Odooをオンプレミスで運用する|Community自力運用とEnterpriseオンプレの違い

「Odooはオンプレミスでも使えます」

この説明は正しいのですが、大事な区別が抜けています。

オンプレミスと呼ばれるものには、実は2つの形があります。そして、この2つはまったく違います。

  • Community版を自社サーバで動かす(ライセンスは無料。公式サポートなし)
  • Enterprise版を自社サーバで動かす(有償契約。公式サポートあり)

混同したまま検討すると、「無料でオンプレミスにできる」と「サポートを受けながら自社に置ける」が混ざります。この2つは、まったく別の話です。

導入形態全体の比較は Odooの導入形態3つを比較 をご覧ください。

目次

2つのオンプレミスは、何が違うのか

Community版の自力運用とEnterprise版のオンプレミス運用の違いを示した比較図 Community版の自力運用はライセンスが無料だが公式サポートがなく障害対応も自社である一方、Enterprise版のオンプレミスは有償契約で公式サポートとアップグレードのサービスを受けられるという違いを比較した図です。 同じ「自社サーバ」でも中身が違う Community版を自力運用 ライセンス費用:無料 公式サポート:なし アップグレード支援:なし Enterprise限定アプリ:使えない 障害対応:すべて自社 技術力がないと成立しない Enterprise版をオンプレミス ライセンス費用:有償契約 公式サポート:あり アップグレード支援:あり Enterprise限定アプリ:使える サーバの管理:自社 インフラ担当は必要

共通しているのは「サーバの管理は自社」

どちらの形でも、サーバの用意・維持・監視は自社の責任です。

違いは、ソフトウェアそのものについて公式の支援を受けられるかどうかです。

Odoo公式は、カスタムプランではOdoo企業版をダウンロードして自分でホスティングする選択肢があると案内しています。これが後者にあたります。

エディションの違いは Odoo Community版とEnterprise版の違い にまとめています。

オンプレミスを選ぶ理由

手軽さで選ぶものではありません。明確な理由があるときに選ぶ形です。

理由になりうるもの

(1) データの所在に要件がある

社内規程や取引先の要求で、データを自社の管理下に置く必要がある場合です。官公庁や特定業界の取引では、実際に条件になることがあります。

(2) 既存システムとの接続が密接

社内ネットワーク内の他システムと常時つながる必要がある場合、自社内にあるほうが構成しやすいことがあります。

(3) 完全な制御が必要

サーバの構成やデータベースの扱いまで自社で決めたい場合です。

理由にならないもの

正直に書きます。「無料だから」はオンプレミスを選ぶ理由になりません。

無料なのはライセンスだけです。サーバ、電気代、保守の人件費、障害対応の時間。これらはすべて発生します。

多くの場合、総額では自社運用のほうが高くつきます。 それでも選ぶだけの理由があるかどうかが判断軸です。

自社が負う責任の範囲

オンプレミス運用で自社が担当する作業の一覧を示した図 サーバの構築と維持、OSとミドルウェアの更新、セキュリティ対策、バックアップと復旧テスト、監視と障害対応、バージョンアップ作業という6つの作業がすべて自社の担当になることを示した図です。 自社が担当することになる作業 サーバの構築と維持 機器・容量・電源 OS・DBの更新 土台のソフトも保守対象 セキュリティ対策 脆弱性への対応 バックアップと復旧 戻せることの確認まで 監視と障害対応 夜間・休日も含めて バージョンアップ作業 年1回のメジャー更新 これらを担う人と時間を、先に確保できているか 社内で無理なら、外部の保守契約とセットで検討する

