NetSuiteの原価計算の方法は、7つあります。
そして、品目に保存した後は、方法を変えられません(出典:Oracle NetSuite公式ヘルプ、2026年9月確認)。
製造業の導入では、こうした「後から変えにくい設定」が、最初の設計に集まっています。
NetSuite(ネットスイート)とは、Oracle NetSuiteが提供するクラウド型のERP(基幹業務システム)です。
会計・販売・購買・在庫・生産を、1つのデータベースで管理します。
製造業から見たときの要点は3つです。
- 生産管理は、作業指示だけの軽い形から工程・製造実行まで、3つの段階から選べる
- 原価計算の方法は品目ごとに選び、保存した後は変えられない
- 生産管理のやり方が強みの会社は、製造業に特化したERPも並べて比べたほうがよい
では、導入の費用と期間は、何で決まるのか。
生産の段階や原価の設計が、どう金額に響くのか。
NetSuite認定パートナー(Solution Provider)であるベンチャーネットが支援した導入の実例に、答えがあります(第10章)。
NetSuiteの基本はNetSuiteとは?クラウドERP入門、製造業ERPの横断比較は製造業ERP15選で扱っています。
この記事で分かること
- 製造業の3つの悩みと、その共通の原因
- NetSuiteの生産・原価・在庫の機能で、何ができるか
- 自社にNetSuiteが向くか、ほかの選択肢が合うかの物差し
- 導入費用の4事例と、費用と期間を左右する4つの要因
- 設計の前に決めておく論点と、よくある失敗3つ
言葉の整理:BOM(部品表)は、製品を作るのに要る部品・材料と数量の一覧です。MRP(資材所要量計画)は、需要とBOMから、要る部材とその時期を計算する仕組みを指します。
製造業の経営者がよく抱える3つの悩み
部門ごとに数字が違う
「営業の売上と、経理の売上が合わない」
「製造の在庫数と、販売が見ている在庫数がずれている」
原因の多くは、部門ごとに別のシステムやExcelで管理していることです。
会議のたびに、数字のすり合わせから始めることになります。
在庫が正確につかめない
製造業の在庫は、原材料・仕掛品・完成品の3層に分かれます。
そこに複数の倉庫や拠点が加わるため、手作業では実態とずれが生まれます。
過剰な在庫は資金を寝かせ、欠品は売る機会を逃す。
この二つが同時に起きるのが、在庫が見えない会社の特徴です。
売上は伸びているのに、利益が見えにくい
原因の多くは、原価を製品別・案件別に正しくつかめていないことです。
間接費の配賦が合っていないと、「実はこの製品は赤字だった」と後から分かります。
配賦(はいふ)は、まとめてかかった費用を、決めた基準で製品や部門に割り振ることです。
考え方は配賦とはで扱っています。
3つの悩みに共通する原因は、情報が分かれていることです。
| 悩み | NetSuiteで見るもの | 導入前の決めごと |
|---|---|---|
| 部門ごとに数字が違う | 受注から会計までを1つのデータで記録する | どの数字を「正」とするかを、部門の間で決めてあるか |
| 在庫が正確につかめない | 原材料・仕掛品・完成品を、拠点ごとに同じ仕組みで記録する | 入出庫の記録を、誰がいつ入れるかを決めてあるか |
| 利益が見えにくい | 品目ごとの原価計算と、製品別・部門別の収益 | 間接費をどの基準で配るかを決めてあるか |
どの悩みも、システムを入れるだけでは解けません。
右の列の「決めごと」がないと、データが1つになっても数字は合いません。
悩み・原因・決めごとのつながりを図にすると、次のとおりです。
NetSuiteとは|製造業から見た特徴
NetSuiteは、世界220地域・44,000社以上で使われているクラウドERPです(出典:Oracle NetSuite公式サイト、2026年9月時点)。
190通貨・27言語に対応しています。
Oracle NetSuiteは、自社の製品を「#1 AI Cloud ERP」と掲げています。
AI Connector Serviceを使うと、ClaudeやChatGPTなどの外部のAIとNetSuiteをつなげられます。
