前回はBtoBマーケティングにおける2本柱のひとつ「ペルソナ」について、具体的な設定方法を解説しました。今回はもうひとつの柱である「カスタマージャーニーマップ」を紹介していきます。
「カスタマージャーニー」とは何か
まず、一般論としての「カスタマージャーニー」をおさらいしておきましょう。カスタマージャーニーとは、日本語で「顧客の旅」と訳されるように、顧客の心境や認識の変化を「旅」に見立てる考え方です。前回の記事で紹介したペルソナとセットで使用されることが多く、ペルソナの思考の変遷を旅のようにつながりを持って描いていきます。また、カスタマージャーニーを可視化したものを「カスタマージャーニーマップ」と呼び、近年のマーケティングにおいて頻繁に使用されるツールのひとつとなっています。
BtoBにおけるカスタマージャーニーマップ作成の手順
では早速BtoBマーケティングにおけるカスタマージャーニーマップの作成手順を紹介していきます。
バーチャル経営が推奨するBtoBマーケティング向けのカスタマージャーニーマップでは、横軸として「行動の変遷」を、縦軸として「心境や認知の変遷」を取るように表を作成します。ちなみにWebでカスタマージャーニーマップと検索すると、さまざまなテンプレートが出てくると思いますが、基本的な構造はどれも大差ありません。具体的には次のような表です。
Aから始まる横軸が、ペルソナの「行動の変遷」、数字が付与された縦軸が「心境や認知の変遷」だと考えてください。このカスタマージャーニーマップに、前回紹介したペルソナを当てはめていくと、次のように書くことができるでしょう。
この記述はあくまでも一例ですので、実際には課題やゴールが変わる可能性があることをご了承ください。
カスタマージャーニーマップは「相手方のキーマン」をペルソナとして想定し、一人の人間の意思決定プロセスを描くものです。これは、物語における「主人公の成長」を描く工程と似ています。例えばアニメでは、常に何らかの課題にぶつかる主人公がその時々で学習(レベルアップ)を繰り返し、ひとつずつ成長していくステップが頻繁に描かれますよね。カスタマージャーニーマップも同じで、「課題⇒アクション⇒ニーズ(必要なこと)⇒仮のゴールと次のステップ」というサイクルを繰り返しながら意思決定に近づくわけです。
したがって、記述するときはまず「A.認知」について1から4までを順番に埋めていき、次に「B.認知」へスライドしていきましょう。こうすることで、「何に悩み、どう対応し、何を欲して、次の行動へ移るのか」が浮き彫りになるわけです。また、実際の見込み客に提案を行う場合は、カスタマージャーニーマップのどの場所に位置するかを把握して、接し方を変えていくことが可能になります。
DMUを想定した「対組織版カスタマージャーニーマップ」
前回のペルソナの回でも紹介しましたが、BtoB取引の場合は意思決定にかかわる人物が複数存在する可能性が高いです。そのため、個人ではなく「組織」をペルソナとしたカスタマージャーニーマップが必要になることもあります。これをバーチャル経営では「対組織版カスタマージャーニーマップ」と呼んでいます。
「対組織版カスタマージャーニーマップ」は、意思決定が単独で行われていない場合に使用します。具体的には、組織の意思決定プロセスを可視化し、先ほど紹介した担当者個人ペルソナによるアカウントジャーニーマップが、企業のDMU(Decision Making Unit=意思決定組織)にどの程度反映されているかを見るためのツールです。
下記は「対組織版カスタマージャーニーマップ」のテンプレートと、実際の記述例です。
個人を想定したペルソナよりも組織の意思決定プロセスがわかりやすくなったと思います。また、意思決定の各フェーズでの「キーマン」が誰なのかも可視化することができます。この例では、調査段階では担当社員が、評価や意思決定では担当部長がキーマンと考えることができるわけです。
まとめ
ここでは、BtoBにおけるカスタマージャーニーマップの作成方法について解説してきました。BtoBマーケティングにおけるカスタマージャーニーマップは「個人」と「組織」を併用することで、顧客企業の意思決定プロセスをより深く推測することができることを覚えておいてください。次回は「BtoBデジタルマーケティング」について解説していきます。