Odoo Onlineとは?SaaS版でできること・できないこと

Odooを使い始めるとき、いちばん手軽な選択肢が Odoo Online です。

サーバを用意する必要がありません。申し込めば、その日から使えます。バックアップもアップデートもOdoo側が行います。

中小企業にとって、これは大きな価値です。

ただし、手軽さには代償があります。この記事では、その代償が何なのかを正直にお伝えします。

導入形態全体の比較は Odooの導入形態3つを比較 をご覧ください。

目次

Odoo Onlineとは何か

Odoo Onlineは、Odoo社が提供する SaaS(Software as a Service:インターネット経由で使うソフトウェア)です。

Odoo公式によれば、クラウド上で利用でき、Odoo側がセキュリティやパフォーマンスを管理し、バックアップも自動で行われるとされています(2026年8月確認)。

Odoo Onlineにおける責任範囲の分担を示した図 サーバ、セキュリティ更新、バックアップ、アップグレードといったインフラ側の作業はOdoo側が担当し、業務設計、マスタ整備、権限設定、データの正しさは自社が担当するという分担を示した図です。 誰が何を担当するか Odoo側が担当する サーバの用意と維持 セキュリティ更新 バックアップ アップグレード 自社が担当する 業務の設計 マスタの整備 権限の設定 データの正しさ

この分担は、一人情シスの会社にとって決定的な意味を持ちます。夜中にサーバが落ちたとき、対応するのが自分かどうかが変わるからです。

その視点は 一人情シスのためのOdoo運用術 にまとめています。

【最重要】カスタムモジュールを入れられない

ここが、この記事でいちばんお伝えしたい点です。

Odoo Onlineでは、独自に開発したモジュールやサードパーティ製のモジュールを導入できません。

Odoo公式も、カスタムモジュールを扱いたい場合はOdoo.shまたはオンプレミスを選ぶ構成を案内しています。

なぜこれが重要なのか

日本でOdooを使う場合、この制約が効いてくる場面があります。

  • 日本固有の帳票要件に対応するモジュール
  • 国内のモールや配送、決済との連携モジュール
  • 業界特有の処理を行う独自開発

これらは、多くの場合カスタムモジュールとして実装されます。Odoo Onlineでは、この道が使えません。

では何ができるのか

「まったくカスタマイズできない」わけではありません。

Odoo Onlineでできるカスタマイズの範囲と、できない範囲を示した図 設定変更や画面項目の追加、自動化ルール、帳票の調整はOdoo Onlineでも可能である一方、独自開発モジュールやサードパーティモジュールの導入、ソースコードの改変はできないことを示した図です。 できる範囲と、できない範囲 できる アプリの選択と設定変更 画面への項目追加(Studio) 自動化ルールの設定 帳票レイアウトの調整 価格表・承認ルールの設計 ※Studioはプラン条件あり できない 独自開発モジュールの導入 サードパーティ製モジュール ソースコードの改変 サーバ側の設定変更 データベースへの直接アクセス → Odoo.sh または オンプレミスへ

Odoo Studioを使えば、画面への項目追加や自動化の設定は行えます。設定でできる範囲は、想像よりかなり広いというのが実感です。

ただし、Studioの利用にはプランの条件があります。 詳しくは Odoo Studioとは?ノーコードカスタマイズの範囲 をご覧ください。

判断の分かれ目は「標準に寄せられるか」

Odoo Onlineを選べるかどうかは、突き詰めると1点に集約されます。

自社の業務を、標準機能と設定の範囲に寄せられるか。

寄せられるなら、Odoo Onlineは最も手離れのよい選択です。寄せられないなら、別の形態を選ぶ必要があります。

判断のための3つの質問

  1. 日本固有の帳票要件は、標準の調整で足りるか
  2. 外部システムとの連携が必要か(モール、配送、決済、既存の会計ソフト)
  3. 業界特有の処理を、独自に作り込む必要があるか

3つとも「いいえ」なら、Odoo Onlineで問題ありません。ひとつでも「はい」があるなら、設計段階で実現方法を確認してください。

標準に寄せる考え方は OdooとFit to Standard にまとめています。

途中で気づくと、移行が必要になる

いちばん避けたいのは、運用を始めてから制約に気づくことです。

「この機能を追加したい」となったときに、Odoo Onlineでは実現できない。そこから Odoo.sh やオンプレミスへ移る判断をすることになります。

移行できないわけではありません。ただし、時間と費用がかかります。 最初に見極めておくほうが、確実に安くつきます。

Community版との違い

混同されやすいので、整理しておきます。

Odoo OnlineCommunity版の自社運用
費用有償のサブスクリプションライセンスは無料
サーバOdooが用意自社で用意
保守・障害対応Odooが担当自社が担当
公式サポートありなし
カスタムモジュール導入できない導入できる