(出典:Oracle NetSuite公式サイト、2026年9月確認)
製造業に「統合型」が効く理由
営業が受注を入れると、その情報が生産・購買・会計にそのままつながります。
現場の管理と経営の数字が、同じデータでつながる。ここが統合型の価値です。
拠点や事業が増えていく製造業ほど、この効果は大きくなります。
クラウドとオンプレミスの違い
オンプレミスは、自社でサーバーを持ってシステムを動かす形です。
| 観点 | クラウドERP(NetSuiteなど) | オンプレミスERP |
|---|---|---|
| 初期投資 | サーバーは不要。月額の費用で平準化 | サーバーとライセンスの費用がかかる |
| 更新 | NetSuiteは年2回、通常は春と秋に更新 | 自社で更新の作業と費用を見込む |
| 作り込みの扱い | 更新時もカスタマイズは新版へ引き継がれる | 作り込みが多いと更新が重くなる |
| 海外展開 | 多通貨・多言語が標準 | 国ごとに追加の開発が要ることがある |
NetSuiteの更新の頻度と、カスタマイズの引き継ぎは、Oracle NetSuite公式のFAQにもとづきます(2026年9月確認)。
ただし、引き継がれても動作の確認は要ります。
進め方はNetSuiteのバージョンアップへの備え方で扱っています。
先に知っておきたい弱いところ
NetSuiteは世界標準で作られた製品です。
そのため、日本の製造業では次の点に工夫が要ることがあります。
- 日本独自の帳票や、取引先ごとの締めの請求は、設定や開発で合わせる
- 一部の画面やヘルプ、新しい機能の情報は、英語で読むことがある
- 機能が多い分、慣れるまでに時間がかかる
どれも、事前に知っていれば備えられます。
詳しくはNetSuiteでできないことは?で扱っています。
生産管理でできること|3つの段階から選ぶ
NetSuiteの生産管理は、1つの形ではありません。
Oracle NetSuiteは、製造の複雑さに応じて3つの段階を案内しています(出典:Oracle NetSuite公式サイト、2026年9月確認)。
| 段階 | できること(公式の説明の要約) | 向く製造業 |
|---|---|---|
| 作業指示と組立(Work Orders & Assemblies) | 組立品目を定め、作業指示を少ない手間で作る。仕掛品や労務の個別の追跡はしない | 軽い組立が中心 |
| 仕掛品と工程(WIP & Routings) | 作業場所の設定、労務費の追跡、能力を無限と見た日程計画、ガントチャート | 工程が複数あり、労務も見たい |
| 高度製造(Advanced Manufacturing) | 能力の上限を考えた日程計画、バッチ管理、製造実行まで | 工程が複雑、現場の実行まで管理したい |
最初から一番上の段階を選ぶ必要はありません。
今の製造の複雑さに合う段階から始め、事業に合わせて上げていきます。
段階が上がるほど、工程ごとの実績がそろい、遅れや原価のずれをAIで点検しやすくもなります。
その分、現場の入力の手間は増えます。
高度製造の詳細は、NetSuite Advanced Manufacturingとはで扱っています。
BOM・工程・MRP
- BOM:製品を構成する部品・材料の階層を登録する
- 工程(ルーティング):製造の順番、作業時間、使う設備を定める
- MRP:需要とBOMから、要る原材料・部品・半製品と、その時期を出す
Oracle NetSuiteは、MRPで次のことができると説明しています(出典:Oracle NetSuite公式サイト、2026年9月確認)。
- 拠点をまたいで、品目の需要と供給のつながりをたどる
- 手元の在庫と、入る予定の在庫(作業指示・移動・発注)を割り当てる
- 仮の計画を複数作り、変化が在庫や納期にどう響くかを試す
BOMの考え方はBOM(部品表)とは、MRPの詳細はNetSuiteのSupply Planning(MRP)とはで扱っています。
生産の形態への対応
生産の形態は、会社によって違います。
- 受注生産:注文を受けてから作る
- 見込生産:需要の予測にもとづいて先に作り、在庫で持つ
- 繰返生産:同じ製品を続けて作る
