Odooの自動化ルールとAIで入力を減らす|場面別の設定例と人が確かめる線

夕方6時、外回りから戻った営業担当者が、商談メモを打ち込んでいます。書き終えても、同じ画面の「業種」と「次回アクション」の欄が残っている。疲れた日は、その欄が空のまま残ります。

この「読んで書き写す」入力の多くは、いまはOdoo(オドゥー)の中で、AIと自動化ルールに任せられます。Odooは、販売・在庫・会計などをひとつにつなぐERPです。ERPとは、会社全体の業務データをひとつのシステムで管理する仕組みを指します。

架空の食品卸で試算すると、商談メモの転記と問い合わせの分類だけで月15時間でした(入力が減らない理由)。Odooの仕組みに移すと、たとえば次のことが変わります。

  • 件名に「見積」とある問い合わせに、担当と活動を自動化ルールで付けられる
  • 商談メモを書いてAIアイコンを押せば、業種と次回アクションの欄にAIが値を入れる
  • 期日を過ぎた未入金の請求書を、言葉で頼んで一覧で開ける
  • 書類の読み取りを自動にしていれば、毎月同じ金額の請求書は仕入先ごとに自動確定を選べる

良い点と気をつけることは、入力を仕組みに移すメリットとデメリットにまとめました。海外拠点や連結決算まで見据えるなら、NetSuiteと規模の目安を見比べる段階もあります(進め方)。

ただし、任せる欄を間違えると、AIの推測が確かな数字のような顔をして帳簿に入ります。では、どの欄なら任せてよく、どの欄は人が押さえるべきなのか。答えはAIが埋めた値を人が確かめる線にあります。

Community版とEnterprise版について

自動化ルールは、無料のCommunity版と有償のEnterprise版の両方にあります。AIフィールド・「AIで更新」・AIサーバーアクション・Ask AI・AIエージェント・音声の文字起こしは、Enterprise版のAI機能です。AI機能はクレジット(アプリ内課金)を使います。

入力を減らす仕組みの流れ 現場は話す・書くだけにし、AIが自由記述を読んで項目を埋め、自動化ルールが担当の割り当てや活動の登録を起こす。最後に、金額・数量・日付は人が確かめる。 入力を減らす仕組みの流れ 現場は、話す・書くだけ 商談メモ・問い合わせ・音声の文字起こし AIが読んで、項目を埋める AIフィールド・「AIで更新」 業種・分類タグ・要約・次回アクション 自動化ルールが次を起こす 担当の割り当て・活動の登録 固定の条件ならCommunity版でも動く 人が確かめる 金額・数量・日付・勘定科目 週1回、AIの分類をまとめて見直す AIは下書き、確定するのは人
入力を減らす仕組みの流れ
目次

ERPの入力が減らないのは「読んで書き写す」欄があるから

ERPの入力が重い理由は、キーを打つ量ではありません。すでにどこかに書いてある内容を、読んで別の欄に写す作業の多さにあります。

架空の食品卸「さくら商事(従業員30名)」で、入力の手間を棚卸しした例です。4つの型に分かれました。

入力の型さくら商事の例向く仕組み
毎回同じ条件で同じ値を選ぶ件名に「見積」があれば担当を割り当てる自動化ルール
文章を読んで別の欄に写す商談メモから業種と次回アクションを書くAIフィールド・「AIで更新」
探すために条件を組む期日を過ぎた請求書を得意先別に出すAsk AI
外で聞いた話を戻って打つ訪問先の話を事務所で打ち直す音声の文字起こし・スマホ

どれも、手を動かしても顧客には何も届かない仕事です。ベンチャーネットが「ブルシットジョブ」と呼んで減らそうとしている作業の典型にあたります。全体像はブルシットジョブを消し去るにまとめました。

さくら商事の試算では、商談メモの転記が営業5人で月10時間、問い合わせの分類が月5時間でした(架空の数字)。合わせて月15時間。人の判断が要らない部分を仕組みに移せば、この時間の大半は消えます。

稲盛和夫氏は、経営の原則として「売上を最大限に伸ばし、経費を最小限に抑える」を挙げました(出典:稲盛和夫オフィシャルサイト、2026年9月確認)。売上も経費も、漏れなく記録されてはじめて正しく計れます。空欄の多いERPでは、それができません。

