BtoBデジタルマーケティング再考 今こそ全体像をとらえなおそう

2020年に入り、パンデミックは「ニューノーマル」という概念を生み出しました。それと共に、あらゆる分野でビジネスプロセスの変革が起こっています。特に「リスクを伴うリアルの活動」から「低リスクかつ必要十分なネットの活動」への変遷は、「デジタルマーケティング」の重要性を高めました。パンデミックの荒波を乗り越え、成長を続けるためには、BtoB分野でもデジタルマーケティングに目を向けるべきでしょう。ここでは、デジタルマーケティングの基礎と実践におけるヒントを紹介します。

目次

デジタルマーケティングとは何を指すか?

まず、デジタルマーケティングの概要、基礎知識などを整理しておきましょう。

デジタルマーケティングの概要

デジタルマーケティングとは、複数のチャネル・タッチポイントを活用し、消費者行動をリアルタイムに収集・分析しながら「売れる仕組みづくり」につなげることです。

ここで言うチャネルとは、Eメール・Webサイト・SNS・アプリなどの媒体を指し、タッチポイントはこうした媒体で使用されるコンテンツを表しています。デジタルマーケティングでは、これら複数のタッチポイント・チャネルを連動させ、シナジーを発生させながら顧客行動を精密かつスピーディーにとらえて、顧客満足度や収益力の向上につなげることが目的です。

デジタルマーケティングとは何を指すか?

一般的なマーケティングとの違い

一般的なマーケティングとの違いは「複数のチャネルを連動させること」「リアルタイム性」の2点に集約されます。

ただし近年はデジタルマーケティング活用が一般化しており、オフライン中心の企業活動でも似たような考え方が採用されています。例えば「オムニチャネル戦略」もデジタルマーケティングと同様に「複数チャネルの連動」「リアルタイム性」を重視しながら、顧客満足度の向上を目指す戦略です。こうした動きを見ても、デジタルマーケティングが企業活動に必須のものであることが理解できます。

Webマーケティングとの違い

Webマーケティングは「主にWebサイト、コンテンツを主体としたマーケティング手法」と言えます。一方、デジタルマーケティングは「(Webサイト、コンテンツを含む)複数のチャネル・タッチポイントを横断しながらデジタルデータを有効活用する手法」です。以上のことから、Webマーケティングはデジタルマーケティングの一分野であると言えるでしょう。

デジタルマーケティングとは何を指すか?

マスマーケティングとの違い

また、マスマーケティングと比較した場合には、次のような違いが浮かび上がります。

デジタルマーケティングは、タ具体的かつ精密に「顧客像」を想定し、「リード獲得」「コンバージョン(問合せ)」を狙います。また、予算は数万円~数十万円レベルの少額から開始できることも特徴です。

一方マスマーケティングは、認知拡大効果が極めて高く、短期間でブランディングを推し進めることができます。ただし、デジタルマーケティングよりも顧客像はざっくりとしていることが多く、どちらかと言えば「大艦巨砲主義」的な側面が強いでしょう。また予算はデジタルマーケティングよりも桁がひとつ多く、場合によっては「コストパフォーマンスが悪い」という評価になるかもしれません。

BtoBデジタルマーケティングとは

では、ここまでの内容を踏まえつつ、本題である「BtoBデジタルマーケティング」について整理していきましょう。

冒頭でも述べたように、BtoBデジタルマーケティングは、「BtoBマーケティングにデジタルマーケティングの要素を加えたもの」です。ではBtoBマーケティングとは何を指すのでしょうか。実はBtoBマーケティングの定義は曖昧で、BtoCに比べると認知度が低いと言わざるを得ません。そのため、ベンチャーネットでは、BtoBマーケティングを以下のように定義しています。

BtoBマーケティングの定義

ベンチャーネットでは、BtoBマーケティングを以下2点で定義しています。

  • 企業とその中にある「購買の意思決定を持つ組織」を対象としたマーケティング
  • 製品やサービスを中心とせず「企業と企業」「人と人(自社営業担当と相手方の購買担当者)」などの関係性を重視したマーケティング

