Odooのライセンスを解説|LGPLv3とオープンコアモデル

ライセンスの話は、多くの経営者にとって退屈です。

それでも、この記事を書く理由があります。Odooを選ぶかどうかの判断に、直接関わるからです。

「オープンソースだから自由に使える」という理解は、半分正しく、半分間違っています。

この記事では、Odooのライセンス構造を、法律用語をできるだけ避けて説明します。

なお、この記事は構造の説明です。個別の法的な判断については、必ず弁護士にご確認ください。

目次

Odooには2つのライセンスがあります

Odoo公式のドキュメントには、明確に記載されています(2026年8月確認)。

  • Odoo Community Edition は、LGPL version 3(LGPLv3)でライセンスされている
  • Odoo Enterprise Edition は、Odoo Enterprise Edition License v1.0 でライセンスされている

つまり、同じOdooという名前でも、版によってライセンスが違います。

Community版とEnterprise版のライセンスの違いを示した比較図 Community版はLGPLv3というオープンソースライセンスで提供され、Enterprise版はOdoo Enterprise Edition License v1.0という専用ライセンスで提供され、有効なサブスクリプションがある場合にのみ使用できることを比較した図です。 同じOdooでも、版でライセンスが違う Community Edition LGPL version 3 オープンソースライセンス ソースコードが公開されている 使用・改変・再配布が可能 ライセンス費用は不要 ※条件はライセンス本文に従う Enterprise Edition Odoo Enterprise Edition License v1.0 Odoo社の専用ライセンス 有効なサブスクリプションが前提 正しいユーザー数の契約が必要 使用・改変の条件が定められている ※条件はライセンス本文に従う

Enterprise版の条件

Odoo公式のライセンス文書には、次の趣旨が記載されています。

このソフトウェアは、正しいユーザー数に対する有効なOdoo Enterpriseサブスクリプションがある場合にのみ、使用(実行・改変・改変後の実行)できる。

つまり、契約が有効な間だけ使える構造です。ここがCommunity版との決定的な違いになります。

なお公式には、Odoo S.A.との有効なパートナーシップ契約がある場合、テストまたは開発環境に限り同じ許可が与えられるという記載もあります。

オープンコアとは何か

Odooのようなモデルを オープンコア と呼びます。

中核部分はオープンソースで公開し、付加的な部分は商用ライセンスで提供する。 これがオープンコアの基本構造です。

オープンコアモデルの構造を示した図 中核となる基盤部分と主要な業務アプリはオープンソースとして公開され、その外側に有償ライセンスの追加アプリやサポート、ホスティングのサービスが提供されるという二層構造を示した図です。 オープンコアという構造 外側:Enterprise(有償ライセンス) 一部の追加アプリ/公式サポート/アップグレード支援/ホスティング 中核:Community(LGPLv3) フレームワーク(土台の仕組み) 主要な業務アプリ ソースコードは公開されている 中核が開かれているから、乗り換えの自由度が残る

経営から見た意味

この構造には、経営判断に関わる意味が2つあります。

(1) 完全な囲い込みではない

中核部分はオープンソースです。ソースコードが公開されており、データベースにも標準的な仕組みが使われています。

特定のベンダーにしか触れない状態になりにくいという点で、これは価値があります。支援先を変える判断がしやすくなります。

(2) ただし、Enterprise版は契約が前提

一方で、Enterprise限定のアプリを使っている場合、契約をやめればそれらは使えなくなります。

「オープンソースだからいつでも自由」ではありません。 どの部分に依存しているかを把握しておく必要があります。

オープンソースERP全般の考え方は オープンソースERPとは? にまとめています。

自社で開発したモジュールはどうなるか

実務でよく聞かれる点です。

Odoo公式のライセンス文書には、次の趣旨が記載されています。

このソフトウェアをもとにOdooモジュールを開発し、配布できる。 ただし、Odoo Enterprise Edition Licenseと互換性のあるライセンスであることが条件とされています。例として、LGPL、MIT、または類似のプロプライエタリライセンスが挙げられています。

つまり、独自に開発したモジュールについては、配布時のライセンスを選べる構造になっています。

ただし、注意点があります

ここは慎重に扱うべき領域です。

  • 何を「もとにした」とみなすかは、実装の仕方によって変わります
  • Community版(LGPLv3)とEnterprise版では、前提となる条件が異なります
  • 自社利用だけの場合と、外部に配布する場合でも状況が変わります

