AIの料金が「席」から「成果」へ——中小企業の”買い方”と”値付け”はどう変わるか

目次

請求書の金額が、毎月変わるようになった

以前のソフトは、料金の計算が簡単でした。1人あたり月いくら、それを使う人数分。来月いくら請求が来るかは、契約した時点で分かっていました。

AIのツールを入れ始めてから、その前提が崩れてきた。そう感じている経営者は、少なくないはずです。使った分だけ増える項目があり、月によって金額が変わる。予算を組むときに、いくらと置けばいいのか分からない。

いま契約しているツールの総額を把握したい場合は、AIに、毎月いくらかかる?で棚卸しの手順を扱っています。

この記事で扱うのは、その手前にある変化です。何を単位にお金を払うのか、そのものが変わりつつあります。

課金の単位が、3つに割れた

いま起きているのは、料金の値上げでも値下げでもありません。数える単位が増えたということです。

大きく3つに分かれます。

① 席で数える
使う人の数で払います。1人あたり月いくら、という従来の形です。人数が変わらなければ、金額も変わりません。

② 仕事量で数える
処理した件数、やりとりした回数、読み込んだデータの量。使えば使うほど増えます。

③ 成果で数える
問い合わせが1件解決したら、商談が1件決まったら、その都度払います。使っても成果が出なければ、その分は課金されません。

ここで押さえておきたいのは、席で数える方式が消えたわけではないということです。3つが並び立ち、しばしば組み合わさります。基本料金は席で、追加分は仕事量で、一部は成果で。1つの契約の中に、複数の単位が同居します。

何を単位に、お金を払うのか ① 席で数える 単位 使う人数 予算 読みやすい 使わない人の分も払う ② 仕事量で数える 単位 処理・会話の回数 予算 月によって変わる 忙しい月ほど高くなる ③ 成果で数える 単位 解決・商談の件数 予算 定義しだいで変わる 「成果」の中身を要確認 席は消えていない。3つが並び立ち、1つの契約の中で組み合わさる

席は消えていません。3つが並び立ち、1つの契約の中で組み合わさります。

買う側:契約の前に、言葉の定義を確かめる

3つのうち、いちばん気をつけたいのが成果で数える方式です。

一見すると、買う側に有利に見えます。成果が出たときだけ払うのだから、無駄がない。実際、その考え方で設計されています。

問題は、何をもって「成果」とするかです。ここは提供する側が決めます。そして、その定義は買う側の直感とずれることがあります。

「解決」には、2つの意味がある

たとえば「解決」という言葉です。多くの人は、顧客が満足して帰った状態を思い浮かべます。しかし実際の判定では、顧客が黙って会話を離れた場合も「解決」に数えられることがあります。途中で諦めた人も、集計上は解決に入るわけです。

カスタマーサポート向けAIを提供するIntercomは、この基準を公式ドキュメントで公開しています。同社の場合、1件の成果あたり0.99ドルで、顧客が確認した場合と、それ以上助けを求めずに離れた場合の両方を解決として数えます。人間の担当者を求められた場合や処理が失敗した場合は課金しないことも明記されています。

基準を公開している点は誠実です。問題は設計ではなく、買う側が言葉の意味を確かめずに契約することにあります。

契約前に、3つ確かめる

成果で数える方式に共通する確認事項として、3つに整理します。

1. その「成果」は、どういう状態を指すのか
言葉ではなく、判定の条件を聞きます。何が起きたら1件と数えるのか。

2. 上限は設定できるのか
月にいくらまで、と決められるか。想定を超えたとき、止まるのか、そのまま課金され続けるのか。あわせて、成果の種類ごとに単価が違わないかも確認します。種類によって10倍の差がつく例もあり、どれが何件出るかで月額は変わります。

