会議の前日です。経営企画の担当者が、各部署に「先月の実績をください」とメールを送っています。
返ってきたExcelの形式を揃え、スライドに貼り付けます。作業が終わるのは、その日の夜です。
そして翌日の会議。誰かが質問します。「この数字、先週の時点ではどうでしたか」
答えられません。資料に載っているのは、集計した時点の数字だからです。
資料作りの時間の大半は、作る作業ではなく、各部署から数字が返ってくるのを待つ時間です。Odoo(オドゥー:オープンソース由来の統合業務アプリ群)で業務データを1か所に集めると、この待ちがなくなります(資料作成にかかっているのは「集める時間」)。
会議で見るのは、画面の最新の数字です。たとえば次のことが変わります。
- 準備は、数日かけて数字を集める作業から、見る画面と議題を決める数十分の作業になる
- 「どの商品が下がりましたか」に、その場で商品別に切り替えて答えられる
- 「次回までに確認します」が減り、判断の先送りがなくなる
- 決めた内容を案件の記録にその場で残し、半年後に開いた人も経緯を読める
ただし、資料をやめた直後の会議は、一度うまくいかなくなります。また、規模や要件によってはNetSuiteのほうが合う場合もあります(最初の3回の会議で確かめること)。
なぜ一度悪くなるのか、そして次の1回から何を試せばよいのか。答えは資料をなくすと、会議は一度悪くなると次の1回から試せる4ステップにあります。
前提:業務データが1か所に集まっている(または集まる予定がある)ことです。
なお、Odooには無料のCommunity版と有償のEnterprise版があります。会議で使える画面の範囲は、版によって一部異なります(Community版でもできるか)。
経営会議の資料作成にかかっているのは「集める時間」
資料作成の工程を分解すると、次のようになります。
| 工程 | かかる時間 |
|---|---|
| 各部署に依頼する | 数分 |
| 返ってくるのを待つ | 数日 |
| 形式を揃え、突き合わせる | 数時間 |
| スライドに整える | 数時間 |
| 説明の文言を考える | 1時間程度 |
いちばん長いのは2行目です。作る作業より、待っている時間のほうが長い。そして待っている間も、数字は動き続けます。
集める工程がなくなると何が起きるか
業務データが1か所に集まっていれば、依頼も、待ちも、突き合わせも発生しません。
そして、会議中の数字が最新になります。
導入から1年後にどう変わるかは Odooで会社はどう変わるか|導入1年後に「なくなっているもの」 にまとめています。
画面を見る経営会議で変わる3つの要素
資料をやめると変わるのは、会議の準備・議論・決定の3つです。
準備は、数日かけて数字を集める作業から、見る画面と議題を決める数十分の作業へ。決定は、議事録で後から共有する形から、その案件の記録にその場で残す形に変わります。
3つのうち、いちばん価値が大きいのは2番目の議論の変化です。
いちばん大きいのは「その場で深掘りできる」こと
資料がある会議では、話せる範囲が資料で決まります。
資料の限界
「粗利率が下がっています」という説明に、誰かが聞きます。「どの商品が下がりましたか」
資料にその内訳がなければ、答えは1つです。「次回までに確認します」
この瞬間に判断は1か月先送りになり、次回の会議では、また別の疑問が出ます。
画面を見る会議の場合
同じ質問が出たら、その場で商品別に切り替えられるので、「この商品ですね」と分かれば、次の質問に進めます。
「いつから下がりましたか」「どの得意先向けですか」「単価が下がったのか、原価が上がったのか」
1回の会議で、原因まで届きます。
資料は「聞ける範囲」を固定する
資料は、作成者が想定した問いにしか答えられません。
会議で本当に価値があるのは、想定していなかった問いです。そこにその場で答えられるかどうかで、会議の質が変わります。
見る画面の設計と指標の選び方は、社長のコックピットをOdooで作る をご覧ください。