- 多品種少量生産:種類が多く、1種類あたりの量が少ない
NetSuiteでは、BOM・作業指示・MRPを組み合わせて生産を管理します。
自社の形態で例外の処理まで回るかは、デモで自社の製品を使って見てください。
検査や不適合の管理が要る場合は、NetSuite Quality Managementもあわせて読んでおきます。
業種別の初期設定(SuiteSuccess)
SuiteSuccess(スイートサクセス)は、業種ごとの標準の型を使って導入を進める、Oracle NetSuiteの手法です。
日本の公式サイトでは、製造業向けのManufacturing Editionが案内されています。
事前の構成には、ベストプラクティスと実績のあるワークフローが含まれます。
業務ロールごとのダッシュボード・KPI・レポートも用意されています。
(出典:Oracle NetSuite公式サイト、2026年9月確認)
ゼロから設計しない分、導入の期間を短くしやすくなります。
原価管理でできること
製造業にとって、原価管理は利益を左右するテーマです。
原価計算の方法は7つ
Oracle NetSuiteのヘルプでは、在庫の原価計算の方法として次の7つが挙げられています。
(出典:Oracle NetSuite公式ヘルプ、2026年9月確認)
| 方法 | 考え方 | 向く品目の例 |
|---|---|---|
| 平均(Average) | 入るたびに平均の単価を計算し直す。既定の方法 | 単価の変動が小さい汎用の部材 |
| 先入先出(FIFO) | 先に入ったものから出たと考える | 仕入の時期で単価が変わる品目 |
| 後入先出(LIFO) | 後に入ったものから出たと考える | 会計方針で採用している場合 |
| グループ平均 | 複数の拠点をまとめて1つの平均を持つ | 拠点間で同じ品目を動かす場合 |
| 個別(Specific) | シリアル番号ごとの実際の原価を使う | 高額な機器 |
| ロット(Lot Numbered) | ロット番号ごとに原価を追う | ロットで管理する材料 |
| 標準(Standard) | 標準の原価を決め、実際との差異を追う | 量産品、原価改善を回したい製品 |
ヘルプには、品目に保存した後は方法を変えられないとも書かれています。
どの方法を使うかは、会計の方針とも関わります。
顧問の会計士・税理士と相談し、品目を登録する前に決めてください。
標準原価と差異の分析
標準原価では、あらかじめ決めた原価と、実際にかかった原価の差を追えます。
差の出た工程や要素を見て、改善につなげる使い方です。
たとえば、次のような場合です(数字は説明のための架空の例です)。
- 製品Aの標準原価を1個1,000円と決めた
- 今月の実際の原価は、1個1,080円だった
- 差の80円のうち、材料の値上がりが50円、作業時間の超過が30円だった
要素ごとに分けて見られれば、「仕入の交渉」と「工程の見直し」のどちらに手を打つかが決まります。
標準原価の見直しの時期も、あらかじめ決めておきます。
個別原価計算と総合原価計算
- 個別原価計算:製品や案件ごとに原価を集める。受注生産・多品種少量に向く
- 総合原価計算:一定期間の製造原価を生産量で割る。量産に向く
どちらの考え方をどう組むかは、製品のラインや事業ごとの設計になります。
詳しくは個別原価計算と総合原価計算の違いと、NetSuiteで実現する全体最適な原価管理で扱っています。
在庫管理でできること
ロット・シリアル・有効期限
- ロット管理:製造のロット単位で在庫を追う。品質問題が起きたときの追跡に役立つ
- シリアル管理:1個ずつ在庫を追う。高額な機器や特殊な部品に向く
- 有効期限の管理:使用期限のある原材料を管理する
設定と実務はNetSuiteのロット管理・シリアル番号管理で扱っています。
複数の倉庫・拠点をまとめて見る
複数の工場・倉庫・販売拠点の在庫を、1つのデータで見られます。
拠点の間の在庫の移動も記録でき、海外の拠点も同じ仕組みで扱えます。
子会社ごとの管理と連結は、NetSuiteのグローバル展開機能で扱っています。
再発注点による自動の補充
品目ごとに、再発注点や発注の単位を決めておきます。
