがExcelとメールに残っている。多くの中小企業で見られる状態です。
この状態は、記録と物差しをそろえれば変えられます。
「組織化」とは、人事評価・採用・目標管理を、同じ物差しと仕組みの上で回すことです。経営をつなぐ10の視点のひとつにあたります。Odoo(オドゥー)の人事アプリなら、従業員台帳と採用の基本は無料のCommunity版で扱えます。評価と目標管理まで仕組みにするなら、有償のEnterprise版が前提です(人事アプリの対応範囲)。
組織化が進むと、たとえば次のことが変わります。
- 評価面談で、印象ではなく記録を根拠に話せる
- 採用の状況を、担当者に聞かずに画面で確かめられる
- 目標の進み具合を、期末を待たずに期中で追える
- 評価者が2人以上になっても、同じ物差しで評価をそろえやすい
ただし、アプリを入れれば片づくわけではありません。評価基準がまだ言葉になっていない会社は、システムより先に基準づくりが出発点です(組織化を進める考え方)。
では、自社はどこから手をつければよいのか。答えはどこから手をつけるかのチェックリストにあります。良い点と注意点は、Odooで組織化する良い点と、気をつけることに並べました。
CommunityとEnterpriseの区別について
組織化に関わる人事アプリのうち、評価・目標管理はEnterprise版(有償)が対象です。無料のCommunity版でも、従業員台帳や採用の基本的な管理は利用できます。
「組織化」とは何か
組織化とは、人事評価・採用・目標管理といった「人」に関する業務を、同じ物差しと仕組みの上で運用することです。
人に関する情報には、感情や個別事情が絡みます。そのため、売上や在庫よりもシステム化が後回しにされがちです。
しかし、評価基準が曖昧なまま運用すると、不公平感が生まれ、離職につながります。
組織化ができていない会社に起きる問題
問題1:評価が「印象」で決まってしまう
評価基準が明文化されていないと、評価は直近の出来事や評価者の印象に左右されます。
問題2:採用の進捗が、個人の記憶とメールに散らばる
応募者ごとの選考状況が、担当者のメールボックスにしかない状態です。対応漏れが起き、状況の確認にも時間がかかります。
問題3:目標が「立てて終わり」になる
期初に目標を立てても、進捗を追う仕組みがなければ、期末に初めて未達に気づきます。
そのまま1年続けると、どこで詰まるか
組織化の遅れが表に出るのは、社長が全員の状況を把握しきれなくなった時点です。人数が増え、担当が分かれはじめたころにあたります。
最初に起きるのは、評価の納得感の低下です。記録がなければ評価は印象で決まり、本人に理由を説明できません。説明できない評価は、離職の理由になります。
次に、育成が止まります。誰がどのスキルを持っているかが分からないと、次に任せる仕事を決められません。結果として、できる人に仕事が集まり続けます。
いちばん見えにくいのが、採用の空振りです。足りない役割を説明できないと、募集要項が曖昧になる。曖昧な募集で入った人は、入社後も役割が定まりません。組織化は、採用の前工程でもあります。
Odooの人事アプリで組織化を進める考え方
考え方1:評価基準を先に言語化する
システムを入れる前に、評価の観点と基準を明文化します。システムは決まったルールを運用する道具で、ルールそのものは作りません。評価制度がまだない会社が基準を言葉にする手順は、人事評価制度がない会社の作り方で紹介しています。
考え方2:採用の進捗を、応募者単位で一元管理する
採用アプリで、応募から選考、内定までの進捗を1か所で管理します。誰が今どの段階にいるかが、担当者以外にも分かる状態にします。
考え方3:目標を、期中に確認できる仕組みにする
目標管理は、期中に進捗を確かめる仕組みとセットで運用するものです。四半期ごとなど、確認のタイミングを先に決めておきます。
3つのうち、順番が動かせないのは1つ目です。基準のないまま採用や目標の仕組みだけ整えても、評価の場面で結局「印象」に戻ってしまいます。
自社はどこから手をつけるか:チェックリスト
社内会議でそのまま使える形にしました。当てはまるものに印をつけてください。
評価
- □ 直近の評価面談で、記録を根拠に話せた部分より、印象で話した部分が多かった
