multibookとNetSuiteの違い|海外拠点管理・グローバルERP比較

海外拠点を抱える企業のERP選定で、よく比較対象として挙がるのが「multibook」と「NetSuite」です。

どちらも海外拠点管理に対応したクラウド型のシステムですが、実は 製品カテゴリが異なります。multibookは海外拠点の会計・ERPに特化したツール、NetSuiteはグローバル経営を統合するクラウドERPです。

そのため「○×表の数を比べる」という比較の仕方では、自社にとっての最適解は見えてきません。

この記事は、NetSuite認定パートナー(Solution Provider)であるベンチャーネットがお届けします。multibookとNetSuiteの違いを「自社の状況からどう選ぶか」という観点で整理しました。

本記事でわかること:

  • multibookとNetSuiteの違いを一言で言うと
  • それぞれの特徴と向いている企業
  • 機能・料金・サポートの3軸比較表
  • 自社状況別の判断フレーム(3つの問い + 5つのモデルケース)
  • 「両方使う」「段階移行」という第3の選択肢
  • 比較選定でやりがちな3つの失敗
  • multibookからNetSuiteへ移管する場合のポイント

この記事は、次のような方を想定しています。

  • これからmultibookとNetSuiteを比較検討する方
  • すでにmultibookを使っていてNetSuiteも気になっている方
  • 海外拠点管理のERPを初めて選ぶ方

いずれの方にも、判断材料として役立つ内容を目指します。

目次

multibookとNetSuiteの違いを一言で言うと

最初に結論からお伝えします。

multibookは「海外拠点会計の特化ツール」、NetSuiteは「グローバル経営の統合基盤」です。

同じ「海外対応のクラウドERP」というカテゴリに見えますが、解こうとしている課題が異なります。

それぞれの製品が解こうとする課題

項目multibookNetSuite
解こうとする課題海外子会社の会計・ロジを 本社から見える化 する国内本社と海外子会社を 1つの基盤で経営統合 する
主な業務範囲会計/ロジスティクス/固定資産/経費精算会計/販売/在庫/CRM/EC/製造/プロジェクト管理
製品カテゴリ海外拠点管理特化型クラウド会計・ERPグローバル統合型クラウドERP
主な対象海外子会社の経理・現地スタッフ全社(経営者・経理・営業・現場)

この記事の読み方

本記事では、ERP選定の切り口を、multibookからNetSuiteへの移管の切り口をとして整理します。

ベンチャーネットはNetSuiteの導入支援を行う立場です。それでも、「multibookが合う企業はmultibookで、NetSuiteが合う企業はNetSuiteで」 が私たちの基本スタンスです。

製品比較の場面では、自社の課題に正直に向き合うことを何よりも大切にしています。

multibookとは:海外拠点管理に特化したクラウド型会計・ERP

multibookは、株式会社マルチブックが提供する、海外拠点管理に特化したクラウド型の会計・ERPサービスです。

製品概要

項目内容
提供元株式会社マルチブック
カテゴリクラウド型会計・ERPサービス
対応言語12カ国語(日本語・英語・タイ語・ベトナム語・韓国語・ミャンマー語・ドイツ語・フランス語・スペイン語・中国語(簡体字・繁体字)・インドネシア語)
多通貨対応あり
導入実績世界30カ国・500社以上(公式情報)

※製品情報の最新値はmultibook公式サイトでご確認ください。

主要機能

multibookは以下の機能群で、海外拠点の基幹業務をサポートします。

  • 会計:海外各国の法要件・商習慣に対応した会計機能
  • ロジスティクス:受注・出荷・請求、発注・入庫・仕入先請求、在庫管理
  • 固定資産管理:日次償却対応、将来の減価償却予測
  • IFRS16号リース資産管理:リース資産の管理機能
  • 立替経費精算:海外拠点の経費精算
  • マネジメントコックピット:グローバル多拠点の業績可視化
  • 外部システム連携:連結決算システム・生産管理システム等との連携