つまりBtoBマーケティングとは「相手方企業の意思決定組織を対象とし、関係性を重視したマーケティング」と定義することができます。

BtoBデジタルマーケティングとは

BtoBデジタルマーケティングを構成する要素

では、BtoBデジタルマーケティングを構成する要素について、もう少し詳しく見ていきましょう。

Webマーケティング

Webサイト本体やそこに掲載されるコンテンツ、SEO(検索エンジン最適化)、広告などを総合的に運用する手法です。Webマーケティングはさらに次のような分野に細分化されます。

コンテンツマーケティング

コラム記事やお役立ち情報など「消費者の課題、悩みを解決」にフォーカスしたコンテンツによるマーケティング手法です。消費者の検索意図やペルソナを理解し、サイト流入・リード獲得を繰り返しながら、LPや商品ページでの成約を目指します。

SEO対策(検索エンジン最適化)

自社の商品・サービスに関連するキーワードが、検索結果の上位に表示され、できるだけ多くの消費者の目に触れるような対策を施します。具体的にはWebサイトやコンテンツ内にキーワードを散りばめたり、読みやすく訴求力のある文章を作成したりといった施策が主流です。GoogleやYahooなど検索エンジンごとの特性・アルゴリズムを理解することが大切です。

インターネット広告

インターネット広告は、ターゲット・用途・目的などに応じて使い分ける手法が一般的です。

検索キーワードに対応したテキスト広告を配信する「リスティング広告」、提携先のWebサイトに広告を掲載してもらう「アフィリエイト広告」、複数媒体に広告を配信する「アドネットワーク広告」、消費者の閲覧履歴から後追いで広告を配信する「リターゲティング広告」などがあります。また、近年はSNSユーザーをターゲットにしたSNS広告も頻繁に活用されています。

SNSマーケティング

SNSマーケティングは、単なる広告出稿ではありません。自社アカウントからの情報発信、消費者とのコミュニケーションなどを通じて「エンゲージメント(絆)」を深め、ロイヤルティの高い顧客層を獲得することが目的です。SNSマーケティングは、消費者からの反応が「いいね!」や「お気に入り」「拡散」などでリアルタイムに可視化されることもメリットのひとつです。

BtoBデジタルマーケティングを構成する要素

データ活用

複数のチャネル・タッチポイントから収集したデータを分析し、顧客行動の把握・ROIの測定・KPIの設定などにつなげます。データ活用ではチャネル・タッチポイントの他にも、営業・マーケティング業務に特化したITツール(MA、SFAなど)を活用します。

BtoBデジタルマーケティングを構成する要素

MA(マーケティングオートメーション)

MAは、「新規顧客開拓」「既存顧客のフォロー」など営業・マーケティングの主要な業務を自動化し、効率を高める手法(もしくはそのためのツール)を指します。近年、「One to Oneマーケティング」の台頭によって顧客ごとにきめ細やかなアプローチが必要になり、営業・マーケティング業務は肥大化の傾向にあります。MAの導入によって、「リード管理」「キャンペーン管理」「メールマーケティング」「行動履歴管理・スコア化」などが自動化されれば、担当者はより多くの時間をコア業務(マーケティング施策やキャンペーンの策定、商談など)に割くことができます。こうして、少数の人員でも成果を挙げやすくなることがMA導入のメリットです。

SFA(セールスフォースオートメーション)

SFAは「営業プロセスの自動化」を表す考え方、もしくはそのためのツールです。「顧客管理」「案件管理」「商談管理」「予実管理」など営業部門の業務を自動化・効率化し、最小の人員で最大の成果を挙げることが目的です。また、近年ではインサイドセールスにも積極的に活用されています。インサイドセールスはコロナ禍において「非対面」「オンライン」での営業活動として再評価されており、今後は業界・業態を問わず必須の営業形態になる可能性を秘めています。

BtoBデジタルマーケティングを構成する要素

BtoCマーケティングとの比較でわかるBtoBマーケティングの本質

しかし、これだけではBtoBマーケティングが何を指すのか、具体的にイメージしにくいかもしれません。そこで、BtoCマーケティングとの違いから、BtoBマーケティングの本質を明らかにしたいと思います。