在庫が再発注点を下回ると、補充の手配を出せる仕組みです。
運用は、NetSuiteの在庫管理でできることで扱っています。
判断の物差し|向いている製造業、向いていない製造業
製品の良し悪しではなく、合う条件で考えます。
分かれ目になる問いを図にすると、次のとおりです。
NetSuiteが向いている製造業
- 拠点・子会社・海外の工場が増えていく
- 会計・販売・在庫・生産の数字を、1つにそろえたい
- 専任の情シスを置けず、サーバーの管理から離れたい
- 生産の管理は標準の形で足り、差別化は製品や営業にある
慎重に比べたほうがよい製造業
- 生産管理のやり方そのものが、競争力の源泉になっている
- 工程が非常に複雑で、日本の製造現場の細かな管理を最優先したい
- 単一の工場・国内取引だけで、今のシステムで安定している
NetSuite以外が合う場合
| 選択肢 | 合う条件 | 気をつける点 |
|---|---|---|
| 国産の製造業向けERP | 日本の製造現場の管理を深く作り込みたい | 作り込みが増えると更新の負担が増える |
| Odoo | 小さく始め、アプリを足しながら広げたい | 日本の会計・税の対応は設計で補う |
| AIスクラッチ開発 | 特定の業務だけを、自社の形で素早く作りたい | 会計・監査の要件まで作ると重くなる。保守は自社の責任 |
| いまは入れない | 課題がExcelの整理や業務の見直しで解ける | 拠点が増える前に見直しの時期を決める |
どれが優れているかではなく、それぞれに長所があります。
詳しい比較は、次の記事で扱っています。
- 国産の製造業向けERP:mcframe・FutureStage・InfiniOneとNetSuiteの比較
- Odoo:NetSuiteとOdooの在庫・購買・製造
- AIでの開発:AIでスクラッチ開発とERP、どちらを選ぶべきか
Excelで足りる段階、ERPが要る段階
| 見る点 | Excelと既存のシステムで足りる段階 | ERPを検討する段階 |
|---|---|---|
| 拠点 | 工場と倉庫が1か所ずつ | 工場・倉庫・子会社が増えていく |
| 月次の締め | 締めの作業が数日で終わる | 転記と突合で締めが遅れる |
| 原価 | 主要な製品の原価を手で追える | 製品別の原価が、決算まで分からない |
| 在庫 | 棚卸しの差が小さい | 棚卸しのたびに大きな差が出る |
| 人 | 担当者が替わっても回る | 特定の人しか数字を出せない |
右の列に当てはまる項目が増えてきたら、ERPを検討する時期です。
左の列に収まるうちは、「いまは入れない」判断も合理的です。
これから選ぶ製造業と、いま見直す製造業
これからERPを選ぶ製造業
最初に決めるのは、製品ではなく何を1つにしたいかです。
- 3つの悩み(数字・在庫・利益)のうち、一番痛いものを決める
- 生産の管理が、第3章の3段階のどこで足りるかを見る
- 原価計算の方法を、品目の種類ごとに仮に決める(第4章)
- 自社の製品と受注のデータで、デモを見る
経営者の目線での論点は、製造業の経営者がNetSuiteで解決できる課題でも扱っています。
いまのシステムを見直す製造業
国産の生産管理や会計を長く使ってきた会社は、次の順で見ます。
- 保守の期限と更新の費用:いまのシステムを、いつまで保守してもらえるか
- 作り込みの仕分け:追加で開発した機能を「強み」と「慣習」に分ける
- つなぎ方の選択:全部を替えるか、会計と販売から替え、生産は当面つなぐか
保守の期限が近いと、比べる時間がないまま同じ形の更新を選びがちです。
期限の2〜3年前から、更新と乗り換えの両方の見積もりを並べておくと、判断に余裕が生まれます。
データの移行は、基幹システムのデータ移行ガイドをご覧ください。
すでにNetSuiteを使っていて、使いこなせていない会社もあります。
その場合は、製品を替える前に、設定と運用の見直しで解けるかを見ます。
たとえば、工程の実績を追わない設定のまま、工程別の原価を求めているケースです。
パートナーの支援が合わなければ、パートナーを替える道もあります。
考え方は基幹システムは「更新」か「乗り換え」かで扱っています。
よくある失敗3つ
