「会計はマネーフォワードで回っている。ERPも同じシリーズでそろえれば間違いない」
そう考える経理の責任者は多く、実際、それで合う会社も少なくありません。
ただ、合うかどうかを決めるのは、いまの会計ソフトではありません。
会社の時間が、どの業務に取られているかです。
マネーフォワードクラウドERPとは、会計から人事労務までを必要な分だけ組み合わせる、「コンポーネント型」のクラウドERPです。
提供元は株式会社マネーフォワードです。
ERPは、会社全体の業務とデータを1つの基盤でまとめて管理する仕組みのことです。
国内中心で、会計・人事労務の効率化が主な課題なら、有力な選択肢になります。
海外拠点、多通貨、在庫・製造が経営の中心なら、統合型のERPも並べて比べます。
では、自社がどちらに当たるかは、何を見れば分かるのか。
第10章の「時間の地図」が、その答えになります。
この記事で分かること
- マネーフォワードクラウドERPの基本と、コンポーネント型という考え方
- 主なサービスと、費用の考え方(定価の公開はなく、個別の見積もり)
- 統合型ERP(NetSuiteなど)や、ほかの選択肢との違い
- 向いている会社・向いていない会社の具体的な条件
- いまマネーフォワード クラウドを使っている会社の見直し方
マネーフォワードクラウドERPとは
公式サイトでは、次のように説明されています(出典:マネーフォワード公式、2026年9月確認)。
会計から人事労務まで、バックオフィス全体をシームレスに連携し、
面倒な手作業を自動化するコンポーネント型クラウドERP
「コンポーネント型」という考え方
コンポーネント型は、必要なサービスを1つずつ選んで導入する形です。
会計だけ、経費だけ、といった単機能から始められます。
事業の成長に合わせて、後からサービスを足したり組み替えたりできます。
広げ方の流れを図にすると、次のとおりです。
従来のERPは、最初から大きな1つの基盤を入れる形が一般的でした。
この違いが、選び方の分かれ目になります(第4章)。
位置づけ
公式サイトでは、主な対象をIPO準備企業と中堅〜上場企業としています(出典:マネーフォワード公式、2026年9月確認)。
「マネーフォワード クラウド」のバックオフィス向けサービス群を、中堅企業のニーズに合わせて拡充したものです。
- 2020年10月に提供開始を発表し、2021年度グッドデザイン賞を受賞(出典:マネーフォワード公式プレスリリース、2026年9月確認)
- 年商10億円未満の企業向けERP市場で、売上金額シェア1位とされる。出典はITR「ITR Market View:ERP市場2025」(2024年度予測)。マネーフォワード公式の表記で、2026年9月に確認
主なサービスとできること
マネーフォワードクラウドERPは、業務ごとのサービスをつないで使います。
代表的な領域は次のとおりです。
| 領域 | 主なサービスの例 | できること |
|---|---|---|
| 会計・財務 | クラウド会計/会計Plus、クラウド請求書/請求書Plus、クラウド債権管理 | 会計、請求、入金の消込 |
| 債務・経費・資産 | クラウド債務支払、クラウド経費、クラウド固定資産 | 請求書の受け取りから支払まで、経費精算、減価償却 |
| 人事労務 | クラウド給与・年末調整、クラウド勤怠、クラウド社会保険、クラウド人事管理、マイナンバー | 給与・勤怠・社会保険の手続き |
| 管理会計など | クラウド連結会計、クラウド個別原価、クラウドリース会計 | 連結、案件ごとの原価、リースの会計 |
「管理会計など」の行のサービスは、マネーフォワード クラウドのサービス一覧に載っています(出典:マネーフォワード公式、2026年9月確認)。
ERPとしてどの組み合わせで提供されるかは、提供元に問い合わせてください。
外部との連携と内部統制
公式サイトでは、API連携の範囲として次の3つを挙げています(出典:マネーフォワード公式、2026年9月確認)。
- マネーフォワード クラウドの各モジュールどうしの連携
- 他社システムとの連携
- 銀行・金融システムとの連携