複数帳簿対応により、現地会計基準と日本の会計基準間の調整やIFRSにも対応しています。

向いている企業

ベンチャーネットの観点で、multibookが特に適すると考えられるのは次のような企業です。

  • 海外拠点が複数あり、本社で連結・見える化したい中堅企業
  • 海外子会社の経理を 短期間・低コスト で立ち上げたい企業
  • 現地ローカルソフトのブラックボックス化に悩んでいる企業
  • 国内本社は別ERPを使っており、海外拠点だけ統一したい企業
  • 海外側の業務範囲が 会計+ロジスティクス で完結する企業

multibookの最大の強みは、海外拠点会計の領域に特化していることです。この領域に課題が集中している企業にとっては、最適な選択肢になり得ます。

NetSuiteとは:グローバル経営を統合する#1 AIクラウドERP

NetSuiteは、Oracle社が提供する統合型のクラウドERPです。

製品概要

項目内容
提供元Oracle Corporation
カテゴリ統合型クラウドERP(#1 AI Cloud ERP)
対応地域世界220地域
対応通貨190通貨
対応言語27言語
導入実績43,000社以上(2026年4月時点公式情報)

主要機能

NetSuiteは、企業活動に必要な機能を1つのプラットフォームで提供する統合型ERPです。

  • 会計・財務:仕訳〜月次決算〜年次決算、複数通貨・複数拠点対応
  • 販売・購買・在庫管理:受発注・在庫・購買の統合管理
  • CRM:顧客情報・案件情報・営業活動の一元管理
  • EC:B2B/B2Cの統合EC機能
  • 製造:生産計画・原価管理
  • プロジェクト管理:プロジェクト型ビジネスの収益管理
  • OneWorld:グローバル本社・子会社の統合管理機能
  • AI機能:組込型AI+外部AI連携(ChatGPT・Claude等の連携にも対応)

NetSuiteの特徴は、これらの機能群が1つのデータベース上で統合されている点です。会計・販売・在庫・CRMのデータが同一基盤で連携するため、リアルタイムでの経営状況把握が可能になります。

向いている企業

ベンチャーネットの観点で、NetSuiteが特に適すると考えられるのは次のような企業です。

  • 国内・海外を 1つの統合基盤 で経営したい中堅・成長企業
  • 海外子会社の管理だけでなく 販売・在庫・CRM・ECも統合 したい企業
  • 将来の事業拡大・海外拠点追加に備えてスケーラビリティを重視する企業
  • 「モノの管理」「ヒトの管理」が中心課題の企業
  • 上場準備中で、内部統制と会計基盤の統一を進めたい企業

NetSuiteは、海外拠点だけでなく国内本社まで含めた全社の基幹システムとして使うことで、本来の価値を発揮します。

機能・料金・サポートの3軸比較

ここまでで、multibookとNetSuiteは「同じカテゴリの製品ではない」ことをお伝えしてきました。

その前提を踏まえた上で、参考までに3軸での比較を整理します。

機能カバレッジ比較

業務領域multibookNetSuite
海外子会社の会計◎(特化領域)○(OneWorldでカバー)
海外子会社のロジスティクス
固定資産・リース資産管理
経費精算
マネジメントコックピット○(SuiteAnalytics)
連結決算支援
国内本社の販売管理△(射程外)
国内本社の在庫管理
CRM
EC×
製造
プロジェクト管理
AIとの親和性◎(#1 AI Cloud ERP、組込型8機能、外部AI連携)

※ ◎主たる強み/○対応/△部分対応または周辺連携/×範囲外

向き不向き比較

観点multibookが向くNetSuiteが向く
海外拠点数1〜数拠点〜中規模数拠点〜多拠点
業務範囲会計+ロジ中心全社統合
日本本社の業務別システムを継続NetSuiteで統合
導入期間最短2週間〜(公式情報)SuiteSuccessで100日〜
初期投資低価格より大きい
カスタマイズ性標準機能中心高い拡張性
グローバル統合志向海外拠点見える化フェーズ全社統合フェーズ

料金構造の概観

multibookとNetSuiteは、料金体系の構造も異なります。

multibookは、ユーザー数と伝票数に応じた変動型の料金体系です。利用内容に合わせて個別見積もりとなります(公式情報による)。海外拠点会計に絞った導入のため、初期投資を抑えやすい構造です。

NetSuiteは、月20万円〜が出発点(ミニマム構成)となります。利用するモジュール・ユーザー数・必要なオプションによって変動し、構成によっては数百万円規模になることもあります。

最終的な金額の提示はOracle営業からとなります。概算についても、NetSuite認定パートナー(Solution Provider)であるベンチャーネット経由で、Oracle営業と共に対応します。