失敗1:目的があいまいなまま進める
起きること:ベンダーの提案をそのまま受け入れ、使わない機能にお金をかける。
原因:「業務効率化」「DX推進」といった言葉だけで始め、生産・原価・在庫のどこを優先するかが決まっていない。
避け方:「月次決算を5営業日早める」「原価の差異を製品別に見る」のように、測れる目標を最初に決めます。
目標が決まると、生産の段階や原価計算の方法の選び方も決まってきます。
失敗2:今のやり方をそのまま移し、作り込みが膨らむ
起きること:新しいシステムが前より複雑になり、更新のたびに確認の負担が増える。
原因:工場ごとの例外の処理や、理由の分からない手順まで、すべて再現しようとした。BOM・工程・MRPのまわりで特に起きやすい。
避け方:第9章の型1「見える化→整理整頓→Fit&Gap」の順で進めます。
いまの業務の流れを描き、やめる・まとめる・そろえる業務を決めてから、標準機能と照らし合わせる。
合わない業務は、型2の「標準に合わせる/開発する/残す」のどれかに決めます。
「うちは特殊だから」という声が出たら、何が特殊なのかを一度書き出してみてください。
開発の考え方はNetSuiteのカスタマイズ完全ガイドで扱っています。
失敗3:稼働後の運用を決めずに始める
起きること:システムは動いているのに、現場がExcelに戻り、データが経営に生かされない。
製造業では、生産の現場の運用が止まると、製造そのものに響きます。
原因:「誰が保守するか」「誰が改善を提案するか」を決めずに稼働した。導入と運用の支援が別の会社に分かれていることもある。
避け方:導入の計画と同じ時期に、稼働後の体制を決めます。
社内の担当者は1人に集中させず、少なくとも2人で知識を持つようにします。
稼働後の数か月は、使われていない画面や、Excelに戻った業務がないかを点検します。
伴走型の支援の考え方は伴走型のNetSuite導入支援とはで扱っています。
ベンチャーネットならこう見る
ベンチャーネットは、NetSuite・Odoo・AIスクラッチ開発を扱い、SAPからのリプレイスにも対応しています。
製造業のご相談で使うのは、次の2つの型です。
型1:見える化→整理整頓→Fit&Gap
製品が決まっていても、まず受注から出荷・請求・原価の集計までの流れを、現場に聞いて描きます。
次に、やめる・まとめる・そろえる業務を決めます。
残った業務だけを、NetSuiteの標準機能と照らし合わせます(Fit&Gap)。
例外の処理の多くは、2段目で「やめる」か「そろえる」に落ちます。
型2:標準に合わせる/開発する/残す
Fit&Gapで合わなかった業務は、3つのどれかに決めます。
- 標準に合わせる:業務のほうを、NetSuiteの標準に寄せる
- 開発する:追加の開発や、外部システムとの連携で補う
- 残す:いまの生産管理システムなどに残し、NetSuiteとつなぐ
製造業では、工程の細かな管理を「残す」選択がよく出ます。
「開発する」を選ぶほど、導入費用と更新の負担が増えます。第10章の事例1が、その典型です。
ベンチャーネットの仕事は、ゼロからの導入より、他社のあとの引き継ぎ・立て直しと、他システムとの連携が多くを占めます。
「残す」を選んだ仕組みとNetSuiteをつなぐ設計も、同じチームで受け持ちます。
最初の打ち合わせで伺うのは、次の3つです。
- 強みの源泉は、製品・営業・生産管理のどれか
- 生産の段階はどこで足りるか(作業指示だけか、工程と労務まで見るか)
- 稼働後に、社内の誰が回すか
1つ目の答えが「生産管理のやり方そのもの」なら、製造業に特化したERPを先に見ることをお勧めすることもあります。
合わないときは、合わないとお伝えします。
パートナーを選ぶときの2つの視点
1つめは支援の形です。
パートナーに丸投げすると、業務の理解が浅いまま設定が進み、稼働後に「現場に合わない」となりやすい。
業務が複雑な製造業ほど、会社とパートナーが一緒に業務を整理し、定着まで進める伴走型が合います。
2つめは導入と運用を分けずに支えられるかです。
導入だけの契約だと、稼働後の相談に「範囲外です」と返されることがあります。
基幹システムが止まれば、生産そのものに響きます。
