われわれの成果は何か——売上以外の物差しを持つ

売上は悪くない。前年より、少し伸びてもいる。なのに、なぜか手応えがない。

そんな感覚を持ったことはないでしょうか。月末になると、まず売上の数字を見る。目標に届いていれば安心し、足りなければ気をもむ。

数字は毎日見えています。けれど、自分たちの会社が本当に良い方向へ進んでいるのか。それは、売上の数字をいくら眺めても、なぜか分かりません。

見えているのは「いくら売れたか」だけ。「何が良くなったか」は、どこにも映っていないからです。

目次

売上は、成果なのか

経営学者のピーター・ドラッカーは、組織が自らに問うべき5つの質問を挙げました。その4番目が「われわれの成果は何か」です。

一見、当たり前の問いに見えます。成果とは売上であり、利益ではないか、と。

けれど、売上や利益は、組織の“中”で生まれる数字です。その手前には、組織の“外”、つまり顧客のところで起きた変化があるはずです。

顧客が以前より良くなった。困りごとが消えた。仕事が速くなった。その変化こそが、会社が世の中に残した成果です。売上は、その結果として後からついてくる。

組織の“外”=顧客のところ 顧客に起きた変化 = これが本当の成果 困りごとが消えた/仕事が速くなった 経営が見えるようになり、利益につながった 結果として、後からついてくる 組織の“中”の数字 売上・利益 「いくら売れたか」は見えても、 「何が良くなったか」は映らない

売上・利益は組織の“中”の数字。その手前に、組織の“外”=顧客に起きた変化がある。成果をそこに置くと、売上は結果として後からついてくる。

さらに厄介なことがあります。売上が上がっていても、使命を果たせているとは限らない、ということです。

たとえば、今期の赤字を避けるために、来期の注文を前倒しで顧客にお願いする。数字の上では黒字になります。けれど、それは顧客に無理をさせているだけで、顧客のためにはなっていません。

売上だけを見ていると、この「ずれ」に気づけないのです。

成果は「顧客に起きた変化」で測る

ここで、ひとつ確かなことがあります。人は、測るという行為から影響を受ける、ということです。

家計簿をつけ始めると、お金の使い方が変わります。体重を毎日記録すると、食事と運動が変わります。

会社も同じです。毎日、売上ランキングだけを配っていれば、現場の意識は売上だけに向かいます。

つまり「何を測るか」は、働く人の意識をどこに向けるかを決めてしまう。それは、組織にとって最も重大な意思決定のひとつだと、ベンチャーネットは考えています。

では、ベンチャーネットは自社の成果を何と定義しているか。売上ではなく、顧客の会社に「見える化・わかる化・儲かる化」という変化が起きること。そこに置いています。経営が見えるようになり、その意味が読め、やがて利益につながる。その変化が顧客のところで実際に起きたかどうかを、自分たちの成果と見ています。

複数の物差しを持ち、正直に点検する

成果を「顧客に起きた変化」で測ると決めると、物差しは一つではなくなります。

ベンチャーネットでは、性質の違ういくつかの指標を並べて持ち、定期的に見直しています。顧客と一緒に成功事例をつくれているか。導入の歩みが着実に進んでいるか。AIやデータの活用を提案し、根づかせられているか。

どれも、売上とは別の角度から「顧客に何が起きたか」を映す物差しです。

大切なのは、その達成度を正直に点検することです。「ここは想定どおり」「ここはギリギリ」「ここは遅れ気味」と、できている所とできていない所を率直に分ける。

ドラッカーはこれを「フィードバック分析」と呼びました。うまくいったことと、いかなかったことを、正直に照らし合わせる習慣です。都合の良い数字だけを見ていると、この習慣は育ちません。

物差しを選ぶときの基準も、ひとつあります。「その指標は、顧客と共有できるか」という基準です。

売上目標は、顧客と共有できません。「今月あと少し足りないので買ってください」とは言えないからです。

けれど「業務がどれだけ速くなったか」「経営判断がどれだけ早くなったか」は、顧客と一緒に喜べます。顧客と共有できる物差しは、測ること自体が前向きな行為になります。

あなたの会社は、何を測っていますか

ここで一度、立ち止まってみてください。あなたの会社は今、何を測り、何を現場に伝えているでしょうか。

もし売上の数字だけを毎日追いかけているなら、現場の意識も、自然と売上だけに向いているかもしれません。

「使命を大切にしよう」と言いながら、配っているのは売上ランキングだけ。そういう“ずれ”は、どんな会社にも起こりえます。

そして、成果の定義は、一度決めたら終わりではありません。顧客の期待は変わっていきます。これからはAIやデータの活用、柔軟なビジネスモデルへの対応が、さらに求められていくでしょう。

顧客が変われば、測るべき成果も変わる。だから定義は、見直し続けてよいのです。

正直に言えば、ベンチャーネット自身も、自社の成果の物差しをいまだ見直し続けています。答えが一度で出るものではないからです。ただ、見直し続けているからこそ、同じ問いを持つ会社の隣で、一緒に考えられると思っています。

売上の手前にある「成果」を、自分の言葉で

売上は、成果そのものではありません。成果とは、顧客のところで起きた変化です。

そして、何を成果とするかを自分で定義することが、経営を見直す最初の一歩になります。「見える化・わかる化・儲かる化」という流れも、ここから始まります。自分たちは何を成果とするのか。その物差しを言葉にできたとき、見える化すべきものが、初めて決まるからです。

「何を測るべきか、自社だけでは見えにくい」と感じたら、それは自然なことです。組織の外にある成果は、中にいると、かえって見えにくいものだからです。

ベンチャーネットは、その物差しづくりから一緒に考える伴走者でありたいと思っています。

続けて読む:「経営を“見える化”する」(2-1 見える化ハブ)/「なぜ今、経営を見直すのか」(序章)

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この記事を書いた人

持田 卓臣のアバター 持田 卓臣 株式会社ベンチャーネット代表取締役

株式会社ベンチャーネット 代表取締役
2005年に株式会社ベンチャーネットを設立後、SEOをはじめとするデジタルマーケティング領域のコンサルティングサービスを展開
広告・SNS・ウェブ・MA・SFAと一気通貫で支援を行っています
著書に『普通のサラリーマンでもすごいチームと始められる レバレッジ起業 「バーチャル社員」があなたを救う』(KADOKAWA、2020年)

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