「DXを進めなければ」と言われても、何から手をつければよいのか分からない。
そんな状態の中小企業は少なくありません。大企業の事例を見ても規模が違いすぎ、ツールの紹介記事を読んでも自社に当てはめられない。
この記事では、ERP導入支援を手がけるベンチャーネットが、中小企業のDXを現実的な形で整理します。読み終えると、次の3つが分かります。
- 中小企業のDXは、何から始めるべきか
- 「つぎはぎ」の状態が、なぜ成長の足かせになるのか
- 小さく始めて広げる進め方
中小企業のDXは「つぎはぎ」の解消から
よくある状態
多くの中小企業では、業務がこんな形で回っています。
- 受注は販売ソフト、在庫はExcel、会計は別の会計ソフト
- 部署ごとに独自のExcelがある
- 一部の情報は紙の台帳や個人のPCにある
- システム間の連携は、人が転記している
一つひとつは動いています。だから「困ってはいない」と感じます。
しかし、確実にコストを払っている
つぎはぎの状態では、次のことが起きています。
同じ情報を何度も入力している
受注データを販売ソフトに入れ、Excelに転記し、会計ソフトにも入力する。この作業が毎日発生します。
数字が見えるまでに時間がかかる
今月の売上や在庫を知りたくても、複数のファイルを集計しなければ分かりません。
担当者しか分からない
「あのExcelは○○さんが管理している」。その人が休むと、業務が止まります。
間違いが見つかりにくい
転記ミスがあっても、複数のデータを突き合わせるまで気づきません。
これがDXの出発点
DXというと、AIや最新技術の導入を想像しがちです。
しかし中小企業にとって現実的なのは、まず情報をつなげることです。つながっていないデータをいくら分析しようとしても、集計作業に時間を取られるだけです。
「DXのため」では進まない理由
目的が曖昧だと、評価できない
「DXを推進する」という目的では、何をすればよいか決まりません。
結果として、ベンダーの提案をそのまま受け入れることになります。導入後も「効果が出たのか」を判断できません。
測れる形にする
たとえば、次のように具体化します。
- 受注から請求までの転記作業をなくす
- 在庫の実数と帳簿の差異をなくす
- 月次の締めを数日短縮する
- 「あの数字を出して」に即答できるようにする
こうした形にしておくと、導入後に効果を確認できます。
「いちばん困っていること」から始める
すべてを一度に解決しようとしないでください。
いま最も時間を取られている作業、最もミスが起きている業務。そこから着手するのが、効果を実感しやすい進め方です。
なぜ「基幹システム」が選択肢になるのか
個別ツールを増やしても、つながらない
「在庫管理ツールを入れよう」「経費精算アプリを導入しよう」。
個別に導入すると、便利にはなります。しかしシステムが増えるほど、連携の手間も増えます。
つぎはぎを解消するつもりが、つぎはぎを増やしていた。そんな結果になりがちです。
ERPは「つなげる」ための仕組み
ERPは、販売・在庫・購買・会計といった業務をひとつのシステムで扱う仕組みです。
受注を入力すると、在庫が減り、請求につながる。同じ情報を何度も入れる必要がなくなります。
中小企業に大企業向けは合わない
ただし、ERPと聞いて身構える必要はありません。
大企業向けの製品は、中小企業には過剰です。持て余すだけでなく、運用の負担も大きくなります。
規模に合った選択肢を選ぶことが、成功の前提になります。
中小企業に現実的な4つの選択肢
ベンチャーネットは、基幹システムを4つの選択肢で捉えています。
中小企業にとって現実的なのは、下の2段です。
Odoo:複数の業務をひとつにつなげたい中小〜中堅企業
AIスクラッチ開発:規模がより小さい、または業務が固有すぎてパッケージに乗らない企業
上の2段は、規模が大きくなってから検討する領域です。
小さく始めて広げる進め方
全部を一度にやらない
基幹システムというと「全社一斉に切り替える」イメージがあります。
しかし、それは大企業のやり方です。中小企業では、困っている業務から始めて、効果を見ながら広げる進め方のほうが現実的です。