APIは、システムどうしがデータをやり取りする窓口のことです。
内部統制の面では、ワークフローの承認、アクセスの管理、ログの管理に対応しています。
SOC報告書は、外部の監査人が内部統制を評価した報告書です。
SOC1 Type2とSOC2 Type1・Type2が提供されています(出典:マネーフォワード公式、2026年9月確認)。
監査への対応が要る会社にとって、判断の材料になります。
特徴と注意点
強み
- 小さく始められる:1つのサービスから導入し、後から広げられる
- 手作業を減らせる:銀行やサービス間の連携で、入力・転記の手間を減らす
- 国内の制度に沿う:電子帳簿保存法・インボイス制度に対応(出典:マネーフォワード公式、2026年9月確認)
- 導入が早い:公式サイトでは最短1ヶ月での導入をうたう(同上)
- 身軽な運用:サブスクリプションで使い、自動のバージョンアップで保守の負担が小さい
事前に押さえたい点
- 費用は個別の見積もり:定価の公開はなく、使うサービスと人数で変わる(第5章)
- 海外と「モノの管理」:多通貨・多言語、在庫・製造・受発注が重い場合は、対応の範囲を提供元に問い合わせる
他の選択肢とどう違うか
ERPには大きく2つの設計の考え方があります。
優劣ではなく、会社の状況で向き・不向きが分かれます。
| 観点 | コンポーネント型(例:マネーフォワードクラウドERP) | 統合型(例:NetSuite) | 会計SaaS+Excel(いまは入れない) |
|---|---|---|---|
| 設計の考え方 | 必要な機能を1つずつ組み合わせる | 1つの基盤に全社の業務をまとめる | 会計だけをシステムにし、他は手作業 |
| 入り方 | 会計など単機能から | 業務をまたいで一度に | いまの延長 |
| 得意な領域 | 国内のバックオフィス(会計・人事労務) | 多拠点・海外・在庫や製造を含む全社 | 取引の少ない小規模な会社 |
| 多通貨・海外 | 範囲は提供元に確認 | 多通貨・多言語・連結に標準で対応 | 手作業 |
| AIとの親和性 | 中〜高。バックオフィスのデータがそろう | 高。販売・在庫・会計のデータが1か所にそろう | 低。データがファイルに散らばる |
AIとの親和性は、「AIに読ませるデータが1か所にそろうか」で見ています。
販売や在庫のデータが別のシステムにあると、全社の数字をAIで見る使い方は難しくなります。
NetSuiteは、Oracleが提供する統合型のクラウドERPです。
世界220地域・44,000社以上で使われ、190通貨・27言語に対応しています(出典:Oracle NetSuite公式サイト、2026年9月時点)。
詳しい比較は、マネーフォワードクラウドERPとNetSuiteの違いで扱っています。
費用の考え方
マネーフォワードクラウドERPには、公開された定価がありません。
料金は初期費用・月額費用・その他のオプションで構成されます(出典:マネーフォワード公式 料金ページ、2026年9月確認)。
公式サイトでは、利用の目的に合わせて料金プランを提案するとしています。
費用が変わる主な要因は、次の3つです。
- 使うサービスの種類と数
- 利用する人数
- オプションの有無
1つのサービスから始められるため、使いたい範囲で見積もりを取り、段階的に広げる進め方が現実的です。
比べるときは、3〜5年後に使う範囲まで広げた場合の見積もりも、あわせて取っておきます。
判断の物差し|向いている会社・向いていない会社
マネーフォワードクラウドERPが向いている会社
- 国内が中心の中堅・成長企業
- 主な課題が、会計・経費・人事労務などバックオフィスの効率化
- まず1つのサービスから小さく始めたい
- IPOの準備などで、内部統制を固めたい
当てはまるなら、有力な候補です。
具体的な検討は、提供元のマネーフォワードに相談するのが確実です。
ほかの選択肢も並べたい会社
| 自社の状況 | 並べて比べたい選択肢 |
|---|---|
| 海外拠点があり、多通貨・多言語・連結が要る | 統合型のERP(NetSuiteなど) |