Odooの自動化ルールとAIで入力を減らすメリットとデメリット

4つの型を仕組みに移すときの良い点と注意点は、次のとおりです。使える版は、機能ごとに添えています。

メリット

  • 固定の条件ならCommunity版でも任せられる:自動化ルールのモジュールはCommunity版にもある。開発者モードをオンにして、設定の「技術」メニューから作る
  • 読んで写す欄をAIが埋める:AIフィールドと「AIで更新」で、業種・分類タグ・要約・次回アクションを埋められる。Enterprise版のAI機能
  • 探す手間が言葉で済む:Ask AIに「期日を過ぎた未入金の請求書を、得意先別に見せて」と頼めば、該当する一覧が開く。Enterprise版のAI機能
  • 外で聞いた話を戻って打たずに済む:音声の文字起こしで、説明欄・メモ欄に文字起こしと要約が残る(Enterprise版)。チャットボットでCRMのリードを作る仕組みはCommunity版にもある
  • 空欄が減って数字がそろう:記録がその日のうちに入り、その日の記録から作った数字が会議で信頼される

デメリット・注意点

  • AIの値は推測を含む:もっともらしい誤りは止まらず、そのまま保存される。金額・数量・日付・勘定科目は人が確定する
  • AI機能はEnterprise版とクレジットが前提:AI機能はクレジット(アプリ内課金)を使う。AIフィールドの定期処理は毎日動くため、件数の多いモデルでは使う量を見ておく
  • 環境によってはAPIキーが要る:19.0のドキュメントでは、Odoo.shと自社サーバーで使うには自社のAPIキーが必要。AIの提供元に別途の利用料がかかる
  • 版を上げると記載が変わることがある:Ask AIの「データを変更できない」という注記は、19.4以降のドキュメントでなくなった

両方を並べると、次の図のとおりです。

自動化ルールとAIで入力を減らすメリットとデメリット 良い点は、固定の条件ならCommunity版の自動化ルールで任せられる、読んで写す欄をAIフィールドとAIで更新が埋める(E版)、探す手間をAsk AIで言葉で頼める(E版)、外で聞いた話を音声の文字起こしで残せる(E版)、空欄が減り数字がそろうこと。注意点は、AIの値は推測を含むため金額・数量・日付は人が確定する、AI機能はE版とクレジットが前提、Odoo.shと自社サーバーはAPIキーが要る、版を上げると記載が変わることがあること。 入力を仕組みに移すメリットとデメリット 良い点 固定の条件ならC版でも任せられる 自動化ルール(開発者モードで作る) 読んで写す欄をAIが埋める AIフィールド・「AIで更新」(E版) 探す手間が言葉で済む Ask AIで該当の一覧が開く(E版) 外で聞いた話を戻って打たない 音声の文字起こしと要約(E版) 空欄が減って数字がそろう 記録がその日のうちに入る 注意点 AIの値は推測を含む 金額・数量・日付は人が確定する AI機能はE版とクレジットが前提 定期処理は毎日動く。使う量を見る 環境によってはAPIキーが要る 19.0ではOdoo.sh・自社サーバー 版で記載が変わることがある Ask AIの注記は19.4以降でなくなった C版=Community版(無料)/E版=Enterprise版(有償)
入力を仕組みに移すメリットとデメリット

任せる欄と任せない欄の線はAIが埋めた値を人が確かめる線で、費用を見ながら広げる順番は入力を減らす仕組みにするまでの進め方で扱います。

固定の条件で書ける入力は、Odooの自動化ルールに任せる

最初に検討するのは、AIより先に自動化ルールです。「この条件なら、この値」と書ける入力に、AIは要りません。

自動化ルールは、決まったきっかけ(トリガー)で、決まった処理を実行する仕組みです。公式ドキュメントには、次のきっかけと処理が並んでいます(出典:Odoo 19.0公式ドキュメント「Automation rules」、2026年10月確認)。