Odooはこの進め方と相性がよい
Odooはアプリ単位で導入できます。まず販売だけ、次に在庫、その次に会計、という形で広げられます。
有償プランはアプリの数ではなくユーザー数で料金が決まるため、範囲を広げてもライセンスの考え方は変わりません。
進め方の例
第1段階:いちばん困っている業務(例:受注管理)をシステム化する
第2段階:効果を確認し、隣接する業務(例:在庫)を追加する
第3段階:数字が見える状態になったら、会計まで広げる
各段階で効果を確認できるため、経営判断もしやすくなります。
中小企業のDXでつまずくポイント
ツールの導入だけで終わる
システムを入れただけでは、業務は変わりません。
「入れたけれど、結局Excelも併用している」という状態が続くなら、投資が回収されていないことになります。業務のやり方を変えるところまで含めて、はじめてDXです。
現行のやり方をそのまま再現しようとする
「今のExcelと同じ形にしてほしい」という要望は、よく出ます。
しかし、そのExcelのやり方自体が非効率であることも多いのです。システムの導入は、業務を見直す数少ない機会です。標準的なやり方に合わせる発想を、最初に方針として決めてください。
誰も面倒を見ない
導入後に、システムを見る人がいない。これが最も多い失敗です。
専任である必要はありません。ただし「窓口となる人」は決めておく必要があります。社内にいなければ、運用まで支援先に任せる前提を作ってください。
稼働をゴールにする
現場が使いこなせて、はじめて効果が出ます。
稼働後の教育と定着支援を、最初から計画に入れておいてください。ここを削ると、投資そのものが回収できません。
よくある質問
従業員が少なくても、ERPは意味がありますか?
人数より、業務のつながりで判断してください。
社員10人でも、受注・在庫・請求が別々に管理されていて転記が発生しているなら、つなげる価値があります。逆に、業務が単純で1つのソフトで完結しているなら、無理に入れる必要はありません。
IT担当がいませんが、進められますか?
進められます。ただし条件があります。
導入と運用を支援先に任せる前提を作ることです。そのうえで、社内に判断できる窓口を1人決めてください。判断が必要な場面が何度も発生するため、ここが空白だとプロジェクトが止まります。
補助金は使えますか?
デジタル化・AI導入補助金(旧 IT導入補助金)など、システム導入を対象とする制度があります。
ただし、対象となる経費や要件は年度によって変わります。最新の内容は、必ず公式の公募要領でご確認ください。補助金ありきで製品を選ぶと、自社に合わないものを入れることになりかねません。
まず何から手をつければよいですか?
「どの業務のどこに時間がかかっているか」を書き出すことから始めてください。
製品を比べるのは、そのあとです。順序を逆にすると、比較表を眺めるだけで時間が過ぎていきます。
まとめ:DXは「つなげる」ことから始まる
この記事の要点です。
- 中小企業のDXは、まず情報をつなげることから始まる
- つぎはぎの状態は、転記・集計・属人化というコストを毎日払っている
- 「DXのため」ではなく、測れる目的に具体化する
- 個別ツールを増やしても、つながらない
- 規模に合った選択肢を選ぶ。大企業向けは過剰になる
- 全部を一度にやらず、困っている業務から広げる
そして、もっとも大切なことをお伝えします。
DXは、ITの取り組みである以上に経営の取り組みです。どの業務を標準に合わせ、どこに独自性を残すのか。それは経営の意思決定そのものだからです。
だからこそ、経営者が「なぜやるのか」を語れる状態であることが、成功の条件になります。
ベンチャーネットは、SAP、NetSuite、Odoo、AIスクラッチ開発の4つを扱っています。だからこそ、特定の製品に誘導する必要がありません。規模に対して過剰だと判断すれば、正直にそうお伝えします。
「何から手をつければよいか分からない」という状態こそ、相談の出発点です。
もう少し詳しく知りたい方へ
関連記事