- □ 評価者が2人以上いて、同じ働きへの評価が人によって違う
- □ 「この人のどんな行動を評価したいか」を、1人につき1つ言葉にできない
採用
- □ 選考中の応募者の状況を、担当者に聞かないと答えられない
- □ 募集要項を、前回の文面の使い回しで出している
目標
- □ 期中に目標の進み具合を確かめる日が、決まっていない
最初の3つに多く当てはまる会社は、システムより先に評価基準づくりが出発点です。採用の2つが中心なら、採用アプリから始めるのが近道になります。
評価したい行動が決まったら、訪問件数や手順書を書いた回数のように、数えられる形にします。そのうえで、その行動を記録する場所を決める。ここが組織化の最初の一歩です。
ベンチャーネットが人事の仕組み化で最初に確かめる4つのこと
人事は、ERPの中でも「ITではなく経営の仕事」の色が濃い領域です。ERP導入支援を手がけるベンチャーネットは、次の順で確かめます。
- 評価の物差しが、言葉になっているか
評価シートや面談の記録を見せていただき、基準が文章で残っているかを確かめます。なければ、アプリの話より先に基準づくりから始めます。 - 3〜5年後、何人でどんな組織になっていたいか
人数と部署の数から逆算して、評価者が何人になるかを見ます。評価者が増える見込みなら、評価・目標管理の仕組み化を早めに検討します。組織の形そのものを考える材料は、われわれの組織体制はどうあるべきかにまとめています。 - 標準機能に、業務を合わせられるか
Fit to Standard(標準機能に業務を合わせる考え方)で、従業員・採用・評価の各アプリをそのまま使えるかを見ます。評価まで仕組み化するなら、Enterprise版が前提になることもこの段階で伝えます。 - 見える化から始めて、評価は後に回せるか
多くの場合、まず従業員台帳と採用の進捗を1か所に集めます。記録が半年分たまってから評価に広げるほうが、社内の納得を得やすいからです。
合わない場合は、合わないとお伝えします。たとえば給与計算は、日本向けローカライズがOdoo公式から提供されていません。給与は国産の給与ソフトと分担する前提で設計します(給与はどこで計算するか|Odooと国産給与ソフトの分担設計)。
拠点が多く人事制度も複雑な規模なら、NetSuiteを含めて比べます(NetSuiteとOdooの人事機能の違い)。
この視点をOdooで実装する記事
組織化は、人の情報を残すことと、行動を記録することの両輪で進みます。
| 記事 | 何が分かるか | どんな会社向けか |
|---|---|---|
| Odooの人事管理 | 従業員台帳と組織情報の持ち方 | 人の情報がExcelに散っている会社 |
| Odooの採用管理 | 募集から入社までの記録の残し方 | 採用が属人的に進んでいる会社 |
| Odooの人事評価 | 評価の記録と振り返りの仕組み | 評価が印象で決まっている会社 |
| 日報は会社の資産 | 行動プロセスを残し、結果だけで評価しない設計 | 売上実績だけで人を見てしまう会社 |
| 営業KPIの形骸化を防ぐ | 行動指標を仕組みに埋め込む設計 | 目標が数字だけで終わっている会社 |
Odooの人事アプリの対応範囲(Community版とEnterprise版)
| アプリ | Community版 | Enterprise版 |
|---|---|---|
| 従業員(台帳管理) | 基本的な情報管理が可能 | より詳細な組織図・履歴管理が可能 |
| 採用 | 応募から選考までの基本的な管理が可能 | 同左に加え、周辺機能との連携が広がる |
| 評価・目標管理 | 対象外 | 評価シート・目標の進捗管理が可能 |
評価・目標管理まで含めて組織化するなら、「Enterprise版が前提」です。
版ごとの対応範囲は改定されることがあります。導入を検討する段階で、Odoo公式のエディション比較ページで最新の内容をご確認ください。
Odooで組織化する良い点と、気をつけること
人事アプリの良い点も注意点も、Community版かEnterprise版かで当てはまり方が変わります。良い点は、次の5つです。
- 採用の進捗が1か所に集まる:応募から選考、内定までを採用アプリで管理し、担当者以外にも状況が分かる。基本的な管理はCommunity版でもできる
