「自分のやり方は、これでいいのか」
日々、判断は下している。採用も、値付けも、設備投資も。決めることが、経営者の仕事だ。
けれど、ふと立ち止まったとき、こんな問いがよぎることはないだろうか。
——自分の経営のやり方は、これでいいのか。
売上や利益は、結果を教えてくれる。でも「自分のマネジメントのやり方そのもの」を採点する物差しは、なかなか持てない。忙しさの中で、自分のスタイルを問い直す時間は、いちばん後回しになる。
この記事は、その問い直しの話である。
問いは、答えより先に「現在地」を映す
ベンチャーネットは、ドラッカーの経営講座で1年間、ある問いに向き合ってきた。
「あなたの一番の強みは何か」。「経営者の仕事とは何か」。
(ピーター・ドラッカー=20世紀を代表する経営思想家。「マネジメント」という考え方を世に広めた人物)
この問いは、すぐに答えが出るものではない。むしろ、答えようとして初めて、自分の現在地が見えてくる。
ベンチャーネット代表の持田自身、こんな経験をした。経営トップの役割には4つの顔があると学んだとき、自分は「表に立つ人」「行動する人」だと思った。ところが学び直すと、本当の自分は「考える人」が中心だと気づいた。
自分のことを、自分が一番わかっていなかった。
問いの効用は、ここにある。答えを出すことより先に、「自分は今どこにいるのか」を映し出すこと。マネジメントスタイルの問い直しは、この一枚の鏡から始まる。
スタイルとは「性格」ではなく、埋め続ける営み
マネジメントスタイルというと、生まれ持った性格のように思えるかもしれない。だが、ベンチャーネットはそうは捉えていない。
やり方の土台にしたのは、シンプルな構えだ。
理想(こうありたい経営)に、現状(今の自分の経営)を重ねる。そして、その差=ギャップから、目をそらさない。
ギャップが見えると、課題が浮かぶ。課題が浮かぶと、どれから手をつけるかの優先順位が決まる。
スタイルとは、この差を埋め続ける営みのことだ。完成された型があるのではなく、理想と現状のあいだを、少しずつ詰めていく動き。そう捉え直すと、「自分のやり方は正しいか」という問いは、「自分は今、どのギャップに向き合っているか」という問いに変わる。
ギャップは、フィードバックで埋める
理想と現状の差を、フィードバック分析で少しずつ埋めていく。
では、ギャップはどう埋めるのか。ベンチャーネットが続けているのは、フィードバック分析という習慣だ。
やり方は、いたって地味である。
まず、これから打つ手について「こうなるはずだ」という期待を書き留める。数か月後、実際にどうなったかと照らし合わせる。期待と結果のズレに、学びが眠っている。
持田は3か月ごと、そして週末ごとに、この振り返りを続けてきた。続けるうちに、ひとつ実感が生まれた。意図を込めて打った手は、フィードバックがよく回る。なんとなく決めた手は、振り返っても学びが薄い。
ここでAIも役に立つ。といっても、AIが答えを出してくれるわけではない。AIは、自分の考えをぶつけ、深めるための壁打ち相手だ。問いを立てるのも、最後に決めるのも、責任を負うのも、経営者自身に残る。便利な道具を、判断の代わりにはしない。
正直に言えば、これで何もかもうまくいくわけではない。持田自身、いまも答えの出ない問いを抱えている。目標の数字を、どこまで根拠を詰めて決めるべきか。直感に頼る場面を、どう仕組みに落とすか。問い直しは、一度で終わらない。
自分の現在地は、自分一人では見えにくい
ここまで読んで、「では自分も、理想と現状のギャップを書き出してみよう」と思った方がいるかもしれない。それは、とても良い一歩だ。
ただ、ひとつだけ、正直にお伝えしておきたいことがある。
自分のスタイルの癖や現在地は、自分一人では、案外見えない。
さきほどの持田の例を思い出してほしい。経営を長く続けてきた本人ですら、自分の役割を取り違えていた。自分を客観的に映す鏡は、自分の中にはないのだ。
ただ、取り違えたままでは終わらなかった。問いを立て直し、学び直すことで、少しずつ現在地を掴めるようになった。一人の力で、ではない。問いと、外からの視点の助けを借りて、である。
だからこそ、外からの視点が要る。問いを立て、ギャップを一緒に見つける相手がいると、問い直しは前に進む。
ベンチャーネットは、自社でこの問い直しを実践してきた会社として、経営者の隣でその問いを立てる役割を担いたいと考えている。答えを渡すのではなく、一緒に現在地を確かめる伴走者として。
まとめ:問い直しは、変革の出発点
経営者の仕事とは何か。
ベンチャーネットの今の答えは、こうだ。理想と現状のギャップに向き合い、フィードバックで磨き続けること。そして、磨いた先で、会社の構造そのものを設計し直していくこと。
その長い道のりの出発点にあるのが、自分のマネジメントスタイルの問い直しである。理想と現状のギャップに向き合い、フィードバックで少しずつ埋めていく。その積み重ねが、やがて会社全体の変革につながっていく。
問い直しの先で、会社をどう変えていくのか。その道筋は、別の記事で続けたい。
- コーポレートトランスフォーメーションとは:会社の形そのものを変えるという発想へ
- バーチャルトランスフォーメーションへ——AIエージェント時代の経営:問い直しの先にある経営の未来像へ


