われわれの組織体制はどうあるべきか——仕事が組織を決める

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組織図を描き直しても、何も変わらなかった

部長の下に課長を置き、課長の下に係を並べる。そうやって組織図を引き直したのに、半年たっても現場は前と同じだった——。そんな経験はないでしょうか。

中小企業では、組織の見直しがしばしば「箱の組み替え」になります。誰をどの役職に就けるか、どの部署を新設するか。人の配置を動かすことが、組織を変えることだと考えてしまう。

けれど、配置を変えても仕事の中身が変わらなければ、現場の動き方は変わりません。新しい組織図は、しばらくすると元の力関係に引き戻されていきます。骨格だけ描き替えても、中を流れる血の流れが同じだからです。

では、組織を本当に変えるには、どこから手をつければいいのでしょうか。

なぜ、組織を変えても変わらないのか

理由はおそらく、出発点にあります。

多くの組織見直しは、「いま、誰がいるか」から始まります。Aさんは経験豊富だから管理職に、Bさんは若いから現場に。手元にいる人を、どの箱に入れるかを考える。これは自然な発想です。

しかし、この順番だと、組織のかたちは「人の都合」で決まります。本来やるべき仕事があっても、それを担う箱がなければ、誰の仕事にもならない。逆に、もう必要のない仕事でも、担当者がいる限り箱は残り続けます。

組織図は人を並べた図に見えて、実際には「どの仕事を、会社として大事にするか」を映す鏡です。人から組織を組み立てると、その鏡には今いる人の顔ぶれしか映りません。会社が本当はどこへ向かうべきか、という問いが抜け落ちてしまうのです。

人から組織を組み立てる 変わりにくい順序 いま、誰がいるか 役職の箱へ人を当てはめる 今の顔ぶれしか映らない =箱の組み替えに終わる 仕事から組織を導く 成果から逆算する順序 なすべき仕事は何か 仕事を単位に分ける その仕事に合う 組織のかたちを決める

組織のかたちを決める2つの順序。「人から組織を組み立てる」と今の顔ぶれしか映らず箱の組み替えに終わるが、「仕事から組織を導く」と成果から逆算してかたちを決められる。

仕事が組織を決める

経営学者のピーター・ドラッカーは、組織について逆の順序を説きました。組織は、そこにいる人のためにあるのではなく、なすべき仕事のためにある。だから、まず「なすべき仕事は何か」を問い、その仕事に合わせて組織のかたちを決める——。これが「仕事が組織を決める」という考え方です。

ベンチャーネット代表の持田は、ドラッカーの経営塾で1年間学び直すなかで、この視点を改めて掴みました。最終回で扱われたのは、生産性に大きく影響する要因です。知識、時間、製品の組み合わせ、仕事の進め方、活動の優先順位——そして組織体制も、その要因のひとつでした。

ここに、ひとつの気づきがあります。組織体制は、それだけを取り出して「正解のかたち」を決められるものではない、ということです。組織は、成果を生むための全体の中の一部品にすぎない。だから組織を考えるときは、「どんな成果を出したいのか」「そのためになすべき仕事は何か」から逆算するしかないのです。

組織図を眺めて理想形を探すのではなく、仕事から組織を導く。順序が逆になると、見えてくるものがまるで変わります。

「人と仕事を分けられない」と思い込んでいた——10年の実践

この考え方を、ベンチャーネットは一度で掴んだわけではありません。実は10年ほど前、持田は同じドラッカーの学びの場で、組織のかたちに正面からつまずいています。

当時の事業の柱はコンサルティングでした。持田は、コンサルの仕事は属人的なもので、人と仕事を切り離すことはできない、と思い込んでいたといいます。担当者の経験と勘がすべてで、その人にしかできない——そう信じていました。

ところが、仕事を分けてみると、景色が変わりました。一人の頭の中にあった作業を、調べる・組み立てる・伝えるといった単位に分解する。すると、教育の手順が作れるようになり、人を育てるキャリアの道筋も描けるようになりました。属人の塊だと思っていたものは、分けられたのです。