区分主な選択肢
きっかけ作成時・作成と更新時・値の変更・日付から○日後・メールの受信
処理レコードの更新・レコードの作成・活動の登録・メールやSMSの送信

例:見積の問い合わせに、担当と活動を付ける

さくら商事では、Webからの問い合わせをCRMのリード(見込み客の記録)で受けています。これまでは、事務担当が1件ずつ件名を読み、営業に割り振っていました。

設定の項目設定の例
きっかけ作成時
対象の条件件名に「見積」を含む
処理1営業担当の欄に、見積担当者を入れる
処理2「当日中に電話」の活動を登録する

件名の書き方がそろっていれば、これで足ります。処理は上から順に実行されるため、担当を入れてから活動を登録する流れも作れます。

Community版での作り方と、2つの注意

公式ドキュメントの手順は、ノーコードの設定ツールStudioから作る方法です。StudioはEnterprise版にしかありません。

ただし、自動化ルールのモジュールはCommunity版にもあります(出典:Odoo 19.0のソースコード、2026年10月確認)。開発者モードをオンにすれば、設定の「技術」メニューから作れます。

設定では、公式ドキュメントにある2つの注意を守ってください。

  • 「作成と更新時」を使うなら、見張る項目を必ず選ぶ。選ばないと、1件に何度も処理が走ることがある
  • 「日付から○日後」などの時間のきっかけは、作った直後に定期処理を手動で1回動かす。しないと、過去のレコードにさかのぼって動くことがある

画面や自動化をどこまで自社で変えるかは、Odoo Studioとは?で線の引き方を扱っています。毎朝の確認に自動化ルールを使う例は、在庫・営業・購買の「毎朝の確認」を自動化するへ。

場面別の設定例:OdooのAIに「読んで埋める」を任せる

件名がばらばらで、本文を読まないと分類できません。こうした入力は、固定の条件では書けません。ここからがAIの出番で、以下はすべてEnterprise版の機能です。

商談メモから、業種と次回アクションを埋める(AIフィールド)

AIフィールドは、指示文(プロンプト)にもとづいて、AIが項目の値を作る仕組みです。公式ドキュメントは、用途に「メモの要約」や「非構造データからの構造化」を挙げています(出典:Odoo 19.0公式ドキュメント「AI fields」、2026年10月確認)。

これまで空欄だった2つの欄が、AIフィールドを置いた後は次のように埋まります。

商談メモ(自由記述)業種(AI・タグ)次回アクション(AI・テキスト)
来月から冷凍の取扱いを増やしたい。見積は月末まで食品製造、冷凍月末までに冷凍品の見積を出す
年末ギフト向けに包材を相談。担当が異動予定菓子製造包材の提案と、新担当者の確認

指示文の中で「/field」と打つと、参照したい項目を選べます。

/field(商談メモ)を読み、顧客の業種を次のタグから選んでください。食品製造・菓子製造・冷凍・外食・小売。当てはまらなければ空欄にしてください。

運用の流れは4段です。

  1. 情シス担当者が、商談のフォームにAIフィールドを置き、型と指示文を決める
  2. 営業はメモを書くだけ。AIアイコンを押せば、その場で値が入る
  3. テキスト型の押し忘れは、1日1回の定期処理で埋まる(既定で有効)
  4. 週1回、営業リーダーが一覧を眺め、明らかな誤りを直す

置き方は、Studioから置くか、フォームの「Edit Properties」で足すかの2通り。後者はStudioなしで使えますが、フォーム画面に限られます。Studioを入れると料金プランに影響する場合がある、と公式は注記しています。

型はテキスト・日付・金額・タグなど11種類。ただし、金額や日付をAIに埋めさせるのは避けてください(理由はAIが埋めた値を人が確かめる線)。

長い商談メモを、60字の要約にする

同じAIフィールドで、要約の欄も作れます。指示文は「/field(社内メモ)を60字で要約してください」で十分です。

たとえば約800字の「冷凍庫更新の件」は、「B案で稟議中。10月納品希望。仕入先の納期回答待ち」になります。会議の前に、全商談の要約を一覧で見られるようになります。新商品の説明文も、原材料と産地の欄を参照させれば同じ形で作成可能です。要約は元のメモと食い違うことがあるので、重要な商談は原文も開きます。

問い合わせに分類タグを付ける(自動化ルールの「AIで更新」)

