欠品・放置商談・仕入先評価のチェックを自動化|毎朝の確認をOdooに任せる

朝8時半、食品卸の購買担当者が在庫の一覧と受注の一覧を並べています。どの品目を今日発注すべきか、1行ずつ見比べているところです。隣の席では、営業課長が担当者に見積の行方を聞いて回っています。

どちらも30分はかかる、毎朝の確認です。ただ、その大半は判断ではありません。判断の材料を探して並べる時間です。

この「探して並べる」部分は、Odooに任せられます。Odoo(オドゥー)は、販売・在庫・購買・会計などをひとつにつなぐERPです。ERPとは、会社全体の業務データをひとつのシステムで管理する仕組みを指します。

たとえば欠品の確認は、在庫アプリの補充レポートに置き換えられます。品目ごとの最小・最大の数量を一度登録すれば、発注が必要な品目と数量が一覧に出ます(補充レポートで欠品を確認する)。

毎朝の確認を仕組みに移すと、たとえば次のことが変わります。

  • 購買担当者は、補充レポートの発注数を見直して[発注]を押すだけになる
  • 営業課長が聞き回らなくても、動かない見積が担当者のToDoに出る
  • 仕入先の納期を月末にExcelで集計せず、期日内入荷率で見られる
  • 入力がそろい、Odooの数字が信頼されやすくなる

ただし、拠点や倉庫が多く要件が複雑な会社は、Odooで足りるかを先に見極める必要があります。

では、仕組みに任せたあと、人の手元には何を残すのか。架空の食品卸「さくら商事(従業員30名)」の例で順に示します。良い点と負担は毎朝の確認を仕組みにする良い点と、気をつけることにまとめました。

Community版とEnterprise版について

補充レポート・CRMの活動と停滞の表示・自動化ルール・仕入先の期日内入荷率は、無料のCommunity版にもあります(Odoo 19のソースコードで確認)。購買の分析ダッシュボード、AIへの質問(公式MCP)は有償のEnterprise版の機能です。

毎朝の確認を、3つの仕組みに置き換える 探す・見比べる・催促するという毎朝の確認を、欠品は補充レポート、放置商談と見積は一覧・停滞の表示・自動のToDo、仕入先の納期は入荷の記録から出す期日内入荷率に置き換える。人は発注する・声をかける・交渉するを決めるだけになる。 毎朝の確認を、3つの仕組みに いまの毎朝の確認 探す・見比べる・催促する 欠品(在庫・購買) 補充レポートが今日の発注を出す 放置商談・放置見積(営業) 一覧・停滞の表示・自動のToDo 仕入先の納期(購買) 入荷の記録から期日内入荷率 人は決めるだけ 発注する・声をかける・交渉する 探すのはOdoo、決めるのは人
毎朝の確認を、3つの仕組みに置き換える
目次

毎朝の確認は、なぜ減らないのか

毎朝の確認が減らないのは、確認の中身が「探す」作業だからです。探す場所が画面や表に散らばっている限り、人が回るしかありません。

さくら商事の朝の確認を分けると、次の3つです。

毎朝の確認実際にしている作業人が決めること
欠品しそうな品目在庫表と受注残を見比べる発注するか、量をどうするか
止まっている商談・見積担当者に聞いて回る誰に、どう声をかけるか
仕入先の納期入荷の記録をExcelで集計する交渉するか、発注先を変えるか

右の列だけが、人にしかできない仕事です。左の2列は、データがOdooにそろっていれば画面が出してくれます。

ベンチャーネットは、こうした「仕事のための仕事」をブルシットジョブと呼んでいます。見比べる照合と、人を追いかける催促は、その代表です。考え方の全体は、ブルシットジョブを消し去るにまとめました。

稲盛和夫氏は、経営の原則として「売上を最大限に伸ばし、経費を最小限に抑える」を挙げました(出典:稲盛和夫オフィシャルサイト)。欠品も放置した商談も、売上を逃す原因になります。毎朝の確認を仕組みに移すのは、この取りこぼしを人の注意力に頼らずに防ぐためです。