料金は「製品が解こうとしている課題の範囲」を反映したものです。単純な月額比較ではなく、自社の課題範囲に対する投資価値で判断することをお勧めします。

どちらを選ぶべきか:自社状況別の判断フレーム

multibookとNetSuiteは、製品カテゴリが異なります。

そのため「機能の多い少ない」で比較しても、自社にとっての最適解は見えてきません。

ここでは、ベンチャーネットがお客様と一緒に整理することの多い 3つの問い をご紹介します。この問いに順番に答えていくことで、自社にどちらが向いているかが見えてきます。

問1:解きたい課題は「海外子会社の見える化」か、「グループ全社の経営統合」か

最初の問いは、自社が解きたい課題の範囲 です。

  • 「海外子会社の会計・連結を見える化したい」が中心 → multibookが本命候補
  • 「国内本社も含めて、グループ全社の経営を統合したい」が中心 → NetSuiteが本命候補

multibookは、海外拠点管理に特化したクラウド型会計・ERPです。日本本社の経営統合までを射程に入れた製品ではありません。

NetSuiteは、グローバル経営の統合基盤です。国内本社と海外子会社を1つのシステムで管理することを前提に設計されています。

「自社がどちらの課題を強く感じているか」を、最初に言語化してください。

問2:海外拠点で必要な業務範囲は「会計+ロジ」までか、「販売・在庫・CRMまで統合」か

次の問いは、海外拠点で必要な業務範囲 です。

multibookは、会計を中心にロジスティクス・固定資産・リース資産・経費精算をカバーします。海外拠点で必要な機能が会計とロジスティクスまでで完結する企業には、最適なツールです。

一方で、海外拠点でも販売管理・在庫管理・CRM・ECなどを統合運用したい場合は、NetSuiteの統合基盤が活きてきます。

ここでも、自社の現実の業務を見つめ直してみてください。

「海外拠点で何の業務までシステム化したいのか」が決まれば、選択肢は自然に絞られていきます。

問3:将来の事業拡大・拠点追加・国内本社統合まで視野に入れているか

最後の問いは、時間軸 です。

  • 当面は海外拠点の見える化が最優先。将来の拡張は未定 → multibookで短期・低コストに始めるのが合理的
  • 将来の事業拡大・海外拠点追加・国内統合まで視野 → NetSuiteの長期投資価値が活きてくる

NetSuiteは、初期投資はmultibookより大きくなります。ただし、後から国内本社の販売・在庫・CRMまで統合する段になっても、システムの入れ替えは必要ありません。

ベンチャーネットでは、ERP選定の場面で「3年後・5年後の自社の姿をどう描くか」を必ずお伺いしています。今だけを見て選ぶと、数年後に再選定の手間が発生することがあるためです。

5つのモデルケースで判断する

3つの問いだけでは判断が難しい場合のために、ベンチャーネットの現場でよくお会いするモデルケースを5つ整理しました。

ケース自社の状況推奨候補
① 中小製造業(売上30〜100億・海外1〜3拠点)海外子会社の会計・在庫が見えない。本社は既存ERPで運用中multibook が本命。会計+ロジで早期に見える化
② 商社(複数地域・三国間貿易あり)海外拠点の販売・在庫・会計を統合したいNetSuite が本命。販売・在庫・会計の一気通貫
③ SaaS・IT企業(プロジェクト型・海外展開中)国内のプロジェクト管理と海外子会社の会計を統合したいNetSuite が本命。プロジェクト管理機能が活きる
④ 中堅製造業(売上100〜300億・海外5拠点超)既にmultibookを導入済み。国内統合も視野に入ってきた両方併用 または 段階移行 を検討(H2-6参照)
⑤ 上場準備企業(IPO目前・グローバル展開準備中)国内外の会計・内部統制を統一基盤で固めたいNetSuite が本命。OneWorldで本社・海外を統一

このモデルケースはあくまで目安です。実際の選定では、自社の業種・規模・将来構想を踏まえた個別判断が必要になります。

「両方使う」「段階移行」という第3の選択肢

ここまでは「multibookかNetSuiteか」の二択で整理してきました。

ただ実際には、二択で考える必要のないケースも多くあります。

ベンチャーネットがお客様と話していて、よく出てくるのが次の3つのパターンです。

パターンA:両方を併用する

海外子会社の会計・ロジはmultibook、国内本社の販売・在庫・会計はNetSuite という併用パターンです。

このパターンが向くのは、次のような企業です。

  • 海外拠点が多く、現地スタッフがmultibookで安定運用している
  • 国内本社の業務範囲が広く、NetSuiteの統合基盤が活きる
  • 連結決算で両者のデータを統合できる仕組みがある

