r戦略とK戦略——自社はどちらの「生き方」で勝つのか

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売上を伸ばすほど、なぜか苦しくなる

「もっと伸ばさなければ」。多くの経営者が、当たり前のようにそう考えます。

ところが、売上を追えば追うほど、現場が回らなくなる。人を増やせば固定費が重くなり、設備や出店に資金を張れば、手元が薄くなる。気づけば、伸ばすための努力が、かえって会社を細らせている——。

ベンチャーネットは、中堅・中小企業の経営をご一緒する中で、この息切れを何度も見てきました。そして、自分たち自身も同じ問いの前に立ってきました。「伸ばし続けることは、本当に正解なのだろうか」と。

生き物には、二つの生き残り方がある

この問いを考えるとき、ベンチャーネットが手がかりにしているのが、生き物の世界の知恵です。

生態学に「r/K選択説」という考え方があります(生き物の繁殖のしかたを説明する、古典的な理論です)。かいつまんで言えば、生き物の生き残り方は、大きく二つに分かれます。

  • r型:小さく弱い子を、たくさん残す。変化が速く不安定な場所で強い。数とスピードで散らす生き方。
  • K型:環境に合った子を、少しだけ、大事に育てる。落ち着いた場所で強い。質と関係で深める生き方。

会社にあてはめると、こうなります。r型は、変化の波に乗って、数とスピードで広げる戦い方。K型は、決めた場所で質を磨き、長い関係を育てる戦い方。どちらが偉い、という話ではありません。

図1 二つの生き方——r型とK型 r型 量とスピードで散らす ・小さく弱い子を、たくさん残す ・変化が速く不安定な場所で強い ・数とスピードで広げる 会社にあてはめると 変化の波に乗って広げる戦い方 K型 質と関係で深める ・環境に合った子を、少数だけ育てる ・落ち着いた場所で強い ・長い関係を育てる 会社にあてはめると 決めた場所で質を磨く戦い方 優劣ではなく「選択」 自社が置かれた環境と、使える資源を見て、どちらの生き方で勝つかを選ぶ。

r型とK型に優劣はない。自社が置かれた環境(安定か変化か)と、使える資源の量を見て、どちらの生き方で勝つかを選ぶ。

自社は、どちらの生き方で勝つのか

ここで大事なのは、「優劣」ではなく「選択」だ、ということです。

r型とK型のどちらが向くかは、二つで決まります。ひとつは、自社が置かれた環境が、安定しているか、変化の中にあるか。もうひとつは、自社が使える資源が、どれだけあるか。

生き物の世界では、落ち着いた環境では、最後はK型が勝つとされています。質を磨き、環境に適応した少数が、残るからです。ただし——ここが肝心なのですが——K型で勝ち切れるのは、資源を持つ強者です。

だとすれば、資源の限られる小さな会社の活路は、二つあります。ひとつは、変化のある場所に身を置き、r型の数とスピードで動くこと。もうひとつは、大手が入ってこない場所を選び、そこでK型として質を深めること。

ベンチャーネット自身も、大手と同じ土俵では戦いません。手間がかかり、丁寧さが要る領域を選び、そこで長く、深くお付き合いする。これは「仕方なく小さい」のではなく、選んだ生き方です。

「厳しい」と「不安定」を、取り違えない

自分の生き方を選ぶには、まず自社の環境を見極める必要があります。このとき、ひとつ間違えやすい点があります。

「厳しい場所」と「不安定な場所」は、別物だということです。

  • 不安定な場所:移り変わりが速い。r型が動きやすい。
  • 厳しいが安定した場所:手間がかかり、参入が面倒。だから競争相手が少ない。

大手も、大きな資本も、入りたがらない。けれど、需要は静かに続いている。こうした「厳しいが安定した場所」こそ、小さな会社がK型でじっくり強くなれる狙い目になります。「厳しいから避ける」ではなく、「厳しいが安定しているから、あえて選ぶ」。

図2 「厳しい」と「不安定」を取り違えない ▲ 入りやすい(手間が少ない) ▼ 厳しい(手間がかかる) ◀ 安定 不安定・変化 ▶ 安定 × 入りやすい 強者が集まりやすい 競争が激しい場所 不安定 × 入りやすい r型が動きやすい 数とスピードで広げる 狙い目 厳しいが安定した場所 大手が来ない・競争が少ない → K型でじっくり強くなれる 不安定 × 厳しい 消耗しやすい 無理に攻めると息切れ

「厳しい場所」と「不安定な場所」は別物。手間がかかるが需要が静かに続く「厳しいが安定した場所」は、小さな会社がK型でじっくり強くなれる狙い目になる。

では、自社にとってのその場所はどこか。それを見極める具体的な進め方は、ニッチの選び方として別の記事でお話しします。ここではまず、「生き方を選ぶ」という視点だけ、持ち帰っていただければ十分です。

伸ばし続けることだけが、正解ではない

最後に、正直なことを申し上げます。

生き物の世界では、すむ場所が養える数には、上限があります。その上限を超えて増えようとすると、増えるどころか、かえって減っていく。会社も同じで、どの市場にも「ほどほどの上限」があります。それを無理に超えようとすると、息切れが始まります。

だからベンチャーネットは、「とにかく伸ばしましょう」とは言いません。ときに、賢く縮むことも、立派な戦略です。撤退や縮小は、負けではありません。生き方を選び直す、ということです。

希望は、ここにあります。小さな会社は、生き方を「選べる」。強者のように一本道を走るしかないわけではなく、環境と資源を見て、r型かK型かを自分で決められる。選べること、それ自体が活路になります。

自社の生き方を、一緒に考える

「うちは、r型とK型のどちらだろう」。そう考え始めたなら、それがもう第一歩です。

  • まず「成長より生存」という考え方から、自社の前提を見直す(→ 序章の記事へ)
  • 変化のときは探索し、落ち着いたら深掘りする。その切り替えの設計を知る(→「探索と深化」の記事へ)
  • 自社の数字から、いまの立ち位置を見える化・わかる化する(→ 第3章の各記事へ)

自社の生き方は、当の自社からは、いちばん見えにくいものです。自分の前提は、自分では気づけない。だからこそ、外から問いを投げる相手がいると、選択は前に進みます。

ベンチャーネットは、答えを押し付けるのではなく、自社の生き方を一緒に考える相手でありたいと思っています。どちらの生き方で勝つのか。その問いを、ご一緒できればうれしく思います。

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この記事を書いた人

持田 卓臣のアバター 持田 卓臣 株式会社ベンチャーネット代表取締役

株式会社ベンチャーネット 代表取締役
2005年に株式会社ベンチャーネットを設立後、SEOをはじめとするデジタルマーケティング領域のコンサルティングサービスを展開
広告・SNS・ウェブ・MA・SFAと一気通貫で支援を行っています
著書に『普通のサラリーマンでもすごいチームと始められる レバレッジ起業 「バーチャル社員」があなたを救う』(KADOKAWA、2020年)

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