BtoBマーケティングとBtoCマーケティングの違いとして良く語られるのは「取引金額(商品単価)の大きさ」や「購買頻度」などです。たしかに、BtoCに比べるとBtoBは、高額で低頻度の取引になる傾向が強いでしょう。しかし、これはBtoBとBtoCの決定的な違いとは言えません。BtoC取引でも高額・低頻度なものはいくらでもあります。例えば自動車などがその好例です。

また、「取引相手が企業か個人か」という違いについては、当然のことを述べているだけであり、BtoBとBtoCの違いを本質的に説明するものではありません。では、BtoBマーケティングとBtoCマーケティングの違いはどこにあるのでしょうか。両者の違いは以下2点に集約されます。

意思決定者の違い

BtoCマーケティングでは「意思決定者」を「個人」として想定します。これに対し、BtoBは意思決定者を「組織」として想定するのです。この組織には当然、決裁権限を持つ人物が含まれるわけですが、一般的に決裁権限を持つ人物は、最初に接触する人物とは異なることが多いです。BtoB取引の場合、まず購買組織の担当者がリサーチし、問合せを行い、上長への相談を経て商談・契約へと進んでいきます。したがってBtoBマーケティングでは「決裁権限のある“組織“に在籍する人物」を複数想定し、マーケティング施策を練るべきなのです。

BtoCマーケティングとの比較でわかる BtoBマーケティングの本質

購買プロセスの違い

BtoCとBtoBでは、意思決定にいたるまでの過程(購買プロセス)にも違いがあります。BtoCの場合、購買プロセスは比較的短く、衝動や認識の変化(パーセプションチェンジ)によって一気に購入へ至ることもあります。したがって、「購入の場」や「顧客接点」を増やしていくことで、一定の売上増が見込めるわけです。

これに対してBtoBは、意思決定までの道のりが長く、極めて合理的なプロセスをたどります。見込み客が求める仕様・価格であり、なおかつ明確な効果が見込める製品でなければ、いくら接触を繰り返しても購買プロセスは進まないでしょう。まずは意思決定組織の担当者と接触を重ね、相互理解を深めながら徐々に意思決定に辿り着くための施策が必要です。

施策とツールの連動で意思決定に辿り着く

BtoBマーケティングでは、10年ほど前から「オウンドメディア活用」が急速に広まりました。確かにオウンドメディア活用は有用ですが、意思決定を促すという意味では不十分です。もっと狭く・具体的な顧客像を描いてピンポイントに、なおかつ継続的にアプローチする施策でなければ、意思決定にはたどり着けないと考えられています。そこで、各ツールをフェーズに応じて使い分け、順序だててアプローチしていく方法がおすすめです。下記は、一般的なBtoBデジタルマーケティングの流れを表した図です。

CV率の改善が最優先。次に認知獲得

このように、BtoBデジタルマーケティングでは、要所でITツール(CRM、MA、SFA)に情報を集約し、それをもとに見込み客との関係性を強くしていきます。上の図では、まず、オウンドメディアの「穴」をふさぎ、つぎに認知拡大のための施策(SEO、ホワイトペーパー、ウェビナー)を用いています。この過程で得た情報をMAやSFAに集約し、インサイドセールスで接点を構築し、そこから徐々に見込み客との関係を深め、営業へバトンを渡します。

施策とツールの連動で意思決定に辿り着く

ABMの台頭

近年は、こうした一般的な流れに加えて、ABM(アカウントベースドマーケティング)を取り入れる企業も増えてきました。ABMとは「自社と相性が良さそうな企業に目星をつけ、企業単位(アカウント単位)で行うマーケティング」のことです。

簡単に言えば、ABMが上手く機能することで、「相性の良い相手」と出会いやすくなるのです。ABMマーケティングについてはこちらで詳しく解説しています。

施策とツールの連動で意思決定に辿り着く

BtoBデジタルマーケティングが必要とされる背景

ECや通販など、BtoCの分野ではデジタルマーケティングが積極的に活用されてきました。今後はさらにBtoBの分野でもデジタルマーケティングが必須になるでしょう。その理由は、次のとおりです。

