バーチャル経営イノベーション実践編~中小企業が勝てる市場を見つけるには?

前回は新規事業につながるバリュープロポジションを作成する際に意識すべきポイントを紹介しました。また、中小企業がバリュープロポジションを新規事業につなげるには「拡張性のあるニッチ市場」を見つけることが重要であることも述べました。これを受けて今回は、中小企業が「勝てる市場」を見つけるための方法について解説します。

目次

バリュープロポジション作成にはリサーチが必須

まず前回までの内容を簡単におさらいしておきましょう。これからの中小企業が狙うべきは「新しいビジネスモデルの構築」でイノベーションを起こし「新規事業」につなげていくことです。

また、ビジネスモデル構築のフレームワークとしては「ビジネスモデルキャンバス(BMC)」の活用がおすすめです。BMCは、「CS:顧客セグメント」と「VP:価値提案」を中心とし、ビジネスの表側と裏側を可視化することができます。複雑なビジネスの仕組みを、簡略化せずに、共通言語に置き換えられる点が強みです。また、この2つは「バリュープロポジション」を活用することにより、より実現性の高い内容を目指すことができます。

さらにバリュープロポジションは「アーリーアダプターとスケーラビリティ」「解決から入らない顧客ヒアリング」「高速かつコンパクトなプロトタイピング」という3点に注力することで、新規事業につながりやすくなります。以上が前回までの内容です。ここまでの内容を俯瞰すると、バリュープロポジションを創り上げるためにはリサーチを何度も重ねる必要があることに気が付くのではないでしょうか。

リサーチが重要な理由

市場が存在しているか、アーリーアダプターはいるか、潜在顧客が痛みの克服のためにどれだけのコストをかけているか……などは入念なリサーチによって知ることができます。また、ヒアリングも広義ではリサーチの一種です。

ヒアリングベースでMust Haveを見つけ出すと、そこからバリュープロポジションのヒントが生まれます。さらに新規事業は頻繁にピボットを繰り返すものであり、ピボットには大小さまざまな軌道修正が必要です。この軌道修正の中でリサーチが活きてきます。実際に、イノベーションを複数起こし、新規事業につなげている企業はリサーチに大量の時間を投じているのです。例えば、主要なSNSの多くはローンチ当初、現在とはまるで違う事業内容でした。しかし、事業を継続していく中で顧客のニーズや行動を入念にリサーチし、それに合致するようなビジネスモデルを作り上げ、機能を特化させて現在の形になっています

転換後のビジネスモデルは非常に強力で、TwitterやInstagram、Pinterestなどは現在でも複数の業界に大きな影響力を持っています。これはつまり、リサーチがイノベーションを起こしているとも言えます。

このようにリサーチは、「何かを生む」ことよりも「修正し、育てる」過程で威力を発揮するものです。したがって、バリュープロポジションを新規事業につなげ、さらに新規事業を成功させるためには、これまで以上にリサーチを徹底すべきなのです。

新規事業のためのリサーチは「課題の凝縮」

では、実際に新規事業をローンチする前に、どういったリサーチを行うべきかについて解説します。リサーチは、端的に言えば「課題の凝縮」を促すものです。

具体的には「誰が何に困っているか」「なぜ解決されなかったか」「どう解決される(予定)か」を突き詰め、数行で説明できるレベルにまで凝縮します。

誰が何に困っているのか

具体的な(潜在)顧客が存在しており、痛みを伴うレベルの課題があることを把握する

なぜ解決されなかったのか

顧客目線で解決に至らなかった理由、そこに存在するはずの顧客課題などを、背景を含めて立体的に把握する

どう解決される(予定)か

どのような価値を持った解決方法を提供し、それが顧客にとってどういった利益になるのか

すでにお気づきかもしれませんが、こうしたリサーチのポイントは、前回の記事で紹介した新規事業につながるバリュープロポジションと非常によく似ています。

  • 誰が→痛みの解決のためにコストを投じているアーリーアダプター
  • 何に困っていて→Must Haveが存在しているか、Nice to Haveではないか
  • なぜ解決されなかったか→代替案の質やコスト、CPFの追求
  • どう解決される(予定)か→プロトタイプの作成と修正、改善

