Odooのフィールドサービス(FSM)の現在地|アプリは廃止され、Planningに統合されました

「Odoo フィールドサービス」で調べると、情報が食い違います。

独立したアプリとして紹介している記事がある。一方で、Planningというアプリの一部として説明している記事もある。どちらが正しいのか分かりません。

先に結論をお伝えします。

Odoo公式のリリースノート(バージョン19.2)に、次の趣旨の記載があります(2026年8月確認)。

フィールドサービスアプリは廃止されました。その機能はPlanningアプリに統合されています。

つまり、古い情報と新しい情報が、いま同時にネット上に存在している状態です。

この記事は、Odoo(オドゥー:オープンソース由来の統合業務アプリ群)で現地対応の業務を扱おうとしている方に向けて、現在地を整理するために書いています。

⚠️ エディションについて

統合先であるPlanningアプリ、および現地対応に関わる機能は、有償の Enterprise版 が対象と案内されています。無料の Community版では利用できません

専門用語の整理:フィールドサービス(FSM)とは、設備の設置・保守・点検・修理など、顧客の現場に出向いて行う業務の管理を指します。

目次

何が変わったのか

事実関係を整理します。

フィールドサービスアプリがPlanningアプリに統合された経緯を示した図 従来はフィールドサービスとPlanningが別々のアプリとして存在し、現地作業の管理と要員のシフト計画が分かれていました。バージョン19.2以降はフィールドサービスが廃止され、その機能がPlanningに統合されて、要員の割り当てと現地作業の実行が1つのアプリで扱われる構成になったことを示しています。 従来(19.1まで) 現在(19.2以降) フィールドサービス 現地作業の指示と作業報告 使用部材と作業時間の記録 Planning 要員のシフトと割り当て 予定の公開と共有 計画と実行が別のアプリ 両方を導入する前提だった Planning(統合後) 要員のシフトと割り当て 予定の公開と共有 現地作業の指示と作業報告 使用部材と作業時間の記録 機能はPlanningに移されたと案内されています (Odoo公式 19.2 リリースノート) 計画と実行が1つになる 導入するアプリは1つで足りる

公式の記載

Odooのリリースノート(19.2)には、フィールドサービスアプリが廃止され、その機能がPlanningアプリに統合されたという趣旨の記載があります。

Odooが開催した公式のウェビナーでも、独立したアプリを終了し、コアの機能をPlanningへ統合したことが説明されています。

この変更は、名称の変更ではありません。 アプリの構成そのものが変わっています。

なぜ統合されたのか

推測ではなく、構造から説明します。

現地対応の業務は、2つの要素が常にセットです。

要素内容
計画誰が、いつ、どこへ行くか
実行現場で何をして、何を使い、どれだけ時間がかかったか

これが別々のアプリに分かれていると、同じ予定を2か所で扱うことになります。

  • Planningで技術者のシフトを組む
  • フィールドサービスで作業を割り当てる
  • どちらが正なのかが曖昧になる

この重複が、統合の理由と考えると理解しやすいはずです。

計画(誰のどの時間を押さえるか)と実行(そこで何をしたか)は、1つの記録で扱うほうが素直です。

古い情報の読み替え方

ここがこの記事でいちばん実用的な部分です。

見つけた情報がどのバージョンのものかを判断する手順を示した図 情報を見つけたらまず対象バージョンの記載を探し、記載がない場合は公開日を確認します。19.1以前を扱う情報は構成が異なるため、機能の考え方だけを参考にして画面や手順は読み替える、という判断の流れを示しています。 その情報は、どのバージョンのものか 対象バージョンの記載を探す 記載がある そのまま判断できる 記載がない 公開日で推測する 19.2以降を扱っている Planningの中の機能として 読めばよい 19.1以前を扱っている 考え方だけを参考にする 画面や手順は読み替える 最終的な確認は、対象バージョンの公式ドキュメントで行ってください

業務の考え方は、古い情報でも役に立ちます

アプリの構成は変わりましたが、現地対応という業務そのものは変わりません。

  • 作業指示に、場所・顧客・必要な部材・手順を持たせる
  • 現場で作業報告(ワークシート)を記入する
  • 使った部材を在庫から引き落とす
  • かかった時間を記録し、請求につなげる