個別の判断は、必ず弁護士にご確認ください。 この記事は構造の説明にとどめます。

カスタマイズの実務的な考え方は Odooのカスタマイズはどこまでやるべきか をご覧ください。

サードパーティ製モジュールのライセンス

Odooには、第三者が開発したモジュールが多数存在します。

これらは、それぞれ独自のライセンスを持っています。 Odoo本体のライセンスとは別の話です。

導入する前に、次を確認してください。

  1. そのモジュールのライセンスは何か
  2. 商用利用に制約はないか
  3. 保守は誰が行うのか
  4. Odoo本体のバージョンアップに追随するか

4番目がとくに重要です。モジュールの作者が更新をやめたら、バージョンアップができなくなることがあります。

これは法的な問題ではなく、事業継続の問題です。

ライセンスが経営判断に関わる3つの場面

(1) 「無料」の意味を正しく理解するとき

Community版のライセンスは無料です。ただし、無料なのはライセンスだけです。

サーバ、保守、障害対応、バージョンアップ作業。これらは自社の負担になります。

詳しくは Odooをオンプレミスで運用するOdoo Community版とEnterprise版の違い をご覧ください。

(2) 契約をやめる可能性を考えるとき

Enterprise版の契約を将来やめる可能性があるなら、どの機能がEnterprise限定かを把握しておいてください。

やめた時点で使えなくなる機能に業務が依存していると、選択の自由が失われます。

(3) M&Aや事業承継を視野に入れるとき

会社を売却する、あるいは引き継ぐ場面では、使用しているソフトウェアのライセンス状況が確認の対象になります。

  • 適正なユーザー数で契約しているか
  • 使用しているモジュールのライセンスは明確か

ここが整理されていると、確認の手間が減ります。 逆に曖昧だと、論点になります。

この観点は M&A売却(EXIT)を見据えた基幹システムの整え方 でも扱っています。

よくある質問

Q1. Community版は本当に無料で商用利用できますか?

Odoo公式は、Community EditionがLGPLv3でライセンスされていると記載しています。LGPLv3はオープンソースライセンスであり、商用利用を禁じるものではありません。

ただし、ライセンス本文の条件に従う必要があります。 個別の判断は弁護士にご確認ください。

Q2. Enterprise版を契約せずに使うとどうなりますか?

Odoo公式のライセンス文書には、正しいユーザー数の有効なサブスクリプションがある場合にのみ使用できるという趣旨が記載されています。

条件を満たさない使用は、ライセンス違反にあたる可能性があります。

Q3. ユーザー数はどう数えるのですか?

契約の対象となるユーザーの定義は、Odooの契約条件に従います。契約前に、自社の利用形態でどう数えるかを確認してください。

Q4. 自社で作ったモジュールを他社に売れますか?

公式のライセンス文書には、互換性のあるライセンスで配布できるという趣旨の記載があります。

ただし、実装の内容によって条件が変わります。 販売を検討している場合は、必ず弁護士にご相談ください。

Q5. ライセンスは変わることがありますか?

過去にOdooはライセンスの方針を変更したことがあります。現在の条件は、必ず対象バージョンの公式ライセンス文書で確認してください。

本記事の記載は2026年8月時点の確認内容です。

まとめ

Odooのライセンスは、版によって異なります。

Community EditionはLGPLv3。Enterprise EditionはOdoo Enterprise Edition License v1.0。 後者は、正しいユーザー数の有効なサブスクリプションがある場合にのみ使用できる構造です。

この形を オープンコア と呼びます。中核はオープンソースで公開し、付加的な部分は商用ライセンスで提供する仕組みです。

経営から見た意味は2つあります。

中核が開かれているため、特定のベンダーにしか触れない状態になりにくい。 一方で、Enterprise限定の機能に依存していれば、契約は前提になります。

「オープンソースだから自由」でも「結局は囲い込み」でもありません。どの部分に依存しているかを把握しておくことが、実務上の要点です。

そして、サードパーティ製モジュールを使う場合は、そのライセンスと保守体制を別途確認してください。バージョンアップに追随しないモジュールは、事業継続のリスクになります。

最後にもう一度お伝えします。個別の法的な判断は、必ず弁護士にご確認ください。

もう少し詳しく知りたい方へ

ベンチャーネットは、ERP導入支援を手がける会社です。SAP・NetSuite・Odoo・AIスクラッチ開発という4つの選択肢を扱っているため、特定の製品に偏らない立場でご提案できます。

「どの機能がEnterprise限定で、契約をやめたら何が使えなくなるのか」といった整理からご相談を承っています。

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この記事を書いた人

持田 卓臣(もちだ たくおみ)
株式会社ベンチャーネット 代表取締役

ヒューレット・パッカード社でITコンサルタントとして従事した後、2005年に株式会社ベンチャーネットを設立。
Oracle NetSuite Solution Provider Partner として、中堅・中小企業向けクラウドERP「NetSuite」の導入・運用支援を提供しています。
SEO・広告・SNS・ウェブ・MA・SFAと一気通貫で培ってきたデジタルマーケティング領域の業務知見を活かし、NetSuiteを軸とした経営DXを支援しています。
著書:『普通のサラリーマンでもすごいチームと始められる レバレッジ起業「バーチャル社員」があなたを救う』(KADOKAWA、2020年)

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