画面を見る会議の良い点と、気をつけること
資料から画面に移ると、準備は軽くなり、議論は深くなります。一方で、切り替えには負担もあります。
良い点は、次の5つです。
- 集める時間がなくなる:業務データが1か所にあれば、依頼も、待ちも、突き合わせも発生しない
- 会議中の数字が最新になる:資料に載るのは集計した時点の数字だが、画面は最新の数字
- その場で原因まで届く:商品別・得意先別に切り替え、「次回までに確認します」が減る
- 準備が数十分で済む:事前に決めるのは、見る画面と議題
- 決定の経緯が残る:決めた内容を案件の記録に書けば、半年後に開いた人が読める
気をつけることは、次の4つです。
- 会議は一度悪くなる:資料が担っていた下ごしらえが、資料と一緒に消える
- 事前に見る時間が要る:会議前日までに、各自が一度は画面を開いておく
- 数字が1か所にあることが前提:部署ごとに別のExcelで数字を持ち直しているなら、先に置き場所を整える
- 会議が短くなるとは限らない:報告の時間は減るが、その場で深掘りする時間が増える
一度悪くなる理由と、立て直す手順は、このあと資料をなくすと、会議は一度悪くなるで扱います。
資料をなくすと、会議は一度悪くなる
資料をやめた直後の会議は、たいてい以前より悪くなります。冒頭で触れた「一度うまくいかなくなる」理由は、資料が担っていた別の役目にあります。
何が起きるか
資料は報告の道具であると同時に、議論の下ごしらえでもありました。
| 消えるもの | 結果として起きること |
|---|---|
| 作成者が数字を読み込む工程 | 異常値に誰も気づかないまま会議が始まる |
| 論点を絞る工程 | 議論が発散し、時間内に決まらない |
| 参加者が事前に目を通す工程 | 会議中に画面を読み始める人が出る |
「資料を作らなくてよくなった」だけでは、会議はよくなりません。
だからこそ、意図的に残す
消えた工程は、別の形で残します。具体的には次の2つです。
- 誰が、いつまでに画面を見るかを決める
- 議題を絞ってから会議に入る
この2つが、次の1回から試せる4ステップのステップ2と3に当たります。ここを飛ばした会議が、資料をやめた会議が失敗する3つの型です。
経営会議の効率化の手順(次の1回から試せる4ステップ)
会議は毎月、あるいは毎週やってきます。次の4つは、どれも次の1回の会議から試せます。
ステップ1:見る画面を先に決める
目的:会議中に画面を探さないこと
会議で開く画面を、事前に3つ程度決めて共有します。
会議が始まってから探し始めると、それだけで数分が消え、参加者の集中も切れます。
成功基準:会議の開始5秒で、目的の画面が出せる
どの指標を置くかは 社長のコックピットをOdooで作る をご覧ください。
ステップ2:事前に見る人と、見る時間を決める
目的:消えた「下ごしらえ」を残すこと
移行期にいちばん手を抜けないのが、このステップです。
「会議前日までに、各自が画面を開いておく」というルールを決めます。開くだけで構いません。数字を一度見ているかどうかで、議論の質が変わります。
さらに1人、「気になる点を挙げる担当」を決めます。資料作成者が担っていた役割を、軽い形で残すためです。
成功基準:会議前日までに、全員が一度は画面を開いている
ステップ3:議題を3つに絞る
目的:発散を防ぐこと
画面を見ながら話すと、話題はいくらでも広がります。これは長所であり、同時に危険でもある点です。
会議前に、議題を3つ以内、1行ずつで文書にして共有します。
深掘りは歓迎しますが、議題から離れたら次回に送る。この線引きを先に決めておきます。
成功基準:会議前に、議題が文書で共有されている
ステップ4:決定をその場で記録に残す
目的:議事録の二度手間をなくすこと
決めた内容を、その案件の記録にその場で書きます。
Odooの見積・受注・案件などの記録には、それぞれ会話やメモを残す欄がついているので、そこに書けば、半年後にその案件を開いた人が経緯を読めます。