両方のシステムが連携可能であることが前提になりますが、現実的な選択肢として成立します。

パターンB:multibook先行 → 将来NetSuiteへ移行

最初はmultibookで海外拠点の見える化を実現し、グループ全社統合の必要性が高まった段階でNetSuiteへ移行する というフェーズ移行型のパターンです。

このパターンが向くのは、次のような企業です。

  • 当面の最優先課題は海外拠点の見える化
  • 将来的にはグループ全社統合まで進めたいが、今は判断材料が揃わない
  • ERP導入のリスクを段階的に取りたい

移行のタイミングは、海外拠点数の増加、国内本社のシステム刷新時期、上場準備などが目安になります。

パターンC:最初からNetSuite OneWorldで一気に統合する

初めからNetSuite OneWorldで、国内本社と海外子会社を1つの基盤に乗せる というパターンです。

このパターンが向くのは、次のような企業です。

  • グローバル統合の意思決定が経営層で固まっている
  • 海外拠点の追加・M&Aを継続的に進める前提
  • 上場準備中で、グローバル基盤の統一を急ぐ必要がある

初期投資は最も大きくなりますが、後から統合する手間と比べれば、長期的には合理的なケースもあります。

段階的に進めることの価値

私たちベンチャーネットがお客様にお伝えしているのは、「焦らず、段階的に、確実に進める」 という姿勢です。

初期段階で無理をすると、現場が疲弊し、プロジェクト自体が停滞するリスクがあります。

段階的に進めるほうが、結果的に早く安定運用に到達するケースが多いと、私たちは現場で感じています。

「最初から100点」を目指さず、「まずは80点で動かして、徐々に磨いていく」ことが、ERPプロジェクトを成功に導く鍵です。

比較選定でやりがちな3つの失敗

multibookとNetSuiteの比較選定で、ベンチャーネットがよく見かける失敗パターンが3つあります。

ここでお伝えするのは、製品を売り込みたいから書くものではなく、お客様に「失敗してほしくない」という思いから共有させていただくものです。

私たちはお客様との対等な関係を大切にしています。比較選定のリスクを正直にお伝えし、一緒に乗り越える伴走者でありたい。そんな思いで、現場の知見を共有させていただきます。

原因①:機能カバレッジだけで比較してしまう

症状

機能対応表に○×を並べ、「○の数が多い方を選ぶ」という比較の仕方です。

なぜ失敗するか

multibookとNetSuiteでは、製品が解こうとする課題が違います。

機能の数を単純に比較すると、当然NetSuiteの方が多くなります。販売・在庫・CRM・EC・製造・プロジェクト管理など、multibookが射程にしていない領域までカバーしているためです。

しかし「自社が解きたい課題」と無関係な機能が多くても、それは意味がありません。むしろ、使わない機能の分だけライセンス費用と運用コストが発生してしまいます。

どう回避するか

機能の数を比べるのではなく、自社の解きたい課題から逆算 して、必要な機能要件を整理してください。

その上で「自社が必要とする機能を、どちらの製品が無理なくカバーできるか」を判断します。機能の○×表は、その後で参照する補助資料として使うのが正しい順番です。

原因②:日本側の会計要件をシステム側で全部吸収しようとする

症状

「日本本社の会計までNetSuiteで一本化したい」「multibookで日本本社の会計まで対応したい」と、システム側にすべてを寄せようとするケースです。

なぜ失敗するか

日本特有の会計要件には、消費税の特殊計算、源泉徴収、三分法、JGAAPとIFRSの差異対応など、海外発のERPが標準で完全対応しきれない領域があります。

これはmultibookでもNetSuiteでも同じです。「全部システム1本でやれる」と思い込むと、過剰なカスタマイズが発生し、コストもリスクも跳ね上がってしまいます。

どう回避するか

日本側の会計要件への対応は、フェーズ2以降に回す判断 や、周辺システム連携を前提に設計する判断 が必要なケースがあります。

ベンチャーネットでも、日本企業向けの導入では、こうした要件への対応を必ずプロジェクト初期の検討事項として組み込みます。

「全部1本で」ではなく「役割分担」の発想で設計することが、結果的にコストもリスクも最小化します。

原因③:「移管前提」で比較してしまう

症状

既にmultibookを使っている企業が「multibookを使い続けるか、NetSuiteに移管するか」の二択で考えてしまうケースです。

なぜ失敗するか

本来の選択肢は、二択ではありません。

  • 現状維持(multibookを使い続ける)
  • 併用(multibookとNetSuiteを役割分担で使う)
  • 段階移行(multibook先行、将来NetSuiteへ)
  • 全面移行(NetSuiteへ完全切り替え)