このようにリサーチはバリュープロポジションを創り、新規事業のローンチに至るまでの過程全般に影響しています。また、リサーチによって「勝てる市場」を見つけ出すことも可能です。

バーチャル経営流「勝てる市場の見つけ方」

ここからは、バーチャル経営における「勝てる市場の見つけ方」を解説します。バーチャル経営では、中小企業がデジタルマーケティングを実践するうえで「ABM」を活用し、「限定された濃い市場」を狙うべきだと訴えてきました。新規事業においても同じように「ニッチ市場」を狙うべきだと考えています。ただし、ニッチ市場は「ただニッチなだけ」では不十分です。「拡張性があり」「隣接市場が見込める」市場であることも求められます。

そこで問題になるのが「ニッチでありながら拡張性と隣接市場の存在が見込める市場をどう見つけるか」です。これは「勝てる市場をどのように見つけるか」とも言い換えられます。では、実際に勝てる市場を見つけるためのステップを見ていきましょう。

ステップ1:直感的に仮説を立てる

まず、前述の「課題の凝縮」を意識しながら、顧客がどこに存在していて、どういった痛みを抱えているか、そこに対してどのような価値を提供できるかを直感的に書き出して仮説にしてみましょう。直感とはいえ、これまでの経験の蓄積が反映されますから、ある程度は形になるはずです。そこから、デスクリサーチ、フィールドワーク、インタビュー、アンケートを併用し仮説をブラッシュアップしていきます。複数のリサーチ手法を併用することで多角的に仮説の正当性を評価できるでしょう。ここまでで、「勝てる市場の候補」の輪郭を確定させます。

ステップ2:市場と顧客を具体化する

ステップ1の市場に対し「概況分析」「市場規模」「成長予測」などを肉付けしていきます。また、顧客についてはざっくりとセグメント化し、おおまかなボリュームを推測します。
もしここで市場が発展する可能性が低かったり、隣接市場が存在していなかったりといった事実が判明した場合は、再度ステップ1で仮説を立て直します。

ステップ3:顧客の解像度を上げる

ステップ2でセグメント化した顧客をさらに具体化していきます。ここでは、ペルソナ設定やプロファイリング、カスタマージャーニーマップなどを併用しながら、顧客の解像度を上げていきましょう。ペルソナやカスタマージャーニーマップは、BtoBマーケティングの章でも紹介した手法ですが、新規事業の市場調査においても非常に有用です。ここまでくると、顧客が抱えている本質的な痛みや課題が見え、「Nice to have」か「Must have」かの判断もしやすくなるはずです。もしMust haveが存在していれば、それに対応する価値提案やプロトタイプの作成を進めていきましょう。

ステップ4:競合調査

新規事業の場合、市場が無ければ直接的な競合も存在していません。しかし、「Must haveを解決する代替手段」の中に競合が発生している可能性はあります。また、将来的な市場の発展や隣接市場への展開によって競合を意識すべき時が来るかもしれません。ニッチ市場とはいえ、ある程度は競合の調査を進めておくべきでしょう。

まとめ

ここでは、バリュープロポジションにおけるリサーチの大切さや、中小企業が狙うべき「勝てる市場」の調べ方について紹介してきました。新規事業向けの「勝てる市場」の調査には、ABMなどBtoBデジルマーケティングの手法を応用すると良いかもしれません。次回は「新規事業におけるBtoBマーケティング」について解説します。

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この記事を書いた人

持田 卓臣のアバター 持田 卓臣 株式会社ベンチャーネット代表取締役

株式会社ベンチャーネット 代表取締役
2005年に株式会社ベンチャーネットを設立後、SEOをはじめとするデジタルマーケティング領域のコンサルティングサービスを展開
広告・SNS・ウェブ・MA・SFAと一気通貫で支援を行っています
著書に『普通のサラリーマンでもすごいチームと始められる レバレッジ起業 「バーチャル社員」があなたを救う』(KADOKAWA、2020年)

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