固定の条件で使う自動化ルールには、処理の種類に「AIで更新」があります。指示文をもとに、指定した項目をAIが更新する処理です。使うにはAIアプリのインストールが必要です(出典:Odoo 19.0公式ドキュメント「Automation rules」、2026年10月確認)。

問い合わせ本文(抜粋)分類タグ(AIで更新)
#1021納品された商品の数が足りない納品・数量違い
#1022見積をもう一度送ってほしい見積依頼
#1023請求書の宛名を変えたい請求書・宛名変更

指示文では「/」から2つの道具を呼べます。参照する項目を選ぶ「Field Selector」と、入れてよい値の候補を渡す「Records Selector」。候補を渡しておけば、AIが勝手に新しいタグを作る余地が減ります。

きっかけを「作成時」にすれば、届いた時点で分類が付きます。

書類の振り分けは「判断はAI、実行はコード」(AIサーバーアクション)

請求書・納品書・見積依頼のPDFが、同じ受信箱に届く。中身を見て、経理・物流・営業のフォルダへ移す。この振り分けに向くのが、AIサーバーアクションです。

公式ドキュメントは、役割を2つに分けています(出典:Odoo 19.0公式ドキュメント「AI server actions」、2026年10月確認)。

役割担うこと
AIサーバーアクション(マネージャー)書類を読み、どの処理をどの引数で呼ぶかを決める
ツール(ワーカー)通常のサーバーアクション。移動・タグ付けを実行する

ツールは、呼ばれると条件なしに実行されます。そのため、業務のルールはツールに書くPythonで守らせる、と公式は説明しています。「経理フォルダには請求関連だけ」という線を引くのも、コードの役目。

標準の例はDocumentsアプリの受信トレイの自動仕分けで、設定は情シスか導入担当者の仕事になります。AIには判断だけを任せる考え方は、良いAIエージェントは、ほとんどAIではないでも取り上げました。

毎月同じ請求書は、確定ボタンも押さない(Auto-post bills)

リース料や利用料のように、毎月同じ金額の仕入請求書もあります。書類の読み取りを自動にしていれば、仕入先ごとに自動確定を選べます。設定は仕入先の会計タブにあります(出典:Odoo 19.0公式ドキュメント「Document digitization」、2026年10月確認)。

仕入先Auto-post billsの設定届いた後
複合機のリース会社Always読み取り後に自動で確定
クラウドサービスの会社Ask after 3 validations without edits3回続けて無修正なら、自動確定を提案
運送会社(毎月変動)Neverこれまでどおり担当者が確認

金額が毎月変わる仕入先は「Never」のままにします。読み取りは1通につき1クレジット。書類の読み取りそのものは、請求書・レシート・注文書をAIで読み取るで詳しく扱っています。

探す・まとめる手間を減らす:Ask AIとAIエージェント

入力の手間には「数字を探して、別の場所に写す」作業も含まれます。ここはAsk AIとAIエージェントの出番です。機能の一覧はOdooのAI機能まとめに譲り、場面に絞ります。

一覧の絞り込みを、言葉で頼む

経理担当者が、期日を過ぎた未入金の請求書を探す場面です。これまでは、会計の画面でフィルターを3つ組み、得意先でまとめていました。

Ask AIは、どの画面でも「Ctrl+K」か、右上のAIボタンで呼び出せます。「期日を過ぎた未入金の請求書を、得意先別に見せて」と頼めば、該当する一覧が開く仕組みです(出典:Odoo 19.0公式ドキュメント「AI」、2026年10月確認)。

件数や合計を報告に使う前に、開いた画面のフィルター条件を目で見てください。Ask AIは、処理できないときにエラーを出さず「いまはできない」と答える仕様です。日本語での通りやすさは、項目名の翻訳にも左右されます。

長いやり取りを要約し、ノートとして残す

商談の履歴(チャター)が長くなると、引き継ぐたびに全部を読み返さなければなりません。Ask AIに「このチャターを要約して」と頼み、回答の「Log as Note」を押します。内容を直してから、社内メモとして記録できます。

