前回はSEOの内部施策として「コーディング」について紹介しました。今回は、これまで5記事にわたって紹介してきたコンテンツBtoB向けSEO対策の総集編として、バーチャル経営が想定する「SEOの極意」を紹介したいと思います。
転換期を迎えたコンテンツSEO
ご存じのように、SEOは今やどの業界の企業も当たり前のように取り組んでいる施策です。特に、テキストベースのコンテンツを主体とした「コンテンツSEO」は、SEOの中心的な役割を担っています。しかし、コンテンツSEOはコモディティ化が激しく、もはや小手先の技術だけでは差がつきにくくなっているのが実情です。具体的には、下記のような問題に直面するケースが増えているのです。
コストパフォーマンスの悪化
自社の強みと一致しないキーワードで無理にコンテンツを作ると、労力のわりに成果につながりにくいのが現在の状況です。アクセスはある程度集まるのですが、問い合わせや商談に結び付かないのです。
コンテンツSEOでは、Google検索での上位露出を実現するために、さまざまなキーワードを意識してコンテンツを製作します。しかし、キーワードベースの記事製作は、不自然な内容の記事になることもあります。特に数を重視すると、どうしても自社と直接関係のない記事も製作せざるを得ません。
また、キーワードの要件を満たしつつ、自社の強みもしっかり仮伝えるためには、優秀なライター・エディターを確保し続ける必要があります。しかし、コンテンツSEOは数か月~1年単位での継続が必要ですから、固定費の増加は避けられないでしょう。また、いわゆる「高めの単価で請けて、クラウドソーシングで安く外注する」タイプの製作会社に依頼すると、投資に見合った記事が上がってこないといった問題も発生します。
社内情報の資産化が進まない
検索エンジンに対する過剰な擦り寄りを続けた結果、「社内情報の資産化」が進まないという問題が生じます。これまでのコンテンツSEOでは、検索キーワードや検索ボリューム、クエリなどを意識したコンテンツ製作が主体でした。しかし、これらはあくまでも検索エンジンの運営会社が提供するノウハウです。コンテンツSEOは本来、「自社が持つノウハウや技術のコンテンツ化」によって認知拡大を図る施策であるはず。コンテンツ製作の中で自社が保有する技術・ノウハウが体系的に言語化されていかなければ、本当に伝えるべきものが明確にならず、延々とキーワード対策だけを続ける羽目になります。
加速するレッドオーシャン化
コンテンツSEOは、レッドオーシャン化との闘いでもあります。BtoC領域のキーワードを分析するとすぐわかるのですが、めぼしいキーワードはすぐに大手企業が参入し、数か月単位で順位が大きく変動しています。この傾向はBtoB領域でも同様で、BtoCほどではないにせよ、頻繁に順位変動が起こっています。
コンテンツSEOのコモディティ化によって、検索上位の競争が激化しているのです。また、時間の経過とともに上位コンテンツの情報量が過密化し、それを上回るために更なる対策を施し……といったサイクルに突入するため、徐々に対策が難しくなっていきます。
SEOに必要なのは「自社価値の把握」
このようにコンテンツSEOは、「物量作戦」や「消耗戦」の域に突入しており、単純に検索キーワードや検索ボリュームだけを追い求めても、コストに見合った成果を得られにくくなっています。したがってバーチャル経営では、従来型のコンテンツSEOから脱却を推奨しています。
脱却とは言っても、何か特別新しいことをやるわけではありません。「自社が持つ価値の把握」という当たり前のことを徹底的にやるべきというのが、バーチャル経営におけるSEOの基本です。
まずやるべきは「自社が持つ価値の把握」
SEOの本質は「検索エンジンにコンテンツを読ませ、評価させる」ことではありません。「自社が持つ価値を、本当に必要としている相手に、正しく伝えること」です。そのためには、まず自社が持つ価値の把握と整理が必要になってきます。
自社が持つ価値の把握は、当然のことのようで、本気で取り組んでいる企業が少ない印象を持っています。中堅中小企業の場合、古くからある商流の中に何となく存在していて、それなりに利益が出ているために、自社の価値を見つめなおす機会に恵まれなかったというケースもあるでしょう。
価値の把握は意外と難しく、社内側からの視点だけでは実現しないこともあります。最終的には言語化できることが理想ですが、言語化が難しい場合は、まず経営をひとつのシステムとしてとらえ、日常業務を数値化することから始めても良いでしょう。システム化・数値化が進むと、自社が持つ優位性やこれまで気づいていなかった強みなどが見えてきます。
キーワード、ボリュームに依存しないコンテンツ作成
コンテンツSEOを進めるにあたり、大半の企業はオウンドメディアの構築・強化に取り組むでしょう。本来、オウンドメディアは自社の看板であり、もっとも優秀な広告塔になるメディアです。しかし検索キーワードやボリュームだけを追いかけると、自社の強み以外の分野にも手を出さざるを得ません。前述のように、狙ったキーワードで常に上位露出を続けるためには膨大なコストが必要です。また、たとえ上位露出を果たしたとしても、自社の強みに直結した内容でなければ受注や問い合わせにはつながらないことが多いのです。
これからのSEOは、検索キーワードやボリュームから視点を外し、純粋に自社の価値に特化したコンテンツ製作を進めるべきです。本当に有益な情報であれば、必ず探している人がいるはずですし、誰かのペイン(痛み)に結びついているものです。
ABMと「濃い市場」を意識したコンテンツ製作
SEOは、ABMと密接な関係にあると考えています。ABMとは、端的に言えば「うまくいきそうな相手」との出会いを目的としたマーケティング施策です。また、中堅中小企業の場合、大手企業との直接対決を避けて生存確率を上げるために、「限定された濃い市場」の探索にも取り組むべきです。限定された濃い市場とは、「自然発生し、ニッチであり、ローカルな市場」です。
ABMによってアプローチすべき相手(情報を届けたい相手)を明確にし、小さく濃い市場を補足することができれば、大手企業と競合しない独自のSEO戦略が見えてくるはずです。
従来型コンテンツSEOからの脱却を
中堅中小企業が取り組むべきSEO対策の内容は、事業内容や競合の存在などによって変わってきます。ただし、確実に言えるのは「検索キーワード・ボリュームに依存したコンテンツSEOでは、成果につながりにくい」ということです。繰り返すようですが、まず取り組むべきは自社の価値把握と、その価値を過不足なく伝えるための施策です。そのためにバーチャル経営では、以下のような施策を推奨しています。
デジタルツールを用いた自社の価値測定
- 競合他社との差別化が難しい場合でも安易にキーワードや検索ボリュームに逃げず、まずは自社の内部を徹底的に見つめなおして価値を再定義する
- 自社の内部を徹底的に数値化するために、CRMやERP、MA、SFAといったツールを用いて情報を集積する
自社価値のコンテンツ化と「到達目標」の明確化
- 上記施策で得た情報をもとに、自社の強みをコンテンツ化していく
- 検索ボリュームやキーワードは過度に意識せず、純粋に有益性を重視する
- 同時にABMを実施し、自社の価値が届きやすい(取引しやすい)相手を具体的に想定し、コンテンツをブラッシュアップする
テクニカルSEO(内部施策)を重視する
- 検索エンジンから評価を得るために、テクニカルな内部施策を重視する
- Core Web Vitalsを満たすコーディングで、閲覧者のUX向上に努める
まとめ
今回は、これからのSEOに必要な視点として「自社の価値把握」を紹介しました。今後は、「自社の持つ価値を濃縮し、適切な相手に届けるためのアプローチ」と「テクニカルな内部施策」がSEOの中心となっていくと考えています。