もうひとつ、当時の持田が出した結論があります。コンサルティングは現場の自律に任せ、開発まわりは数字の規律で管理する。性質の違う仕事に、性質の違う組織のかたちを当てる。組織の正解はひとつではなく、それぞれの仕事の卓越性を殺さないかたちを、戦略から考える——。

10年前のこの実践が、最終回で学んだ「組織体制は生産性の要因のひとつ」という言葉と、一本の線でつながりました。仕事の性質が、組織のかたちを決める。頭で理解していたことが、長い実践を経てようやく腑に落ちたのです。

自社で何が変わったか——そして、あなたの会社では

仕事から組織を問い直すと、変わるのは組織図だけではありません。

たとえば評価です。職能ごとに人を並べる組織と、プロジェクト単位で動く組織とでは、何を成果として評価するかが変わります。持田自身、組織のかたちを変えたとき、評価のものさしをどう作り直せばいいか分からなくなり、長く宿題として抱えていました。組織を変えるとは、そこに連なる評価も、人の育て方も、まとめて問い直すことなのです。

ここで、AIの存在も無視できません。「自分でなくてもできる仕事は何か」「AIに任せられる仕事はどれか」を問うと、なすべき仕事の地図が描き直されます。AIは判断を肩代わりする魔法ではありません。けれど、人がやるべき仕事と、そうでない仕事を仕分けるとき、有力な手がかりになります。仕事の棚卸しが、組織のかたちを更新するきっかけになるのです。

そこで、あなたの会社に問いを向けてみてください。いまの組織図は、「誰がいるか」から組み立てたものでしょうか。それとも、「なすべき仕事は何か」から導いたものでしょうか。もし前者なら、変えるべきは箱の配置ではなく、その手前にある問いのほうかもしれません。

ただ、この問いは、自分一人で答えを出すのが意外と難しいものです。内側にいると、長年続けてきた仕事ほど「当たり前」になり、それが本当に必要かを問う対象から外れてしまう。なすべき仕事は、案外、外から見たほうがくっきり見えます。

おわりに——組織を問い直すのは、一人では難しい

「仕事が組織を決める」と頭で分かっても、自社の組織を実際に問い直すのは、容易ではありません。

理由のひとつは、内側にいると「なすべき仕事」が見えにくいからです。長年続けてきた仕事ほど、それが当たり前になり、本当に必要かどうかを問う対象から外れてしまう。もうひとつは、組織を変えれば、評価も人の配置も連鎖して動くからです。一か所だけ手をつけて済む話ではありません。

ベンチャーネット自身、10年をかけて、つまずきながらこの問いと向き合ってきました。だからこそ言えるのは、組織を問い直す作業には、外からの視点と、ともに考える相手があったほうがいい、ということです。一人で組織図とにらめっこしても、見えているのは今の顔ぶれだけ。その外に「なすべき仕事」を探しに行くには、伴走者がいたほうが遠くまで行けます。

あなたの会社の「なすべき仕事」は何か。その問いを一緒に掘り下げる場が必要だと感じたら、それは組織を変える最初の一歩に立っているということかもしれません。

組織のかたちは、人を並べる前に、仕事から決まる。この一点を起点にすると、見慣れた組織図がまったく違って見えてきます。

組織を「自律するチームの集まり」として捉え直す考え方については、Starfish Team——管理しない組織のかたちもあわせてご覧ください。

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この記事を書いた人

持田 卓臣のアバター 持田 卓臣 株式会社ベンチャーネット代表取締役

株式会社ベンチャーネット 代表取締役
2005年に株式会社ベンチャーネットを設立後、SEOをはじめとするデジタルマーケティング領域のコンサルティングサービスを展開
広告・SNS・ウェブ・MA・SFAと一気通貫で支援を行っています
著書に『普通のサラリーマンでもすごいチームと始められる レバレッジ起業 「バーチャル社員」があなたを救う』(KADOKAWA、2020年)

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