【要約 9/28】B案で先方稟議中、10月納品希望。仕入先の納期回答待ちで止まっている。次の行動:9/30までに仕入先へ再確認。

頼み方のボタンは、画面の種類ごとに用意できる(出典:Odoo 19.0公式ドキュメント「AI default prompts」、2026年10月確認)。設定はAIアプリの「Default Prompts」です。商談の画面に「このチャターを要約して」のボタンを置けば、毎回打たずに済みます。顧客宛てに送る「Send as Message」は、送信前に必ず人が読みます。

操作の質問に答える窓口を作る

稼働直後は「返品伝票はどこから作るの?」といった質問が、経理や情シスに集まります。AIエージェントに社内の手順書を読ませれば、答える窓口になります。

エージェントには、PDF・Webのリンク・Documentsの文書・ナレッジ記事を「ソース」として登録できます。「Restrict to Sources」を有効にすると、登録した資料の範囲だけで答えます(出典:Odoo 19.0公式ドキュメント「AI agents」、2026年10月確認)。

手順書を改訂したら、ソースも差し替えてください。古い手順書が残ると、エージェントは古い操作を案内します。19.4以降のドキュメントには、ソースを読み直させる「Reprocess」の操作も載っています。

Enterprise版でなければ、ClaudeやChatGPTの資料をまとめて置く機能に手順書を入れる方法もあるでしょう。この場合、AIはOdooのデータを見ずに手順書だけで答えます。権限まで含めたエージェントの設計は、OdooのAIエージェントで扱いました。

スマホと音声入力:外で聞いた話を、戻ってから打たない

最後の型は、外で聞いた話を事務所に戻ってから打つ入力です。ここはスマホと音声で減らします。

Odoo公式は、スマホでの利用にPWAを勧めています(出典:Odoo 19.0公式ドキュメント「Odoo mobile apps」、2026年10月確認)。PWAとは、ブラウザの画面をアプリのようにホーム画面へ置ける仕組みです。

音声の文字起こしは、ほとんどのレコードの説明欄・メモ欄で使えます(出典:Odoo 19.0公式ドキュメント「AI voice transcription」、2026年10月確認)。「/」から「Voice Transcript」を選んで録音すると、文字起こしと要約が残ります。録音そのものは処理の後に自動で破棄され、聞き直せません。

スマホでの操作手順は、公式ドキュメントに書かれていません。録音のときにブラウザがマイクの許可を求めるので、社内の端末で一度試してから広げてください。音声で報告を残す設計の全体は、現場の報告を音声で残すにまとめています。

問い合わせは、受けた時点でデータにする

電話のメモから、翌朝チケットを起こす。この転記は、Webサイトのチャットボットで減らせます。チャットボットは、決めた順番で質問を進める仕組みです(出典:Odoo 19.0公式ドキュメント「Chatbots」、2026年10月確認)。

会話の最後の処理必要なアプリ版
CRMにリードを作る(Create Lead)CRMCommunity版にもある
ヘルプデスクにチケットを作る(Create Ticket)ヘルプデスクEnterprise版

リード作成がCommunity版にあることは、ソースコードで確認しました。このボットはAIを使わず、決めた順番で質問するだけです。返金や契約変更の判断はボットに任せず、人への引き継ぎを用意します。チケットの運用はOdooのヘルプデスクを参照してください。

AIが埋めた値を、人が確かめる線

入力をAIに任せるほど、点検する場所を先に決めておく必要があります。決めないまま広げれば、誤った値が静かにたまっていきます。

入力の欄ごとに、どの仕組みを使うか 固定の条件で書ける欄は自動化ルールに任せる。文章を読まないと決まらない欄はAIフィールドかAIで更新を使う。動作まで選ばせるならAIサーバーアクションを使い、業務ルールはコードで守る。金額・数量・日付・勘定科目は人が確定する。 欄ごとに、仕組みを選ぶ Q1. 固定の条件で書けるか 例:件名に「見積」→見積担当 いいえなら次へ Q2. 動作まで選ばせるか 例:書類を見て移す先を決める 使う仕組み Q1がはい → 自動化ルール(Community版も可) Q2がいいえ(値を埋めるだけ) → AIフィールド・「AIで更新」 Q2がはい → AIサーバーアクション+コード どの場合も、人が確定する欄 金額・数量・日付・勘定科目 AIを使うのは、条件で書けない欄だけ
入力の欄ごとに、どの仕組みを使うか