- 人の情報が台帳にまとまる:従業員の基本情報はCommunity版で管理できる。より詳細な組織図や履歴の管理はEnterprise版になる
- 評価を記録で語れる:Enterprise版では評価シートと目標の進捗を管理でき、面談で記録を根拠に話しやすくなる
- 目標を期中に追える:目標の進捗を確かめる仕組みを持てる(Enterprise版)。確認のタイミングは先に決めておく
- 小さく始めて広げられる:従業員台帳と採用の進捗を先に集め、記録が半年分たまってから評価に広げられる
気をつけることは、次の4つです。
- 評価・目標管理はEnterprise版のみ:Community版では対象外になる
- 評価基準はシステムが作らない:システムは決まったルールを運用する道具で、基準づくりは経営の仕事として先に済ませる
- 給与計算は国産ソフトと分担する:日本向けのローカライズが、Odoo公式から提供されていない
- 版の対応範囲は変わることがある:検討する段階で、Odoo公式のエディション比較ページを見ておく
両方を1枚の図に並べました。
評価基準の注意点は、ルール作りを先に行えば避けやすくなります。基準づくりから始める理由は組織化を進める考え方、陥りやすい形は組織化でよくある2つの失敗にまとめています。
組織化でよくある2つの失敗
失敗1:評価基準を決めないまま、システムだけ導入する
システムに評価の型を入れても、基準が曖昧なら、評価は結局印象に左右されます。ルール作りを先に行うことが重要です(どこから手をつけるかのチェックリスト)。
失敗2:目標管理を、期初と期末だけのイベントにしてしまう
期中の確認がないと、目標は形骸化します。定期的な進捗確認のタイミングを、あらかじめ仕組みに組み込んでおく必要があります。
組織化とOdooの人事アプリについてよくある質問
組織化は、何人規模から必要になりますか?
明確な下限はありません。評価者が複数になり、評価にばらつきが出始めたら検討のタイミングです。
Community版だけでも組織化はできますか?
一部はできます。従業員の基本情報管理や、採用の基本的な管理までは可能です。評価・目標管理の仕組み化には、Enterprise版が前提になります。
評価制度自体がまだない会社は、何から始めるべきですか?
まず評価の観点と基準を言語化してください。システムはルールを運用する道具であり、ルール作り自体は経営の仕事です。
組織化は、他の視点とどう関係しますか?
組織化は、人に関する情報の仕組み化です。仕組み化の考え方を、人事領域に当てはめたものと捉えられます。
Odooで組織化を進めるメリットと注意点は何ですか?
台帳と採用から始められますが評価はEnterprise版が前提です。
従業員台帳と採用の基本的な管理は、無料のCommunity版でも扱えます。一方、評価・目標管理はCommunity版の対象外です。評価基準そのものはシステムが作らないため、先に言葉にしておく必要があります(良い点と、気をつけること)。
まとめ
組織化は、人事評価・採用・目標管理を同じ物差しと仕組みの上で運用することです。
- 「人」に関する業務は、システム化が後回しにされがち
- 評価基準が曖昧だと、印象による評価が不公平感を生む
- システムの前に、評価基準を言語化することが先決
- 評価・目標管理まで組織化するなら、Enterprise版が前提になる
- 目標管理は、期中の進捗確認とセットで運用する
冒頭の面談の前夜に戻ると、足りなかったのはアプリではなく、記録と物差しでした。
1年後の評価面談の前夜、部下の半年分の記録を開けば、話すことはもう決まっている。採用の状況も、担当者に聞かずに画面で確かめられる。組織化が進んだ会社の姿です。
もう少し詳しく知りたい方へ
ベンチャーネットは、ERP導入支援を手がける会社です。NetSuite・Odoo・AIスクラッチ開発を扱い、SAPからのリプレイスにも対応しているため、特定の製品に偏らない立場でご提案できます。
「評価基準がまだ固まっていない」段階からでも構いません。自社の人事管理をどう仕組み化すべきか、整理からご相談を承っています。
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