multibookとは?海外拠点管理に強いクラウド会計・ERPの機能・特徴・費用・向いている企業を解説

海外に拠点を持つと、こんな悩みが出てきます。

  • 拠点ごとに会計ソフトがバラバラで、数字の集約に時間がかかる
  • 本社から海外拠点の「今」がリアルタイムで見えない
  • 連結決算のたびに、Excelでの手作業が発生する

こうした「海外拠点管理」の課題に特化したクラウドサービスが、multibook(マルチブック)です。

この記事では、multibookの機能・特徴・費用・向いている企業を、中立的な立場で整理します。あわせて、よく混同される「NetSuiteのマルチブック会計機能」との違いや、海外拠点のシステムを選ぶときの観点もお伝えします。

この記事で分かること

  • multibookがどんなサービスで、何ができるのか
  • 費用の考え方と、向いている企業・検討が必要な企業
  • NetSuiteの「マルチブック会計」機能との違い
  • 海外拠点のシステム選びで失敗しないための観点

読了の目安:約8分

目次

multibookとは

multibookは、海外拠点管理に特化したクラウド型の会計・ERPサービスです。提供元は、東京・品川に本社を置く株式会社マルチブックです。

ERPとは「Enterprise Resource Planning(企業資源計画)」の略です。会計・販売・在庫・購買といった基幹業務を、ひとつのシステムでまとめて管理する仕組みを指します。

multibookは、その中でも「海外拠点の会計と経営の見える化」に強みを持ちます。

クラウド型なので、海外拠点側にサーバーを置く必要がありません。インターネットがあれば、本社からでも各拠点の経営・在庫・会計の情報をリアルタイムに把握できます。

株式会社マルチブックの公式情報によると、multibookは世界40カ国・750社以上で利用されています(出典:マルチブック公式、2026年6月時点)。製造・商社・飲食・建設など、業種を問わず利用されています。

NetSuiteの「マルチブック会計」機能との違い(混同に注意)

名前が似ているため、よく混同される点を先に整理します。

  • 製品のmultibook:株式会社マルチブックが提供する独立したサービス(海外拠点管理クラウド)
  • NetSuiteのマルチブック会計(Multi-Book Accounting):クラウドERP「NetSuite」が持つ標準機能のひとつ

NetSuiteの「マルチブック会計」は、1つの取引を複数の会計基準(たとえば日本基準とIFRS)で同時に記帳するための機能です。NetSuiteという製品の中の一機能であり、独立したサービスではありません。

つまり、提供元も位置づけも異なります。本記事で扱うのは、製品としてのmultibookです。

なぜ今、海外拠点管理にクラウド会計・ERPなのか

海外展開する日本企業にとって、拠点の数字をどう見える化するかは、年々重要になっています。背景には、3つの流れがあります。

ひとつ目は、連結決算の早期化です。海外子会社の数字が遅れると、グループ全体の決算が遅れます。

ふたつ目は、グループ・ガバナンス(内部統制)の強化です。拠点任せの会計では、誤りや不正の検知が遅れがちです。

3つ目は、人材と時間の制約です。海外拠点に専任のIT要員や経理担当を厚く置くのは、現実的に難しいケースが多くあります。

クラウド型のサービスは、これらの課題と相性が良いとされています。拠点側に設備を持たず、本社主導で統制をかけられるためです。

multibookの主な機能

multibookは、海外拠点の業務を一通りカバーする機能を備えています。公式情報をもとに、主な機能を整理します。

  • 会計:海外拠点の記帳から財務諸表の出力まで。現地の勘定科目体系と、本社管理用の科目体系の両方に対応
  • ロジスティクス:受注・発注を含む販売・購買の管理
  • 固定資産・リース資産:資産の管理。日本の新リース会計への対応機能も提供
  • 経費精算:拠点での経費の申請・精算
  • 外部連携:他システムとのデータ連携
  • マネジメントコックピット:業績推移・資金管理・不正取引の検知・関係会社間の債権債務残高・為替エクスポージャーを一画面で把握

加えて、内部統制を支える機能も持ちます。伝票や財務諸表のレベルでの承認、機能ごとの利用権限の設定が可能です。

財務諸表から個別の伝票までドリルダウンでき、伝票には証憑を添付できます。摘要欄はログイン言語に自動翻訳されるため、各国のスタッフが同じ画面を共有しやすくなっています。