「無料だから」と「手軽だから」は、まったく別の話です。

Community版は無料ですが、サーバも保守も自社の責任です。Odoo Onlineは有償ですが、そこをOdooが担当します。

詳しくは Odoo Community版とEnterprise版の違いOdooの導入形態3つを比較 をご覧ください。

Odoo Onlineが向いている会社・向かない会社

ベンチャーネットは、SAP・NetSuite・Odoo・AIスクラッチ開発という4つの選択肢を扱っています。導入形態では、次のように整理できます。

状況検討したい選択肢
業務を標準に寄せられる。社内に技術者がいないOdoo Online が最適
カスタム開発や外部連携が必要Odoo.shとは? を参照
データを自社内に置く方針があるOdooをオンプレミスで運用する を参照
そもそも業務が固有すぎてパッケージに乗らないAIスクラッチ開発という選択肢

最終行について補足します。AIスクラッチ開発は、ライセンス費用がかからない代わりに開発費と保守費が別途かかります。判断材料は パッケージERPかスクラッチ開発か に整理しました。

よくある質問

Q1. あとからOdoo.shに移れますか?

移ることは可能です。ただし、移行の作業と費用が発生します。

カスタム開発が必要になる見込みがあるなら、最初からOdoo.shを検討するほうが無駄がありません。

Q2. データはどこに保管されますか?

Odoo側のインフラに保管されます。データの所在について社内規程や取引先の要件がある場合は、契約前に確認してください。

自社内に置く必要があるなら、オンプレミスが選択肢になります。

Q3. バックアップはどうなりますか?

Odoo公式は、インフラに日単位の増分バックアップが含まれると案内しています。

ただし、復旧できることを一度確認しておいてください。 考え方は Odooのセキュリティとバックアップの考え方 にまとめています。

Q4. 既存の会計ソフトと連携できますか?

外部システムとの連携方法は、プランと構成によって変わります。API連携の可否を含めて、事前に確認してください。

Q5. アップグレードは自動ですか?

アップグレードのサービスは提供されています。ただし、設定や運用への影響がないかは、自社側で確認が必要です。

考え方は Odooのバージョンアップとサポート期間 にまとめています。

まとめ

Odoo Onlineは、Odooをもっとも手軽に始められる形です。サーバも、セキュリティ更新も、バックアップもOdoo側が担当します。

社内に技術者がいない中小企業にとって、この価値は大きいと考えています。

一方で、明確な制約があります。独自開発モジュールやサードパーティ製モジュールを導入できません。

日本固有の帳票、外部システムとの連携、業界特有の処理。これらが必要になったとき、Odoo Onlineでは実現できない場合があります。

だからこそ、判断は1点に集約されます。自社の業務を、標準機能と設定の範囲に寄せられるか。

寄せられるなら、迷わずOdoo Onlineでよいと思います。寄せられないなら、Odoo.shかオンプレミスを検討してください。

運用を始めてから気づくと、移行の手間が発生します。 最初に見極めてください。

もう少し詳しく知りたい方へ

ベンチャーネットは、ERP導入支援を手がける会社です。SAP・NetSuite・Odoo・AIスクラッチ開発という4つの選択肢を扱っているため、特定の製品に偏らない立場でご提案できます。

「自社の要件が標準の範囲に収まるかどうか」の切り分けからご相談を承っています。

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この記事を書いた人

持田 卓臣(もちだ たくおみ)
株式会社ベンチャーネット 代表取締役

ヒューレット・パッカード社でITコンサルタントとして従事した後、2005年に株式会社ベンチャーネットを設立。
Oracle NetSuite Solution Provider Partner として、中堅・中小企業向けクラウドERP「NetSuite」の導入・運用支援を提供しています。
SEO・広告・SNS・ウェブ・MA・SFAと一気通貫で培ってきたデジタルマーケティング領域の業務知見を活かし、NetSuiteを軸とした経営DXを支援しています。
著書:『普通のサラリーマンでもすごいチームと始められる レバレッジ起業「バーチャル社員」があなたを救う』(KADOKAWA、2020年)

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