議事録を別に作る運用の弱点は、決定と案件が切り離されることです。詳しくは Odooの社内チャット(Discuss) をご覧ください。
成功基準:会議終了の時点で、決定が案件の記録に入っている
資料をやめた会議が失敗する3つの型
次の3つは実際に起きます。どれも、ステップの不足に対応しています。
型1:発散する
症状:画面を見ながら話が広がり、時間内に決まらない。「今日も決まらなかった」という空気で終わる。
原因:議題を絞っていないためです。画面は深掘りできてしまうので、歯止めがありません。
対処:ステップ3に戻ります。議題3つを文書で共有し、外れたら次回に送ると決めます。
型2:沈黙する
症状:画面は出ているが、誰も質問しない。主宰者が一人で説明し続ける。
原因:参加者が事前に数字を見ていないためです。その場で初めて見る数字には、質問が出ません。
対処:ステップ2に戻ります。前日までに開いておくルールを徹底します。
型3:結局あとで資料を作る
症状:会議後に「まとめ」を作る作業が生まれる。手間が、会議の前から後ろに移っただけになる。
原因:決定をその場で記録していないためです。
対処:ステップ4に戻ります。会議中に書く担当を1人決めてください。
画面に切り替える会議と、資料を残す会議
すべての資料をやめる必要はありません。
| 資料 | 判断 |
|---|---|
| 取締役会の議事資料 | 残してください。記録として求められる性質のものです |
| 金融機関・投資家への説明資料 | 残してください。社外向けは相手の形式に合わせます |
| 月次の定例報告 | 画面に置き換えられます |
| 個別案件の検討資料 | 画面+その場の記録で代替できます |
上の2つは、会議のための資料ではありません。社外に対する記録や説明の道具です。目的が違うので、同じ扱いにしないでください。
法令や定款で求められる書類の扱いは、必要に応じて専門家にご確認ください。
次の定例会議から切り替えてよいかのチェック
社内会議で確かめたいのは、次の項目です。
- □ 会議で見る数字(売上・粗利・受注残など)が、Odooに日々入力されている
- □ 部署ごとに別のExcelで数字を持ち直していない
- □ 「その数字は正しいのか」という議論に、毎回時間を取られていない
- □ 会議の主宰者が、画面を操作しながら話せる
- □ 前日までに画面を見る時間を、参加者が確保できる
最初の3項目のどれかに印が付かない場合は、会議より先に「数字を1か所に集める」段階です。資料を続けながら、データの置き場所を整えるほうが近道になります。
ベンチャーネットが最初の3回の会議で確かめること
ERP導入支援を手がけるベンチャーネットは、会議の改革をシステム導入の話から始めません。ERP(統合基幹業務システム)は、ITではなく経営のプロジェクトだと考えているからです。
経営会議に関わる支援で確かめる順番は、次のとおりです。
- 会議で「決めたいこと」を先に聞く:報告を聞く会議か、判断する会議かで、見る画面が変わります。議題の種類から逆算します
- その数字がどこにあるかを棚卸しする:Odooに集まる数字と、Excelに残る数字を分けます。まず「見える化」の範囲を決めます
- 標準の画面で足りるかを試す:各アプリの一覧・ピボット・グラフは両版で使えます。作り込む前に、標準に会議を合わせられるか(Fit to Standard)を見ます
- 最初の1〜2回は、資料と画面を併用する:いきなり資料をやめず、会議が一度悪くなる時期を短くします
- 3回目の会議のあとに振り返る:失敗する3つの型のどれが出たかを見て、戻るステップを決めます。ここから「わかる化」に進みます
確かめた結果、Odooが合わないと分かることもあります。規模や要件によってはNetSuiteのほうが合う場合があり、その時はそうお伝えします。
経営会議とOdooについてよくある質問
Q1. 役員が画面を見てくれません。どうすればよいですか?