| 在庫・製造・受発注が経営の中心 | 統合型のERP、製造業向けの国産ERP |
| 同じ国産クラウドの中で比べたい | freee統合型ERP、勘定奉行VERPなど |
| 費用を抑えて、業務の範囲を自分たちで組みたい | Odoo |
| 自社固有の業務が多く、パッケージが合わない | AIを使ったスクラッチ開発 |
取引の件数が少なく、会計ソフトとExcelで月次の締めが間に合っている会社は、ERPを急ぐ必要はありません。
締めの日数と転記の時間を数え、負担が増えた時点で検討しても遅くありません。
読者の二つの立場
これから選ぶ会社
製品を比べる前に、次の3つを書き出します。
- いま一番時間がかかっている業務(会計・販売・在庫・人事のどれか)
- 3年後の事業の姿(拠点・海外・事業の数)
- 1つの画面で見たい数字(全社の売上と粗利、など)
1がバックオフィスに集中し、2で海外や多拠点の予定がなければ、コンポーネント型が合いやすくなります。
3に販売や在庫の数字が入るなら、統合型も候補にします。
全体の進め方はERPの比較と選び方で扱っています。
マネーフォワード クラウドを使っていて、見直しを考えている会社
会計などを使っていて、見直しを考える場面は2つに分かれます。
- 範囲を広げる:会計は回っている。経費や債務支払、人事労務もつなぎたい
- 基盤を替える:販売・在庫や海外の管理が増え、データが分かれてきた
前者なら、同じ製品群の中で広げるのが自然です。
後者なら、会計はそのままに販売・在庫だけ別の基盤で持つ形と、統合型への移行を比べます。
日本の会計SaaSとNetSuiteを組み合わせる考え方は、NetSuite×日本の会計SaaSの組み合わせで扱っています。
統合型へ移る場合、費用と期間の大半は、導入の中身で決まります。
差を生む要因は、業務の範囲、開発(特に外部システムとの連携)、社内の体制、ユーザー数の4つです。
情報システムの担当が少ない会社では、支援を厚くする分、期間も延びやすくなります。
マネーフォワード クラウドとつなぐ部分は、このうち「開発」の重さに直結します。
よくある3つの失敗
失敗1:単機能で始め、つなぐ設計を後回しにする
起きること:サービスを足すたびに、マスタ(取引先・部門など)の持ち方がずれる。数字を突き合わせる手間が増える。
原因:最初の1つを入れるとき、後から広げる範囲を考えていなかった。
避け方:最初の導入の時点で、取引先・部門・勘定科目の持ち方を決めます。
3年後に使う範囲を、仮でよいので書き出しておきます。
失敗2:「モノの管理」を外に残したまま、全社の数字を見ようとする
起きること:会計はきれいに締まるのに、商品別・案件別の粗利が見えない。Excelの集計が残る。
原因:販売・在庫のデータが、別のシステムや表計算にあった。
避け方:見たい数字の元データがどこにあるかを、選ぶ前に洗い出します。
販売・在庫が中心なら、統合型も並べて比べます。
失敗3:最初の見積もりだけで、費用を比べる
起きること:小さく始めて安く見えたが、サービスと人数を足すうちに想定を超える。
原因:最初の範囲の見積もりだけで、他の製品と比べていた。
避け方:3〜5年後に使う範囲の見積もりも取り、同じ条件で並べます。
ベンチャーネットならこう見る|「時間の地図」と「変わること」
NetSuite認定パートナー(Solution Provider)であるベンチャーネットは、特定の製品に誘導しない立場です。
NetSuite・Odoo・AIスクラッチ開発を扱い、SAPからのリプレイスにも対応しています。
相談では、まず次の3つを伺います。
- 課題はバックオフィスか全社か:時間がかかっている業務を部門ごとに並べる
- 見たい数字の元データはどこにあるか:販売・在庫が別なら、つなぎ方を考える
- 3年後に拠点や海外は増えるか:増えるなら、多通貨・連結の要否を先に決める
型1:時間の地図で、型を決める
製品名から入らず、会社の時間がどこに取られているかから入ります。
時間のかかる作業が経理・人事に集まるならコンポーネント型、営業・購買・倉庫に集まるなら統合型も候補です。