契約の前に、稼働後に誰がどこまで支えるかを聞いてください。
選び方はNetSuiteパートナーの選び方でも扱っています。
導入の進め方と費用・期間
導入の流れ
- ヒアリング:いまの業務の流れ、課題、目標を整理する
- 要件の整理と設計:あるべき業務の流れを決め、NetSuiteでの実現方法を決める
- 初期設定とデータ移行:マスタの設定、データの移行、帳票の調整
- テスト:現場の担当者と、受入のテストをする
- 稼働:本番の運用を始める
- 運用の支援:稼働後の改善、追加の設定、教育
流れの詳細はNetSuite導入の流れで扱っています。
費用と期間|導入費用の4事例
NetSuiteのライセンスは、ミニマム構成で月額20万円〜が出発点です。
使うモジュール・ユーザー数・オプションで変わり、数百万円規模になることもあります。
導入の費用と期間は、ライセンスより大きく開きます。
ベンチャーネットが支援したNetSuite導入の費用を並べます。
| 事例1 | 事例2 | 事例3 | 事例4 | |
|---|---|---|---|---|
| ユーザー数 | 100名程度 | 30名程度 | 20名程度 | 3名程度 |
| 機能範囲 | 購買・販売・在庫・会計 | 購買・販売・プロジェクト管理 | 購買・販売・在庫・会計 | 購買・販売 |
| 外部システム連携開発 | あり(他社SaaS・顧客独自システム) | あり(助言・QAのみ、開発は顧客側) | なし | なし |
| アドオン開発 | あり | あり | あり | なし |
| 期間 | 1.5年 | 1年 | 2年 | 1.5か月 |
| 顧客側体制 | 情シスあり | 情シス・開発会社あり | 情シスなし | 情シスなし |
| 導入費用 | 2億円程度(うち開発約7割) | 2,000万円程度 | 3,000万円程度 | 150万円程度 |
製造業に近いのは、購買・販売・在庫・会計を入れた事例1と事例3です。
事例1の2億円程度は、約7割が開発でした。他社のSaaSや顧客独自のシステムとの連携が、金額を押し上げています。
事例3は20名程度でも、情シスがいないためサポートを厚くし、期間は2年と最も長くなりました。
差を生む要因は、次の4つです。
- 機能範囲:購買・販売だけか、在庫・会計や生産まで入れるか
- 開発:とくに外部システムとの連携。第9章の型2で「開発する」を選ぶほど重くなる
- 社内の体制:情シスが少ないとサポートを厚くするため、期間も延びやすい
- ユーザー数:受入テストと教育の工数が増え、社内の調整で長くなりがち
見積もりの読み方は、NetSuiteの料金・費用で扱っています。
ライセンスの最終的な金額は、Oracleの営業が提示します。
ベンチャーネットは、その前の構成の整理と、導入から保守までを担います。
中堅・中小の製造業では、デジタル化・AI導入補助金(旧 IT導入補助金)も検討できます。
対象や条件は、公募の要領で読んでください。
進め方はデジタル化・AI導入補助金の活用で扱っています。
設計の前に決めておく論点
製造業の導入では、後から変えにくい設定がいくつかあります。
冒頭の原価計算の方法も、その一つです。
| 論点 | 決めること | 後から変えにくい理由 |
|---|---|---|
| 原価計算の方法 | 品目の種類ごとに、7つの方法のどれを使うか | 品目に保存した後は変えられない(第4章) |
| ロット・シリアル | どの品目をロットで、どれを1個ずつ追うか | 入出庫の記録の仕方がすべて変わる |
| 拠点の単位 | 工場・倉庫・棚を、どの細かさで分けるか | 在庫と原価の集計の単位になる |
| BOMの階層 | 半製品を品目として持つか、工程の中で扱うか | 作業指示と原価の積み上げが変わる |
| 生産の段階 | 作業指示だけか、工程と労務まで追うか(第3章) | 現場の入力の手間と、見える原価が変わる |
正解は会社ごとに違います。
現場の入力の手間と、経営が見たい数字の細かさの釣り合いで決めます。
今日できること|1つの製品で「数字の流れ」を書き出す
主力の製品を1つ選び、次の表を埋めてみてください。
| 工程 | 使っているシステム・Excel | 入力する人 | 月末に合わない数字 |