図の考え方を、欄の種類で表にしました。

欄の種類AIに任せてよいか点検の方法
分類タグ・業種・要約・次回アクション任せてよい週1回、一覧で誤りを直す
商品説明・社内向けの文面下書きまで公開・送信の前に人が読む
金額・数量・日付・勘定科目任せない人が入力し、人が確定する

AIフィールドには金額や日付の型もあります。それでも、会計や在庫に効く値をAIに埋めさせるのは避けてください。AIの値は推測を含みます。「二十個」と「二十五個」の取り違えは、要約の文面では気づきにくいものです。

仕組みの側で、あらかじめ止めておく

  • AIフィールドの定期処理が埋めるのは、テキスト型とプロパティの空の欄だけ。どの欄に置くかは、導入時に決める
  • 標準のAsk AIについて、19.0のドキュメントは「データを変更できない」と明記している。19.4以降のドキュメントでは、この注記がなくなった

注記がなくなった理由は、ドキュメントに書かれていません。版を上げるときは、Ask AIにできることを見直してください。権限と承認の設計は、AIに任せてはいけない範囲で詳しく扱いました。

費用とAPIキーも、最初に調べておく

AI機能はクレジット(アプリ内課金)を使います。AIフィールドの定期処理は毎日動くため、件数の多いモデルでは使う量を見ておきましょう。

19.0のドキュメントでは、Odoo.shと自社サーバーの環境でAI機能を使うには、自社で用意したAPIキーが必要です。Odooオンラインなら任意(出典:Odoo 19.0公式ドキュメント「AI API keys」、2026年10月確認)。自社のキーを使うと、AIの提供元に別途の利用料がかかります。

入力が楽になると、数字がそろい始める

入力を減らす目的は、作業時間を削ることだけではありません。空欄が減り、数字がそろうことにあります。

入力が楽になると、記録はその日のうちに入る。その日の記録から作った数字は会議で信頼され、現場は「Odooに入れておけば済む」と考えるようになります。入力が重いままだと、このループは逆に回り、やがて誰もOdooの画面を見なくなる。入力漏れや締め後の修正を止める仕組みは、数字を正しく計測する仕組みにまとめました。

自社の入力の手間を点検するチェックリスト

社内の会議で、次の項目に印を付けてみてください。3つ以上当てはまれば、入力を仕組みに移す効果が大きい会社です。

  • □ メモ欄に書いた内容を、別の欄にもう一度書いている
  • □ 問い合わせや商談に、人が1件ずつ分類を付けている
  • □ 「この件名ならこの担当」という暗黙のルールがある
  • □ 同じフィルターを、毎週手で組み直している
  • □ 外出先で聞いた話を、事務所に戻ってから打っている
  • □ 毎月同じ金額の請求書を、開いて確定している
  • □ 操作の質問が、特定の人に集まっている
  • □ AIが埋めた値を、誰がいつ確かめるか決まっていない

入力を減らす仕組みにするまでの進め方

ベンチャーネットが、入力の手間を仕組みに移すときの順番です。

  1. 入力の欄を洗い出す:画面ごとに、毎回だれが何を入れているかを一覧にする。空欄の多い欄から見る
  2. 4つの型に分ける:同じ条件で同じ値/読んで写す/探す/外で聞いた話、のどれかに振り分ける
  3. 固定の条件は、自動化ルールにする:AIを使わずに済む欄を先に片付ける。Community版でもできる部分
  4. 残りをAIに任せ、確かめる人を決める:1つの画面で試し、週1回の確認を担当者の作業に組み込む
  5. 使う量と費用を見て広げる:クレジットの使用量と、減った時間を見比べてから広げる

4の段階で、AIに任せる欄と任せない欄の線を文章にしておきます。金額・数量・日付・勘定科目は人が押さえる、という線です。

海外拠点や連結決算まで見据えるなら、OdooとNetSuiteの違いで規模の目安をご覧ください。パッケージに乗らない固有の業務は、AIスクラッチ開発で作る道もあります(開発費・保守費は別途)。ERPで現場の作業が増える理由は、NetSuiteの教科書の「ERPで現場の仕事が増えた」はなぜ起きるのかでも整理しています。