これらの考え方は、古い情報でも参考になります。 読み替えが必要なのは、どのアプリのどの画面で行うかという部分です。

変わったのは「導入計画」です

実務上いちばん影響があるのは、ここです。

フィールドサービスを別枠のアプリとして計画に入れる前提は、もう当てはまりません。

導入の見積や社内稟議で「フィールドサービスの導入」を独立した項目として立てていた場合、Planningの範囲として整理し直す必要があります。

これから現地対応の仕組みを作る場合

新規に検討する方は、次の順序で進めてください。

(1) まず、対象バージョンを確定する

すべてはここから始まります。

自社が使う(または使う予定の)バージョンによって、画面も名称も構成も変わります。バージョンを決めずに機能を調べても、情報が食い違うだけです。

バージョンの考え方は Odooのバージョンアップとサポート期間 にまとめています。

(2) 計画と実行を、1つの記録で扱う前提で設計する

統合後は、要員の割り当てと現場での実行が同じ記録になります。

  • 誰のどの時間を押さえるか
  • そこで何をするか
  • 実際にどうだったか

この3つが1本でつながる設計が、標準の形だと考えてください。

シフト・要員計画の各論は Odooのシフト・リソース計画(Planning) にまとめています。

(3) 現場の入力を、軽くする

現地対応で最も定着しにくいのは、現場での報告入力です。

3つの原則を守ってください。

  1. 粒度を細かくしすぎない(分単位の記録を求めない)
  2. 個人の評価に使わない(評価に使うと入力が歪む)
  3. スマートフォンで数十秒で終わる形にする

この3つを外すと、入力されなくなります。 そして入力されなければ、どんな機能も意味を持ちません。

(4) 通信環境を前提にしない

現場は、必ずしも電波が届く場所とは限りません。地下、山間部、金属に囲まれた設備の内部。

通信が不安定な場合にどう運用するかを、必ず実機で確認してください。 カタログの記載だけで判断しないでください。

既存のフィールドサービスを使っている場合

すでに旧構成で運用している場合、バージョンアップの際に影響が出ます。

確認すべきこと

項目内容
データの引き継ぎ過去の作業記録がどう扱われるか
作業報告の様式従来の様式がそのまま使えるか
現場の操作手順画面が変わるため、再教育が必要になる可能性
連携している他の仕組み外部との接続がある場合の影響

とくに3つ目を軽く見ないでください。

現場の担当者は、手順を覚えて使っています。 画面が変わると、一時的に作業効率が落ちます。バージョンアップの時期を繁忙期に置かないでください。

個別の影響は、対象バージョンと自社の設定によって変わります。 移行の前に必ず検証環境で確認してください。

バージョンアップの進め方は Odooのバージョンアップとサポート期間 をご覧ください。

Community版とEnterprise版の違い

Odooには、無料の Community版 と有償の Enterprise版 があります。

Community版はオープンソースとして無料で使えます。ただし、サーバの用意・アップデート・障害対応は自社の責任になり、公式サポートの対象外です。

統合先であるPlanningアプリは、Enterprise版が対象です。Community版では利用できないと案内されています。

つまり、現地対応の業務をOdooで扱うなら、Enterprise版が前提になります。

一方、プロジェクト管理と工数管理はCommunity版で利用できるとされています。作業の割り当てと時間の記録だけであれば、そちらで組み立てられる余地があります。

ただし、現場でのモバイル利用を重視する場合、公式のモバイルアプリはEnterprise版が対象と案内されています。現地対応では、この点が判断に直結します。

どの機能がどちらの版で使えるかはバージョンによって変わります。 検討時には必ず対象バージョンで確認してください。詳しくは Odoo Community版とEnterprise版の違い をご覧ください。

他のアプリとのつながり

アプリつながり方
シフト・リソース計画統合先。要員の割り当てと現地作業を扱う
ヘルプデスク問い合わせから現地対応が必要になった場合の引き渡し
プロジェクト管理案件としての採算管理
在庫管理現場で使った部材の引き落とし
設備保全自社設備の保全。顧客先の対応とは区別する

最後の行に注意してください。 自社の設備を守る保全と、顧客の現場に出向く業務は別の話です。

詳細はそれぞれの記事にまとめています。

入れないほうがよい場合

正直に書きます。

状況判断
訪問が月に数件。担当も1人入れる必要はありません
訪問先が固定で、作業内容も毎回同じ効果は限定的です
技術者が複数人おり、日々の割り当てが必要効果が出やすい領域です
使った部材と時間を請求につなげたい統合の価値が出ます