|---|---|---|---|
| (例)受注 | 販売管理システム | 営業事務 | 売上の月の区切り |
受注・生産指示・材料の購買・入庫・出荷・請求・原価の集計の順に書きます。
システムが切り替わる所と、手で転記している所が、情報が分かれている場所です。
この表が、そのまま型1の「見える化」の下書きになります。
あわせて、その製品の原価を、今どの方法で計算しているかも書き添えます。
第4章の7つのどれに近いかが分かると、相談の場で話が早くなります。
第6章の「Excelで足りる段階、ERPが要る段階」の表にも、自社を当てはめてみてください。
よくある質問
Q1. NetSuiteは多品種少量生産の製造業でも使えますか
使えます。
製品ごとにBOMと工程を登録し、受注に応じて作業指示と原価の集計を回します。
例外の処理まで回るかは、自社の製品のデータでデモを見てください。
Q2. 導入にはどのくらいの期間と費用がかかりますか
支援した事例では1.5か月・150万円程度から1.5年・2億円程度まで開きがあります。
ベンチャーネットが支援したNetSuite導入の例です。
製造業に近い購買・販売・在庫・会計の事例は、20名程度で2年・3,000万円程度、100名程度で1.5年・2億円程度でした(第10章)。
ライセンスはミニマム構成で月額20万円〜が出発点です。
Q3. 社内に情シスがいなくても導入できますか
できます。
技術の作業はパートナーが担い、社内の担当者は業務の実態を伝えることに集中します。
ただし情シスが少ないと、サポートを厚くする分、期間は延びやすくなります(第10章の事例3)。
Q4. 原価計算の方法は、後から変えられますか
品目に保存した後は変えられません。
Oracle NetSuiteのヘルプに、その旨が書かれています(第4章)。
品目を登録する前に、会計の方針と合わせて決めてください。
Q5. 今の国産の生産管理システムから替える価値はありますか
拠点が増える製造業には価値が出やすいです。
海外展開を考える製造業も同じです。
一方、単一の拠点・国内取引だけで安定しているなら、続ける判断も合理的です。
生産管理を残してNetSuiteとつなぐ道もあります(第7章・第9章)。
Q6. NetSuiteとSAPは、製造業から見て何が違いますか
得意な規模と用途が違います。
SAPは大企業・グローバル製造業の複雑な業務を広く深く扱う点に強みがあります。
NetSuiteは、中堅・中小企業がクラウドで会社全体を1つにする用途に向きます。
Q7. 製造業でNetSuiteとAIをどう組み合わせられますか
まずデータを1か所にそろえることが前提です。
そのうえで、AI Connector Serviceを使うと、ClaudeやChatGPTなどからNetSuiteのデータを扱えます(第2章)。
工程の実績がそろうほど、遅れや原価のずれの点検にAIを使いやすくなります。
まとめ
- 製造業の3つの悩み(数字・在庫・利益)の共通の原因は、情報が分かれていること
- NetSuiteの生産管理は、作業指示・仕掛品と工程・高度製造の3段階から選べる
- 原価計算の方法は7つ。品目に保存した後は変えられないため、最初に決める
- 導入費用は、機能範囲・開発・社内の体制・ユーザー数で、150万円程度から2億円程度まで開く
- 生産管理のやり方そのものが強みなら、製造業に特化したERPも並べて比べる
費用を押し上げるのも、後から変えにくいのも、最初の設計です。
まずは第11章の表で、主力製品1つの数字の流れを書き出してください。
もう少し詳しく知りたい方へ
生産・原価・在庫のどこから1つにするか、どの段階の生産管理が合うか。
その判断の段階から、製造業の経営者のご相談をお受けしています。
- 製造業のクラウドERP導入を具体的に考えたい方:SaaS型クラウドERP – NetSuite導入支援
- 実際の画面で、自社の製品の流れを確かめたい方:NetSuite無料デモのお申込み
- NetSuite以外も含めて、自社に合う選択肢を整理したい方:お問い合わせ

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