グループ財務諸表の機能では、各拠点を横並びで比較できます(出典:マルチブック公式)。

multibookの特徴・強み

multibookの特徴は、「海外拠点に特化していること」に集約されます。

  • 多言語対応:日本語・英語・中国語・韓国語・タイ語・ベトナム語など12言語に対応。現地スタッフが母国語で使える
  • 多通貨・各国要件対応:外貨建ての残高管理や、各国の税務・会計要件に対応
  • 複数帳簿:現地基準と本社管理基準の両方で財務諸表を出力できる。IFRSにも対応
  • 導入スピード:クラウド型のため、最短2週間で本稼働が可能とされる(出典:マルチブック公式)
  • 導入・運用支援:会計・海外展開に詳しいバイリンガルのコンサルタントによる導入支援や、業務のアウトソーシング(BPO)サービスも提供

なお、中国での利用には制約があるとされています。利用を検討する場合は、提供元への確認が必要です。

multibookの費用

multibookの費用は、ユーザー数や伝票数に応じた変動型の料金体系です。

公開された定額の料金表ではなく、利用規模に応じた個別見積もりとなります。そのため、正確な金額は提供元の株式会社マルチブックに問い合わせるのが確実です。

クラウド型のため、サーバーや周辺機器を自前で用意する必要はありません。この点は、初期コストを抑えたい企業にとって利点になります。

向いている企業・検討が必要な企業

multibookは、すべての企業に最適というわけではありません。自社の課題のタイプによって、向き不向きが分かれます。

ここで大切なのは、「どちらの製品が優れているか」ではなく、「自社の課題が何か」です。海外拠点の会計に課題が限定されるのか、それとも全社の経営基盤そのものを統合したいのか。この切り分けが出発点になります。

下の表は、課題のタイプ別に、適したシステムの方向性を整理したものです。

観点海外拠点管理特化型(multibook型)全社統合型クラウドERP(NetSuite型)
主な目的海外拠点の会計・連結・内部統制の見える化国内本社を含む全社の基幹業務を一気通貫で統合
カバー範囲会計を中心に、受発注・資産・経費(海外拠点向け)会計・販売・在庫・購買・製造・CRMなどを統合
多言語・多通貨・各国要件海外拠点に特化した強みグローバル対応の機能を標準で搭載
導入スピード最短2週間〜(拠点単位・出典:マルチブック公式)業種別パッケージで短縮可。規模により3か月〜
向いている企業海外拠点の会計・連結が中心課題/現地スタッフが多言語/まず拠点単位で早く始めたい全社の基盤を統合したい/将来グローバルに拡張/販売・在庫・CRMまで一元化したい

どちらが上ということではありません。海外拠点の会計に課題が絞られているなら、特化型のmultibookが現実的な選択肢です。

一方で、国内本社を含めた全社の基幹を一気通貫で統合したい場合は、全社統合型のクラウドERPも候補に入ります。代表的な製品が、世界220地域・43,000社以上で利用されているNetSuiteです(出典:Oracle NetSuite公式)。NetSuiteはAIを活用したクラウドERPで、OneWorldという機能でグローバルの多拠点・多通貨・多言語に対応します。

なお、本社の基幹システムは残したまま、海外拠点にクラウドERPを展開する「2層ERP(2-Tier)」という考え方もあります。NetSuiteの海外拠点での使い方は、別記事で詳しく解説しています。NetSuiteのグローバル展開機能もあわせてご覧ください。

海外拠点のシステム選びで失敗しないための観点

ここからは、特定の製品を勧めるためではなく、海外拠点のシステム選びでつまずかないための観点をお伝えします。ベンチャーネットがNetSuite導入の現場で見てきた、よくあるパターンを一般化して整理しました。

「会計だけ」で選び、後から全社統合で手戻りする

海外拠点の会計の手間だけに注目して選ぶケースです。全社の将来像を描かないまま、目の前の課題だけで判断してしまいます。

すると、拠点の会計は片付いても、販売・在庫・原価が分断されたまま残ります。後から全社の統合ERPへ乗り換えることになり、二重の投資が発生しがちです。

回避するには、自社の課題が「海外拠点の会計に限定されるのか」「全社の経営基盤なのか」を、先に切り分けることが大切です。

現地任せにして、ガバナンスが効かなくなる

拠点ごとに別々の現地ソフトを使い、本社から数字が見えない状態です。連結のたびに、Excelでの集約が発生します。

この状態では、内部統制が効きません。誤りや不正の検知が遅れ、決算も遅延します。

回避するには、多拠点を横並びで見える化できる仕組みと、承認・権限の設計を最初に組み込むことが重要です。本社主導のガバナンスモデルを、導入の前提として設計します。

多言語・各国要件・将来の拡張を軽視する

今ある1〜2拠点だけで判断し、日本語のUIだけで選んでしまうケースです。各国の税務・会計要件を後回しにすることもあります。

拠点が増えると要件が破綻し、再選定に追い込まれます。現地スタッフが使いこなせず、システムが形骸化することもあります。

回避するには、対応言語・通貨・各国要件・拡張の余地を、最初から要件に入れておくことです。

これらに共通するのは、「ツールを選ぶ前に、自社の課題を整理する」という順序です。ベンチャーネットは、この課題整理の段階から一緒に考える伴走者でありたいと考えています。

multibookとNetSuiteはどう違う?

