目標による管理とは——ノルマではなく、自己管理の道具

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期初に立てた目標が、いつのまにか“やらされ”に変わる

期初に目標を立てる。半期が過ぎ、達成か未達かで評価する。多くの会社にある、見慣れた光景です。

けれど現場をよく見ると、奇妙なことが起きています。

  • 達成しやすいように、低めの目標を出してくる
  • 数字は追うが、なぜその数字なのかは誰も語れない
  • 「上から降ってきたノルマ」として、ただこなす対象になっている

目標を立てたはずなのに、いつのまにか“やらされの数字”に変わっている。この違和感に、心当たりはないでしょうか。

ベンチャーネットも、同じ場所を通ってきました。

その目標は、誰のための・何の道具なのか

ここで一度、立ち止まって問いたいことがあります。

そもそも目標とは、誰のための、何のための道具なのでしょうか。

人を評価し、達成度で順位づけるための道具。多くの現場では、そう扱われています。

だとすれば、現場が低い目標を出すのも、数字が“やらされ”になるのも、自然な反応です。

道具の使い方が、そもそも本来と違っているのかもしれない。そう疑うところから、この話は始まります。

目標による管理の本来:ノルマではなく「目標と自己統制」

「目標による管理」という考え方があります。経営思想家のドラッカーが説いたもので、英語の頭文字でMBOと呼ばれることもあります(MBO=Management by Objectives。目標を軸に経営を回す考え方)。

ただ、この言葉には、忘れられがちな後半があります。ドラッカーが本来呼んだのは「目標と自己統制によるマネジメント」でした。

自己統制。つまり、本人が自分で立て、自分で確かめ、自分で正す。ここが核心です。

ところが世の中に広まった目標管理の多くは、この“自己統制”が抜け落ちています。残ったのは、目標で人を働かせる仕組み。本来とは、ほとんど正反対の道具になっています。

わかりやすい比喩があります。スピードメーターが、運転席ではなく助手席にしか付いていない車です。

速度計を握っているのは上司。部下は指示されるまま運転し、やがて「自分が運転している」感覚を失います。

本来は、逆です。計器は運転席に置く。本人が自分の速度を見て、自分で調整する。

目標の進み具合は、上司が部下を管理する道具ではなく、本人が自分を導く道具なのです。

ノルマ管理 ── 計器は「助手席」に 運転席(本人) 助手席 メーター 上司が握る → 指示で動く 本人は指示されるまま運転し、やがて「自分で運転している」感覚を失う 目標と自己統制 ── 計器は「運転席」に 運転席(本人) メーター 本人が見て、自分で調整する 進み具合は「人を管理する道具」ではなく「自分を導く道具」になる

図:計器(メーター)をどこに置くか。ノルマ管理は助手席(上司が握る)、目標と自己統制は運転席(本人が見て調整する)。

ベンチャーネットが「目標による管理」をこう捉え直したとき、目標の意味が変わりました。人を縛る数字ではなく、一人ひとりが自分で回すための計器。それが、本来の姿でした。

では、ノルマ型と自己統制型は、どこで分かれるのでしょうか。同じ「目標」という言葉でも、向きが正反対です。

  • 誰が目標を立てるか:ノルマ型は上から配られる。自己統制型は、本人が全体の目標から考えて立てる
  • 誰が数字を見るか:ノルマ型は上司が握って指示する。自己統制型は、本人が見て自分で調整する
  • どう評価するか:ノルマ型は達成率で順位づけ(だから現場は低い目標を出したくなる)。自己統制型は、成長と次の一手のための材料にする

向きが逆なら、同じ「目標」でも、現場で起きることはまるで違います。前者は人を縛り、後者は人を動かします。

社長自身の実践:勢いで決めた目標を、回しながら正す

とはいえ、きれいごとに聞こえるかもしれません。正直なところを書きます。

ベンチャーネットの代表(持田)は、自社の成長目標を、確かな根拠なく立てました。段階的に伸ばし、高い目標を掲げる。意思は強いが、数字の裏づけは薄い。

「これでいいのか。経営者の意思だけで、目標を決めてよいのか」。そんな迷いも、正直にありました。

大事なのは、その後にやったことです。

立てた目標を“達成したか・しなかったか”だけで裁くのを、やめました。代わりに、フィードバック分析を回しました(フィードバック分析=立てた目標と実際の結果を照らし、ズレの原因を学ぶ習慣)。

  • 活動をプロセス単位に分解する
  • どのプロセスが効いて、どこでズレたのかを確かめる
  • 次の一手に、その学びを反映する

こうして、目標は「自分を裁く道具」から「自分で回す道具」へ変わっていきました。

完璧に詰めてから立てたのではありません。意思を込めて立て、回しながら正したのです。

目標は“裁く道具”から“自分で回す道具”へ

ここまでをまとめます。

目標による管理とは、ノルマで人を縛ることではありません。本人が立て、本人が確かめ、本人が正す。そのための“自己管理の道具”です。

だから、目標は完璧でなくてかまいません。大切なのは、意思を込めて立てること。そして、自分で見られる計器を、運転席に持つことです。

ただ、ひとつ、見落としやすい落とし穴があります。

自己統制は、「独りでやる」ことではありません。

自分の目標が、本当に芯を食っているか。振り返りの解釈が、独りよがりになっていないか。こうした“自分のクセ”は、自分一人では見えにくいものです。

だからこそ、立てた目標と振り返りに“もう一人”が関わると、回り方が変わります。否定するのではなく、一緒に考える相手がいる。それだけで、自己統制はむしろ働きます。

ベンチャーネットは、自社でこれを実践してきました。だからこそ、つまずく場所も分かります。

そして、自己統制を支えるのは、自分で見られる数字です。数字が部署ごとにバラバラだったり、月末にしか分からなかったりすれば、計器は運転席に届きません。その整え方は、次の記事に譲ります。

  • 目標を支える“数字の見える化”は → [中小企業が見るべき経営指標(数字の見える化)](2-2)
  • 部署をまたいで数字を一つに束ねる話は → [単一DBが、見える化・わかる化・儲かる化を貫く](4-8)
  • そもそも経営を見直す5つの問いに戻るなら → [経営を見直す道具は、5つの質問](序-3)

目標を、もう一度“自分の道具”として持ち直す。その一歩を、一緒に考えられたらと思います。

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この記事を書いた人

持田 卓臣のアバター 持田 卓臣 株式会社ベンチャーネット代表取締役

株式会社ベンチャーネット 代表取締役
2005年に株式会社ベンチャーネットを設立後、SEOをはじめとするデジタルマーケティング領域のコンサルティングサービスを展開
広告・SNS・ウェブ・MA・SFAと一気通貫で支援を行っています
著書に『普通のサラリーマンでもすごいチームと始められる レバレッジ起業 「バーチャル社員」があなたを救う』(KADOKAWA、2020年)

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