少なくとも、この4択があります。「移管するかしないか」だけで考えると、現状維持や併用の合理性が見えなくなり、不要な移管プロジェクトに進んでしまうリスクがあります。

どう回避するか

「今、自社が困っている課題は何か」から逆算 してください。

今のmultibookで業務が回っていて困っていないのであれば、無理に移管する必要はありません。

逆に新しい課題が出てきたタイミングで、改めて選択肢を整理するのが現実的です。具体例としては、「国内本社まで統合したい」「海外拠点が急増する」「上場準備で会計基盤を統一したい」といったタイミングが挙げられます。

ERPは「ITプロジェクト」ではなく「経営プロジェクト」

ここまでお伝えした3つの失敗に共通するのは、ERP選定をIT部門の判断だけで進めてしまう ことです。

ERP選定は、単なるシステム入れ替えの判断ではありません。

業務プロセスを見直し、部門間の壁を取り払い、会社の情報を一本につなぐ取り組みです。だからこそ、経営層の関与が欠かせません。

「なぜ導入するのか」「どんな経営課題を解きたいのか」を経営者自身が語れる状態であること。それが、ERP選定を成功に導く近道です。

multibookかNetSuiteかという製品選びの前に、「自社が解きたい経営課題は何か」を経営層で言語化することを、私たちは強くお勧めしています。

multibookからNetSuiteへ移管する場合のポイント

ここまでは「自社にどちらが向いているか」を選定する切り口で整理してきました。

ここからは副次的な切り口として、すでにmultibookを利用中の企業が「NetSuiteへの移管」を検討する場合のポイントを補足します。

移管を検討する典型的なタイミング

ベンチャーネットの観点で、multibookからNetSuiteへの移管を検討する典型的なタイミングは以下です。

  • 海外拠点数が増え、本社含めた全社統合の必要性が高まった
  • 国内本社のシステム刷新の時期が来た
  • 販売・在庫・CRM・ECまで含めた業務統合が経営課題になった
  • 上場準備で会計基盤・内部統制の統一が求められた
  • M&Aによりグループ会社が増え、統合管理の負荷が高まった

これらのタイミングがない場合、現状のmultibookで業務が安定して回っているのであれば、無理に移管する必要はありません。

移管プロジェクトの全体像

移管プロジェクトは、おおむね次のフェーズで進めます。

  • 現状分析:multibookでの業務範囲・データ範囲・カスタマイズ状況の棚卸し
  • 要件定義:NetSuiteで何をどこまでカバーするかの設計
  • データ移行設計:マスター・期首残高・取引履歴の移行範囲確定
  • 構築・テスト:NetSuiteの構築、ユーザー受入テスト
  • 並行稼働・カットオーバー:旧システムとの並行稼働、本番切替
  • 定着フェーズ:操作研修、運用ルール明文化、定着度モニタリング

データ移行で気をつけたい論点

multibookは海外子会社の会計・ロジが中心、NetSuiteは販売・在庫・CRMまで含む統合基盤です。

そのため、データ移行では次の論点が発生します。

  • マスター設計の見直し:勘定科目・部門・拠点・通貨マスターの再設計
  • 業務範囲の拡張:multibookで扱っていなかった販売・在庫・CRMのマスター新規設計
  • 期首残高の移管:会計データの期首残高、未消込債権債務の移行
  • 過去データの扱い:移管対象とするか、参照のみとするかの判断

データ移行は、移管プロジェクトの工数の大きな割合を占めます。「とにかく全部移す」のではなく「何を移すのか」の判断が重要です。

移管プロジェクトを成功させるために

ベンチャーネットの経験では、移管プロジェクトが成功する企業に共通するのは次の3点です。

  • 経営層がプロジェクトオーナーとして関与している
  • 今あるものをそのまま移す」ではなく「この機会に業務を見直す」姿勢で臨んでいる
  • 並行稼働期間を十分に確保している

逆に、移管を急ぎすぎたり、現行業務をそのまま再現しようとすると、コストもリスクも跳ね上がってしまいます。

よくある質問(FAQ)

Q1. multibookで国内本社の会計までできますか?

multibookは海外拠点管理に特化した製品です。日本本社の会計に求められる消費税の特殊計算・源泉徴収・三分法対応など、日本特有の会計要件への完全対応は標準では難しい領域があります。

国内本社の会計には、国産の会計システムを併用する企業が一般的です。詳細な対応範囲はmultibookのパートナーにご確認ください。

Q2. NetSuiteで海外子会社の管理だけに絞って使えますか?