冒頭の「同じシリーズでそろえれば間違いない」は、左に当たる会社ではそのとおりです。
右に当たる会社では、会計以外の元データがつながらないまま残ります。
型2:「変わること」は見積もりの前に伝える
統合型へ移る話になったら、ベンチャーネットは変わることを先にお伝えします。
- ライセンス費用:いまより上がることがある
- 帳票と締め処理:帳票の形や、締め処理の考え方が変わる
- 画面の操作感:慣れた画面から離れる
- 給与・人事:NetSuiteは対象外で、別の仕組みが要る
給与・人事の点は、マネーフォワード クラウドの人事労務を使っている会社ほど重くなります。
人事労務はいまのまま残し、販売・在庫・会計だけを移す形も、並べて比べる価値があります。
比べた結果がコンポーネント型のままになることも、そのまま正直に申し上げます。
今日できること|1時間で「時間の地図」を作る
次の表を、部門ごとに1行ずつ埋めてみてください。
| 部門 | 月に一番時間がかかる作業 | 使っている道具 | 月の時間(おおよそ) |
|---|---|---|---|
| (例)経理 | 請求書の転記 | 会計ソフト+Excel | 20時間 |
時間の大きい作業が経理・人事に集まるなら、コンポーネント型から始める価値があります。
営業・購買・倉庫に集まるなら、統合型も候補に入れます。
この表は、どの製品の見積もりを取るときにも、そのまま使えます。
よくある質問
Q1. マネーフォワードクラウドERPの費用はどれくらいですか
定価の公開はなく個別の見積もりです。
初期費用・月額費用・オプションで構成され、使うサービスと人数で変わります。
3〜5年後に使う範囲の見積もりも、あわせて取ることをおすすめします。
Q2. どんな会社に向いていますか
国内中心でバックオフィスを効率化したい中堅・成長企業です。
公式サイトでは、IPO準備企業と中堅〜上場企業を主な対象としています。
海外拠点や在庫・製造が中心の場合は、統合型のERPも比べます。
Q3. 通常の「マネーフォワード クラウド」と何が違いますか
対象とする会社の規模が違います。
マネーフォワードクラウドERPは、バックオフィス向けのサービス群を中堅企業のニーズに合わせて拡充した位置づけです。
1つずつ導入して組み合わせる点は共通しています。
Q4. 連結決算や原価計算にも使えますか
サービス一覧に連結会計と個別原価があります。
ERPとしてどの組み合わせで提供されるか、自社の要件に届くかは、提供元に問い合わせてください。
多通貨・多言語の範囲も、あわせて確認します。
Q5. 導入にはどれくらいかかりますか
公式サイトでは最短1ヶ月とされています。
実際の期間は、使うサービスの数、データの移行、社内の準備で変わります。
複数のサービスを同時に入れる場合は、段階に分ける計画を立てます。
Q6. NetSuiteとはどう違いますか
設計の考え方が違います。
マネーフォワードクラウドERPは機能を組み合わせるコンポーネント型、NetSuiteは全社の業務を1つの基盤にまとめる統合型です。
NetSuiteは給与・人事を対象外とするため、人事労務は別の仕組みと組み合わせます。
詳しくはマネーフォワードクラウドERPとNetSuiteの違いで扱っています。
まとめ|マネーフォワードクラウドERP選びの次の一歩
- コンポーネント型のクラウドERP。会計から人事労務までを必要な分だけ組み合わせる
- 主な対象はIPO準備企業と中堅〜上場企業
- 費用は個別の見積もり。3〜5年後の範囲でも見積もる
- 海外・多通貨、在庫・製造が中心なら、統合型も並べて比べる
- 統合型へ移るなら、ライセンス費用・帳票・給与人事の扱いなど変わることを先に知っておく
同じシリーズでそろえるのが正解かどうかは、時間の地図が教えてくれます。
まず部門ごとに1行、いちばん時間のかかる作業を書き出してください。
もう少し詳しく知りたい方へ
マネーフォワードクラウドERPと統合型のERP、どちらが自社に合うのか。
課題と3年後の姿を伺ったうえで、中立の立場で一緒に考えます。
NetSuiteを実際に触って比べたい方には、デモもご用意しています。