需要の細分化・多様化

「大量生産・大量消費」の時代は、一画一的かつ大規模な広告を打つ「マスマーケティング」が有効でした。しかし、現在は飽和の時代であり、マスマーケティングの費用対効果を疑問視する声もあります。なぜなら、現在は「細分化・多様化」された「個客」のニーズを拾いきれないからです。こうした背景から、「One to One マーケティング」の必要性が高まっています。顧客ごとの行動履歴や好み、属性など細かなデータを駆使するデジタルマーケティングは、One to Oneマーケティングと親和性が高いため、細分化・多様化の時代にマッチすると考えられています。

デジタル技術の成熟

スマートフォン・タブレット・PC・IoT機器などのデジタルデバイスや、AI・機械学習・BIといったデータ収集・分析ツールの発達により、データを資産化しやすい環境が出来上がりました。

ニューノーマルの台頭

コロナ禍を背景とした「ニューノーマル(新常態)」という概念の台頭で、「リアル(オフライン)」から「ネット(オンライン)」へ行動の軸を移す人々が増えています。これはBtoBの分野でも同様であり、企業活動のオンライン化が進んでいます。テレワークやウェビナーなどはその典型例と言えるでしょう。営業・マーケティング活動も例外ではなく、デジタルマーケティングの重要性は一層高まっていくと言えます。

BtoBデジタルマーケティングが必要とされる背景

ベンチャーネットが推奨するBtoBデジタルマーケティングツール

BtoBデジタルマーケティングは、様々なITツール・ソリューションを組み合わせて実現する方法が一般的です。そこで、BtoBデジタルマーケティングの運用に欠かせないITツール群を紹介します。

Netsuite

クラウドERPとして知られるNetsuiteは、広告代理店事業の業務ワークフローを自動化する機能を有しています。また、マーケティングプラットフォーム「Bronto」を内包し、基幹業務システムとデジタルマーケティングをシームレスに接続できる点が強みです。

NetSuiteとは?導入のメリットや特徴から価格まで解説

Salesforce

SFA世界最大手として知られるSalesforceは、マーケティング・営業・CS向けの製品群を要しています。特に「MARKETING CLOUD」ではデジタルマーケティングに必要な機能を網羅的に内包しているため、デジタルマーケティングの実行基盤として活用できるでしょう。

Salesforceとは?世界15万社以上が利用するサービスの特徴とメリット

ベンチャーネットが推奨するBtoBデジタルマーケティングツール

Eloqua

自動化に強みをもつMAツールで、オンライン、オフライン双方の顧客データを行動データと紐づけて管理し、APIによって他システム(CRM、SFAなど)との連携させることができます。複数のチャネル・タッチポイントを横断的に活用するデジタルマーケティングと相性が良いソリューションです。

Oracle Eloqua(エロクア)のメリット・デメリット

ABMオートメーション(独自開発)

これらに加えて、ベンチャーネットでは独自開発のBtoBデジマ用アプリケーション「ABMオートメーション」を提供しています。

ABM-AUTOMATIONは、Oracle社のMAツール「Eloqua」を利用しているユーザーが、効率よくABMを進められることを目的に開発されています。具体的には、BtoBアクセス分析ツール(どこどこjp)や名刺管理ツール(Sansan)との連携で、匿名アクセスの情報をリッチにし、各種施策につなげていくことができるツールです。

ベンチャーネットが推奨するBtoBデジタルマーケティングツール

まとめ

ここでは、BtoBデジタルマーケティングの概要と構成要素、BtoCとの違い、必要とされる背景、役立つツール群などを紹介してきました。デジタルマーケティングは、複数のマーケティング手法・ツールを”デジタルデータ活用”の側面から統合した考え方です。そのため、営業・マーケティング業務の変革が必要なる可能性があります。単にツールに詳しいだけでなく、業務プロセスの変革までサポートしてくれるようなパートナーによるサポートも検討すべきでしょう。

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この記事を書いた人

持田 卓臣のアバター 持田 卓臣 株式会社ベンチャーネット代表取締役

株式会社ベンチャーネット 代表取締役
2005年に株式会社ベンチャーネットを設立後、SEOをはじめとするデジタルマーケティング領域のコンサルティングサービスを展開
広告・SNS・ウェブ・MA・SFAと一気通貫で支援を行っています
著書に『普通のサラリーマンでもすごいチームと始められる レバレッジ起業 「バーチャル社員」があなたを救う』(KADOKAWA、2020年)

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