その仕事、本当に必要ですか?~発達障害のビジネスマインド~(借金玉のマイクロ起業 Vol.09)

こんにちは。借金玉です。僕は現在、2足の草鞋を履きながら、マイクロ起業に挑んでいます。このコラムでは、いろいろな観点から「マイクロ起業」について考えていますが、第9回目の今回は、「発達障害者がもつビジネスマインド」についてです。

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マイクロ起業と発達障害者のビジネスマインド

さて、この原稿を書いている時点で10月も終わろうとしています。今月は結構いい感じに仕事が回っており、それなりに良い結果に落ち着こうとしていますが、皆様いかがお過ごしでしょうか。ゆるゆると書かせていただいているマイクロ起業のお話ですが、今月は仕事が立て込んだ上に法人の決算という大仕事があり、結構大変な月でした。

こまめに帳簿や領収書なんかをまとめておかないからこんな面倒なことになるわけですが、かつて黙っていても部下がやってくれた仕事がいかにありがたいものだったか、日々噛み締める一人社長の身の上です。そろそろ週2くらいで事務スタッフを雇いたいと思わなくもないんですが、固定費がガツンと嵩むのでもうしばらくは「マイクロ」を貫きたいと思っています。

さて、なんでこんな話をしたかといいますと僕は発達障害者(ADHD)なのです。帳簿処理や領収書の整理みたいな作業は本当に苦手で、その辺の小学生の方が下手したら良い仕事をするレベルです。どうしても「きれいに領収書を整理する」ということが出来ません。何百回トライしても、「箱にまとめて突っ込む」が限界です。時々ギャーということになりますが、それが限界なので「それでいい」ということにしています。

どこまで仕事をするべきか問題

仕事はやろうとすると無限に増えます。アルバイトであれお仕事をされたことのある方ならわかりますよね。「完璧にやろう」と思うと仕事というのは完全に終わりのないものになってしまいます。僕は、この加減がとてつもなくヘタです。「やり過ぎ」か「全て放置」のどちらかになってしまう傾向が非常に強いのです。これは、ADHDの皆さん大体そうではないでしょうか。

卑近な例でいいますと「部屋の掃除」です。お部屋の掃除は、「毎日少しずつやって常にきれいに保つ」がベストであることくらい誰しもわかっていると思います。しかし、それを現実に達成できている人はそれほど多くないでしょう。

発達障害者は起業に向いているという俗説もたまに聞きますが、僕はやはりこの辺りの問題もあり必ずしも全員が向くとは思えません。仕事をする上での「この仕事は苦手だ」のような問題は避けがたく発生してしまうと思います。マイクロ起業の一つの欠点ですが、誰かを雇うことを極力回避する以上、「全部自分でやらなければいけない」という側面はどうしても発生してしまいます。

その仕事、本当に必要ですか?サービスは絞り込め

お客様にサービスを提供する上で、「少しでも良いサービスを提供したい」という気持ちは出てくると思います。僕も元来がサービス精神の旺盛なタイプですので、ついつい仕事を「やり過ぎ」ます。しかし、ここで一つ問題になってくるのは提供しているサービスが全てお客様の役に立っているかというとそういうわけでもないという事実です。

例えば、誰かに渡すプレゼントを購入するのであれば綺麗なラッピングは必須になるでしょう。包装も商品のうちです。しかし、業務用の商品を販売するのにそんなに綺麗なラッピングが必要でしょうか。例えば、干し椎茸を売るとしてその包装にリボンをつける必要があるかといわれれば、そんなもの必要なわけがありません。しかし、人間と言うのは往々にして干し椎茸をプレゼントみたいに飾り付けてしまうものだと思います。

あなた自身が商品やサービスを購入する場合を考えてみてください。「このサービス、本質的には必要ないな」と感じることって結構しょっちゅうありませんか?日本の商品は過剰サービスが日常化していると僕には感じられます。大手メーカーの商品はデザインから包装までとても凝っています。しかし、客先に持参する見積もり書のフォントに凝る必要が本当にあるかといわれれば、それは疑わしいとしか言いようがないでしょう。

僕が商品として扱っているのは委託された軽作業やあるいは調査レポートのような文書ですが、「とにかくお客様にとって必要なものだけを絞りぬいて提供する」ということにこだわりを持っています。これは、言い換えると「不要なことは一切やらない」をモットーにしているということです。

僕の初めての起業は飲食業でした。飲食店というのは、平たく言うと過剰サービスの競い合いです。もっと安く、もっと豪華に、もっとお客様に寄り添って…そういったことを競い合った末に、レッドオーシャンの極地に到達した飲食業界の地獄っぷりは皆さんもご存知の通りです。もちろん、消費者としては競争の果てに過剰化したサービスを味わうのも楽しいものだと思いますが、「マイクロ」起業にそういうものは全く向かないのです。

いかがでしょうか。次回はこの続きとして、「マイクロ起業における顧客との付き合い方」を考えてみたいと思います。

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この記事を書いた人

1985年、北海道生まれ。大学卒業後、大手金融機関に就職するが2年で退職。
現在は不動産営業とライター・作家業をかけ持ちする。
著書に『発達障害サバイバルガイド: 「あたりまえ」がやれない僕らがどうにか生きていくコツ47』(ダイヤモンド社)、『発達障害の僕が「食える人」に変わった すごい仕事術』(KADOKAWA)がある。

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