各アプリの機能そのものは、Odooの在庫管理(Inventory)などのアプリ別の記事で紹介しています。

欠品の確認を自動化:補充レポートを「今日発注する品目」の一覧にする

欠品の確認は、在庫アプリの補充レポートに置き換えられます。補充レポートは、補充が必要な品目と数量を出す画面です(出典:Odoo公式ドキュメント「Replenishment report」、2026年10月確認)。発注点ルール(品目ごとの最小・最大の数量)と今後の需要から、数量を計算します。

在庫表と受注残を見比べる作業が消える

さくら商事の購買担当者は、毎朝この表を見比べていました。

品目手持ち受注残発注は必要か
冷凍えび500g4055見比べ中
乾麺200g825見比べ中
小麦粉1kg12030見比べ中

品目ごとに最小数量・最大数量・仕入先・発注単位を一度登録すると、補充レポートは次の形になります。予測在庫とは、手持ちに入荷予定を足し、出荷予定を引いた数です。

品目予測在庫最小/最大発注数
冷凍えび500g−1520/80100(10単位)
乾麺200g−1730/90120(30単位)
小麦粉1kg9050/150表示されない

発注数は、最大数量まで戻す数を発注単位で切り上げた値です。冷凍えびは80まで戻すのに95が要り、10単位で切り上げて100になります。小麦粉は予測在庫が最小を割っていないため、一覧に出てきません。同じ条件をPythonで再現し、この計算になることをベンチャーネットで確かめました。

購買担当者が毎朝するのは、画面を開いて発注数を見直し、[発注]を押すことだけです。押すと見積依頼(RFQ)、つまり仕入先への発注の下書きができます。今は発注しない品目は、[スヌーズ]で一定期間隠せます。

「一覧で見る」か「下書きまで作らせる」か

発注点ルールには、手動と自動の2つの動かし方があります(出典:Odoo公式ドキュメント「Reordering rules」、2026年10月確認)。

動かし方Odooがすること人がすること
手動(Manual)補充レポートに必要な品目を出す数量を見て[発注]を押す
自動(Auto)見積依頼を自動で作るできた見積依頼を見て送る

自動にすると、予測在庫が最小を割った時点で見積依頼ができます。判定するのは、スケジューラー(定期的に動く処理)が動くとき(既定で1日1回)と、受注を確定したときです。

どちらにするかは、品目の性格で分けるのが現実的です。毎週同じように出る定番品は自動に。季節や販促で需要が揺れる品目は手動にして、人が数量を見てから発注します。

補充レポートの「Horizon days」には、何日先までの需要で判定するかを入れます。週に一度まとめて発注するなら、7日にしておくと便利です。今週中に足りなくなる品目が、月曜の朝にそろって出ます。

人が確かめる点

補充レポートの精度は、登録した数字が現実と合っているかしだいです。

  • 最小・最大は外れる前提で見直す:月に一度、欠品した品目と余った品目を見て直す
  • リードタイムを実態に合わせる:納期が延びたのに登録が古いままだと、発注が遅れる
  • 最大を少し超えることがある:切り上げのため。冷凍えびは発注後の予測在庫が85になる
  • スヌーズを使いすぎない:隠した品目が、いつの間にか欠品していることがある

最小・最大で発注する考え方はOdooの購買管理(Purchase)に、数字の決め方はNetSuiteの教科書の在庫最適化とは?にあります。

放置商談・放置見積の管理:探さずに、担当者のToDoに出す

営業の確認は、3つの仕組みを組み合わせると「聞いて回る」作業がなくなります。期限切れの活動の一覧、ステージが動かない商談の表示、そして見積へのToDoの自動作成です。

期限切れの活動がある商談を、一覧にして保存する

Odooの活動とは、電話・メール・打ち合わせなど、商談ごとに入れる「次にやること」の予定です。期限が今日以前で、担当者のいる商談だけに絞ると、放置商談の一覧になります。

商談担当次の活動の期限一覧に出るか
冷凍庫更新の件佐藤9/25出る(期限超過)
新規PB商品鈴木9/29出る(今日が期限)
年末ギフト高橋10/2出ない
社食メニュー刷新(未割当)9/20出ない
配送ルート見直し佐藤(未登録)出ない

