このブログの記事は、AIエージェントが下書きを書き、人が素材と品質を管理する形で作っています。守っているルールは3つ。記憶で書かせないこと、工程を分けて途中で止めること、そして最後の判断を人に残すことです。
いま読んでいただいているこの記事も、同じ工程を通っています。この記事では、その中身をそのまま開きます。
これはVN-Lab——ベンチャーネットが自社で試していることを、うまくいっていない部分も含めて公開するシリーズの1本です。
AIで書いた記事が、読まれない理由
生成AIで記事を書く会社は増えました。同時に、「AIで書いた文章は読む気がしない」という声も増えています。
読まれない記事には、だいたい共通する特徴があります。
中身が薄い。最初から最後まで一般論で、一歩踏み込んだところが出てこない。読み終えても、何も持ち帰るものがない。
構成が緩い。一段落ずつ読むとおかしくないのに、全体を眺めると同じことを別の言い方で繰り返している。分量はあるのに、中身が増えていない。
文体に癖がある。同じ形の強調が続く、記号の使い方が独特、見出しが細かく刻まれすぎている。読み手は理由を言葉にできなくても、違和感だけは受け取ります。
ここで見誤りやすいのは、原因をAIの能力に求めてしまうことです。実際の原因は、渡している素材と、通している工程のほうにあります。
ベンチャーネットの3つのルール
このブログでは、3つのルールを守っています。
図:素材・工程・判断の3つ。どれか1つを外すと、品質は保てない。
順に開いていきます。
ルール1:記憶で書かせない
いちばん効いているのが、これです。
AIに「〇〇について書いて」とだけ頼むと、それらしい文章が出てきます。読める日本語で、構成も整っている。ただ、中身は世の中の平均的な言説の合成です。どこかで読んだような話にしかなりません。
これを防ぐのは、指示の工夫ではありません。素材を渡すことです。
図:素材を渡さなければ一般論しか出てこない。差は素材の側にある。
具体的には、記事ごとに次のことを決めています。
- 必ず実際に読んでから書く。要約の記憶や「たしかこう書いてあったはず」で書かない。保管してある元の文書を開いて読む
- 数字と年号は、その場で一次情報を確認する。別の記事に載っていた数字をそのまま持ってくることはしない。出典は本文に書く
- 他社や講師の素材は、考え方だけを取る。言い回しや資料の構成をそのまま使うことはしません。自分たちの言葉に置き換えられないなら、その素材は使わない
- 顧客の名前や案件の中身は使わない。書けるのは自社の実践と、一般化した構造だけです
最後の2つは制約に見えますが、実際には書き手を鍛えます。そのまま引けないから、理解しないと書けないからです。
ルール2:工程を分けて、止める
一度に全部を書かせると、緩くなります。だから工程を分け、節目ごとに止めます。
図:企画・骨子で一度止め、仕上げでもう一度止める。承認は一言でよい。
ポイントは3つあります。
止まる場所を、先に決めておくこと。毎回どこで確認するかを考えていると、確認が抜けます。企画と骨子、そして最後。この3か所で必ず止まる、と決めています。
承認は短くてよいこと。「OK」「推奨で」の一言で進みます。判断する場所が決まっていれば、判断そのものに時間はかかりません。時間がかかるのは、どこで判断すべきか分からないときです。
構造を直してから、表面を磨くこと。順番が逆になると、言い回しを整えた後で構成を変えることになり、磨いた分が無駄になります。論理の見直しが先、語彙や語尾の調整は後です。
そして、記事ごとの記録を一つの台帳に残しています。何を狙った記事か、どの記事と役割を分けたか、次回への申し送りは何か。行を消さずに追記だけしていく形にしているので、過去の判断をあとからたどれます。
ルール3:人が決めていること
任せていないことを、はっきりさせておきます。
何を書くか。どのテーマを、いま書くのか。これは事業の判断です。検索されているからという理由だけでは決めません。
既存の記事とどう役割を分けるか。似たテーマの記事がすでにあるとき、書き足すのか、別の角度にするのか、そもそも書かないのか。この線引きは、サイト全体を見ないと決められません。
どこまで断定するか。AIは断定した文を書きがちです。「壊れます」と書かれた箇所を「壊れることがあります」に直す。この判断は事実確認とセットで、人が行います。
公開してよい数字かどうか。自社の実績値や顧客に関わることは、書けるかどうかを人が決めます。
つまりAIがやっているのは、下書きと点検です。何を書き、どこまで言い切り、公開するかを決めるのは人の側にあります。AIは道具であって、書いたことの責任を引き受けてはくれません。
この線引きは、記事だけの話ではありません。経理でも、営業でも、AIに仕事を任せるときには同じ問いが出てきます。どこまでの精度なら任せてよいか。間違えたとき、誰がどう気づくか。使い始める前にこれを決めておかないと、現場は「なんとなく信用できない」と感じて使わなくなります。
この形にして、何が変わったか
工程を分けて止める形にすると、日々の作業が具体的に変わります。
書き直しの回数が減ります。本文を全部書いてから「そもそもテーマが違った」と気づくと、丸ごとやり直しになります。骨子の段階で止めておけば、直すのは見出しの並びだけで済みます。手戻りの単位が小さくなる、と言い換えてもいいと思います。
「書けない記事」が早く分かります。素材を先に集める順序にしていると、企画の段階で「この記事は素材がない」と判明します。書き始めてから気づくのと、書く前に気づくのとでは、失うものが違います。そして素材がないと分かったときには、書くのをやめるか、素材を取りに行くかを選べます。
