人員計画にバーチャル社員の列を足す——AIファーストの採用計画の作り方

期初に、人員計画表を作ります。縦に部署、横に人数。営業部は今期プラス1、製造はプラス2、管理はプラス1。各部門長から上がってきた希望を並べると、合計で4人の増員になっています。

去年も、同じ表を作りました。去年も4人でした。採れたのは2人で、それでも忙しさは変わっていません。

この表には、増員以外の答えがありません。答えを増やすには、表に列を足します。「人」の隣に、「成果型パートナー」と「AI社員」の列を足す。それだけで、増員の議論が、仕事の分解の議論に変わります。では、その表はどう作ればよいのでしょうか。

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6割の会社が足りず、小さい会社ほど1人が重い

日本商工会議所と東京商工会議所が2026年9月、「多様な人材の活躍等に関する調査」を発表しました(回答2,654社、調査期間2026年7〜8月)。人手が「不足している」と答えた企業は、60.0%でした(確認日2026-09-22)。不足している企業のうち、事業運営に深刻な影響が出ているのは48.2%です。

規模別に見ると、数字の形が変わります。従業員20人以下の企業では、不足していると答えた割合は49.1%と全体より低い。ところが、不足している企業のうち深刻だと答えた割合は54.9%で、全体より高くなっています。

小さい会社ほど、不足の人数は少ない。けれど、1人の欠員が重い。だから「あと1人」の希望が、切実な形で上がってきます。そして採用は簡単ではありません。厚生労働省の2026年7月の一般職業紹介状況では、正社員の有効求人倍率は1.00倍でした。

なぜ、表は増員しか生まないのか

人員計画表が増員しか生まないのは、部門長の問題ではありません。表の列が「人数」しかないからです。

仕事が増えた。だから人が要る。この換算しかできない表を渡されれば、誰でも増員を書きます。部門長は増員を求める立場ですし、それ以外の書き方を、表が用意していないからです。

もうひとつ、表には見えないものがあります。増えた仕事の中身です。「営業が忙しい」の中身は、商談なのか、見積の下ごしらえなのか、日報なのか。表は人数を聞いているので、中身は聞かれません。中身が見えなければ、人以外の受け皿を検討する余地がありません。

採用・外注・AIのどれで埋めるかを1件ずつ決める物差しは、採用か、外注か、AIかに書きました。足りないのは判断か、専門性か、手数か。その物差しを年次で使う器が、人員計画表です。

列を人・成果型・AI社員の3つにする

ベンチャーネットが勧める人員計画表は、列が3つあります。

人員計画表の型:列を3つにする 仕事の束(行) 人(正社員) 成果型パートナー AI社員 渡せる 形か 営業:商談・価格の判断 現状維持 — — — 営業:新規開拓の一部 — 1件試す — — 営業:見積の下ごしらえ・日報 — — 1本目 △ 経理:決算の判断・承認 現状維持 — — — 経理:決算期の専門作業 — 期のみ — — 経理:照合・仕訳の下書き — — 2本目 ○ 行は部署ではなく「仕事の束」。人の列には、判断だけを残す

図1:人員計画表の型。行は仕事の束、列は人・成果型・AI社員の3つ。

列は3つ。 人(正社員)、成果型パートナー、AI社員。ベンチャーネットは、雇用によらず会社の仕事を一緒に進めてくれる存在をバーチャル社員と呼び、2種類に分けています。AIによってひたすらタスクを回すAI社員と、AI×人間で成果ベースに自社の資産を築く外部の人やサービス、成果型バーチャル社員です。表の右2列は、この2種類です。

行は、部署ではなく「仕事の束」。 ここが、従来の表との違いです。「営業部」と書くと人数しか出てきません。「営業:見積の下ごしらえ」と書くと、その束を誰が受けるかを列で選べます。束の切り方は3つ。毎週必ず起きること、判断が中身のこと、社内にない専門が要ること。

人の列には、判断だけを残す。 商談で価格を決める。決算を承認する。顧客との関係を持つ。判断が中身の束は、人の列です。ここは増やす判断があってよい。ただし、毎週起きる下ごしらえまで人の列に書くと、去年と同じ表に戻ります。

「渡せる形か」の欄。 AI社員の列に入れた束には、判断基準と手順が言葉になっているかの印を付けます。○なら今期すぐ、△なら先に言葉にする作業が要ります。この欄がないと、AI社員の列は絵に描いた餅になります。

作り方は5つの手順

作り方は5つの手順 1 束で書く 毎週起きる 判断が中身 社内にない専門 部署ではなく束 2 列に振る 決める人がいない やり方を知らない 手が回らない 判断・専門・手数 3 人は判断だけ 下ごしらえを 人の列から外す 増員は判断の束に 要件が具体になる 4 渡せる形か ○:今期すぐ △:先に言葉に 1本ずつ 絵に描いた餅を防ぐ 5 四半期 回った束は 列を移す 年1回にしない 人数を先に決めて、列を後から埋めない。束が先、列が後、人数は最後