「見てください」と頼むより、見る理由を作るほうが早いはずです。
たとえば、「気になる点を挙げる担当」を持ち回りにします。担当になった人は、事前に見ざるを得ません。
画面が見にくいことが原因の場合もあります。項目が多すぎないか、文字が小さすぎないかを確認してください。
Q2. 議事録はなくなるのですか?
議事録はなくなりません。書く場所が変わります。
決定事項は、その案件の記録に書きます。会議全体の議事録が必要なら、それとは別に残してください。
二重に書く必要はありません。どちらを正とするかを決めておいてください。
Q3. オンライン会議でも同じようにできますか?
できます。画面を共有する形になります。
ただし、共有された画面を操作できるのは1人だけです。深掘りの指示を口頭で出すため、対面より少し時間がかかります。
対策として、参加者が各自の画面でも同じものを開いておく方法があります。
Q4. 会議時間は短くなりますか?
短くなるとは限りません。
資料の読み上げが減る分、報告の時間は減ります。一方で、その場で深掘りする時間が増えます。
会議の長さは議題の性質で決まるため、短縮を目的にすると期待はずれになりかねません。変わるのは長さではなく、その時間で何が決まるかです。AIで数字の準備が速くなっても会議が短くならない理由は、経営会議をAIで変えるでも扱っています。
Q5. Community版でもできますか?
基本的な数字の確認はできます。
Odooの版は、無料のCommunity版と有償のEnterprise版の2つです。Community版はサーバの用意・アップデート・障害対応が自社の責任になり、公式サポートの対象外です。
また、ダッシュボードやスプレッドシートなど、一部の機能はEnterprise版が対象と案内されているものがあります。会議で使う画面をどう作るかで、必要な版が変わります。
詳しくは Odoo Community版とEnterprise版の違い をご覧ください。
Q6. 経営会議の資料作成は、Odooでどこまで減らせますか?
月次の定例報告は画面に置き換えられます。
個別案件の検討資料も、画面とその場の記録で代替できます。一方で、取締役会の議事資料や、金融機関・投資家への説明資料は残してください。社外に対する記録や説明の道具で、会議のための資料ではないからです。線の引き方は画面に切り替える会議と、資料を残す会議にまとめました。
まとめ:経営会議は、集める時間をなくして画面で決める
資料作成で時間を奪っているのは、作る作業ではなく集める時間です。この工程がなくなると、会議中の数字が最新になります。
資料は「聞ける範囲」を固定するものです。画面なら、その場で条件を変えて深掘りできるため、「次回までに確認します」が減り、判断の先送りがなくなります。
ただし、資料をなくすと会議は一度悪くなります。 資料は議論の下ごしらえでもあったからです。だから、誰がいつまでに画面を見るか(ステップ2)と、議題を3つに絞ること(ステップ3)を意図的に残してください。
発散するならステップ3、沈黙するならステップ2、あとで資料を作るならステップ4に戻ります。取締役会や社外向けの資料は、会議のための資料ではないので残してください。
「見える化 → わかる化 → 儲かる化」でいえば、経営会議はわかる化を実践する場です。考え方は 経営のシステム化は3段で進める にまとめています。見えた数字を判断に変える流れは、見える化した数字を、意思決定に変える「わかる化」で詳しく扱いました。
1年後の経営会議では、「粗利が下がっています」という報告に誰かが「どの得意先ですか」と返し、その場で画面が切り替わります。前日の夜に担当者がスライドを貼り合わせる姿は、もう見当たりません。
もう少し詳しく知りたい方へ
ベンチャーネットは、ERP導入支援を手がける会社です。NetSuite・Odoo・AIスクラッチ開発を扱い、SAPからのリプレイスにも対応しているため、特定の製品に偏らない立場でご提案できます。
「次の会議で、どの画面を出すか」を決めるところからご相談を承っています。
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