今日を9月29日とした例です。作り方は、CRMの[レポート]→[パイプライン]を開き、既定の絞り込みを外すところから。足す条件は次の2つです(出典:Odoo公式ドキュメント「Unattended leads report」、2026年10月確認)。

  • 活動の期限が今日以前
  • 営業担当者が設定されている

この絞り込みを「お気に入り」に保存すれば、翌朝からは選ぶだけで同じ一覧が開きます。リスト表示に切り替えて担当者でまとめると、声をかける相手がすぐに分かります。

活動のない商談は「停滞日数」で拾う

期限切れの活動の一覧で拾えないのは、活動を入れていない商談と、担当者のいない商談です。例では「配送ルート見直し」と「社食メニュー刷新」が、これに当たります。

そこで使うのが、CRMのステージ(商談の段階)ごとに設定する「Days to rot」の日数です。ステージが変わらないまま、その日数を過ぎた商談はカンバン(カード形式の画面)で赤く表示されます。ステージの見出しには、停滞している件数も出ます(出典:Odoo公式ドキュメント「Stages」、2026年10月確認)。

商談ステージが変わった日経過日数14日で設定した場合
冷凍庫更新の件9/1712日表示なし
社食メニュー刷新9/1217日赤く表示
配送ルート見直し9/524日赤く表示

Odoo 19のソースコードでは、判定の起点はステージを最後に変えた日です。受注か失注かが決まっていない商談だけが対象になります。活動の一覧と停滞の表示は、拾うものが違います。2つを並べて使うのが、ベンチャーネットのおすすめです。

送ったまま動かない見積に、7日後のToDoを作る

見積の追いかけは、自動化ルールで担当者のToDoに変えられます。自動化ルールとは、決めた条件がそろったときに、Odooが決めた処理を自動で行う機能です。

さくら商事は、きっかけを「最終更新から7日後(After last update)」にしました。状態が見積(ドラフト)か送付済なら、担当者に「見積フォロー」のToDoを作ります。9月1日から動かしていた場合、9月29日の朝までの結果はこうなります。

見積状態最終更新ToDoができた日
S00301送付済9/159/22
S00302送付済9/2610/3の予定
S00303受注9/1対象外
S00304見積9/209/27

営業課長が、見積の一覧を探す必要はありません。担当者は、自分の活動の一覧に出たToDoを順に片づけるだけです。

このきっかけ(タイミング条件)の設定には、開発者モードが要ります(出典:Odoo公式ドキュメント「Automation rules」、2026年10月確認)。開発者モードは、詳細な設定画面を開くための切り替えです。Community版では、開発者モードで[設定]→[技術]→[自動化ルール]と進みます。

注意点は2つです。

1つ目は、ルールがさかのぼって動かないことです。公式ドキュメントは、過去の記録に一斉に実行されないよう、作成時に定期処理を手で1回動かす手順を求めています。そのため、作った日より前に7日を過ぎた見積にはToDoができません。たまった見積は、ルールを入れる日に一覧で片づけておきます。

2つ目は、ToDoができる時刻です。判定する定期処理は、既定で4時間ごとに動きます。ToDoができるのは、7日を過ぎた後の最初の判定のときです。

自動化ルールで入力そのものを減らす使い方は、Odooの自動化ルールとAIで入力を減らすで扱っています。

人が決める点

一覧もToDoも、営業担当者を監視する道具にすると、現場は形だけ活動を入れるようになります。目的は、課長が「誰に声をかけるか」を早く決めることです。CRMを定着させる考え方は、OdooのCRMでできることにまとめています。顧客宛ての催促メールを自動で送る使い方は、よくある質問で触れます。

仕入先評価の自動化:評価表を作らず、入荷の記録から出す

仕入先の評価表を、Excelで作る必要はありません。発注と入荷をOdooに記録していれば、期日どおりに入ったかは記録から計算できるからです。

Community版にもある「期日内入荷率」

さくら商事の購買担当者は、月末にこんな表を集計していました。

仕入先入荷予定実際の入荷発注数/入荷数
北野製粉9/49/4100/100
北野製粉9/139/1580/80
海洋フーズ9/99/950/45
海洋フーズ9/229/2140/40