図2:作り方の5手順。束が先、列が後、人数は最後。

1. 今期の仕事を、束で書き出す。 部署ごとに、毎週必ず起きること、判断が中身のこと、社内にない専門が要ること、の3つに分けて並べます。人数は、まだ書きません。

2. 3つの問いで、列に振る。 束ごとに聞きます。止まるのは決める人がいないからか、やり方を知っている人がいないからか、手が回らないからか。順に、人の列、成果型の列、AI社員の列です。混ざっていれば、手数から剥がします。

3. 人の列に、判断だけを残す。 下ごしらえを人の列から外すと、増員の希望が「判断できる人1人」に絞れます。募集要項が具体になり、採用の勝率が上がります。ここは採用をやめる話ではありません。

4. AI社員の列に、「渡せる形か」の印を付ける。 ○なら今期すぐ。△なら、先に判断基準と手順を言葉にする作業が要ります。始めるのは1本ずつです。1本目の選び方と1か月の段取りはバーチャル社員の作り方へ、2本目以降の増やし方は1つ回ったら、次はどの仕事かへ。

5. 四半期ごとに見直し、列を移す。 AI社員の列で回った束は、そのまま残します。人の列に残った束のうち、手順が言葉になったものは、AI社員の列へ移します。年1回の表にすると、去年の表を写すだけになります。

この表を1年かけて作る順番は、採用ゼロで伸ばす12か月に書きました。第4四半期に来期の計画へ列を足す、という位置づけです。

なお、表に人数は書いても、AI社員の利用料と人件費を並べて比べる欄は作りません。値段で比べると、答えが決まってしまい、束の中身が見えなくなるからです。

つまずきやすい3つ

人数を先に決めて、列を後から埋める。 「今期は増員ゼロ」と先に決めてから表を作ると、AI社員の列が「増員できないから仕方なく」の受け皿になります。順番は逆です。束が先、列が後、人数は最後。

AI社員の列を、「削減」と読む。 部門長がこの表を見て「うちの仕事をAIに置き換える話か」と受け取ると、束が正直に出てきません。列を足すのは、増える仕事を受けるためで、いまの人を減らすためではありません。この前提は、表を渡す前に言葉にします。

AI社員の列に、固定費を戻す。 AI社員のツールを次々に契約すると、月額の合計が人件費に近づきます。月額は止められる費用ですが、止めなければ固定費と同じです。固定費を変動費に変える考え方は固定費を変動費に変えるへ。

よくある質問

Q. 部門長に、どう説明すればよいですか?
A. 「人を増やせない」ではなく、「増える仕事を、人・成果型・AI社員のどれで受けるかを一緒に決めたい」と伝えます。そして最初の1本を、その部門の仕事から選びます。実際に楽になった経験がある部門は、列が増えることに納得しやすいからです。

Q. AI社員の「人数」は、どう数えますか?
A. 人数では数えません。束の数で数えます。1台のPCに組んだAI社員が、3つの束を回していれば「3本」です。表には、束ごとに○△を付ければ足ります。ベンチャーネット自身が何を任せているかはベンチャーネットのバーチャル社員に書いています。

Q. 計画どおりにいかないときは?
A. いきません。だから四半期で見直します。AI社員の列に入れた束が回らなければ、「渡せる形か」の印が甘かったということです。人の列に戻すのではなく、先に言葉にする作業へ戻します。

まとめ:列を足すと、増員の議論が分解の議論に変わる

人員計画表が増員しか生まないのは、列が人数しかないからです。6割の会社が人手不足で、小さい会社ほど1人の欠員が重い。それでも、表が人数しか聞かなければ、答えは増員になります。

列を3つにします。人、成果型パートナー、AI社員。行は部署ではなく仕事の束。人の列には判断だけを残し、AI社員の列には「渡せる形か」の印を付ける。作る順番は、束が先、列が後、人数は最後。そして四半期ごとに列を移します。

決めるのは経営者です。どの束を人の列に残すか。どの束を1本目にするか。表は候補を並べますが、線を引くのは人です。

ただ、この表を社内で回すとき、いちばん通りにくいのは表の作り方ではありません。列を足すという作業は、各部門には「増員を認めない」と聞こえがちです。増員を求めるのが役目の立場からは、自分から列を足す案は出てきません。かといって、経営者が一方的に表を配ると、押しつけになります。

外から「この束は、どの列ですか」と一つずつ聞かれると、当事者どうしでは出てこなかった答えが出ることが多いのです。御社の仕事を束で並べ、列に振るところから、ベンチャーネットがFDE型の伴走としてご一緒できます。売り込みではなく、まず壁打ちから。

出典(いずれも確認日2026-09-22):

  • 日本商工会議所・東京商工会議所「多様な人材の活躍等に関する調査」(2026年9月15日発表)
  • 厚生労働省「一般職業紹介状況(令和8年7月分)」(2026年8月28日)
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この記事を書いた人

持田 卓臣のアバター 持田 卓臣 株式会社ベンチャーネット代表取締役

株式会社ベンチャーネット 代表取締役
2005年に株式会社ベンチャーネットを設立後、SEOをはじめとするデジタルマーケティング領域のコンサルティングサービスを展開
広告・SNS・ウェブ・MA・SFAと一気通貫で支援を行っています
著書に『普通のサラリーマンでもすごいチームと始められる レバレッジ起業 「バーチャル社員」があなたを救う』(KADOKAWA、2020年)

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