とくに軽視されやすい2つ

(1) 夜間・休日の障害対応

これがいちばん現実的な問題です。基幹システムが止まると、翌朝の業務が止まります。

誰が、いつ、どうやって対応するのか。 ここを決めずに始めると、結局は特定の一人に負担が集中します。

担当者が1人の会社では、この構造そのものが危険です。詳しくは 一人情シスのためのOdoo運用術 をご覧ください。

(2) バックアップは「戻せるか」まで

バックアップを取っていることと、そこから復旧できることは別です。

一度、実際に復旧の手順を試してください。 障害が起きてから初めて手順を読むのは、いちばん避けたい状況です。

考え方は Odooのセキュリティとバックアップの考え方 にまとめています。

バージョンアップも自社の作業になります

オンプレミスで見落とされやすいのが、バージョンアップです。

Odooは原則として年1回メジャーバージョンが上がります。オンプレミスでは、この更新作業を自社で計画し、実行することになります。

  • 検証環境を用意して事前に確認する
  • 独自に作り込んだ部分が動くかを確かめる
  • 業務を止める時間を確保する

Community版の場合、アップグレードの公式支援はありません。

サポート期間の考え方は Odooのバージョンアップとサポート期間 にまとめています。

Odooをオンプレミスにする前に確認すること

順番に確認してください。

(1) 本当にオンプレミスでなければならないか

データの所在に明確な要件があるかを確認してください。「なんとなく自社にあるほうが安心」は要件ではありません。

クラウド側のセキュリティ体制が、自社の運用より優れていることもあります。

(2) 担う人と時間を確保できるか

前章の6つの作業を、誰が担当するか。兼務でこなせる量かを冷静に見てください。

(3) 外部の保守契約を組めるか

社内だけで背負わない構成にできるかを確認してください。1人に集中する構造だけは避けるべきです。

(4) 総額で比較したか

サーバ費用、電気代、人件費、外部保守。これらを含めた総額で、クラウドの構成と比較してください。

費用の考え方は Odoo導入にかかる費用の構造 にまとめています。

オンプレミスが合わないケースもあります

ベンチャーネットは、SAP・NetSuite・Odoo・AIスクラッチ開発という4つの選択肢を扱っています。

状況検討したい選択肢
データの所在に明確な要件がなく、技術者も少ないOdoo Onlineとは? を参照
カスタム開発は必要だが、サーバは持ちたくないOdoo.shとは? を参照
データの所在に要件があり、運用体制も確保できるオンプレミス が現実的な選択肢
そもそもパッケージに業務が乗らないAIスクラッチ開発という選択肢

2行目を強調します。「カスタマイズしたいからオンプレミス」という判断は、いまは必ずしも正しくありません。 Odoo.shであれば、サーバの面倒を見ずにカスタム開発ができます。

最終行のAIスクラッチ開発は、ライセンス費用がかからない代わりに開発費と保守費が別途かかります。判断材料は パッケージERPかスクラッチ開発か に整理しました。

よくある質問

Q1. Community版なら本当に無料ですか?

ライセンスは無料です。 ただし、サーバ、電気代、保守の人件費、障害対応の時間は発生します。

総額で見ると、クラウドの構成より高くつくことも珍しくありません。

Q2. インストールは難しいですか?

技術者にとっては特別に難しい作業ではありません。問題は、その後の維持です。

セキュリティ更新、バックアップ、監視、バージョンアップ。導入時ではなく、運用時に負担がかかります。

Q3. Enterprise版をオンプレミスで使えますか?

Odoo公式は、カスタムプランでOdoo企業版をダウンロードして自分でホスティングする選択肢を案内しています。

サポートを受けながら自社に置きたい場合の選択肢になります。

Q4. クラウドとオンプレミス、どちらが安全ですか?

一概には言えません。自社の運用体制次第です。

更新が滞りがちな自社サーバより、専門のチームが運用するクラウドのほうが安全な場合もあります。「自社にあるから安全」とは限りません。

Q5. あとからクラウドに移れますか?

移行は可能ですが、作業と費用が発生します。構成によっては制約もあります。

将来の方針が定まっていないなら、その点も含めて相談してください。

まとめ

「Odooはオンプレミスでも使えます」という説明には、大事な区別が抜けています。

Community版の自力運用と、Enterprise版のオンプレミスは、まったく別の話です。 前者はライセンスが無料ですが公式サポートがありません。後者は有償契約で、サポートとアップグレードの支援を受けられます。

どちらの形でも、サーバの管理は自社の責任です。構築、OS更新、セキュリティ、バックアップ、監視、バージョンアップ。これらを担う人と時間が要ります。

そして、はっきり書きます。「無料だから」はオンプレミスを選ぶ理由になりません。 無料なのはライセンスだけで、総額では高くつくことも多いからです。

選ぶべきなのは、データの所在に明確な要件があり、運用体制も確保できる場合です。

なお「カスタマイズしたいからオンプレミス」という判断は、いまは必ずしも正しくありません。Odoo.shなら、サーバを持たずにカスタム開発ができます。

もう少し詳しく知りたい方へ

ベンチャーネットは、ERP導入支援を手がける会社です。SAP・NetSuite・Odoo・AIスクラッチ開発という4つの選択肢を扱っているため、特定の製品に偏らない立場でご提案できます。

「本当にオンプレミスが必要な要件なのか」の切り分けからご相談を承っています。1人に運用が集中しない体制づくりも含めてご提案しています。

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この記事を書いた人

持田 卓臣(もちだ たくおみ)
株式会社ベンチャーネット 代表取締役

ヒューレット・パッカード社でITコンサルタントとして従事した後、2005年に株式会社ベンチャーネットを設立。
Oracle NetSuite Solution Provider Partner として、中堅・中小企業向けクラウドERP「NetSuite」の導入・運用支援を提供しています。
SEO・広告・SNS・ウェブ・MA・SFAと一気通貫で培ってきたデジタルマーケティング領域の業務知見を活かし、NetSuiteを軸とした経営DXを支援しています。
著書:『普通のサラリーマンでもすごいチームと始められる レバレッジ起業「バーチャル社員」があなたを救う』(KADOKAWA、2020年)

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