Odooで購買と在庫を使っていれば、仕入先の連絡先画面のボタン(On-time Rate)に期日内入荷率が出ます。発注書の画面にも、同じ率が表示されます。Odoo 19のソースコードで見ると、計算は次のとおりです。

  • 過去365日(既定)の確定した発注のうち、入荷が始まった明細が対象
  • 入荷予定日までに入った数量を、発注した数量で割る
仕入先期日内入荷率納品率(入荷数÷発注数)
北野製粉55.6%100.0%
海洋フーズ94.4%94.4%

北野製粉は全量を納めましたが、80個が予定より2日遅れました。海洋フーズは期日を守ったものの、5個足りません。数量で計算するので、遅れも欠品も率を下げます。この数字も、Pythonで計算を再現して確かめています。

Enterprise版の購買ダッシュボード

仕入先の比較を1画面にまとめたのが、Enterprise版のダッシュボード「Purchase & Vendor analysis」です。ダッシュボードアプリのLogisticsの区分から開きます(出典:Odoo公式ドキュメント、2026年10月確認)。

表示中身
On time deliveries期日どおりに入った数量の割合(仕入先別も)
Supplier service level発注数量に対する入荷数量の割合
Top 10 late receipts予定より遅れた入荷の上位10件
平均単価の週次推移確定した週ごとの、品目の平均仕入単価

期間と仕入先で絞り込めば、月末の評価表はこの画面で足ります。平均単価の推移からは、値上がりにも気づけます。値上がりを人が探さずに見つける方法をまとめたのが、経費の異常を人が探さないです。

既定でこのダッシュボードを見られるのは、在庫アプリの管理者だけです。購買担当者にも見せるなら、ダッシュボードアプリで閲覧できるグループを足します。

人が確かめる点

期日内入荷率は、倉庫の入力に左右されます。受け入れ処理を翌日にまとめて登録すると、期日どおりに届いた分まで遅れて見えるためです。発注のたびに入荷予定日を正しく入れることも欠かせません。

率が下がった仕入先とどう話すかは、購買担当者が決めることです。数字は交渉の材料で、取引をやめる理由そのものにはなりません。

倉庫の確認:滞留在庫と出荷・入荷の遅れ

倉庫の確認は、ダッシュボードアプリにまとまっています。滞留在庫とマイナス在庫は週に一度、出荷・入荷の遅れは毎朝見る使い方です。使うのは次の2つです(出典:Odoo公式ドキュメント「Inventory dashboards」、2026年10月確認)。

  • Warehouse Metrics:入庫日別の在庫数量・金額と、マイナス在庫の上位10品目を出す。在庫評価を使っていれば、Community版にもある
  • Warehouse Daily Operations:遅れている出荷・入荷・社内移動の件数を出す。Enterprise版の機能

ロットやシリアル番号で管理していない品目は、在庫が一度0になるまで最初の入庫日で表示されます。古く見える在庫も、実際には入れ替わっていることがあるので注意が必要です。

画面を開かずに知らせる:チャット通知とAIへの質問

ここまでの方法は、誰かがOdooの画面を開くことが前提でした。毎朝Odooを開かない人には、Odoo側から知らせを届けます。図2は、結果を誰がどこで見るかで方法を分けたものです。

確認の結果をどう知らせるかの選び方 確認の結果を毎朝だれがどこで見るかで、方法を3つに分ける。Odooを毎朝開く人がいれば保存した一覧、画面を開かない人には自動化ルールのToDo、複数の画面をまたいで聞きたいならAIへの質問(Enterprise版・カスタムプラン)。どの方法でも、発注と催促を決めるのは人。 知らせ方の選び方 確認の結果を、毎朝だれが どこで見るか Odooを毎朝開く人がいる 保存した一覧を開くだけ 補充レポート・放置商談の一覧 Community版でも可 画面を開かない人に届ける 自動化ルールでToDoを作る 見積の追いかけ・自動の見積依頼 Community版でも可 複数の画面をまたいで聞く AIに質問する(公式MCP) 朝会の前に、遅れと欠品をまとめて Enterprise版・カスタムプラン どの方法でも、発注と催促は人が決める
確認の結果をどう知らせるかの選び方