1行目を強調します。訪問が少なければ、カレンダーと連絡で足ります。

この仕組みが効くのは、割り当てを毎日決めなければならない規模からです。

専用のFSMサービスという選択肢

現地対応に特化した専用のサービスがあります。ルート最適化や、複雑な作業指示の管理では、専用サービスのほうが優れている部分があります。

Odooに意味があるのは、在庫・請求・会計まで同じ場所にある場合です。使った部材が在庫から減り、作業時間が請求につながる。この接続に価値を感じるかどうかで判断してください。

よくある質問

Q1. 結局、いま「フィールドサービス」という名前のアプリはありますか?

Odoo公式のリリースノート(19.2)では、廃止されたと案内されています。 機能はPlanningアプリに統合されています。

ただし、自社が使っているバージョンによっては、まだ旧構成のままの場合があります。 対象バージョンで確認してください。

Q2. 検索して出てくる古い記事は、まったく役に立ちませんか?

業務の考え方は参考になります。 現地対応で何を管理すべきかという整理は、構成が変わっても有効です。

読み替えが必要なのは、画面と手順です。 対象バージョンの公式ドキュメントで最終確認してください。

Q3. 今から導入する場合、何を見ればよいですか?

まず対象バージョンを決めてください。 そのうえで、Planningアプリの範囲として調べるのが現在の正しい入口です。

Q4. 既存の運用に、すぐ影響がありますか?

バージョンを上げなければ、すぐには変わりません。

ただし、いずれ上げる時期が来ます。影響の確認は、バージョンアップの計画に含めてください。

Q5. この記事の内容も、いずれ古くなりますか?

なります。 Odooは年1回のメジャーバージョンに加え、その間の更新もあります。

この記事は2026年8月時点の公式情報にもとづいています。 検討時には必ず、対象バージョンの公式ドキュメントで確認してください。

まとめ

「Odoo フィールドサービス」で調べたときに情報が食い違うのは、構成が変わったばかりだからです。

Odoo公式のリリースノート(19.2)に、アプリの廃止とPlanningへの統合が記載されています(2026年8月確認)。

名称の変更ではありません。アプリの構成そのものが変わっています。

背景は構造で理解できます。現地対応は「誰がいつどこへ行くか(計画)」と「そこで何をしたか(実行)」が常にセットです。別々のアプリだと同じ予定を2か所で扱うことになり、どちらが正か曖昧になります。

情報を読むときは、まず対象バージョンを確認してください。

記載がなければ公開日で推測します。19.1以前を扱う情報は、業務の考え方だけを参考にし、画面と手順は読み替えてください。

実務上いちばん影響があるのは、導入計画です。フィールドサービスを別枠の項目として稟議に立てていた場合、Planningの範囲として整理し直す必要があります。

これから作る場合の順序は4つです。対象バージョンを確定する。計画と実行を1本の記録で設計する。現場の入力を軽くする。通信環境を前提にしない。

とくに3つ目です。粒度を細かくしすぎない、個人の評価に使わない、スマートフォンで数十秒で終わる形にする。この3つを外すと入力されなくなり、どんな機能も意味を持ちません。

もう少し詳しく知りたい方へ

ベンチャーネットは、ERP導入支援を手がける会社です。SAP・NetSuite・Odoo・AIスクラッチ開発という4つの選択肢を扱っているため、特定の製品に偏らない立場でご提案できます。

「自社のバージョンでは何が使えるのか」の確認からご相談を承っています。

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この記事を書いた人

持田 卓臣(もちだ たくおみ)
株式会社ベンチャーネット 代表取締役

ヒューレット・パッカード社でITコンサルタントとして従事した後、2005年に株式会社ベンチャーネットを設立。
Oracle NetSuite Solution Provider Partner として、中堅・中小企業向けクラウドERP「NetSuite」の導入・運用支援を提供しています。
SEO・広告・SNS・ウェブ・MA・SFAと一気通貫で培ってきたデジタルマーケティング領域の業務知見を活かし、NetSuiteを軸とした経営DXを支援しています。
著書:『普通のサラリーマンでもすごいチームと始められる レバレッジ起業「バーチャル社員」があなたを救う』(KADOKAWA、2020年)

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