ここまで見てきたとおり、multibookとNetSuiteは、そもそも見ている範囲が違います。

multibookは、海外拠点の会計・連結・内部統制に特化したサービスです。NetSuiteは、国内本社を含む全社の基幹業務を統合する、全社統合型のクラウドERPです。

つまり「海外拠点の会計を効率化したい」のか、「全社の経営基盤を一本化したい」のかで、検討する製品が変わります。

両者の機能・価格・導入の違いをより詳しく知りたい場合は、multibookとNetSuiteの違いで比較しています。あわせてご覧ください。

よくある質問(FAQ)

Q1. multibookとNetSuiteは、どちらが良いですか?

どちらが優れているという話ではなく、自社の課題のタイプによります。

海外拠点の会計・連結に課題が限定されるなら、特化型のmultibookが現実的です。国内本社を含む全社の基盤を一気通貫で統合したいなら、全社統合型のNetSuiteが候補になります。詳しい比較は、multibookとNetSuiteの違いをご覧ください。

Q2. NetSuiteの「マルチブック会計」機能と、製品のmultibookは同じですか?

別物です。

NetSuiteの「マルチブック会計(Multi-Book Accounting)」は、1つの取引を複数の会計基準で同時に記帳する、NetSuiteの標準機能です。一方、製品のmultibookは、株式会社マルチブックが提供する独立したサービスです。名前は似ていますが、提供元も位置づけも異なります。

Q3. multibookの費用はどれくらいですか?

ユーザー数・伝票数に応じた変動型で、個別見積もりとなります。

公開された定額表はないため、正確な金額は提供元の株式会社マルチブックへの問い合わせが確実です。

Q4. multibookは、どんな企業に向いていますか?

海外、特に東南アジアを中心に拠点を持ち、海外拠点の会計・連結・内部統制が中心課題の企業に向いています。

現地スタッフが多言語で、まず拠点単位で早く始めたい場合にも相性が良いとされます。逆に、国内本社を含めて全社の基幹を統合したい場合は、全社統合型のERPもあわせて検討するとよいでしょう。

まとめ

multibookは、海外拠点管理に特化したクラウド型の会計・ERPサービスです。多言語・多通貨・各国要件・複数帳簿に対応し、海外拠点の会計と経営の見える化に強みを持ちます。

最後に、お伝えしたいことを整理します。

  • multibookは「海外拠点の会計・連結」に強い特化型のサービス
  • 全社の経営基盤を統合したい場合は、NetSuiteのような統合型ERPも候補になる
  • どちらを選ぶかの前に、まず「自社の課題が海外拠点の会計なのか、全社の経営基盤なのか」を整理することが出発点

システム選びは、単なるツールの比較ではありません。自社の経営をどう見える化し、どう回していくかという、経営そのものの話です。

「うちの場合はどちらが向いているのか」と迷ったときは、課題の整理から一緒に考えさせてください。

もう少し詳しく知りたい方へ

※製品multibookそのものの導入をご検討の場合は、提供元の株式会社マルチブックへお問い合わせください。

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この記事を書いた人

持田 卓臣のアバター 持田 卓臣 株式会社ベンチャーネット代表取締役

持田 卓臣(もちだ たくおみ)
株式会社ベンチャーネット 代表取締役

ヒューレット・パッカード社でITコンサルタントとして従事した後、2005年に株式会社ベンチャーネットを設立。
Oracle NetSuite Solution Provider Partner として、中堅・中小企業向けクラウドERP「NetSuite」の導入・運用支援を提供しています。
SEO・広告・SNS・ウェブ・MA・SFAと一気通貫で培ってきたデジタルマーケティング領域の業務知見を活かし、NetSuiteを軸とした経営DXを支援しています。
著書:『普通のサラリーマンでもすごいチームと始められる レバレッジ起業「バーチャル社員」があなたを救う』(KADOKAWA、2020年)

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