決まった時刻に、主力品の在庫をチャットへ流す

n8nなどの連携ツールを使うと、毎朝決まった時刻にOdooの在庫数を社内チャットへ流せます。さくら商事なら、主力10品目のうち安全在庫を割った品目だけを、8時に投稿する形です。

冷凍いか1kg:残り38(安全在庫50を下回っています)。ほか9品目は通常です。

この方法では、Odooの外部API(ほかのシステムからOdooを操作する窓口)を使います。Enterprise版のOdoo Onlineで外部APIを使えるのはカスタムプランだけで、One App Free・スタンダードでは使えません。料金プランとAPIの落とし穴は、n8n・MakeとOdooのAPI連携の基礎で扱っています。

通知を見たあとの補充の確定は、人の仕事です。AIに補充の案を作らせる場合も、発注は購買担当者が承認してから送ります。

朝会の前に、AIへまとめて聞く

部品製造の「みどり精工(従業員80名)」では、朝会の前に製造・購買・在庫の画面から遅れを拾っていました。製造オーダーの遅れ、仕入先の納期遅れ、発注点を割った部品で、合わせて35分です。

Odooの公式MCPを使うと、ClaudeなどのAIがOdooのデータを読み取って答えます。MCPとは、AIが外部のシステムとやり取りするための共通の規格です。製造課長は、たとえば次のように聞きます。

今日遅れている製造オーダーと原因、納期を過ぎた入荷予定、発注点を割った部品を一覧にしてください。読み取りだけで答え、発注や計画は変えないでください。

公式MCPはAIアプリの機能で、Enterprise版にあります。使えるのはOdoo Online 19.4以降とOdoo 20で、Odoo Onlineではカスタムプランが要ります。既定でAIに公開されるのは、検索や集計などの読み取り系の道具だけです(出典:Odoo公式ドキュメント「AI MCP server」、2026年10月確認)。それ以外の道具は、設定画面の「Available in MCP」で1つずつ公開します。

朝の確認に使うなら、読み取りだけで始めるのが基本です。答えをもとに朝会で判断し、発注や計画の変更はOdooの画面で人が行います。つなぎ方はClaudeなどのAIをOdooにつなぐに、権限の考え方はAIに任せてはいけない範囲にまとめました。

在庫不足をメールで知らせるモジュール

Odoo App Storeには、在庫が基準を下回るとPDF付きのメールで知らせる、サードパーティ製のモジュールもあります。ただし、Odoo Onlineには外部のモジュールを入れられません。使えるのは、自社サーバーかOdoo.shの場合です。標準の補充レポートと並べると知らせが二重に届くため、まず標準機能で足りるかを試します。

確認が消えると、数字がそろい始める

毎朝の確認を仕組みにした効果は、作業時間だけにとどまりません。現場が入力のルールを守るようになるからです。

活動を入れておけば、課長に聞かれずに済みます。入荷をその日に登録すれば、仕入先の率が正しく出ます。入力が、自分の得になる形に変わるわけです。入力がそろうとOdooの数字が信頼され、信頼された数字はさらに使われます。ベンチャーネットが「正のループ」と呼ぶ流れです。

反対に、画面の数字が現実とずれていると、人はまたExcelで見比べ直すことになります。

毎朝の確認を仕組みにする良い点と、気をつけること

ここまでの置き換えには、得られることと、先に覚悟しておきたい負担があります。

良い点は、次の5つです。

  • 探す作業が画面に移る:在庫表と受注残の見比べ、見積の聞き回り、納期の集計が、補充レポート・活動の一覧・期日内入荷率に置き換わる
  • 多くはCommunity版で始められる:補充レポート・発注点ルール・活動と停滞の表示・自動化ルール・期日内入荷率は、Community版にもある
  • 拾い漏れを2つの仕組みで補える:活動の一覧で拾えない商談も、ステージの停滞日数を過ぎれば赤く表示される
  • 品目ごとに任せ方を選べる:定番品は発注点ルールを自動にし、需要が揺れる品目は手動のまま人が数量を見る
  • 入力が自分の得になる:活動を入れれば課長に聞かれず、入荷をその日に登録すれば仕入先の率が正しく出る