記事同士の重複が減ります。企画のときに「既存のどの記事と役割を分けるか」を決めるので、似た記事が並ぶことを防げます。これは記事が増えるほど効いてきます。10本のときは覚えていられますが、100本を超えると人の記憶では追えません。
書き手が代わっても、同じ品質で出せます。止まる場所とチェックの項目が決まっていれば、その工程を通ったものは一定の水準に収まります。属人的な勘に頼らずに済むわけです。
どれも派手な変化ではありません。ただ、続けられるかどうかは、この地味さで決まります。
やってみて分かったこと
いくつか、事前には想像していなかったことがあります。
分量より、角度のほうが崩れやすい。同じ書き手(この場合はAI)が続けて記事を書くと、締め方や例の出し方が似通ってきます。1本ずつ読むと問題ないのに、並べると同じ調子になる。だから記事ごとに「前回と違う角度で」と明示的に指示しています。
禁止している言葉は、本文より図に紛れる。本文はチェックしても、図の中の文字は見落とします。チェックの対象を本文だけにしないことが要ります。
いちばん効いたのは、一気に書かせないことでした。技術的な工夫より、工程を分けて止めることのほうが品質に効きます。地味ですが、これが結論です。
素材を読ませる手間は、思ったより大きい。「素材を渡す」と一言で言いますが、実際には保管場所を探し、開き、関係する箇所を見つける作業があります。ここを省略したくなる誘惑は常にあります。省略すると一般論に戻るので、省略しない、と決めるしかありません。
そして、うまくいっていないこともあります。過去記事との重複チェックは、まだ人が既存記事を読み直して判断しています。記事が増えるほど負荷が上がる部分なので、ここは今後の課題です。
よくある質問
Q. AIが書いていることを公開して、評価が下がりませんか?
A. その懸念は分かります。ただ、隠して書いても、読む人には伝わります。それより、どう品質を保っているかを開いたほうが、判断の材料になると考えています。
Q. プロンプトのコツを教えてもらえますか?
A. コツはあるのですが、効果としては素材と工程のほうがはるかに大きいところです。同じ指示でも、渡す素材が違えば出てくるものは変わります。
Q. どのAIを使っていますか?
A. 記事の下書きにはClaudeを使っています。ただ、この分野は入れ替わりが速いので、道具の名前より、素材と工程の設計のほうが長持ちします。
Q. 誰かがチェックしないと使えないなら、楽になっていないのでは?
A. チェックは必要ですが、ゼロから書くのとは負荷が違います。それに、止める場所を決めておけば、チェックは一言で済みます。
Q. 事実の間違いは、どう防いでいますか?
A. 数字と年号は、書くときに一次情報を確認して出典を本文に書きます。確認できないものは書かない、という順序にしています。
Q. 同じやり方を、うちでもできますか?
A. 工程は写せます。ただ、渡す素材がなければ空回りします。次の章で、そこに触れます。
Q. 記事を量産するために使っていますか?
A. 量を目的にはしていません。目的は、書ける本数を増やすことより、書いたものが読まれる状態を保つことです。
まとめ:型は写せるが、素材は写せない
このブログは、AIエージェントが下書きを書き、人が素材と品質を管理して作っています。ルールは3つ。記憶で書かせない。工程を分けて止める。判断を人に残す。
ここまで書いてきた工程は、そのまま真似していただいて構いません。むしろ、真似できるように書きました。
ただ、写しても同じにはならない部分があります。渡す素材です。
現場で何が起きているか、過去にどう判断したか、自社の言葉が何を指しているか。これらが社内のどこかに残っていれば、AIは自社の文脈で書けます。残っていなければ、どれだけ工程を整えても、出てくるのは一般論です。
そして厄介なことに、素材は社内にいると見つけにくい。当たり前すぎて、誰も「これが素材だ」と思っていないからです。議事録も、日報も、失敗したときのやり取りも、外から見れば十分な素材です。
ベンチャーネットは、中小・中堅企業向けにFDE型の伴走支援を行う会社です。数字の基盤(NetSuiteまたはOdoo)と言葉の基盤(Notion)の上でAIを動かし、業務と経営を組み替える。これをAX(AIトランスフォーメーション=AIを前提に業務と経営を組み替えること)と呼んでいます。このブログの作り方は、その考え方を自社の発信に当てはめたものです。
「AIで発信を効率化したいが、中身が薄くなる」という段階でしたら、工程の話より先に、御社の素材がどこにあるかを一緒に探すところから始められます。売り込みではなく、まず壁打ちから。
次に読むなら
「素材をどう貯めるのか知りたい」
→ ベンチャーネットは、自社の会議をどうNotionに貯めているか
「貯め始める手順を知りたい」
→ 経験情報は、Notionから貯め始める——AI時代の経営基盤づくり、最初の一歩
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→ コンテキストエンジニアリングとは?AIに”自社の文脈”を渡して成果を出す
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→ 数字の基盤と言葉の基盤——NetSuite・Odoo×Notion×AIの設計図
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→ AIに知識を奪われる側か、複利で積み上げる側か——自社の「学習ループ」を経営のIPにする