バージョンと機能の更新について

この記事の内容は、2026年10月に確認したOdoo公式ドキュメントの原文にもとづきます。比べたのは19.0・19.4・開発中の版(master)の3つ。

機能19.019.4・開発中の版
自動化ルールの「AIで更新」ありあり(記載は同じ)
AIフィールド・AIサーバーアクションありあり(記載は同じ)
Ask AIの「データを変更できない」注記ありなし
エージェントの「トピック」トピック「スキル」に名称変更
ソースの読み直し(Reprocess)記載なしあり
Phoneアプリの通話の文字起こし記載なしあり

開発中の版のドキュメントでは、APIキーのページが作成中で、アプリ内課金のサービスのページに案内しています。Odoo.shや自社サーバーでAI機能を使う条件は、上げる版のドキュメントで確認してください。Odoo 20の変更点は、Odoo 20の新機能まとめにあります。

よくある質問

Community版でも、入力を減らせますか?

減らせます。自動化ルールはCommunity版にもあり、固定の条件で書ける入力なら任せられる機能です。チャットボットでCRMのリードを作る仕組みも同じです。AIフィールドやAsk AIなどのAI機能は、Enterprise版が前提になります。

AIフィールドは、Studioがないと使えませんか?

Studioがなくても使えます。フォームの「Edit Properties」から、AIのプロパティ項目として足す方法です。ただし、使えるのはフォーム画面に限られます。

AIが埋めた値が間違っていたら、どうなりますか?

そのまま保存されます。値を作れないときは警告が出ますが、もっともらしい誤りは止まりません。AIは分類や要約にとどめ、週1回見直す担当者を決めてください。

AI機能の費用は、どう見積もればよいですか?

AI機能はクレジット(アプリ内課金)を使い、定期処理や自動化ルールは件数に比例して使う量が増えます。まず1つの画面で1か月試し、使った量と減った時間を見比べてください。

自動化ルールとAIで入力を減らすメリットとデメリットは?

入力の手間が減る一方でAIの値を確かめる人が要ります。固定の条件で書ける入力は自動化ルールに、読んで写す欄はAIフィールドや「AIで更新」に任せられます。自動化ルールはCommunity版にもあり、AI機能はEnterprise版でクレジットを使います。AIの値は推測を含むため、金額・数量・日付・勘定科目は人が確定します(メリットとデメリット)。

まとめ:入力は「話す・書くだけ」に近づけられる

入力の手間は、4つの型に分けると打ち手が見えます。同じ条件で同じ値を選ぶ欄は自動化ルールへ。読んで写す欄はAIフィールドや「AIで更新」へ。探す手間はAsk AIで、外で聞いた話は音声とスマホで減らします。

AIに任せてよいのは、分類・要約・下書きまで。金額・数量・日付・勘定科目は、これからも人が確定します。この線を先に決めておけば、AIは入力の重荷を引き受ける道具になります。

1年後、さくら商事の営業担当者は、商談のあとに話した内容を残すだけになっているはずです。業種も次回アクションも、AIが下書きを埋めている。営業会議の時間は、空欄を埋める催促から、そろった数字で次の打ち手を話す時間に変わっています。

もう少し詳しく知りたい方へ

入力の欄が多くて現場が疲れている、AIに任せたいが点検の方法が決まらないといった悩みがあれば、実際の画面を見ながら一緒に整理します。

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この記事を書いた人

持田 卓臣(もちだ たくおみ)
株式会社ベンチャーネット 代表取締役

ヒューレット・パッカード社でITコンサルタントとして従事した後、2005年に株式会社ベンチャーネットを設立。
Oracle NetSuite Solution Provider Partner として、中堅・中小企業向けクラウドERP「NetSuite」の導入・運用支援を提供しています。
SEO・広告・SNS・ウェブ・MA・SFAと一気通貫で培ってきたデジタルマーケティング領域の業務知見を活かし、NetSuiteを軸とした経営DXを支援しています。
著書:『普通のサラリーマンでもすごいチームと始められる レバレッジ起業「バーチャル社員」があなたを救う』(KADOKAWA、2020年)

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