気をつけることは、次の4つです。

  • 数字は登録しだい:最小・最大やリードタイムが古いままだと、発注が遅れる。月に一度は見直す
  • 自動化ルールはさかのぼらない:作った日より前に7日を過ぎた見積には、ToDoができない。設定には開発者モードが要る
  • 入力の遅れが率をゆがめる:受け入れ処理を翌日にまとめて登録すると、期日どおりの入荷まで遅れて見える
  • 一部はEnterprise版の機能:購買ダッシュボード・Warehouse Daily Operations・公式MCPはEnterprise版にある。外部APIを使う通知は、Odoo Onlineではカスタムプランが要る

両方を1枚の図に並べました。

毎朝の確認を仕組みにする良い点と注意点 良い点は、探す作業が画面に移る、多くはCommunity版で始められる、拾い漏れを2つの仕組みで補える、品目ごとに任せ方を選べる、入力が自分の得になること。気をつけることは、数字は登録しだい、自動化ルールはさかのぼらない、入力の遅れが率をゆがめる、一部はEnterprise版の機能であること。 毎朝の確認を仕組みにする良い点と注意点 良い点 探す作業が画面に移る 見比べ・聞き回り・集計が要らない 多くはCommunity版で始められる 補充レポート・自動化ルールなど 拾い漏れを2つの仕組みで補える 活動の一覧と停滞日数の表示 品目ごとに任せ方を選べる 定番品は自動、揺れる品目は手動 入力が自分の得になる 活動を入れれば課長に聞かれない 気をつけること 数字は登録しだい 最小・最大とリードタイムを見直す 自動化ルールはさかのぼらない 作る前に7日過ぎた見積は対象外 入力の遅れが率をゆがめる 受け入れ処理はその日に登録する 一部はEnterprise版の機能 購買ダッシュボード・公式MCPなど
毎朝の確認を仕組みにする良い点と注意点

入力のルールをどの順で決めるかは、毎朝の確認を仕組みにするまでの進め方にまとめています。

自社の「毎朝の確認」を点検するチェックリスト

社内の会議で、次の項目に印を付けてみてください。3つ以上当てはまるなら、毎朝の確認を仕組みに移す効果が大きい会社です。

  • □ 毎朝、在庫表と受注の一覧を見比べて発注を決めている
  • □ 欠品に気づくのが、出荷のときや顧客からの問い合わせのときになる
  • □ 品目ごとの最小・最大の数量が、担当者の頭の中にしかない
  • □ 営業会議や朝礼で、見積の行方を担当者に聞いている
  • □ 商談に次の予定(活動)を入れるルールがない
  • □ 仕入先の納期遅れを、月末にExcelで集計している
  • □ 入荷の受け入れ処理を、翌日以降にまとめて登録している
  • □ 朝会の資料づくりに、複数の画面から数字を拾っている

毎朝の確認を仕組みにするまでの進め方

ベンチャーネットが、毎朝の確認を仕組みに移すときの順番です。

  1. 確認を書き出す:誰が、毎朝・毎週、何を見て何を決めているかを一覧にする。「決めること」の列を必ず書く
  2. データがOdooにあるかを見る:発注点・活動・入荷予定日など、判定に使う項目が入力されているかを調べる
  3. 入力のルールを先に決める:商談には次の活動を入れる、入荷はその日に登録する、といった約束を現場と決める
  4. 一覧・ToDo・AIのどれで知らせるかを選ぶ:画面を開かずに知らせる方法の図2で選び、まず1つの確認だけを1か月動かす
  5. 数字を月に一度見直す:最小・最大、停滞の日数、ToDoの日数が現場に合っているかを直す

全部を一度に自動にするより、1つ動かして現場が慣れてから次に移るほうが、定着は早くなります。

拠点や倉庫が多く要件が複雑な会社は、Odooで足りるかを先に見極めます。測り方を解説したのが、NetSuiteの教科書のNetSuiteとOdooの在庫・購買・製造です。パッケージの画面が業務に合わない会社には、AIスクラッチ開発という選択肢もあります(開発費・保守費は別途)。