3. 失敗したときは、どうなるのか
うまくいかなかった場合に課金されるかどうか。ここも会社によって違います。

この3つを契約前に確かめておけば、請求書を見て驚くことは減ります。導入後に効果をどう測るかは、AIの効果は、どう測る?で扱っています。

売る側:同じことが、自社の値付けに跳ね返る

ここまでは買う側の話でした。しかしこの変化は、売る側にも回ってきます。

お客様がAIの成果課金に慣れてくると、こう言われる場面が出てきます。「成果に応じた料金にしてもらえませんか」。

聞こえは悪くありません。自信があるなら受けられるはずだ、とも思えます。ただ、受ける前に確かめることがあります。

1件あたりの原価が、読めているか。

成果報酬とは、成果が出るまでの費用を自社が先に負担するということです。1件の成果を出すのに、平均していくらかかるのか。それが分かっていなければ、単価を決めようがありません。

そして、いちばん怖いのはここです。原価が読めないまま成果報酬で受けると、売れるほど赤字になります。 通常の商売なら、赤字は売上が落ちたときに来ます。成果報酬では逆で、うまくいったときに来ます。気づくのが遅れやすい形です。

先ほど買う側で挙げた3つの確認事項は、そのまま売る側の設計項目になります。何をもって成果とするか。上限を設けるか。失敗したときはどうするか。買うときに気になった点は、売るときに決めるべき点です。

値付けそのものの考え方は値付けは、利益を動かす最大のレバーで、料金体系を含めた事業の組み立て方はビジネスモデルとは何かで扱っています。

なお、どの単位で売るかは、計算だけでは決まりません。どの顧客と、どういう関係を築きたいのか。その判断は経営者の手元に残ります。

よくある質問

Q. 成果報酬のほうが、結局は安いのでは?

量によります。件数が少ないうちは安く、増えるほど高くなるのが成果課金の性質です。

自社の想定件数を出して、席で数える方式の場合と比べてみてください。ある件数を超えると逆転する点があります。その分かれ目がどこかを知っておくと、判断しやすくなります。

Q. 月額が読めないと困ります。どう予算を組めばよいですか?

上限の設定ができるかを、まず確認します。設定できるなら、その額を予算として置けます。

設定できない場合は、過去3か月の実績を見て、多かった月を基準に組みます。少なかった月で組むと、忙しい月に足が出ます。

Q. 自社も成果報酬で売れますか?

1件あたりの原価が読めているなら、選択肢になります。読めていないなら、まずそこからです。

順序としては、原価を出す、次に成果の定義を決める、最後に単価を決める。この順番を飛ばすと、受注のたびに損が出る契約になりかねません。

まとめ——単位が変われば、判断の基準も変わる

AIの料金は、席で数える方式から成果で数える方式へ、単純に置き換わっているわけではありません。数える単位が3つに増え、組み合わさるようになった。これが実態です。

買う側として大事なのは、契約前に言葉の定義を確かめることです。その「成果」は、どういう状態を指すのか。上限は設けられるのか。失敗したときはどうなるのか。

そして同じ問いが、売る側に回ったときの設計項目になります。何を成果と呼び、いくらに設定し、どこで止めるか。

どちらの立場でも、土台になるのは同じものです。1件あたり、いくらかかっているのか。

ただ、ここが難しいところです。

自社の1件あたりの原価は、意外と出ていません。材料費や外注費なら分かります。しかし、そこにかかっている人の時間、問い合わせ対応の手間、やり直しの分。それらを含めた1件あたりの実際の姿は、帳簿の科目を眺めていても見えてきません。

原価が見えていないと、成果報酬は受けられません。買うときも、上限をいくらに置けばいいか決められません。

ベンチャーネットは、中小企業の経営を「見える化」し、「わかる化」を経て「儲かる化」へつなぐ伴走を続けてきました。1件あたりの原価を出すことも、その見える化の一部です。

御社の1件は、いまいくらかかっているか。一度、外から一緒に並べてみませんか。

▶ 原価と料金体系の整理について相談する

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

持田 卓臣のアバター 持田 卓臣 株式会社ベンチャーネット代表取締役

株式会社ベンチャーネット 代表取締役
2005年に株式会社ベンチャーネットを設立後、SEOをはじめとするデジタルマーケティング領域のコンサルティングサービスを展開
広告・SNS・ウェブ・MA・SFAと一気通貫で支援を行っています
著書に『普通のサラリーマンでもすごいチームと始められる レバレッジ起業 「バーチャル社員」があなたを救う』(KADOKAWA、2020年)

目次