技術的には可能です。OneWorldモジュールを使えば海外子会社単独での運用もできます。

ただし、NetSuiteは統合基盤として設計されているため、海外子会社だけに絞ると本来の価値が活きにくくなる傾向があります。海外子会社の会計・ロジに用途を絞るのであれば、特化型のmultibookの方が短期・低コストで導入できるケースが多いでしょう。

Q3. multibookとNetSuiteで料金はどれくらい違いますか?

製品カテゴリが異なるため単純比較はできません。一般的には、海外子会社の会計・ロジに絞った導入であれば、multibookの方が初期投資・月額ともに小さい傾向にあります。

NetSuiteは月20万円〜が出発点(ミニマム構成)です。利用するモジュール・ユーザー数・必要なオプションによって変動し、構成によっては数百万円規模になることもあります。

最終的な金額の提示はOracle営業からとなります。概算については、NetSuite認定パートナー(Solution Provider)であるベンチャーネット経由で、Oracle営業と共に対応します。

Q4. 既にmultibookを使っていますが、NetSuiteを検討すべきタイミングは?

8章でお伝えした5つのタイミングのいずれかが発生した時が、検討の目安です。

具体的には、海外拠点数の急増・国内本社のシステム刷新時期・業務統合の経営課題化・上場準備・M&Aの発生などです。

これらがない状態で、現状のmultibookで業務が安定して回っているのであれば、無理に移管を検討する必要はありません。「移管ありき」ではなく「課題ありき」で判断することをお勧めします。

まとめ:自社にとっての最適解を選ぶために

multibookとNetSuiteは、同じ「海外対応クラウドERP」というカテゴリに見えながら、解こうとしている課題が異なる製品です。

multibookが合う企業はmultibookで、NetSuiteが合う企業はNetSuiteで。

ベンチャーネットの基本スタンスは、この一言に尽きます。

NetSuiteについてご相談されたい方へ

NetSuiteについて情報収集・デモなどにご興味があれば、NetSuite Solution Provider のベンチャーネットにご連絡ください。

  • NetSuite無料デモ:実際の操作感を確認できます
  • NetSuite×海外展開ERP支援:海外展開を見据えたERP導入支援のご相談
  • 30分無料相談:自社の状況からの個別アドバイス

multibookについてご検討されたい方へ

multibookについては、multibookのパートナーに確認することをお勧めします。

ベンチャーネットはmultibookの取扱いはありません。お客様の状況を伺った上で「multibookが合っているのではないか」と判断した場合は、その旨を正直にお伝えしています。

焦らず、段階的に、確実に

ERP選定は、単なるシステム選びの判断ではありません。

業務プロセスを見直し、部門間の壁を取り払い、会社の情報を一本につなぐ取り組みです。

「最初から100点」を目指す必要はありません。まずは自社の課題を整理し、優先順位の高い領域から段階的に進めていく。それが、結果的に早く安定運用に到達する道だと、私たちは現場で感じています。

ERP選定に迷われている方は、いつでもお気軽にご相談ください。一緒に、御社にとっての最適解を考えさせてください。

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この記事を書いた人

持田 卓臣のアバター 持田 卓臣 株式会社ベンチャーネット代表取締役

持田 卓臣(もちだ たくおみ)
株式会社ベンチャーネット 代表取締役

ヒューレット・パッカード社でITコンサルタントとして従事した後、2005年に株式会社ベンチャーネットを設立。
Oracle NetSuite Solution Provider Partner として、中堅・中小企業向けクラウドERP「NetSuite」の導入・運用支援を提供しています。
SEO・広告・SNS・ウェブ・MA・SFAと一気通貫で培ってきたデジタルマーケティング領域の業務知見を活かし、NetSuiteを軸とした経営DXを支援しています。
著書:『普通のサラリーマンでもすごいチームと始められる レバレッジ起業「バーチャル社員」があなたを救う』(KADOKAWA、2020年)

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