バージョンと機能の更新について

この記事の内容は、2026年10月時点のOdoo 19の公式ドキュメントとソースコードにもとづいています。公式MCPについては、Odoo Online 19.4以降とOdoo 20の公式ドキュメントで確認しました。

画面の名前や場所は、バージョンアップで変わることがあります。Odoo 20に上げたときは、保存したお気に入りと自動化ルールが意図どおりに動くか、テスト用のデータベースで試してください。

よくある質問

Community版だけで、毎朝の確認はどこまで減らせますか?

在庫・営業・購買の3つとも、かなりの部分を減らせます。補充レポートと発注点ルール、CRMの活動と停滞の表示、自動化ルール、仕入先の期日内入荷率は、Community版にもあります。Enterprise版が要るのは、購買の分析ダッシュボードと、AIに質問する公式MCPです。

発注点ルールを自動にすれば、発注まで任せられますか?

自動にすると、見積依頼の下書きまではOdooが作ります。仕入先に送るか、数量を変えるかは人が決めてください。需要が揺れる品目は手動のままにして、補充レポートで数量を見てから発注するほうが安全です。

営業担当者が活動を入れないと、どうなりますか?

期限切れの活動の一覧には出てきません。それでも、ステージの停滞日数を設定しておけば、動いていない商談は赤く表示されます。ただ、根本の手当ては「商談には次の活動を必ず入れる」というルールを決めることです。

自動化ルールで、顧客に催促のメールを自動で送ってもよいですか?

送ることはできますが、最初は社内のToDoから始めることをおすすめします。催促のメールは、相手との関係や値引きの交渉に影響するからです。自動で送る場合は、文面と送る条件を事前に人が承認してください。

毎朝の確認を自動化するメリットとデメリットは何ですか?

探す時間が減る一方で入力のルールが要ります。

欠品・放置商談・仕入先の納期は、補充レポート・活動の一覧・期日内入荷率で画面に出ます。人は、発注する・声をかける・交渉するという判断に時間を回せます。

ただし、精度は登録した最小・最大や入荷の記録しだいです。自動化ルールは、作った日より前にはさかのぼりません。詳しくは毎朝の確認を仕組みにする良い点と、気をつけることに並べました。

まとめ:探すのはOdoo、決めるのは人

毎朝の確認の大半は、判断の材料を探して並べる作業です。欠品は補充レポートと発注点ルールに、放置商談は活動の一覧と停滞の表示に置き換えられます。見積の追いかけは自動化ルールのToDoに、仕入先の評価は期日内入荷率に移せます。

人の手元に残すのは、発注する・声をかける・交渉するという判断です。その判断が正しくなるよう、入力のルールを先に決めておきます。

1年後、さくら商事の購買担当者は、朝の画面で発注数を見直して[発注]を押すだけになっているはずです。営業課長は聞き回る代わりに、停滞した商談の担当者と次の一手を話しています。浮いた30分は、仕入先との交渉の準備に回せるようになります。毎朝の確認が消えると、会社の目線は「探す」から「決める」へ。

もう少し詳しく知りたい方へ

毎朝の確認に時間を取られている、発注点や停滞の日数をどう決めればよいか分からないといった悩みがあれば、実際の画面とデータを見ながら一緒に整理します。

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この記事を書いた人

持田 卓臣(もちだ たくおみ)
株式会社ベンチャーネット 代表取締役

ヒューレット・パッカード社でITコンサルタントとして従事した後、2005年に株式会社ベンチャーネットを設立。
Oracle NetSuite Solution Provider Partner として、中堅・中小企業向けクラウドERP「NetSuite」の導入・運用支援を提供しています。
SEO・広告・SNS・ウェブ・MA・SFAと一気通貫で培ってきたデジタルマーケティング領域の業務知見を活かし、NetSuiteを軸とした経営DXを支援しています。
著書:『普通のサラリーマンでもすごいチームと始められる レバレッジ起業「バーチャル社員」があなたを救う』(KADOKAWA、2020年)

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