われわれの使命は何か——会社の存在理由を言葉にする

目次

「何のための会社か」と聞かれて

先月の売上も、今期の目標も、すぐに口をついて出る。けれど「なぜこの会社をやっているのですか」と問われると、少し詰まる。

そんな経験はないでしょうか。

会議室の壁には、立派な経営理念が額に入っている。でも、社員に聞くと誰も覚えていない。数字は語れるのに、自分たちの「存在する理由」だけは、うまく言葉にならない。

これは、能力の問題ではありません。多くの経営者が、同じところで立ち止まります。

「われわれの使命は何か」という問い

経営学者のピーター・ドラッカーは、経営者にひとつの問いを投げかけました。「われわれの使命は何か」。

ここで言う使命とは、立派なスローガンのことではありません。誰に対して、どのような貢献をするのか。それを定めたものが使命です。会社の規模や売上は、ここでは第一の問いになりません。

では、その使命はどこから生まれるのか。ドラッカーは、社会が求めているものと、自分たちの強みが重なるところだと言います。

社会が 求めているもの 自分たちの 強み 使命 が生まれる

図:使命は、社会が求めているものと、自分たちの強みが重なるところに生まれる。

だから、出発点は意外なほど自分に近いところにあります。「自分たちの一番の強みは何か」。

ベンチャーネットの代表も、まさにここから始めました。数年前に受けた強みの診断を引っぱり出し、改めて見つめ直したのです。すると、確かにその強みを軸に経営をしてきたのだと腹に落ちた。強みがわかると、どの市場で戦うかが決まります。代表は、その強みを頼りに、数年ごとに身を置く領域を変えながら歩いてきました。

使命は、空に浮かんだ理想ではありません。自分の足元——強みから始まります。

目的を定義し直すと、組織は変わる

強みから使命の輪郭が見えてきたとき、ベンチャーネットの中で起きたことがあります。

組織を変えたのは、新しい制度でも、新しいツールでもありませんでした。変わったのは、目的そのものを定義し直したときです。

「自分たちは、何のために存在するのか」。この問いに、自分たちの言葉で答え直す。それだけで、日々の判断の基準が変わり、優先順位が変わり、人の動きが変わっていきました。

ひとつだけ、外せない条件があります。その目的は、社員の全員が納得し、「ワクワク」できるものでなければならない、ということです。誰かに与えられた目的では、人は動きません。腹落ちしない言葉は、壁の額のまま終わります。

そして、その目的を言葉にする仕事は、誰かに任せられるものではありませんでした。経営者である自分自身が、自分の言葉で定義する。これが、いちばん大事な仕事だと、私たちは考えています。

使命を、どう言葉にするか

とはいえ、「では今日から使命を言葉にしましょう」と言われても、すぐには書けないものです。手がかりになる問いを、いくつか挙げておきます。

ひとつ目は、「自分たちの強みは何か」。さきほど触れたとおり、使命は強みと社会のニーズが交わるところに生まれます。強みを伴わない貢献は、長くは続きません。

ふたつ目は、「Tシャツに書けるくらい短いか」。使命は、長い文章である必要はありません。むしろ短いほうが、全員の記憶に残ります。

三つ目は、「明日の仕事に落とせるか」。使命がスローガンで終わるか、生きた指針になるかは、ここで決まります。「お客様に安心を」という言葉だけでは、明日の行動は変わりません。「問い合わせには一営業日以内に必ず返す」というところまで具体化して、はじめて日々の仕事につながります。立派な言葉を、日常の仕事に翻訳していく。それが経営者の役割です。

1 自分たちの強みは何か 使命は、強みと社会のニーズが交わるところに生まれる 2 Tシャツに書けるくらい短いか 短いほうが、全員の記憶に残る 3 明日の仕事に落とせるか 標語で終わらせず、日常の行動まで具体化する

図:使命を言葉にするための3つの問い。

ここで気をつけたいのは、これらは「正解の作り方」ではない、ということです。使命は、手順どおりに埋めれば完成する書類ではありません。

正直に言えば、使命は一度では決まらない

ここまで読んで、「結局、簡単には言葉にできないのか」と感じた方もいるかもしれません。そのとおりです。

言葉にするのが難しいのには、理由があります。自分の思い込みや前提は、自分自身にはいちばん見えにくいからです。強みも価値観も、当たり前になりすぎて、内側からは輪郭がつかみにくい。

ベンチャーネットの代表自身、いまもこの問いと格闘しています。ドラッカーの問いを、自分の腹に落ちる言葉へどう言い換えるか——その作業が、まだ途中だと正直に言います。

使命は、一度どこかに書いて額に入れたら終わり、というものではありません。事業が変わり、時代が変われば、また問い直す。問い続けることそのものが、経営なのだと思います。

だからこそ、最後にひとつだけ、問いをお返しします。

あなたの会社の使命は、いま、あなた自身がワクワクできるものになっていますか。

使命は、問い続けて言葉にしていくもの

「何のための会社か」。冒頭の、答えに詰まった問いに戻ります。

すぐに答えられなくても、それは恥ずべきことではありません。むしろ、立ち止まって問い直そうとしていること自体が、入口に立っている証拠です。

ベンチャーネットも、自分たちの使命を何度も問い直してきました。挑戦する経営者と同じ船に乗り、時代の荒波をどう越えるか——その問いの先に、自分たちの存在理由を置いてきました。だから、これは「教える側」と「教わる側」の話ではありません。同じ問いを抱えた者どうしの話です。

ただ、同じ船にいるからといって、ただ流されてきたわけではありません。自分たちの使命を問い直し、言葉にし直す。その進め方そのものは、何度も重ねてきました。答えは更新し続けても、問いの立て方は手の内にあります。だからこそ、同じ問いを抱えた人の隣で、一緒に漕ぐことができます。

使命を言葉にする旅は、ひとりで始めても構いません。けれど、自分の会社のことほど、内側からは見えにくいものです。外から問いを投げる相手がいると、言葉は驚くほど早く輪郭を持ちはじめます。

ベンチャーネット自身が、自分たちの使命をどう言葉にしてきたかは〔バーチャル経営のビジョン・ミッション〕でも書いています。よければ、その歩みものぞいてみてください。

もし、あなたが自社の使命を言葉にしてみたくなったら——その問いを、一緒に考えるところから始めませんか。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

持田 卓臣のアバター 持田 卓臣 株式会社ベンチャーネット代表取締役

株式会社ベンチャーネット 代表取締役
2005年に株式会社ベンチャーネットを設立後、SEOをはじめとするデジタルマーケティング領域のコンサルティングサービスを展開
広告・SNS・ウェブ・MA・SFAと一気通貫で支援を行っています
著書に『普通のサラリーマンでもすごいチームと始められる レバレッジ起業 「バーチャル社員」があなたを救う』(KADOKAWA、2020年)

目次